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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート2、『この異世界よりそれぞれの道を探して』
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一兆編 第十一話 ライトアンドダーク

 セイアン村、かつてアウロによって滅ぼされた小さな村。サナルナに小町はその村の唯一の生き残りと聞いた。


 サナルナと小町は既にかなりの年齢のはずだが、それでもまだ若いままだ。理由は分からないがアウロの何者かが彼女たちを生き延びさせたと言う。


 蛇の仮面、小町が目覚める前に覚えている最後の記憶と言った。小町は数年前にフロンティアで目を覚ましたらしい。そしてまだ眠っていたサナルナを守る為に東雲組を作ったと。


 これが東雲組発足の理由、ここが全ての始まりの地なんだ。




 「これで全員集まったな」


 時間が経ち、ホテルにいた奴らも全員セイアン村に揃った。


 「にしても、こう見ると圧巻だな~。あんたが俺らんとこに来た時まさかこうなるとは思わなかったぜ」


 トラマルが額に手を当ててあたりを見渡している。


 「あぁ、あん時から変な野郎だとは思っていたが、ここまで変な事をしでかすとはな」


 ワニムも壁にもたれかかって一緒に見ていた。


 「さーてと、これで基盤は出来た。後はそこを固め、築き上げるのはのはあんたの仕事だよ一兆」


 チアキがご丁寧に作り上げてある演説台を指さす。


 「まーそうだわな、俺が始めたことだ。超強力な俺の城、作ってやる」


 俺は演説台に上がった。




 『あー、どうも。俺の声聞こえる?』


 俺は少し騒がしかったこの広場に声を広げた。すると全員俺に視線を向ける。


 「聞こえてるぜ~」


 『お、どうもなカルニ』


 一番後ろにいたカルニがひらひらと手を振りながら答える。さて、やるか・・・


 『あー、まず自己紹介からしとくか。俺の名は馬喰 一兆・・・・・・・』


 「あ、あれ?」


 チアキが苦笑いして俺をみた。


 『これから・・よ、よろしく・・・以上だ!!!』


 俺は台を思い切り叩いた。あまりの威勢の良さに全員ビクッとなった。ふぅ・・・俺は台を降りようとした。


 「ちょちょちょい!!おいおいおいおい!!今のなに!?」


 「うるさいな。挨拶に決まってんだろ」


 トラマルが血相変えて俺に突っかかって来た。


 「いやいやいや!!あれだけはねぇだろ!!もうちょっと、俺に付いてこいだのなんだのはねぇの!?」


 「うん、ないね。え?十分じゃないの?」


 「ひえー!!」


 トラマルは頭を抱えて絶叫していた。


 「あ、あのさイッチー。あんたもしかして。大勢の前で話すの・・・苦手?」


 ギク・・・マアヤがどうにも突いて欲しくないところを言ってきた。


 「そ、そんな事はねぇんじゃあねぇかな~・・・」


 俺は顔をポリポリとかき、シラを切った。


 「いや明らかに緊張してたよね。今も冷や汗いっぱいだし」


 ・・・ずっと言ってなかったが、俺は人前というか、大勢の前で話すのが大大大嫌いなんだ。ここに来て行けるだろうと思ってたが、いざとなると考えてた言葉がどういう訳かどっかに行っちまうんだよ。


 「みんなポカーンとしちゃってるねー」


 チアキが苦笑いのまま固まった周囲を見渡す。


 「あ、あれが本当に噂の奴なのか?」

 「大丈夫なのか?あれで、俺らはあいつに付くんだろ?」


 そしてざわざわと俺に冷ややかな目線が向けられる。


 「おいどうしてくれんだコラ。てめぇの責任だぞ」

 

 カヤノが乗じて俺に突っかかって来る。知るかよ・・・そんなもん。


 「えんぜつへたくそ!?」

 「なんで!?なんで!?」


 サナルナも互いの顔を見て俺を見てを繰り返している。


 「こりゃ駄目だ」

 「見損なったな」

 「うんうん」


 次から次に口癖言いやがって・・・


 「そんなんで世界取るとか、()鹿()なんじゃねぇの?」


 カチン


 「だぁぁぁぁぁ!!うるっせぇぇぇ!!俺は昔っからこういうのが大嫌いなんだよぉぉ!!仕方ねぇだろうが!!


 俺はな!この世界が気に入ってんだ!この世界に幸福を感じた!!だからそれを脅かそうとしてるアウロをぶっ潰そうとしてんだ!まぁそれ以外にトクのことやらなんやらがあるが・・・ともかくそれには力が要るんだよ!!俺の力はぶっちぎりだ!誰にも負けねぇ!!だがな、それ以外にも要るんだ!!だからこんなめんどくさい回りくどい方法で仲間集めてやってんだ!!


 それが一つや二つ苦手だからってよぉ!!馬鹿とはなんだこるぁああああ!!!」


 もーキレた。ふざけんな。誰だ俺を馬鹿とか阿保とかクソとか言った奴はよ。ぶっ飛ばす!!


