報告書94枚目 暗躍跋扈
フォルナス宰相、ローフル大将、ディア局長の三人が並ぶ机の前に同じように三人の女性が礼儀正しく座っている。右からスタイルと身長が高い順番に並んでいる。三人ともじっと僕を見つめているのは少し照れてしまう。面接を行うと発表して、父上に許可を取りあっという間に場を整え今現在に至る。電光石火のお手本というのはこういう事なんだろうと思う。
「さて・・・・名前を言ってもらいましょうかのぉ」
「エメラと申します」
「ルビーです」
「クリスであります」
右からそれぞれローフル大将の促しに答えて名前を名乗っていく、それぞれに声も綺麗だし色々手伝ってくれそうで安心感がある、さすがディア局長が選んだ人たちだなと少し納得してしまう。隣を見るとディア局長が胸を張って眼鏡をずり上げていた。頼もしいやら少し微笑ましいやら思わず笑顔が漏れる。
「さて、それぞれが得意分野をフォルナス様にアピールするのですな」
「文武両道を自負しております、公私ともに支えになれればと思っております」
「完全に内政感だと思いますが書類整理、事務、戦術副官はお任せください、当然夜も喜んで」
「武官です、身辺警護はお任せください、あとベットも警護します」
全員頼もしいんだけど一部絶対今必要じゃないことを言っているよね?ふと左右を見るとローフル大将もディア局長もその通りであると言わんばかりにうなずいている。あれ?おかしいのは僕なのかな?ディア局長もローフル大将も手元の書類に何かの印をつけている。きっとあれで合格や不合格を決めているんだと思うけど、僕はまだ経験がないのでなかなか誰がいいのか甲乙つけがたい。
「さて、逆にそちらからわれらに対しての質問はないのかのぉ?」
のんびりと椅子の背もたれに寄りかかりながらローフルが三人に話を振ると失礼してと答えエメラが手を挙げる。それを見て目を細めたディア局長がどうぞとうながす。
「フォルナス宰相にお仕えするのは大変な名誉ですがそれにあたり心構えはありますか?」
「愚問ですな、フォルナス様のために生きてフォルナス様のために死ね、それだけですな」
「覚悟がないなら回れ右して帰って結構だのぉ」
構わんぞと手で示唆するが誰も立ち上がらないし目をそらさない、少しだけ重苦しい空気が漂うとそれを振り払うかのように、続いて真ん中のルビーが手を挙げる。
「質問があります、もしフォルナス様のお手付きになった場合は如何すればよろしいでしょうか?」
「変わらんなぁ、フォルナス様が望まない限りはそのまま、望んでもそれまでであるのぉ」
「こちらも覚悟がないならさっさと帰って結構ですな!寧ろ手を出していただいて名誉ぐらいの話ですな!」
既に質問の最初から最後までさらに答えに至るまでおかしい事だらけである、それを二人がさも常識であるかのように三人に向かって言い含めるようにかみ砕いてというか結構横暴な言い分を言い放つ。非常にこの場にいづらいのですがと苦笑するがそれは関係ないのでときれいに却下された。何やら言いたい事が探せば探すだけあるけど現在は僕の質問と意見の番ではないらしい。
「失礼します、クリスであります、もしフォルナス様をお守りして名誉の戦死をした場合の扱いはどうなるのでしょうか?私は軍人故フォルナス様の代わりに死ぬのが仕事と認識しております」
「当然国葬であるのぉ、扱いとしては名誉の戦死を約束しよう、二階級特進もつけるのぉ」
「われら教育機関ではちゃんと教科書に名前が残るくらいの偉業ですな、誇っていい行動ですな!」
うん、もう突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込んでいいかわからなくなってきた。ただこちらの意見も二人は激しくうなずいているところを見ると、この二人にとっては間違いない部分なんだろうと思う、大事なことだけど僕の意思はまだ一つたりとも確認も認知もされていないというのを忘れてはならない。
「さて、おおむね意見は出そろった・・・・」
「僕の意見まだだよね?」
慌ててローフル大将の意見を遮る、珍しく大きな声で発言したと思うけど一番今大事なことだから仕方ないよね。ディア局長は少しだけ驚いたような表情をしたけどすぐに元の戻ると、三人に向かってフォルナス様よりお言葉があるので謹んで拝聴するようにとハードルを勝手に上げて行く。ローフルに至っては何を言うのかこちらを観察してずっと待っている。仕方がないので今まで思っていて一番大事なことを三人に聞くことにした。
「とても大事なことだけど・・・、見ての通り僕はまだ知識も不十分だし経験も足りていない、こんな僕だけど補佐してくれるのだろうか」
恐る恐る三人を見つめながら質問をすると両脇の二人組がそれこそ愚問でしょうと苦笑する。ただ僕にとっては愚問だろうと疑問だろうと関係ない、何せ合格した人と今後一緒にやっていかないといけないのだから今のうちに後に残るようなことだけは避けないといけない。
「むしろ補佐をさせていただきたいと思っております」
「補佐をさせてくださいお願いします」
「願わくば守護させていただきたく、お許しを」
