一兆編 第十二話 ボンバーガールズ
翌日
俺たちはアダムスへと足を踏み入れた。まぁアダムス自体は前にも来たことがあるけどな。あのカジノがあるのはアダムスのなんつったか、ウィートとか言う場所だったな。
ここは違う、でっけぇ壁の向こう、ボーダー地区と呼ばれる場所にいる。そして俺たちの目的地はその更に奥の中央地区、この世界で一番の都市。そのどこかに黒蒸気の拠点があるらしい。
そして俺たちは今、中央に向かう列車の中にいる。窓の外を見ると凄い勢いで景色がすっ飛んでいく。高速鉄道、いわゆる新幹線みてぇな乗り物だ。
「うひゃーーー!!はっやーーーい!!」
「話には聞いたが・・・時速二百五十キロを超える乗り物がこの世にあるとは・・・」
今までこういうのに乗った事の無かったマアヤとコーキのテンションが上がりまくってる。
「遊びに来てる訳じゃねぇんだが?」
「いや、今日は遊びだよね」
俺が珍しくまじめにやろうとしてんのにチアキが横やり入れやがった。・・・まぁ仕方ない。アイドルとかに興味はねぇけど、羽を伸ばすか。
中央に行く目的はもう一つある。何でか知らねぇけどこの世界のアイドルのライブを見に行く事になった。俺全然アイドルとかには興味ないんだよな。誰が推しとか聞かれても、誰がいるのか知らねぇし。
「つーか気になってたんだけどよ、そのアイドルってのは何なんだ?みんなは知ってんだろ?」
「爆破部隊か?そうだな、話せば長いが彼女たちは元中央王国軍の・・・・」
コーキが聞いてもいないことまで詳しく話し始めた。だが意外と興味あるかも、軍からのアイドルってのは確かに新鮮だな。それにそこにも三上が絡んでんのが笑えるぜ。
「へぇ~、因みにコーキの推しは誰なんだ?」
「・・・シャルロットだ」
「お、あんたシャルちゃん推しなんだ!奇遇だな私もだ。いいよねあの子。常に元気ハツラツって感じのまさにアイドルって感じなのに、滅茶苦茶頭いいしね。そう言えばこの間のバケモノの中央襲撃の時に行方不明だったシャルちゃんが駆けつけたんでしょ?かっこいいよね」
「ふ、結構分かっているんだなマアヤ」
コーキは少し嬉しそうだ。にしても、成程な。シャルロットとかいう女ただのアイドルって訳じゃなさそうだ。
確か俺が三上に「お前友達いねぇだろ」って言った時にあいつは「友達はいないけど、僕を分かってくれた親友ならほんのちょっといる」って答えてたな。シャルロットが恐らくそれなんだろうな。
最初は興味なかった俺だが、ちょっと興味が出てきたな。
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中央地区 中央総合駅
「ふぅー!!着いた着いたっと」
俺は列車から降り背を伸ばした。
「にしても、ここはいっつも人混みだなぁ。今日は一段と多いしね」
チアキがさも見慣れた光景のような感想を述べる。
「くっそ、この金持ちめ・・・」
「今日のライブは復興ライブと言う事もあるからな。無料の観覧席も用意しているらしい。だから混んでるのだろう」
俺たちは人混みを避けながら目的地に向かう。
「因みに俺のチケットは一枚十万する一等席だ、最前列が確保できた」
コーキは口調はいつもと変わらないが、口数が多くなってるな。少し興奮気味だなこりゃ。
「へー、流石にオレのはちょっと後ろだ。まぁライブなんて途中から列関係なくなるからいっか」
チアキのチケットは五列目、これはコーキの思い入れの差だな。まぁ俺はシャルロットがどんな奴か見れればそれでいいから、場所はどこでもいいけどな。
中央地区 王都スタジアム
そして俺たちは会場に着いた。
「うわー物販の方も凄いわね、こりゃ買ってたら間に合わないか」
見渡す限り人だらけ。あんまり俺は人混み好きじゃないんだよな・・・あちこちで警備員が誘導している。それに従い俺たちは番号順に並んでいく。
「なぁなぁ聞いたかよ」
「何を?」
「今日のライブさ、噂じゃ新メンバーが出るって話」
「マジ!?え、めっちゃ期待!!あ、でも俺の推しのシャンデラたそがぁぁ!」
新メンバー?確か三人グループだったよな。新しく四人体制で行くってか。
「さて、そろそろ時間だ、準備は出来た。楽しみになって来たな・・・」
おー、珍しくコーキが笑ってる。それにさっきトイレに行ったと思ったら、なんだあの特攻服。『沙琉露斗 愛!!』と書いてある、あ、それでしゃるろっとね。他にも両手にうちわ。完全にあのいかつい顔が無きゃよく見るドルオタだ。
俺たちはスタジアムに入る。前面にでっかいステージが目に飛び込んできた。ふんふん、雰囲気はいい感じだ。天井のないスタジアムで9万人の収容か。イギリスの新ウェンブリーぐらいか?
