107話 部活動
四人でご飯を食べ終わり、社交界開始までおおよそ四時間。
「この時間のやることは『ぶかつどう』と言うものを見て回る人が多いね」
「「ぶかつどう?」」
「なるほど」
レオンは丁寧に説明してくれたが、まぁ大体前世と同じあれだ。
「レオンは部活動何か入っているの?」
「うーん……」
世間話のつもりで聞いた質問だったが、何やら渋い顔になる。
「入ろうと思ってたんだけどね? ちょっと……」
「何かあったの?」
入りたい部活が無いとかならここまで渋らないだろうに。
「同じ学年に『セイナ侯爵令嬢』がいるんだけど、どの部活入ろうとしても彼女がついてくるから入れなくて」
「うわぁ……」
それは純粋に可哀想。
それじゃ入りたい部活があっても入れない。
「セイナ・スカラと言えば、婚約者候補から脱落した侯爵だったわね? なんで諦めないのかしら」
「おぉ……」
スーちゃん容赦ない。
「実は去年も社交界で誰ともダンスを踊ってないんだ。セイナがくどくてね?」
「よかったわ? もしセイナと踊ってたら三人纏めて婚約破棄してるところだったわ?」
「スティアそれは怖すぎだよ……」
スーちゃん容赦ない……。
いや、多分僕も破棄してる気がする。
「私この『ぶかつどう』行ってみたわ!」
「シャイナちゃん、セイナの事眼中にない……」
僕とレオンとスーちゃんはセイナ侯爵で盛り上がってたのに、シャイナちゃんは話題にすら触れてない。
「んで、シャイナが行きたい部活は?」
「平民服研究部ってところよ?」
「なんか面白そう!」
「じゃあ僕が案内するよ」
スーちゃんも気になっているみたいだし、レオンに連れられて四人で平民服研究部の教室へ向かう。
*
「こんにちは、ここ平民服研究部であってますか?」
「そうですよ……ってレオン第三王子様!?」
中にいた一人がビックリして声を上げた瞬間、全生徒が僕らを見つめる。
「レオン様がこのようなところにどのような御用で」
「堅いのはよしてくれ、学園では皆平等なんだから。今日はこの部活に興味を持った新入生を連れてきたんだ」
レオンは教室に入り、後を追うようにスーちゃん、シャイナちゃん、そして僕も教室に入る。
「あ……え!? スティア公爵……様……!」
「シャイナ公爵様も……じゃあ……」
「もしかしてそっちの可愛い子って『ヒカリ・ウィンガート伯爵』!?」
「お、大物がきた……なんでこんな辺鄙な部活に……」
全員が全員、面白いほど大絶句している。
「…………はっ!」
我に帰った一人が、足を震わせてこちらに歩いてきた。
「平民服研究部へようこそ。こちらの部活はポーン王妃の遺産から拝借した『したがき』と呼ばれる絵を参考に平民の衣服を製作しております」
「なるほど……」
「ヒカリちゃんわかったの?」
「うーん、なんとなく」
シャイナちゃんは頭にハテナを浮かべている。
まぁ僕も完全に理解したわけではないけど、ポーン王妃が元日本人という事だけはわかった。
「ポーン王妃はどうやら想像力豊かな方だったようで、可憐なドレスから、少々人に見せるのを憚られるものまで、色々と残されております。よろしければご覧ください」
「おぉ、凄い!」
下書きというにはあまりに丁寧に描かれた絵だ。
「このドレスの絵素敵ね? スーちゃんのお母様に見せたら大喜びで作りそうだわ?」
「これは貴族用のドレスなのでここでは作りませんが、部活とは別で趣味で作っている人も何人かおります」
「凄いわ!」
たった一枚の絵だけど、シャイナちゃんはかなり惹き込まれている。
「確かに凄いけど……こっちの服は誰が着るのを想定しているのかしら……」
一方スーちゃんが持っていた下書きはーー
「それがわかる人は恐らくいないかと……」
「『くろっぷどしゃつ』……とスカート? 暗号みたいな名前ね?」
「だね?」
残念ながら前世が男の僕も詳しく知らない衣服だ。
「作っては見たのですが……本当に何のためにポーン王妃はデザインしたのか。時期に破棄になってしまいますがーー」
「……」
作られたの見て直ぐわかった。これヘソ出しの服か。
この世界でそれは確かにきついわ。
「私、着てみよっかな?」
「ヒカリちゃん!?」
「嘘!?」
「え?」
まぁ先駆けだと思えばなんて事ないし、前世でも東京や名古屋、大阪でこの手の服着ている人は沢山いた。
まぁ三人は超驚いているけど。
「破棄するなら一回くらい着ようかなって」
「それはそう……だけど……」
「本当に着るんですか……? お勧めはしませんけど……」
「見せるかどうかは別だよ?」
「…………」
もの凄く渋った顔をした後、ようやく「わかりました」と返事が返ってきた。
因みに着る理由は単純。
ヒカリちゃんの超可愛い姿を、前世の僕が見たかったからだ!




