上級編―集団行動をしてみよう2
瞳も髪を黒をまとう珍しい青年と少女は、己のもの珍しさに気に留めることなく街中を歩いていた。
「リリア、あれは何?」
「あれか?あれはバルーンだ。術師がちょいと細工をしてるのさ」
「食べられる?」
「食べられはしないな」
からからとリリアは笑った。10を過ぎるかすぎないか位の幼さには不釣り合いな話し方をする少女だ。それに対し、教えを乞う青年は少女の服の裾をつかみ注意を引いている。
違和感があるといえばある二人だったのだが、青年が鬼らしいと気づくとその違和感は霧散する。
(きっと、生まれたばかりの鬼なのだろう)
鬼は不老不死。その首を切り落とされない限り何度でもよみがえる生き物だ。そして、その外見年齢は生まれた時から死ぬ時まで変わらない。だから、あの鬼もまだ世間を知らぬ若い鬼なのだ。
ー甚大な魔力とそれに裏打ちされた強靭な肉体を持つ鬼は、妖魔の王者だ。生粋の戦闘生物である鬼は、青年期の姿をとるものが多い。黒い鬼は、そこからも外れてはいなかった。
「リリア、俺おなかすいた」
「まあ、もうしばらく我慢しておくれ十六夜。どうしても、取りたい仕事があるんだ」
「強い!?」
「ああ、今までで一番強いよ」
「やったあ!」
十六夜と呼ばれた青年の姿をした鬼は跳んで喜んだ。それに、にたりと少女は笑って見せる。
「しかも、生死不問ときた」
「殺していいの!?」
「ああ」
物騒な会話にひやりと通行人たちは肝を冷やすが、鬼使いはイコール賞金首狩りだ。悪いことをしなければ基本かかわることはない。人々はそそくさと二人から距離をとった。
「大きな街だね、リリア」
「そうだな、今までで一番大きいかもしれないな」
リリアはふむとあたりを見渡す。
「街並みもきれいだな」
「ねー」
十六夜はにこにこと笑っている。それにリリアも気をよくしたようにふふと軽やかに笑うのだった。
「まあ、急ごう。さっさと仕事を受けて食事にしよう」
リリアの言葉に、十六夜は意気揚々と足を踏み出した。
※
「もう取られてしまったか」
役所で仕事を受けようとしたリリアだったが、先客がいたようだった。女性が困ったように笑う。
「すみません。ちょうど先刻、受けた方々がいて」
「チームか」
ふむ、とリリアが腕を組む。ちなみに、仕事が受けられなさそうだと十六夜は小さな背の後ろで眉をハの字にしている。
リリアは仕方ないと、女性に顔を向けた。
「どうしてもこの仕事がしたい。私も仲間に入れてもらえないか掛け合ってみようと思うのだが、代表者の名を教えてはもらえないだろうか」
「えーと、それは・・・」
「どうぞ」
リリアを面倒な客だとでも判断したようだ。女性の上司と思わしき男性が、すっと名の書かれた紙をよこす。リリアはそれを受け取る。
「助かる」
リリアは後ろを振り返る。十六夜の眉はまだ下がったままだ。それに、リリアは笑って見せる。
「名前はわかった。探しに行くぞ」
どうやら仕事ができないわけではないらしいと合点がいった十六夜は、ぱあと輝くような笑みを見せた。




