表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結御礼】アオハル転生! 告ってフラれたあの子が「主さま」 ~TS女軍師になったオレは可愛がられてこき使われながら、彼に天下を取らせます~  作者: 香坂くらの
サニー……!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/41

036話 魔法少女二人

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


◇ヴォルカン・マッツ視点


 あれ? よく目が見えないわ。視界が真っ赤よ。

 魔装飾器『ヒラグモ』は、もはや私の右の指を、手を、腕を焼き、骨まで侵食していた。


 ……おかしいわ。何かが、足りない。


 これまでに集めた膨大な燃料も、今まさに搾り取っている王都の人間どもの魂も、所詮は「安物」に過ぎない。ガソリン車に泥水を注いでも、エンジンは爆ぜるだけなのと同じことね。

 異世界間の門を抉じ開けるには、もっと純度の高い、超常的な理を宿した「本物の燃料」が必要なのよ!


 目前で肩を寄せ合うサニー、メガネインテリ、そしてノヴァンを睨みつけた。結局最後まで奴らの現世での本名すら知らないままだが、お互いさまだし、どうでもいいし、そもそも興味無い。


「……あなたたちの魂なら、きっと上手く行くのよ。三人まとめて煮詰めれば、必ず成功するの」


 右腕をすっかり喰われた私は、なりふり構わず左手で、ヒラグモの安全弁を引き抜いた。

 修道院の床が、壁が、空間そのものが、バキバキと音を立てて砕け始める。

 死ぬのなんて、ちっとも怖くない。あの日、校舎の非常階段から突き落とされたあの瞬間に、私の心はいっぺん、完全に死んでるから。


 ――ただ、今は死ねないの。

 あの人に絶対、絶対、会いたいから。会うために、生きて日本に帰らなくちゃならないから。


◆◆


「うう、くそっ。これ以上は……ッ!」


 イリアスの重装盾が、ヴォルカンの放つ重力波に削り取られていく。主さまが先読みの感覚を研ぎ澄ませ、ギリギリのところでオレたちを牽引してくれているが、空間そのものが崩壊したら、もう逃げ場なんてものはない。


「ヒューゴ! 野営地にあるマクラ、今すぐここに取り寄せる方法はねぇのか! アレがあれば、ヴォルカンの武器を黙らせられるんじゃねぇのかよ! それかまた時戻りで……」


 オレの叫びに、ヒューゴは苦虫を噛み潰したような顔で、自分の懐を強く押さえた。


「……サニー、嘘をついていて悪かった。野営地に置いてきたっていうのは嘘だ。……そのマクラは、ここにある」


 ヒューゴが懐から取り出したのは、もはや形すら留めていない、ボロボロに裂けた布切れだった。


「な……ッ!? オマエ、それ……!」

「時戻りのあと没収してから実は肌身離さず持っていた。……これはもう、ただの布じゃない。時戻りの莫大なエネルギーを吸い込みすぎた『魔装飾器』と言っていい。迂闊に起動すればヴォルカンの魔装飾器がどう干渉するか分からなかったから隠してたんだが……イチかバチか、背に腹は代えられない!」


 その瞬間、ヒューゴが投じた「マクラ」の残骸に反応し、ヴォルカンの魔装飾器が、獲物を見つけた猛獣のように跳ね飛び、不気味な咆哮を上げた。


「ああ! それよ! それが、私の探していたとっておきの『鍵』だったのね!!」


◆◆


◇ノヴァン・ド・オルドーの視点


 ヴォルカンのヒラグモが、ヒューゴ君の持つ「枕」に激しく共鳴した。

 制御を失った魔力が逆流し、修道院の床がのたうち爆ぜる。ヴォルカンは、ヒラグモが放つ暴走エネルギーに振り回され、崩壊した床の縁から真っ逆さまに突き落とされようとしていた。


「あ……」


 ヴォルカンの顔から、初めて狂気が消えた。

 それは、ただ死を待つ者の空虚な瞳。


「危ないッ!!」


 私は、考えるより先に、崩れゆく床の縁へと走り出していた。

 奈落へ吸い込まれようとするヴォルカンの、今にも千切れそうな細い手首を、私は両手で、全力で掴み取った。


「な……離しなさい! あなたまで落ちるわよ!」

「離さない! だって同じ日本人だろ。独りにはさせない!」


 ポカンとしたヴォルカン。

 ――その瞬間、ヴォルカンの記憶の中の「誰か」と私が重なった。理屈じゃなく感覚だ。


 かつて非常階段で、突き落とされる彼女にただ一人、手を伸ばした少年。

 もちろん私はそんな彼女の過去など露ほども知らない。ただ、彼女を繋ぎ止める私の手のひらから、かつて経験したことのないほどの、とても切なくて孤独な、寂しい熱さが伝わってきた。私は彼女の身体を抱えて引き上げた。


