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103話 入学式


 二人で一緒に体育館に向かうと、二、三人の小さな大勢の集団がザワザワと話している。


「これ、シャイナ探すの大変じゃない?」

「うーん……」


 この体育館、前世で見れば球場並みの広さがある。


 そんな広さとこの騒がしさでシャイナちゃんを探し当てるのはーー


「見つけた」

「嘘!? どこ!?」


 そう難しいことではなかった。

 


「あそこ」

「あの人たちの中…………あ!」


 どうやらスーちゃんも気づいたららしい。


 この二、三人の集団の中、唯一十人超えそうな、沢山人が集まっている集団が、体育館の隅に一つがあった。


 そう、公爵令嬢とコネクションを得たい貴族たちの集まりが。


 そんなわけで、二人で唯一出来ていた大きな集団に近寄る。


「シャイナちゃん!」

「シャイナ! いる?」


 少し声を張って呼びかけてみる。


 すると、人だかりの中心から、活気のある声が聞こえた。


「スーちゃんとヒカリちゃん!」


 そしてシャイナちゃんが名前を呼んだ瞬間、その集団に留まらず、声が聞こえていた沢山の人が僕らの方を向く。


「私の友人を待ってる間の暇つぶしありがとうございます! 私はこれで」


 そして人混みを縫って僕らの方にひょいと現れた少女、肩口まで伸びた綺麗なウェーブの白髪に、灰色の瞳の『シャイナ・ミクロライト公爵令嬢』。


「疲れたわ?」

「おつかれさま?」


 切実な声だ……。


「それにしても、ヒカリちゃん凄い人気ね?」

「え、なんで私?」


 今のはどう考えてもシャイナちゃんの集団だったけど。


「私がヒカリちゃんの名前呼んだら皆んなバッと振り向いたでしょ?」

「うーん、でもスーちゃんもいたしーー」

「わぁ……シャイナ、ヒカリちゃん全く危機感ないわね?」

「そうね?」

「なんで!?」


 今のは流石に疑問を提示したいよ! 公爵という最高の権力者がいるのに、ただの『レオンの婚約者候補の一人』に気移りする理由なくない?


「ヒカリちゃんは危機感がないのが問題なの! 私とスーちゃんと同じくらい注目されてるのよ?」

「あ、なるほど……」


 少し納得した。


 過剰に注目を集めているわけではないけど、公爵家と同等ほどに注目があるのに『のほほん』としてるから皆んな注意してくれていたんだ。


「気をつける」


 何をどう気をつければ良いのかわからないけど、あまり二人と離れないようにしないと。



 そんなこんなでのんびり雑談し、体育館に入学式開始のアナウンスが流れ、用意されている椅子に三人並んで腰掛ける。



「なんか、ザワザワしてるね?」


 アナウンスもかかったし、静かにならなきゃいけないタイミングのはずなのに、妙に落ち着きがない。


「当然でしょ? 公爵二人とヒカリちゃんが並んでるんだから、実質見せ物よね?」

「あぁ……」


 シャイナちゃんの冷静な分析に納得させられた。


「気にするだけ無駄よ!」


 そしてスーちゃんは構うことなくバッサリ切り捨てる。


 少し騒がしい中でも入学式が始まる。


 やってることは前世と同じで、校長の挨拶からスタート。


 なのだがーー


「皆さん、私がこの『最王学園』の校長の『シン・オリスティナ』だ」

「へ……陛下っ!?」


 国王様が校長してんのかよ!?


 てか陛下って『シン・オリスティナ』って名前だったんだ。


 まぁそこからは少し長い話を聞くだけで何事もなかった。


 がーー


「続いて、新入生への挨拶。レオンさん、お願いいたします」

「レ……オン!?」


 壇上に上がってきたのは、あのレオンだ。


 三人で目を丸くしていると、レオンは面白そうに笑顔を溢れさせる。


「何……やってんの……」


「新入生の皆さんこんにちはーー」


 そして淡々と話し出した。いや驚きで何言ったか覚えてないけどね。


 そして更にーー


「続いて生徒会副会長の挨拶。ユアンさん、お願いいたします」

「ユア……えぇ……」


 なんか、王族の催しみたいになってるけど、他の新入生は王族が出てくるたびに緊張したりうっとりしたりしているから……まぁ、いいか……。


 そんなこんなで大切な入学式は、マジで一切記憶に残らなかった。

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