一兆編 第十三話 ホワイトシャーク
「みなさま初めまして、神和住 零羅です。こんな舞台に立つのは初めてで緊張しますね・・・でも、これからみんなと一生懸命頑張らせてもらいます!!」
零羅はぎこちなくペコっと頭を下げた。その姿に会場は騒ぎだった。
「やっべ!!あの子超かわいいじゃん!!まだ幼いけどさ!!すこしシャンデラちゃんっぽいかなっ!?それとはまたなんか違う感じ!!」
「応援するよーーーー!!」
「あ、ありがとうございますです!!」
前に会った時と比べて随分と雰囲気が変わったな・・・ここに来て変わったのか?前は、世の中の全部を諦めてるめてぇな顔だったのによ。
「ふ、良かったじゃん」
「あ!何笑ってんだ!?イッチーああいうのが好みなのか!?」
マアヤはなんでこんな時に目ざといんだよ・・・ボソッと言っただけなのに。
「笑ってねぇし」
「むぅ・・・私もああいう風に心がけようかな・・・」
あーそうしてくれ。
「さーて!!新メンバーも紹介したことだし、次の曲!!楽器に新たにピアノを取り入れました!!ダイナマイトプリンセス!!零羅ちゃん!!」
「はい!!」
おぉ、ロック演奏にグランドピアノを混ぜるとは中々な事するじゃん。良い感じにマッチしてる。このグループがなんでここまで人気になったのか分かる気がするぜ。キャラのインパクトもありながら、ここまで完成された音楽を作る。耳と目、両方で感じる芸術ってとこだ。
「さてと、ここらでいつものやっとこうかな?私たちと一緒にセッション!!やりたい人手を上げてーーー!!」
『はあああああああああいい!!』
「俺を!!」
「今度こそ俺がぁぁぁ!!」
「ぼ、ぼくがセッションするんだぁ!」
あぁ、そう言う事もやるのか。至近距離で会えるアイドルってやつね。いざって時はこいつらなら身を自分で守れるし。
俺は手上げんとこ、面倒だし。ギターは弾けねぇ。バイオリンならやれるけどな。
「うーーん!みんな元気あるねぇ!!迷っちゃうよ。アリアちゃん誰が良い?」
「そうですわね・・・おや、そこの可憐なお嬢様。あなたに決めましたわ」
「え、ぇえ!?私!?」
あ、マアヤがステージに上げられた。あいつ、完全にノリと勢いで手上げてたけど、やれんのか?まぁそこは何とかするだろうけど。
「ぐあーーー!駄目か!!」
「でもまだ後二回チャンスはある!!」
成程、合計三人出すのか・・・
「じゃあ次シャンデラちゃん選んで」
「えっと・・・それじゃあね・・・あの大きい子!!」
「・・・」
「おーい君だよーーー」
呼ばれたのはまさかとは思ったが、コーキだ。こいつは確かあそこのアジトにギターが立てかけてあったから弾けるだろうが・・・自分が呼ばれたことに固まっちまった。
「ほらほら、コーキ、君だよ」
チアキが促すが動かない。
「ば、馬鹿な・・・そんなはずない。これは夢か?こんな幸運、夢に違いない」
「お前だ、行ってこーーい」
「ぬぅおあ!?」
俺は人混みをくぐり抜け、コーキを投げ飛ばした。
「あー、大丈夫?」
「も、問題はない!!こうなったら、夢が覚める前に全力を尽くすのみ!!」
逆に吹っ切れたみたいだな。むしろ一番安心になったわ。
「お、良い意気込み!!じゃあ次は私が決めよっかな?」
「さ、最後のチャンスだ・・・」
「ゴクリ・・・頼む、俺を!」
「うん!!決めた!そこの帽子の子!!」
「ぼ、僕ですか!?」
「そそ!!さー上がっておいでーー!!」
帽子をかぶったちょっと色白の少年がステージに上げられた。バケットハットをかぶった大人しめの少年だ。
「さてと、これで三人・・・と言いたいところだけど。みんなもう忘れてるでしょ。私たちは四人!!今日はもう一人ステージに呼んじゃうよーーー!!零羅ちゃん!!」
「は、はい!!で、でもどうしましょうか・・・」
まぁいきなりこれをやれって言われたら俺もビビるわ。てかあそこに立つだけで死にそうになるぜ。俺も見習った方がいいのかねぇ。
俺はステージを見ていた。そして俺は零羅と目があった気がした。
「あ、あの方は・・・」
その時だった。
『ガシャァァァァン!』
突然照明が割れ、落ちてきた。
「っ!?危なっ!!ダートボム!」
『バグァアァアン!!』
シャルロットは照明に爆弾をぶつけ、粉々にした。
「みんな伏せて!!」
それでも小さな破片が会場に降り注ぐ。
「一体何が起きたんだ・・・?」
「さぁな。でも妙な気配を感じやがる。だがアウロって訳でもなさそうだ・・・チアキ、まさか黒蒸気がここを襲ったって線は?」
「流石にそれはないだろうね。だって襲ってるのはあれだから」
俺は上を見上げた、あれは見たことがある。
「ば、バケモノだ!!逃げろーーー!!」
違う、バケモノ・・・ビーストじゃねぇ。あれは害獣だ。害獣は屋上からステージ目がけて落ちてきた。
「なんでこんな事すんのよ!!!」