そんな事を考えていたら証明が落ち、その後ステージに明かりが集中した。
『どっかぁぁぁぁぁん!!』
「うお!」
急に爆音が響いた。上を見ると至近距離で花火が爆発していた。嘘だろ、この距離で爆破すんのかよ。
『ギャイイイイイン』
その直後、子気味の良いエレキギターの音が鳴り響く。さっきまで誰もいなかったステージにはピンク色のくるんとしたツインテールの女の子がいた。
「ファイヤーーーーワーーークス!!」
今のは恐らく曲名だろう。女の子はギターをかき鳴らし始めた。っておいおい。なんだこの伴奏、滅茶苦茶ロックじゃねぇか。
「いくぞーーーーー!!」
いざ曲に移る直前、女の子は上空に何かをばらまいた。
「へい!!!」
パチン!
『ボゴゴゴゴゴォォォンッッ!!』
「ぬぁ!?」
女の子が指を鳴らした瞬間、上空で何かが爆発した、あの威力、完全に爆弾じゃねぇか!!
「これだ!!これを感じたかった!!」
「噂に聞いてた爆弾によるパフォーマンス!最高だわ!!」
爆破部隊って・・・マジでその名の通りなのかよ。しかし、あんな芸当、相当入念に計算して準備しなきゃ無理だぜ・・・
「みんなーーーー!!今日は私たち爆破部隊のライブのよーーこそーーーー!!ひっさしぶりの登場だけど!!みんな私の事忘れてないよね!!情熱のアイドル!!シャルロット レッドローズ!!今ここに再誕だよーーーーーー!!」
『うおおおおおおおおおおおおおお!!』
会場の熱気が一気に上がった。そうかあいつがシャルロットか・・・
「そしてーーー!私の妹分!!シャンデラ グロリオサ!!」
「みなさん!お、お久しぶりです!!!」
「さーらーにー、私たちのリーダーにして私の姉貴分!!アリア スターティス!!」
「みなさま、ごきげんよう」
「ふぅおおおおおおおおお!!全員揃ったぁぁぁぁ!!」
コーキが嬉しさのあまり踊りだした、これがオタ芸か・・・極めればここまでになるんだな。勢いのあまり衝撃波を感じるぜ・・・
「えー、この間ここの街が襲われて、いっぱい悲しんだ人もいるよね。このライブは亡くなってしまった人たちにも捧げるもの。みんな一緒、みんなが見てる。だから私たちはみんなの為に、みんなが笑うためにここに来た!!みんな!!ここにこれなかった人たちの分も一緒に盛り上げていきましょう!!」
シャルロットは言葉に続き二曲目を始めた。今度はバラードのような少し哀しめの曲、こいつらなりのレクイエムと言った所か。
「ぐす・・・いい歌だねぇ」
マアヤが涙をボロボロ流しながら俺の腕を掴んだ。
「あ、うん・・・」
そこまで泣くか・・・
「ヴォオオオオオオオ!!す゛は゛ら゛し゛い゛い゛い゛!!」
あ、コーキはキャラが完全に壊れたな。男泣きすると思っていたのに、こうなるとは、まぁいい歌声ではあると思うよ?歌唱力も高いし、ちゃんと声も出てる。
「にしても、新メンバーの噂・・・ガセだったのかな、やっぱりこの三人に入れる人物がいそうにない・・・」
チアキは俺と同様だった。特に一緒に盛り上がる事なく噂の検証をやってやがる。そーいやそんな様子はないな。
「さてと、ここでみんなに重大な発表があります」
丁度その時、シャルロットのこの言葉で周囲が騒ぎ始めた。
「私たちはずっと三人でやって来たけど、今日!!ここに新メンバーを迎えて私たちは生まれ変わる!!私たちはアイドルでありながら戦いにも身を置いてきた!!その中で私は、戦友で親友とも呼べる人たちと出会ったの!!そのうちの一人を今日!!ここに迎え入れるわ!!新生爆破部隊の誕生だよーーー!!おいで!!異世界の勇者!!神和住ーーー零羅ーーーーー!!」
・・・・今、なんつった?異世界の勇者?それに
スポットライトがバックヤード手前に写しだされる。そしてゆっくりとした足取りで舞台へと歩いてきた。両肩から髪の毛を下げている淑やかな感じの女の子。
「うっそだろ・・・おい。あいつは・・・零羅じゃねぇか!」
