17.婚約発表
王宮へと向かう馬車の中、レオンハルトとエミリアは向かい合わせで座っていた。
「夜会が始まる前に兄上との謁見がある。一緒に来てほしい」
「はい」
微笑を浮かべ頷いたエミリアだったが、心の中では不安に揺れていた。
エミリアはルーカスの婚約者だったので、陛下とは何度も会っている。
でも、ルーカスに婚約破棄されて、今度はレオンハルトの婚約者として会うのだ。
陛下はどう思われているのかしら?
レオン様は陛下の許しは得たと言っていたけど、内心はどう思われてるのか…
不快に思われてないといいんだけど…
エミリアの不安を察知したレオンハルトはサッとエミリアの横に移ってきた。
「大丈夫だよ、エミリア。兄上もエミリアの幸せを願ってる」
安心させるように手を握った。
「それから、今日の夜会で俺たちの婚約が発表される。今日は俺から離れないで」
握る手にぎゅっと力を込め、エミリアの顔を覗き込んだ。
輝く金の瞳に間近で見つめられて、今まで不安でぐるぐる回っていた思考が停止してしまった。
真っ赤になって、こくこくと頷く。
「あっあの、ブリスギン男爵のことはどうなったのですか?」
恥ずかしくなったエミリアは強引に話を変えた。
ずっと気になってはいたのだ。
レオンハルトのプロポーズですっかり頭の隅に追いやられていたが。
「背後にいる奴を誘き出す為にまだ泳がせてるんだ」
レオンハルトは不満そうに眉根を寄せた。
「あの魔法陣を描いた魔法師もまだ捕まってない。禁呪を使うような危険な奴だ。くれぐれも知らない奴について行ったりしないようにしてくれよ」
エミリアはレオンハルトの過保護さ加減がなんだかおかしくて
「小さい子じゃないんだから、知らない人になんかついて行かないわよ」
クスクス笑った。
「お久しぶりに御座います。陛下、王妃様」
王族の控室に案内されて、久しぶりに国王と王妃の前に立った。
「エミリア、ルーカスが申し訳ないことをしたな」
頭を下げる国王陛下に、エミリアが慌てた。
「いえ、もう気にしないで下さい。今ではこれでよかったのだと思っています」
「そうか。エミリアが娘になるのを楽しみにしていたのだが、義妹になるのも悪くないか」
陛下はレオンハルトをチラリと見ると、ニヤリと笑った。
「レオンハルトがエミリアと結婚したいと言い出した時は驚いたよ。この年まで浮いた噂一つなく剣を振るうことしかしてこなかった奴だからな」
揶揄うような口調にレオンハルトの眉がピクリと動いた。
「国民の為に戦ってこられたのですもの。感謝致しております。レオンハルト様と婚約できて嬉しく思います」
頬を染めて言うエミリアを国王と王妃は微笑ましそうに見つめた。
「そうね、あなたにはレオンハルトのような人の方が良かったのかもしれないわね。幸せになってね、エミリア」
王妃に優しく抱きしめられた。
「これからは義姉になるのだから、何でも相談してね」
「ありがとうございます。王妃様」
今日は王族であるレオンハルトと入場するので、国王陛下の直前に会場に入る。
レオンハルトとエミリアが揃って入場すると、会場中がざわめいた。
ルーカスとエミリアの婚約破棄の噂はみんなの知るところだったが、レオンハルトとの関係はまだ誰も知らなかったからだ。
第3王妃と第3王子のヴィクターが続いて入る。
国王と王妃が入場すると、漸くざわめきがピタリとおさまった。
国王の開会の言葉の後、レオンハルトとエミリアの婚約が発表された。