シャルロットはどこからともなく取り出した矢のような爆弾を一斉に投げ、着弾と共に爆破した。
「駄目!!数が多くて仕留めきれてない!!」
まだ数体いる。
「ちくしょったれが!!俺目立つのは好きじゃねぇんだけどな!!」
俺はカードを上空に投げ、そこに瞬間移動を行った。
「あ、あれは!?」
高度を合わせた俺は残った害獣に電撃のカードを投げつけ魔法を起動させた。
『ギャイン!!』
電撃は連鎖し、のこった害獣を片づけた。俺はそのままステージの上に降り立った。
「フゥ、いっちょ上がり」
「おー、今のすんごいね・・・じゃなかった。ありがとうね、えっと・・・」
「話は後」
「はい!!まだ来てます!!」
零羅の言葉同様、今度は三階席の部分からここに向かって害獣が襲ってきた。
「くそ、またここに到達する前に!!」
シャルロットは再び爆弾を取りだそうとした。
「いや待ちな、あの行動・・・狙いはここ限定だ!」
「っ!!そうだね!!」
案の定だった。害獣は周りの客に目もくれずステージの上に降り立ち俺たちを取り囲んだ。
「おいおい、害獣が誰かの言う事大人しく聞くなんて聞いた事ねぇぞ?」
「そうだね・・・って事はアウロじゃない。別の誰かがこれをやってる」
「あぁ・・・」
シャルロットと俺が同じ思考になったとき、会場のスピーカーから音声が流れた。
『我が名はトランス。白鮫の参謀だ・・・』
白鮫!?まさか、ここでこんな形で登場すんのかよ!!
『我らの狙いはただ一つ・・・その男だ。ディ・ゴイ・ブラッカイマー』
そしてそのスピーカーからは聞いたことのある名が出された。ディ・ゴイ・ブラッカイマー。俺たちが今追おうとしている奴の名だ。
「な、なんで僕を!?僕、何も変な事はしてませんよ!!」
・・・まさか、このガキか!?こいつが、ディ・ゴイ!!どういう事だ。同姓同名の別人じゃねぇのか?噂とはかけ離れ過ぎてるぜ!!
『いや、お前は知らなくともお前は我らにとって必要な存在だ。やっと見つけた、来てもらうぞ』
「い、いや・・・だ、だれか・・・」
ディ・ゴイはもう今にも泣き出しそうな顔をしていた。表情にあるのは怯え、眼前にある物事のみに怯えている。
「ちょっと待った!!いきなり何を言い出すかと思えば、急に襲ってきて、なんの謝罪も無しに人攫いだ?それ、筋が通ってないんじゃないの?」
マアヤがしびれを切らし、スピーカーに文句を付けた。
「そうですわね。何の理由があるにせよ、わたくしたちのライブ、台無しにしたことは万死に値しますわ」
「そうだよ!!関係ない人巻き込んで!!私、怒ったもんね!!」
シャンデラとアリアも一緒になって責め立てるが、特にそいつに効いてはなさそうだ。
『貴様らこそ、これ以上首を突っ込むんじゃない。むしろこいつをおびき出す為に利用されたことを感謝するんだな』
あ、こいつ俺が一番嫌いなタイプだ。世の中自分がルールだと思い込んでやがる。
「イッチー、こうなったら何が何でもこの子守るよ!!」
「俺の一番大事な時を奪った事、死を持って償え!!」
マアヤとコーキが前に立ち交戦の構えを取る。
「あぁ、俺もこのガキに用事があるんだ。白鮫だか春雨だか知らねぇけど、渡さねぇよ」
ディ・ゴイ・・・この男はなんだ、こいつには何がある?そして白鮫、何故このタイミングで狙ってきた・・・
「わたくしたちも戦います!!」
零羅が拳を構え俺の横に立った。
「お前・・・戦えんのか?」
「前の時のわたくしとは違うのですよ。お久しぶりですね、一兆さん・・・」
零羅は俺にそう言うと微笑みかけた。
「覚えてたのかよ。あんなどうでもいい事・・・俺忘れかけてたし」
「わたくしにとっては、あれこそが成長の第一歩でした・・・忘れるはずがありません。そうだ、先ほどから考えていたのですが、セッション、わたくしとやっていただけますか?」
「もうステージに立っちまったし、やるしかねぇだろ。俺、舞台に立つのはめっちゃ嫌いだけど、こいつぁちょっと楽しそうだな!!」
俺もカードを構えた。
「ネズミ一匹、このステージの外には行かせませんわ」
「絶対に守るから!!」
おぉおぉ。一体どっからそんな兵器取り出したんだ?アリアは6連グレネードランチャー、シャンデラはカノン砲を構えた。
「私たちに喧嘩売った事。後悔しなさい!!」
そしてシャルロットはダーツを構えた。
『フ・・・ハハハハ。後悔するのは貴様らの方だ・・・行け』
ブツリ・・・
「今日のライブは随分と派手な演出になったな、シャルロットさんよ」
「だねー。でもこんなのは要らなかったなー。でも、これはこれで楽しんじゃおっか!!」
「さすがアイドルだな、トラブルも演出にってか?んじゃ、爆破部隊とゼロカラーサンライズのセッションと行こうじゃねぇか!!」
「いいね。じゃあおっぱじめるよーーーーーーーー!!」




