22.舞台裏(レオンハルト視点)
俺がエミリアと婚約するという話はどこかからか漏れたらしい。
まだ、彼女も知らないのに。
ランガスター公の領地に置かれた箱が破壊された事はブリスギン男爵側にも知られているだろう。
ルーカスも王太子候補から外れた。
計画通りに進んでいないことに焦って、とんでもないことをしてくる可能性がある。
気をつけないと。
そう思っていた矢先に、マーカスからエミリアが王都に戻ってくると連絡があった。
一応、護衛はいつもより多く付けるが、心配だからエミリアを途中まで迎えに行ってやって欲しい。
そんな連絡があって、慌てて迎えに行ったのだ。
迎えに行って、本当によかった。
エミリアは賊に襲われていたのだ。
なんとか、間一髪間に合った。
エミリアは確かに魔法が得意で上手く操るが、剣の腕はさほどじゃない。公爵家の令嬢にしたら、それでもすごい戦闘力だが…
それでも!何故馬車の中で大人しく待っていられないのか!
魔法が使えるのだから、馬車の中から味方の援護をすればいいんじゃないか!
などなど、言いたいことはあるが、実際、敵が多くて、馬車近くまで攻め入られているのだから、外の方が動きやすいのだろう。
仕方ない。
今回は何も言うまい。
とにかく、無事でいてくれたことを感謝する。
賊は拘束したので、後でじっくりと話を聞き出す予定だ。
エミリアと同じホテルに泊まって、話があるからと部屋を訪ねた。
どうしても、ゆっくり話したかったから、エミリアの部屋を訪ねたが、ちょっと不味かったなと部屋に入ってから思った。
エミリアは入浴を済ませた後らしく、石鹸のいい香りを漂わせていたのだ。
手を伸ばしたくなる気持ちをなんとか抑えて、事件の話をする。
エミリアはブリスギン男爵に狙われてるなんて思いもしていなかったようだ。
彼女の中では婚約破棄は終わったことなのだ。
そう聞いて、ちょっと安心した俺はエミリアにプロポーズした。
彼女は頷いてくれた。
この時点ですでに、外濠ががっちり埋まっているのは、まだ秘密だ。
「マッケンニー子爵と繋がったぞ」
ネイトが賊を締め上げて、依頼主を突き止めた。
「やっと、尻尾を出したか」
ブリスギン男爵と組んでいる男。
マッケンニー子爵は第2王妃の兄だ。
「レオンとエミリア嬢が結婚するって聞いて、焦ったんじゃないか」
「俺が王位を望んでるなんて一言も言ってないのに、何を焦ってるんだかな」
「そう思わせてるんだろう」
ネイトはちょっと呆れたような顔をした。
「英雄と名高いレオンとランガスター公爵の娘のエミリア嬢が結婚するとなれば、穏やかじゃいられないだろ」
「今回の襲撃が失敗した以上、奴らには後がない。次に何かことを起こすなら、次の夜会だろうな」
久しぶりに着飾ったエミリアはとても綺麗だった。
普段はちょっと幼い表情を見せることがあって、それがまた可愛いのだが、社交界でのエミリアは嫌味や妬みをさらりと躱し完璧な令嬢となる。
どちらのエミリアも素晴らしい。
エミリアはちょっと離れた隙に変な男に絡まれてた。
箱に魔法陣を描いた奴だ。
テラスでの騒ぎはこいつの仕業だ。奴の狙いは光魔法だと分かっていたから、エミリアが人前で箱を破壊するのを止めた。
そしたら、ニーナが出てきた。
みんなの前で、聖魔法を使って自分の価値を高めようとしたみたいだが、魔力がショボ過ぎてお話にならない。
こいつはアホなのか?
ルーカスはこんなのの何処がよかったのか、理解できないな。
とにかく、瘴気を止める為に箱を氷漬けにして、マーベリーのところに運ばせた。
ニーナは事情聴取という名の捕縛だ。
エミリアに箱を破壊してもらうと、案の定、ジュクトが現れた。
光魔法に執着してたから、現れると思ってた。
魔法は得意だが、普通の戦闘力の弱い魔法馬鹿なので、ネイトにあっさり捕まったのは良かったが、魔物を召喚されてしまった。
熊のような魔物は体が硬くて、なかなか倒せない。
すでにふらついてるエミリアに逃げろって言ったのに。
無茶ばかりする我が婚約者は、残っていた魔力を使い切って光魔法を発動させた。
心配するこっちの身にもなって欲しい。




