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レゾナンス



「はぁ?渋滞40km!?」

エンジンが焼けるか、ボディが焼けるか、それとも人間が先にやられるのか。


お盆休み初日はどこの番組でも渋滞情報や事故情報のニュースばっかりだ。

呆気に取られてリモコンを置いて自室に戻ることにした。


だがそんな事を言っている僕にも、恋人もいれば予定もある。

ま、予定と言っても日程を抑えているだけで具体的な予定はない。


9日間ある休みのうち2日は会う予定。

明日と4日目だ。


奈緒も僕も実家は同じ県内、

だが仕事の都合で同じ県内だが奈緒は一人暮らしをしている。


「奈緒は行きたい所あるのかなぁ」


行きたい場所はある?海でも行く?

と僕はメッセージを入れる。


メッセージを送り二日酔いを覚ますために清涼飲料水を買いに、

焼けつくようなサドルで尻を焦がした。



結局お店を出るなり一気に飲み干してしまった。

本来の目的は何だっけ?


スマホを見るとメッセージが入っている。

[避暑地 海行こう海]


避暑地ではない と一応突っ込んでおいた。


これで僕たちもニュース報道のネタの一員になることが確定した。



比較的内陸に住む僕たちは、あんまり海とは縁が無い。


同じ県内に住んでいるのに、

海に近くなると急に潮の香りがしてくるのは本当に不思議だ。


「あ~なんかこの香り、お腹空いてくるね」

なぜだ。そうは思わん僕は。


僕は奈緒のたわごとには触れず聞いた。

「あれ?何回目だっけくるの海」


確か…釣りで引っ張ってきたのを含めると3回だったかな。

「問題です。何回でしょうか」


そう来るとは思わなかった。


「確か泳ぎに来るのが2度目、あと一回釣りに来たよね。春に」

三つの指を折る。

おっとっと、ハンドルから手を離すのは危ないな。


「それだけじゃありません。駅から海観たじゃん」

「え、それはちょっと反則だよ」


それならテレビで観たのも合わせるとと言い出すだろう。


通常の土日なら1時間30分もあれば海にたどり着くだろうが、

こんなくだらない会話のおかげか、3時間も浪費したとは思えなかった。



太陽がキラキラ輝く地平線まで続く海。

なんてのを想像するが、関東の海はそんなにきれいじゃない。


釣りをしているときは

「よくこんなところ泳げるよな~」


なんていうものの、

だがそれでも砂浜に立てば海に吸い込まれてしまうのは不思議だ。


僕は奈緒に目移りをするわけでもなく、

彼女との時間を、体験を、共有したいだけである。


きっと彼女も同じ気持ちだろう。

砂浜に埋められて空を眺めながら透かしていた。



時刻は16時を超えた。

まだまだ明るい。


だがこのままだと延々と遊んでいられるのかもしれないのも事実だ。

だが、踏ん切りをつけて早めに切り上げるのが僕たちのデートスタイルだ。


「やっぱり泊まりで来たいよな~」


砂まみれ潮まみれになった身体を温泉できれいに流して、

二人でコーヒー牛乳を飲みながらマッサージ機に座る。


「頑なに守っている姿を見ているから、

君への両親からの評価は高いはずだよ」

奈緒はお泊まり禁止である。

と言いながらも2,3度お互いの家に泊まったことはある。


「まあわかるんだけど、

でも疲れちゃって日帰りは辛いなと思うときが結構あるんだよ」


運転するのは当然僕だ。

眠くて危険を感じる時もある。


「じゃ、眠くなっちゃう前に帰ろうか」

奈緒は立ち上がり温泉を後にした。



帰りの車中、すっかり日が沈みそうな空を見ながら、

奈緒はスタフルの曲の鼻歌を歌っていた。


「奈緒、それキーが2つほど低い」


しまった。つい言ってしまった。


「はいはい始まった、幸の音程チェック」


さっきまで上機嫌だった彼女を歪ませてしまった。


「あ、いやゴメンゴメン。ぼーっとしててなんか喋っちゃった」

「ふーん」


むすっとした彼女の顔を横目に見て、

「そういやさ、この間見たアニメあるじゃん?」


そのアニメの監督のことについてうんちくを語って逸らした。



奈緒の実家がある市までたどり着き、

次回のデートの打ち合わせと節約を兼ねて、

安くて有名なイタリアンレストランに来た。


「楽しみだね、ゲームミュージックライブ」


頼んだサラダが運ばれてきた。

店員さん、取り皿はいらんよ、

それ、彼女専用だから。


「まさか当選するとはびっくり。

僕はね、ライブはやったことはあるけど、行くのは初めてなんだ」


他人の音楽に興味が無いのかもしれない。

いや、好きなアーティストは当然いる。

そのライブに行こうという発想にはなったことが無い。


それは儚く遠い夢の世界だからかなのか、

解散しているバンドが好きだからなのかはわからない。


そりゃ当然行けることなら行きたい。

だけど、応募するというまでの発想にはたどりつかない。


「君よくギターが趣味とか音楽好きだとか言えるね」

図星である。


明後日は奈緒とライブに行く。人生初ライブ。

「僕も自慢のセミアコを持って行ったほうがいいだろうか」


「持っていきたければどうぞ。ただし離れて観てね」

「ウケ狙いだったんですが…あはは」


こんなやりとりをしている間に23時を過ぎた。


「やばい、門限近いね、そろそろ行こうか」

僕たちはファミレスを出た。


奈緒の両親は結婚前のお泊りがNGなので同棲はもっとNGだ。

一人暮らしの奈緒だが、

僕は堅実に彼女の部屋に転がり込んで泊まっていくという事はしない。


今はお盆休みのために昨日から実家に帰っているので、

門限の日付変更線を超えないように彼女を送り届けた。



彼女の実家から僕の実家までは35分。


半分以上、奈緒に侵食されているカーオーディオ。


僕だけのプレイリストにちゃちゃっと変えて、

眠気眼を擦りながら安全運転で真っ暗な真夏の夜道を駆けた。


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