 パチパチパチパチ


 突然、乾いた拍手が一つ出てきた。


 「よく言えました。演説にはそれで十分なじゃないの?」


 やる気なさげな拍手と共に、これまたやる気なさげな声。これはチアキか。このやる気のなさが俺を冷静にさせた。


 「・・・なに?」


 「みんなが知りたがってたのはあんたの本心だ。見な、あんたの本心を知ったこいつらの目。蔑みにはおれは見えないよ」


 「お前の力はもう既にここの誰もが知っている。だが知らないのはお前のその力の源だ。なぜそこまで強いのか。ここの奴らはそれを知りたがっていた。ま、あそこまで演説下手だったのは驚いたがな」


 「コーキ・・・」


 さっき馬鹿言ったのはチアキか。それで他の奴らは俺を煽る為に便乗を・・・一部、本気で蔑んだ奴もいただろうがな。


 「はぁ・・・全く、とりあえずこれでいいよな」


 「あぁ、ようやく本心聞けて、やっとあんたを理解できたしよ。お前意外と面白い奴だなぁ、演説、今度教えてやろうか?え?」


 トラマルがいかにも弱点発見したと言った清々しい笑顔で俺の肩に肘を置こうとした。


 「調子には乗らせねぇよ」


 「へぶぅ!!」


 俺はトラマルの鼻に指を突っ込んで投げ飛ばした。


 「ちょっと!怪我したらどうするんですか!!」


 シラキが怒った顔で俺に言い寄って来た。


 「鼻血だけだぜ、大丈夫だろそんな怒らんでも」


 俺はシラキをスルーした。


 「にしても、お前のせいでマアヤ姉が・・・どうしてくれんだあれ!!」


 それよりもあからさまに憎しみを向けているのはカヤノだ。こいつマアヤにぞっこんっぽいからな。面倒だ。にしても怒りすぎじゃね?俺はふとマアヤを見た。


 「な、なにしてんの?」


 「わ、私もどうしたらいいんだ!?普段イキってオラオラ言ってるイッチーに、人前で話すのが苦手って弱点がががが、あー!!全身がもどかしい!!何なの!?この気分はぁぁぁ!?」


 マアヤは体をぐねんぐねんさせてもだえ苦しんでいた。だが顔が変な風に笑ってやがる


 「おー!それはギャップ萌えと言うやつですよ!!いいですよねギャップ萌え!普段見せる姿と全く別の個性を持っている。何とも尊さを感じるものです!!」


 「分かる!!それだ!!尊さだ!!ギャップ萌え!!いい響きじゃないか!!」


 なんかシラキとマアヤの間に会話の花が咲き乱れた。


 


 「話戻すぜ。とりあえず行動開始は明日だ。明日俺はアダムスに向かう。最低人数でな。行くのは俺とコーキ、チアキ、マアヤだ」


 「いよっし!!」


 マアヤがガッツポーズを決める。


 「いや待ってくれ。明後日にしてくれないか?」


 だがいつもは「あぁ」しか言わないコーキが珍しく拒んだ。


 「なんでだ?」


 「い、いや・・・その、アダムスに向かうのは明日で構わない。むしろ丁度いいんだが・・・」


 何故かコーキは言葉を濁している。そんな中トラマルが空気を読まず閃いた。

 

 「あ!ライブ明日か!!確かチケット取ってましたもんねコーキさん!!めちゃ苦労して!!」


 はへ?チケット?ライブ?


 「おいトラマル!!てめぇ!!それをこいつらの前で言うんじゃねぇ!!」


 慌ててワニムが止めにかかった。


 「ほうほう、ふむふむ・・・そう言う事か、成程ねぇ。いや、意外と立派な趣味あったんだね。コーキよぉ」


 「っ・・・・」


 チアキが何かの資料みたいなのを見ながら、ほくそ笑んでいる。


 「なに、なんかのバンドのコンサートでもあんの?」


 別に恥ずかしがることじゃねぇだろ。俺も良く行くし。


 「惜しいね一兆、明日あるライブは『爆破部隊』ってアイドルグループのライブだよ。にしても意外だね、堅物だと思ってたのに意外とアイドル好きなんて一面があるんだ、これもギャップってやつかな」


 チアキが嬉しそうに告げた。アイドルねぇ、確かに意外だな。

 

 「うん、仕方ねぇな。行動開始は明後日にするか。楽しめる時に楽しんだ方が勝ち、それが人生」


 「か、感謝する」


 コーキが顔を逸らしながら感謝を述べた。


 「爆破部隊のチケット、倍率高いからね。今回のなんて三十倍とかじゃなかった?そうだ、だったらどんなものかみんなで見に行こうじゃないか」


 チアキが元気にそう言った。


 「何言ってんだ?チケットはコーキ一人・・・」


 マアヤがツッコもうとしたとき、チアキはおもむろに細長い紙を何枚か取り出し扇子のようにあおぎだした。


 「なん・・・だと」


 「いやー、最初は転売目的で二倍くらいで売ろうかなって思ってたんだけど気が変わったんだ。オレもそんな嫌いじゃないしね爆破部隊」


 こいつ金儲けに関してはぴか一か。コーキが珍しく絶望してんじゃねぇか。


 「枚数は三枚か、チアキと私と・・・あとは・・・」


 なんか、マアヤの視線が俺に・・・


 「イッチーも行くでしょ?」


 「俺はいいわ。後は売ればいいじゃん」


 行く気はねぇよ。


 「そうか、じゃあそうさせてもらおっかな。丁度買いたいって奴からメール来てたしね」


 買い取り手がいるんなら尚更大丈夫だな。


 「あれ?でも、あー残念。急遽行けなくなっちゃったんだって。これじゃこのチケットゴミになっちゃうなー」


 ちらっと見ると、マアヤがチアキに何か渡しているのが見えた。くっそ、あの女。チアキ買収しやがった。


 「我々のリーダーが何万もするやつをゴミ箱に捨てるなんてことはしないよね~」


 「やったらどうなるかな~」


 くっそったれ・・・


 「だー仕方ない。行きゃいいんだろ」


 「やったぜ!!」


 俺たちは明日、アダムスへと向かう。



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