寄り道編―竜神に挨拶しよう1
「そっちは南じゃないよ?」
リリアが分かれ道で右に進もうとすると、十六夜からそんな声がかかった。リリアは振り返って、にやりと笑った。
「十六夜、少し寄り道していこう」
「よりみち?」
それなに美味しいの状態である。リリアはくすくすと笑った。
「ちょっと遠回りしようと言ってるんだよ。顔を見せたいやつがいるんだ」
「お友達?」
「あえて言うなら祖父かな」
「そふ?」
「おじいちゃんだ」
「なるほど」
十六夜はリリアが進もうとした道を見た。向こうの空は曇っている。先にある山のてっぺんが見えないくらいには雲は厚かった。
「あっち雨かもね」
「それでいいんだよ」
「?」
十六夜は首をかしげていたが、リリアが足を進めるからそれについていく。歩いていくとどんどん空気が湿っていくのを感じた。しかし不快な感じはしない。
「なんか不思議な感じがする」
「今日はこの先の村で宿をとろう」
「村ってことは小さいの?」
「街よりはね」
リリアは少し後ろを歩く十六夜を見上げた。楽しそうにしている。
(かわいい奴だ)
くつくつとリリアは笑う。
「リリア、楽しそう」
「ああ、楽しいよ。お前は?」
「俺も楽しい!」
聞けば太陽のような笑顔が返ってくる。
(うまく笑えるようになった)
それだけでもうれしいと言うものだ。理由はともあれフードも必要ではなくなったし、これは良い調子だとリリアは現状におおむね満足している。
「村に用事があるの?」
「いや。村の近くにある川に用があるんだ」
リリアは口端を持ち上げる。
「お前に会わせたいんだよ」