俺はあいつを知っている。屋敷の女の子、俺はそう呼んでいた。通学路にある一つの巨大な家、俺がある日そこを通りがかった時だ。
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回想
「でっけぇ家だよなここ。誰が住んでんだ?」
「イッチー知らないのー?神和住製薬って会社の社長の家だってさ」
「トクよぉ、ググリながらしゃべってドヤるのはどうかと思うぜ?」
トクはスマホで調べながら俺に自慢げに告げた。成程、社長の家ね。俺らとは住んでる世界が違う連中か。
「あーこういう家一回住んでみたいよなー」
「ところが残念、俺しょっちゅうホテルにいるから、スイートルームはお手の物なんだよね~。なんならここレベルのとこ泊まった事あるし」
俺は基本家にいないからな。家は平屋建てでそんな広くねぇから寝にくいし。とは言っても、豪華すぎるのもちと肩がこるから、そこそこぐらいがちょうどいいんだよな。ここに住めって言われたら逆に嫌だわ。
「くそ、このイカサマやろー」
「悔しかったら稼いでみな」
俺はトクとそんな他愛のない会話をしながら学校へと向かっていた、
「あ、ヤベ、忘れ物しちまった。あれ出さねぇと留年とか言われたんだよなチックショー」
「お前、まだ一学期で留年て・・・」
「なぁイッチーの力で何とかしてくれよぉ」
「やーだ、そこは自分で何とかしやがれ」
「ちぇー」
トクはそそくさと帰った。俺は何となく策越しに屋敷を見た。一人の女の子が庭を歩いてるのが見える。
「へ さしずめ。社長令嬢ってとこか。いかにもって服装してやがる」
でもなんだ?あの暗い顔。その時、俺はその子と目があった。
「ご、ごきげんよう・・・」
その子は俺に何故か挨拶をした。にしてもぎこちないな、令嬢ならもっと堂々とむしろ俺を下に見るような感じの奴らばっかりだけどな。少なくとも俺が知ってる奴の中では。
「あぁどうも」
俺はそのまま通り過ぎようとした。だが。
「あ、あの・・・」
「なに?」
そしてまたどういう訳か、俺を呼び止めた。
「あなた、学生さん・・・で、よろしいのですよね?」
「まぁ、そんなとこ・・・てかよ、初対面の奴に何か聞くなら、自分が誰なのか名乗ったらどうなの?」
俺がそう言うとその子は慌てた様子で噛みながら自己紹介した。
「は!す すみませんでした!!わたくし!神和住 零羅と言います。以後お見知りおきを?」
「俺、馬喰 一兆。何で俺に話しかけたんだ?てか、学生かどうかって、あんたは違うのか?」
こいつの言い方まるで学生を知らないような言い方だ。この手の奴らなら名門私立とか行ってるだろうに。
「わたくし・・・わけあって学校にいけないのです。それに滅多に外にも出られませんから、今日何とか許可を得て外に出たら、初めて制服を着た方を見かけたのでつい・・・」
なんだそりゃ、どこぞの囚われの姫様みてぇな奴だな。ま、俺は勇者じゃねぇからそこには首は突っ込まないけど。
「制服がそんなに珍しいか?」
「制服は知ってますけど、それをこの本みたいに着こなしてる人を初めて見たもので・・・」
その子は照れくさそうに一冊の本を俺に見せた。何か小難しい小説かと思ったら。
「ク〇ーズって・・・お前、その歳で何つーもん読んでんだ・・・」
某有名なヤンキー漫画だった。なんだこの女・・・それにさっきに比べて目が輝いてんぞ。
「これはわたくしの為に執事の禅が下さったもので・・・」
「お嬢様!!どこにおいでですか!?」
どこかからこいつを呼ぶ声が聞こえる。恐らく今の執事だろう。
「行った方がいいんじゃねぇの?」
「そうですね・・・でも、満足です。本物のヤンキーに会えたのはわたくしの一生の宝物です。あなたの事は忘れません」
こうして零羅は屋敷に戻っていった。
現在
俺はそれからの事、零羅に会う事は二度となかった。だが、あいつはどういう訳か、別の世界で、しかもアイドルの新メンバーとなってここにいる。
どういう奇妙なめぐりあわせだよ。全く・・・




