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鬼神殺し―リリアと十六夜の物語―  作者: 水彩月子
―第一章―リリアの野望編
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中級編―賞金首を捕まえてみよう7

 気づけば目の前に広がるのは白い天井だった。リリアは首を巡らせる。それに気づいた女が慌ててリリアに近寄ってくる。


「気が付きましたか?」


(看護師)


女の制服にそんなことを思う。看護師はリリアの前で手を振った。それにやっと意識がはっきりとする。


がばりと上半身を起こす。


「やられた!」

「まだ動かないでください!!」


看護師はリリアを叱ると、ぱたぱたと部屋を出て行った。


リリアは鋭く視線を走らせる。ここは病室のようだった。看護師がいるから、病院であっているだろう。昨夜燃える屋敷の前で、音の攻撃により意識を手放したらしいと理解する。そんなリリアをだれかがここまで運んでくれたのだろう。


「一瞬とはいえ―」

(私の言霊が届かなかった)


十六夜は、リリアの声ではなく、あの手品師の笛の音をとった。


(取り返すには策がいる)


いや、そもそも


(まだこの街にいるのか?)


昨夜の混乱に生じてもう遠くまで行ってしまったかもしれない。


「目が覚めたんですね」


医者と思われる女性が入ってきた。リリアの脈をとったり、外傷がないか調べていく。


「やっぱり傷はないですね。どうして倒れていたか覚えていますか?」

「―いや、しかしもう大丈夫だ」

「まだ動いてはだめです!」


ベッドから出ようとするリリアを医師が止めようとする。リリアは医師も看護師も女性なのをいいことに、己の黒い装束に着替える。


「悪いが、私には行くところがある」


リリアは静止の声も聞かず、病院を後にした。


※


「号外号外!」


病院を出ると、少年が大声を上げながら紙をばらまいていた。リリアは何とはなしにその紙を受け取る。


『行方知らずだった子どもが見つかる!しかし、新たに3人行方不明者が!』


その見出しにリリアは目を見張る。慌てて読み込めば、発見された子どもの名にマーサというものを見つける。確か、アンジェという女の娘だったと思いだす。リリアはアンジェを探して歩き始めた。


人に聞いて回って、どうにかアンジェたちが住む家を見つけ出す。扉をノックすると、アンジェが顔を出した。アンジェは訪ね人がリリアだと気づくとすぐに家に入れてくれた。


「娘が見つかったと聞いた」

「ええ。昨日つかまっていたところから逃げ出して、街の警察に保護されたんです」

「そうか、詳細は聞けるか」

「マーサはまだ眠っています。私が聞いた話なら答えます」


アンジェは眠るマーサを起こしたくないようだった。リリアは仕方ないとアンジェに問いかける。


「どうやって逃げ出したか知っているか」

「はい。背の高い、黒い髪の若者が助けてくれたと言っていました」


(十六夜だ)


「途中まで一緒に逃げていたのですが、突然うるさい音がしてみんな動けなくなったと。その時にどっちに歩いていけばいいかを言い残して自分はどこかに行ったと言っていました」


(あの笛だ)


「何か、他に聞きたいことは?」

「いや、充分だ」


リリアは礼を言ってアンジェの家を出た。


「十六夜は、子どもたちと一緒に捕まっていた」


リリアは整理しながら歩く。


「十六夜は子どもたちを連れて逃げ出した。それに気づいて、人さらいは子どもたちの足を速めた」


気が急く。風を切ってリリアは歩く。


「しかし、戻った時には遅かった。だから、証拠隠滅に屋敷を燃やした」


そして、逃げ出した子どもはあきらめ、十六夜だけ呼び戻した。その目的は逃走だ。十六夜の足なら馬より早く逃げられる。


「あの手品師、やってくれるな!」


リリアは凶悪に笑った。怒りが闘気を膨らませる。すれ違う人々はそれに体を震わせた。しかし、そんなことお構いなしに街を闊歩する。


「十六夜を呼ぶことは可能だろう。しかし、すぐにあの笛で操られてしまう」


どうやって十六夜と合流するか。そしてあの手品師を捕らえるか。リリアは策を巡らすのだった。


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