 ヴォルカンの瞳が微かに揺れ、私を見つめる。

 だが、言葉を交わすことはなかった。


◇◇


 ヒューゴの手から離れたマクラの切れ端が、ヴォルカンの魔装飾器に接触した、その瞬間だった。

 まばゆい白光が修道院を包み込んだ。

 その魔装飾器――兵器は、ムリヤリ帰還の門を()()に据えた。説明は不要だった。それを通り抜けたら死ぬ。そうして想像を絶する地獄をくぐり抜けて、日本で再び生を得る。そう理解できた。でもそれが百年先か、千年堪えなければならないのか、そこまでは分からない。


 惜別の挨拶などはなかった。ヴォルカンは、ノヴァンさまの抱擁を自ら振りほどいた。

 まるで、絞首台に登った罪人が、何一つ言葉を残さず淡々と刑の執行を受け入れるかのような、あまりにもあっけない幕引きだった。

 彼女の身体は、白い光の渦の中に吸い込まれるようにして、この世界から完全に消失した。


 直後、耳を刺すような静寂が訪れ、空間の歪みは嘘のように収束していった。


 あとに残されたのは、崩壊した修道院と、静かに夜風に揺れる銀髪のオレ、そして主、ノヴァンさま。足元には、役目を終えて静かに横たわる「それ」が落ちていた。


「……主さま。見てください、これ。元に戻ってますよ……?」


 拾い上げたのは、あろうことか、ボロボロの布切れから完璧な「マクラ」へ、形状再生した物体だった。ヒューゴがベアトリクスさんの肩を抱き、がれきの陰から顔を出す。眼鏡を直しながら、オレの手から恐る恐るそのマクラを引き取り、鼻先を寄せる。


「……うーん。似て非なるものだけど、ニオイは同じだ。ボクの愛するマクラだよ」


 その言い方にややげんなりする。

 そのマクラ、表面に描かれたプリントは、異様な変貌を遂げていた。


 以前は、時を戻すことを暗示するように、魔法少女が空中にジャンプしているポーズだった。それが今は、ヒラグモと融合した影響か、少女が家のドアを開けて「ただいまー」と帰宅するポーズへと描き変わっている。しかも、キャラクターが一人増えて二人になっていた。新しく加わったキャラの方は、どことなくヴォルカンの面影を感じさせる黒い衣装で、不敵な笑みを浮かべた魔法少女だった。


「……終わったのか?」


 オレの問いに、主さまが小さく頷き、空を見上げた。数条の陽光が、建物の隙間をくぐって真横から強烈に差しつけている。雲はひとつもない。


「……ああ。ヤツは何とか帰ったんだと思う。……彼女を知る人が待つ場所へ」


 崩壊した修道院の周囲には、騒ぎを聞きつけた人々が集まり始め、口々に主さまを指し騒いでいる。


「こらお前ら、正真正銘ホンモノの辺境伯さまだぜ! 頭が高ーい。――ま、いっか」


 ヴォルカンは消えた。

 だが、王宮を振り仰げばそこにはまだ、アレクシスという拭いきれない因縁が残っている。


【最終回予告SP】


「みんなー、サニーだよっ! ……って、え? これ……最終回の予告!? ちょ、待て待て待てっ、オレまだ主さまとイチャ――じゃなくて!!」


コホン!! 最後まで読むからな!?


「戦いの果てに訪れた、新しい世界――」


……ああ。

やっと、ここまで来たんだな。


「王は去り、民が選ぶ未来へ――」


主さま、ほんっと。……とんでもねぇことやったよな……!


「時代は動く。人の想いが、世界を変える――」


って誰だ、今のナレーション!? 台本に無いだろそれ!!


「それぞれが選ぶ、帰る場所――」


帰る場所、かぁ……。


オレは――。

やっぱ主さまの隣が、いい。


……なんてなー!!

……え? はあぁ? ……うっさい、照れ隠しじゃねーし。


「そして、物語はひとつの終わりへ――」


終わりじゃないって!! ここからだしっ!

オレたちの毎日は、これから始まるんだからな!!


――って、うわ。みんな来た!?


「ノヴァンさま、ヒューゴ、イリアスさま、シリル。みんな、お疲れさまです!」

「……サニー、あいさつはいい。そろそろ締めろ」

「任せろ、主さまっ!!」


次回、最終回――

『ただいま、と言える場所』


ぜーったい、見逃しちゃダメなんだからねっ!

――愛のゴールに弾丸シュートォ! そして、その先へっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