11.犯人の狙い
目覚めると、辺りは明るく、昼頃のようだった。
すぐにアメリが気づいて寄ってきた。
「お嬢様、どうぞ」
水差しからコップに水を注ぐと手渡してくれる。
「ありがとう」
エミリアは少し掠れた声で礼を言って受け取った。
「今度はどれくらい寝てた?」
「1日ですよ。お昼ご飯はお部屋でお召し上がりになりますか?」
「お願いするわ。ところで、箱は今回もちゃんと破壊できたのよね?」
気になっていたので、早速確認する。
「大丈夫ですよ。今回も無事、破壊できています」
「よかったわ。これで魔物の被害もなくなるわね」
エミリアがホッとして笑顔になったところへ、アメリが更なる報告をした。
「今回もお嬢様をここまで運んだのはレオンハルト殿下です」
え?
なんで?
「で、でも、お兄様が一緒だったんだから、お兄様じゃないの?」
慌ててエミリアは言ったが、兄はどちらかと言うと文官タイプであってそんなに逞しい体つきではないことを思い出した。
「一応、マーカス様が運ぶと仰ったんですが、途中でギブアップされました」
エミリアはちょっと遠い目をして、兄をもう少し鍛え直そうと心を決めた。
お昼ご飯を摂り、身支度を整えるとマーカスとレオンハルトがいる執務室に向かった。
また、レオンハルト殿下に抱き抱えられたなんて!
エミリアはドアの前でそのことを考えると、真っ赤になって身悶えていた。
いくら力がないお兄様でも途中でギブアップするくらいなんだから、重かったに違いないわ!
他の人に任せてくれたらいいのに!
突然、ドアが開いた。
「どうして入ってこないんだ」
マーカスが呆れたように中に入るように促した。
ちょっと前からドアの前でうだうだしているエミリアに気づいていたようだ。
この間と全く同じ状況に、内心慌てふためきながらも、長年の淑女教育の成果で、なんでもない顔をして
「なんでもありませんわ」
微笑んだ。
ソファに座っていたレオンハルトを見ると心配そうな顔をしてエミリアを見ていた。
「もう大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「とりあえず、座って話をしよう」
促されてレオンハルトの向かいにマーカスと共に座った。
「今のところ、その後の魔物の発生は確認できてない」
「それはよかったです。お兄様、ところで西の森は大丈夫なのですか?」
エミリアはランガスター領の残り一つの森のことが気になっていた。
「西の森では今のところは魔物の異常発生は確認できていないよ」
にこやかだった顔が厳しいものへと変わった。
「でも、警戒は続けるつもりだ。ランガスターの森に魔物を呼び寄せたなんて許せないな。犯人には鉄槌を下さないとね」
いつもは穏やかな雰囲気のマーカスが腹黒い感じの笑みを見せた。
これは絶対怒らせてはいけないお兄様を怒らせたのだと察知したエミリアは顔が引き攣った。
「他の領地にも確認してるが、他では見つかっていないんだ」
「と言うことは、やっぱりランガスター家を狙った犯行だと考えた方がいいですね」
有力貴族であるお父様がどこかで恨みを買っているのかしら?
それにしても魔物を呼び寄せるなんて回りくどいやり方なのはなぜなのか…
気がつくとエミリアが考えに耽っている間に、マーカスが呼ばれて部屋を出て行ったらしく、レオンハルトと二人きりになっていた。
一応、部屋のドアは閉め切ってはいないが。
「あの箱にあった魔法陣について調べる為に、一旦王都に戻ることにした」
「えっ?」
レオンハルトの言葉に俯いてたエミリアは驚いて顔を上げた。
レオンハルト殿下が王都に帰る?
いずれは帰るのが当たり前なのに、エミリアは気が動転してしまった。
レオンハルトは王弟で元々あまり接点があったわけじゃない。
ここで別れたらもう会えないのではないか、不安にエミリアの瞳が揺れた。
それを見たレオンハルトは、はっと驚いたような顔をして、眉尻を下げるとエミリアの頭を撫でた。
「調べがついたら、また来る。それまで、無茶はするな」
優しい言葉にエミリアは黙って頷いた。
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