14.領地での彼女(レオンハルト視点)
ランガスター公と話をした後、早速、急ぎの政務を片付けて、ランガスター家の領地エクスニアに部下四人を連れて旅立った。
くだんの森に行ってみると、彼女は森の入り口に銀色の髪を三つ編みにして王宮で見る淑女の鑑と言われた彼女とは別人のような白いシャツにベージュのベスト、焦茶色のズボンを合わせたシンプルなパンツスタイルで立っていた。
なんの飾りもなく、すっと立っているだけなのに、彼女は光り輝いているみたいだった。
話してみると、王宮での完璧な淑女だった彼女よりも可愛らしい女の子だった。
公爵令嬢なのに自ら魔物討伐に行きたがるなんて、変わってる。
だけど、それが生き生きしていて彼女の本質はこれなのだなと思わされる。
魔法陣が描かれた怪しい箱が魔物大量発生の原因だった。
この箱には攻撃を弾く魔法陣が組み込まれていて、普通には破壊出来なかった。
しかし、彼女の剣に纏った珍しい白い炎は箱の破壊ができた。
あの瘴気の塊だった箱はただの箱になっていた。
「エミリア嬢がこんなに活動的だったなんてね」
ネイトが心底意外そうに言った。
彼女は白い炎を出した後、倒れてしまったので、俺が彼女を抱えて運んでいる。
ランガスター家の騎士のケインが自分が運ぶって言っていたが、無防備に眠る彼女を他の誰かに任せる気にはなれなかった。
「ルーカスとの婚約で無理をしていたんじゃないか?元々エミリア嬢はこういう女性なんだろう」
「ふーん、レオンはよく分かってる感じだよね」
ニヤニヤしながら言うネイトにちょっとムッとする。
ネイトは幼なじみで気安い仲なだけに遠慮というものがない。
「それにしても、あの白い炎は何だろうね」
「瘴気が一瞬にして消えたな」
世間にそのことが広まるのは、よくないだろうな。
今は、聖女の力でしか瘴気が祓えないと言われている。
もし、彼女が瘴気を祓える力があるとするなら、王家は彼女を逃さないだろう。
やっと王家の呪縛から逃れたのに…
「今はまだ何も分からないし、他言無用だ。箱に描かれた魔法陣と同様に魔法師長には内密に調べてもらおう」
魔力を使い切った彼女が目覚めたのは1日半経った頃だった。
目覚めた後、俺が抱えて戻って来たのを誰かに聞いてなのか、顔を赤らめ動揺して部屋に入って来た彼女はこの上なく可愛らしかった。
この腕に閉じ込めてしまいたい程に。
ランガスター公の領地でもう一つの箱が見つかった。
他の場所では今のところ、見つかっていないし、ランガスター公を狙った物なのだろう。
二つ目の箱も彼女の白い炎で破壊できた。
倒れるのを分かっていてやらせたくはなかったが、他に方法がない。
「ランガスターの森に魔物が大量発生して、利益を得るのは誰だと思う?」
マーカスが難しい顔をして言った。
マーカスは俺が戦場に行くまで俺の側近候補だったから、幼い頃から知っている。
ネイトと共に幼なじみだ。
「何人かいるとは思うが、時期と魔物を使う意味を考えると、ブリスギン男爵か」
「男爵の娘のニーナは聖属性の魔法が使える。瘴気を祓って我が家に恩を売る気だったんじゃないのかな」
「そうだな。ルーカスを籠絡するだけでは王妃の座は転がってこない。事実、ルーカスは王太子候補から外れた」
「ランガスター公爵を敵に回さず、恩を売ることでルーカス殿下の後ろ盾を続けさせるつもりだったんじゃないかな」
マーカスは昔から頭脳派だった。
彼の導き出した答えがそれなら、その確率が高いだろう。
「大体、瘴気を祓ったからって箱を破壊しないとその内また森は瘴気に覆われる。エンドレスだ」
マーカスが眉間に皺を寄せた。
「そう考えると、エミリア嬢に箱が破壊できたのは僥倖だったな」
「だけど、そのせいでエミリアを不幸にはできない」
苦い顔をしていたマーカスが何を思いついたのか、にやりとした笑みを浮かべた。
嫌な予感しかしない。
マーカスは腹黒なのだ。
「レオンはエミリアのこと結構、気に入ってるよね?王都に戻ってやってほしいことがあるんだけど」




