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6/7

ひとりで味わう

 いやあ。

 創作っていいね。


 ◆


 はい、ど~も。

 チーム・ミスリルの、瑠璃、ちゃん、です!


 さてさて、二本読んでまいりましたが。

 笑って終わらせたらもったいないんだよね。


 だってこれ、どっちもラヴィなんだよ。

 モデルは、同じ。

 なのに、見えてるものが、全然違う。


 まず一本目。

 帝国の守護者、怒れる兎の聖戦記――正義の咆哮と七色の奇跡――


 はい。

 もうタイトルからして強い。

 強いっていうか、盛り盛り。

 怒れる兎。

 守護者。

 聖戦記。

 正義。

 咆哮。

 奇跡。


 全部乗せか。


 いやでも、嫌いじゃない。

 こういうの、読んでて元気出るんだよね。

 マヂかっけぇし。


 ただ、読み進めるとわかる。

 これ、帝国がラヴィをどう見たいか、の話なんだよね。


 砂漠では大蠍を処刑する英雄。

 火山では竜を従える焔の舞手。

 海では主を乗りこなす騎手。

 最後は、魔王を討つ帝国の鉄槌。


 うん。

 わかりやすい。

 めちゃくちゃわかりやすい。


 つまりこれ、ラヴィを

 怒りを正しく使える強者

 として描いてるんだよね。


 帝国が欲しいの、そこなんだよ。

 怒りがある。

 でも、その怒りは帝国の正義と一致している。

 だから、怖いけど安心。

 強いけど従う。

 そういう英雄像。


 ここ、すごく帝国っぽい。


 大蠍は処刑される。

 竜は従えられる。

 オルカは僕になる。

 最後には、後天的例外種の精鋭軍団まで率いる。


 全部、

 帝国の怒り

 として整理されてる。


 ラヴィ本人の怒り、じゃない。

 帝国の正義そのものだ、って言い切ってるあたりが、かなり大事なんだよね。


 つまりこれ、

 かっけぇ英雄譚の顔をしてるけど、

 実際には、怒りの国有化なんです。


 うわあ。

 嫌な言い方した。

 でも、たぶんそう。


 帝国は、ラヴィの強さを見てる。

 でも、その強さをそのまま見てるんじゃない。

 帝国にとって都合のいい怒りへ組み替えてる。


 だから、一本目は、

 ラヴィが何者か

 というより、

 帝国がラヴィを何にしたいか

 の物語なんだよね。


 で。

 二本目。


 虹の架け橋。


 タイトルの時点で、もう違う。

 怒れる兎じゃある。

 でも、橋なんだよね。


 ここが、まずすごくいい。


 だって、一本目の帝国英雄譚だと、

 ラヴィは

 討つ者

 なの。

 壊す者。

 従わせる者。

 勝つ者。


 でも、二本目は違う。

 傷つきながらも立ち、

 立ちながらも笑い、

 笑いながらも飛んだ。


 これ。

 めちゃくちゃいい。


 怒ってる。

 でも、怒りだけじゃない。

 そこへ、

 傷つくこと

 立つこと

 笑うこと

 飛ぶこと

 まで入ってくる。


 つまり、こっちはラヴィを

 力

 じゃなくて、

 つなぐもの

 として見てるんだよね。


 蠍を倒した。

 終わり。

 じゃない。


 ドラゴンに乗って戻ってくる。

 蠍の殻が火山の国へ渡る。

 火山の国にイシュの民の娘タナが生まれる。

 砂漠と火山が結ばれる。

 人はようやく、イシュの民は隣人だと気づく。


 うわ。

 ぜんぜん違う。


 一本目が、

 強さを帝国の正義へ回収する話

 なら、

 二本目は、

 怒りと優しさが重なって、人と人が結ばれる話

 なんだよね。


 しかも、最後がまたいい。


 兎の結ぶ繋がりは、家へと帰す橋なのだ。


 ここ。

 ここなんだよなあ。


 前回まで、

 帰りたい、の方が強い

 とか言ってたじゃん。


 この話、そこに繋がってるんだよね。


 帝国版だと、ラヴィは前へ進む英雄なんだよ。

 討つために。

 従わせるために。

 魔王を屠るために。


 でも、虹の架け橋の方では、

 ラヴィは

 帰す者

 なんだよね。


 人を。

 縁を。

 たぶん、故郷へすら。


 うわあ。

 こっちの方が好き。

 いや、帝国版の、だれやねん感もめっちゃ好きなんだけど。

 でも、好きの質が違う。


 で、ここでおもしろいのが、

 どっちも盛ってる

 ってことなんだよね。


 帝国版は、もちろん盛ってる。

 帝国のために、めちゃくちゃ盛ってる。


 でも、虹の架け橋も、別に

 ありのままドキュメンタリー

 ではない。

 ちゃんと盛ってる。

 きれいにしてる。

 橋にしてる。


 ただ、その盛り方が違う。


 帝国版は、

 怒りを軍事に変えるために盛る。


 虹の架け橋は、

 怒りを縁に変えるために盛る。


 この差が、たぶんいちばんおいしい。


 だから私は、ここで思いました。


 ラヴィって、

 怒れる兎

 ではあるんだよね。

 そこは両方とも一致してる。


 でも、

 その怒りが何に見えるか

 は、見る側で全然違う。


 帝国には、

 正義の鉄槌に見える。


 砂漠や火山や海を渡ってきた人たちには、

 橋に見える。


 つまりこれ、

 ラヴィ本人の話でもあるけど、

 同じラヴィを、人がどう物語るかの話でもあるんだよね。


 うわあ。

 好き。

 めちゃくちゃ好き。


 だって、英雄譚って、そういうものだもん。

 本人そのものより、

 誰が何を見たか

 が混ざる。

 だから、だれやねん、にもなる。

 でも、そのだれやねんの中に、

 見た人の本音が入る。


 帝国は、怒りを欲してる。

 だから、怒れる兎を描く。


 タナの側は、繋がりを見た。

 だから、橋だったと語る。


 どっちもラヴィなんだけど、

 どっちも、そのまんまラヴィではない。


 いやあ。

 創作っていいね。


 というわけで、今回の感想。


 一本目。

 マヂかっけぇ。

 でも、帝国の欲望がめちゃくちゃ乗ってる。


 二本目。

 うはは、だれやねん。

 でも、こっちはラヴィの優しさまで橋にしてる。


 そして、その両方を並べて読むと、

 ラヴィという人が、

 怒りだけでは全然足りない

 ってことが見えてくる。


 怒れる兎。

 たしかにそう。


 でも、橋でもある。


 この二つが並んで立ってるの、

 かなり好きです。


 いやあ。

 かっけぇし。

 だれやねんだし。

 でも、どっちもちゃんとラヴィに触ってる。


 可愛い兵法書の次にこれを読むと、

 イシュの民を愛でたい欲が、だいぶ満たされます。


 というわけで。


 マヂかっけぇ。

 でも、橋なんだよね。


 そこが、たぶんいちばん良かったです。

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