21.王都にて(レオンハルト視点)
「王都に戻って、陛下にエミリアとの結婚の許しを得てこいよ。ついでに父上にも」
マーカスは腹黒い感じで笑った。
「何を突然言い出すんだ」
レオンハルトは眉間を押さえた。
「ん?いいの?ルーカス殿下との婚約がなくなって、父上のとこにエミリアとの縁談の申し込みが殺到してるらしいよ。今はまだ父上が婚約破棄されたばっかりだからって話を止めてるけどね」
ニヤニヤ笑いながら言うこいつは本当に人が悪い。
それにしても、やっぱりエミリアは人気の高い令嬢らしい。
公爵家の令嬢で優秀な上、人柄もいいし、おまけに容姿も整っている。
そりゃ、みんな放っておかないか。
でも、魔物を嬉々として狩りに行き、あんなに生き生きとしているエミリアは王宮で見た時より何倍も魅力的だ。
昔見た凛とした背中を思い出す。
他の誰かのものになるのは…嫌だな。
「早くしないと、陛下がマキシター殿下とって言いかねない」
マーカスがさっきまでのニヤニヤ笑いを引っ込めて、少し憂鬱そうにしている。
「そうだな。あの白い炎、知ったら放っておかない」
エミリアをまたあの窮屈な王宮に閉じ込めたくはないし、誰かと結婚するのを指を咥えて見ていたくはない。
「分かった。一旦、王都に戻る」
絶対、エミリアを手に入れようと、決意をすると、マーカスはそれを察したのか
「うん、よろしく頼むよ」
珍しく素直に頭を下げた。
「戻ってきたと思ったら、急にエミリアと結婚したいって、どうしたんだ?」
兄上は急にエミリアとの結婚を言い出した俺を訝しんだ。
「気に入ったからですよ。ルーカスとの婚約は解消されてるし、問題ないですよね?」
エミリアを手放したくないのか、ちょっと渋る兄上に
「戦勝の褒賞を頂けるのですよね?エミリア嬢との結婚でお願いします」
否と言わせないように褒賞に言及する。
「そこまでか。分かった。レオンハルトには今まで苦労をかけたからな。エミリアとの結婚を許可しよう。ランガスター公には自分で許しを得て来い」
苦笑いしながらも、認めてもらえた。
魔法師長のマーベリーのところに行って、あの箱についての調査報告を受ける。
「あの魔法陣は禁忌のもので、恐らく以前、王宮魔法師団に在籍していたジュクト・ヘランクリンが描いたものだと思われます。あいつは魔法馬鹿で1年前禁呪に手を出してクビになっています」
マーベリーは眉間を揉んだ。
「あの箱の破壊はマーベリーでもできるのか?」
「時間をかければできるかもしれませんね」
「難しいと言うことか」
「そうですね」
マーベリーは難しい顔をしていたのを、ところで、とちょっと嬉しそうな表情に変えた。
「エミリア嬢が使ったと言う白い炎、多分、光魔法じゃないかな」
「それだと色々面倒臭いことになるから、暫くはマーベリーが箱の破壊をしたことにしておいてくれ」
レオンハルトは苦々しげに言った。
「了解です。でも、いつか私にも光魔法、見せて下さいよ」
マーベリーも魔法馬鹿だった。
「は?エミリアと婚約ですか?」
ユリウス・ランガスターは驚いて目を見開いた。
「いや、でも、ルーカス殿下との婚約が破棄されたばっかりなのに」
レオンハルトは困惑するユリウスを説得すべく、言葉を重ねる。
「早く話をまとめておかないと、また、エミリア嬢は王家に縛られることになります」
「それはどういうことですか?レオンハルト殿下も王家の一員ですよね」
「今はね。わたしは結婚と同時に臣下に下る予定だよ。ところでエミリア嬢は光魔法が使えるのを知っているか?」
ユリウスは驚き過ぎたのか、暫し固まってしまった。
「エミリアが?まさか…」
「そのまさかです。領地の森に置かれた箱を破壊したのはエミリア嬢です。あの箱は禁忌の魔法陣が描かれていて、普通には破壊できない。光魔法だから、出来たことです」
「陛下に知られると、その力を引き入れるためにまた王子の婚約者になるってことですか」
「恐らく、そうなる。わたしならエミリア嬢を守れる」
「エミリアが殿下と結婚していれば、レオンハルト殿下が王位を継ぐことになるんじゃないんですか」
ユリウスの懸念にレオンハルトはニヤリとして言った。
「陛下には、エミリア嬢との結婚は戦勝の褒賞として認めてもらった。おいそれとは覆せない。
それから、これはまだ公にはされてないが、いずれ隣国の王女がヴィクターに嫁いでくる。
もちろん、王太子としてのヴィクターにな」
ユリウスはため息を吐くと
「完全に外堀が埋まってるじゃないですか。分かりました。エミリアがいいなら認めます」
呆れたように言った。
「エミリアには今まで苦労をかけたので、幸せにしてやってください」
「エミリア嬢のことはわたしが守り、幸せにする努力をします」
レオンハルトは未来の父親に誓った。