それぞれが迷いのない声でこちらをまっすぐに向くと綺麗に合わせたように儀礼をしてくる。これなら一安心だなと明日には合格を教えるからよろしくねと言ってその場を解散することにした。最も意見が通ったのはこの日はこれが最初で最後であり、結局三人とも合格という暴挙を二人して押し通すのでそれをあきらめたように苦笑ながら認証するのであった。
「さて、フォルナス様、今日の本題の話に入りましょうか」
「え?面接が本題じゃなかったの?」
「今のは前座の前座なのですな」
ディア局長が静かに何かの書類とそれにかかる予算の紙を同時に提出してくる、それに目を通している間にローフル大将ももう一つの書類と予算許可証を提出してくる、どちらも書いてある事は父上の軍事行動に対する補佐と、敵軍に関する牽制に対して今余っている予算と鉱石、資源を回したいというものであった。いつもならこの二人の個人裁量でさっさと可決しそうな議案なので少し不思議そうに書類を受け取る。さっと目を通すとやっぱりいつもと変わらない気がするので思わず口から意見が漏れ出た。
「これならいつも通り個人裁量でいいんじゃないのかな・・・・」
「駄目ですのぉ、鉱石と資源をつぎ込むからには宰相のサインが必要なのですなぁ」
「こちらも同じですな、戦艦と工作艦を動かすからにはサインが必要なのですな」
珍しく二人とも譲らずにサインをするように迫ってくる、何か見落としがないか細かくもう一度出ている書類を確認する、どれだけ斜めに見ても縦に見ても書いてあることは変わることはなく、小さな字で確認事項が書いてないかのチェックもするがそれも問題ないように見える。悪だくみ季節の風物詩二人組のことだきっと書類と予算に何か合わない部分があるはずと時間をかけてチェックするがそれも普通に大丈夫であった。
「う~ん、サインするけどこれ本当に僕のサインが必要なのかな?」
「むしろフォルナス様のサインがないと話にならないのですな」
「というかですなフォルナス様のサインがないと輸送艦やらが全部停止したままで行動できませんのぉ」
初耳の話を聞いて思わず確認を取ってしまう。今までそんなことはなかったような気もするし、普通に艦隊も輸送も鉱石も動き回っていたような気がする。そもそもローフル大将もディア局長もこのようなサインは普通平然とハンコを後で押すか自分で偽造するくらいはやってのける。それがわざわざ今日に限ってサインをねだるとは何かおかしいとしか思えない。
「・・・・・・怪しい」
「どこも怪しくないのですのぉ、失礼しますのぉ」
「ご主君は心配性ですな、全く問題ないのですな」
お互いに胸を張って書類を持ち扉から退出していく。なんとなく納得しない気持ちが残ったまま部屋から出ていく二人を見送るのであった。
「うまくいったのですな」
「うむ、うまくいったのだのぉ」
書類を二人がのんびりと左右に振っていると紙がはがれてもう一枚の書類が現れる、そこには中央宇宙に対する嫌がらせに相手方に現在開発中の超遠距離狙撃衛星砲ロンギヌスの改良型、超遠距離狙撃衛星大口径砲ノエルの試射とそれに伴うテスト射撃の連続実行計画の発砲許可証に代わる。これを使えばここから敵の主力に嫌がらせのように砲撃を加えることができる。
「言葉を弄する者が勝てる戦ではないのぉ」
「やはり身を切って戦って初めて勝利できるのですな」
万全の状態にするために大量の資源と資材を運び込む、その運び込まれる資源と資材を眺めながらやっぱりため息をつくのであった。お互いに顔を見合わせると威力が足りないし照準が甘いなどの愚痴大会が始まる。はたから聞いていればこいつら何言ってるんだと言わんばかりの会話をしているのだが二人とも真剣そのものに話しているのであった。
「一撃必殺を防衛として大火力を遊撃としてほかの余っている艦隊を回すとしてもまだ足りない」
「残ったもので防衛を回すとするならば新兵器も開発せねばならないし何としても勝たなければならない」
「科学が進歩したとはいえやはりこの距離からの狙撃では多少威力が弱まるのぉ」
ひそひそと相談を続けながら地図に小さなマーカーを置いていく、莫大な数と莫大なものが中央銀河に集まり始めていた、おそらく近いうちに全面戦争を行うであろうアース王の苦虫をかみつぶした顔が安易に浮かんでくる。向こうにはまだヴァルキュリアもいれば超弩級戦艦もそろっているし空母も艦載機も普通よりもかなり多めに艦載している。真正面からの大激突が始まったところで短期間での決着はあり得ないし、どちらも被害が軽微で終わるなどという夢物語は絶対のあり得ない。
「決着がすぐ着くことはないでしょうし決戦がすぐに行われるとは思えないのですな」
「大艦隊同士の戦争はそうそう始まらないしそうそう終わらないのですのぉ」
「ならば今回のチャンスはどこなのですかな?」
「当然今のうちだな、全力で用意しさっさと発射し敵にダメージを与えることに成功したらこれまたあっさりと自沈してもらわないと困るのぉ」
「高価な使い捨て兵器というわけですな」
お互いに顔を見合わせて何度目かわからない苦笑をする。お互いに狙っているのは自分の主君であるフォルナスの拍付けである。ここからでも父親の乾坤一擲の全面戦争に協力したというとてつもなく大きな拍付けを狙っているのだから、どうあってもこの二人はしたたかであるというしかないのであった。この計画が実行される頃に初めてメルティアと話して気づいたフォルナスは唖然とするのであった。




