エピローグ
セレス郊外、数日降った雨の後のこの荒野は草花を一気に成長させ、だだっ広い草原が広がっていた。
「中央にいる連中には伝えておいた、これでよかったんだよな。礼」
「これでいい、ありがとうメリーヌ」
「にしても、生きてたんなら連絡寄越しなよ。死んだと本気で思ってたんだ」
「とりあえず、奴らを倒すまでは陰に徹するつもりだったからね。向こうは何とか退けたんでしょ?」
「まぁな、完全勝利とはいかなかったが、お前のRODやあの永零って少年のおかげで引き分けってとこだ」
「まさかシャルたちを投入しても、こんな結果になるなんてね。どうやらアウロは僕の思う以上の奴ららしい」
「それよりもいいのか?グレイシアに会っていかなくて、そろそろ目を覚ましてるはずだろ?」
「だね・・・」
時は数日前に巻き戻る・・・
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僕は雨の降る荒野を歩いていた。そしてある場所へとたどり着いた。
「血の跡・・・まだ少し残っている。ここで戦闘があったんだ。そしてグレイシアは負けた」
僕は僅かに残る血の匂いと、痕跡を追っていった。
「そして車に乗った。このタイヤ痕はグレイシアの・・・だけど、運転手はグレイシアじゃない。別の誰かだ。少し不慣れな感じ・・・そしてこのもう一つの足跡、十代くらいの少年がグレイシアを担ぐように乗せた」
僕はずっと続くタイヤ痕を辿った。歩いて行くと徐々に雨が上がって来た。やがて空に虹がかかった。
僕は虹を目指し進んでいった。そして虹のふもとまで進んだ時、僕は目的地にたどり着いた。
「東雲?」
僕はこの少し古い建物に近づくといかつい男が中から出てきた。
「おい小僧、ここはお前のような奴が来るところじゃない。さっさと帰りな」
「・・・ねぇお兄さん。ここにグレイシアって人はいる?」
「ん・・・ここにそんな奴はいねぇ。他当たりな」
こいつは今嘘をついた・・・丸わかりだよ。
「他はない、グレイシア ダスト。ここにいるんだろ?」
僕は刀を抜き男の首元に突き付けた。
「なっ!!てめぇ、なにもんだ!!」
「動かないで、そして叫ばないで。僕が聞きたいのはグレイシアがここにいるのかどうか。無事なのかだけ。それを教えてくれればいいんだ」
「くっ!!」
男はナイフのようなものを取り出そうとしたが、僕は刀で軽く飛ばした。
「僕は君に興味ない。だから殺す気もない、だけど殺しに来るって言うのなら・・・ん?」
「そこまでにしな・・・」
「若頭!!」
僕は気が付くと頭に拳銃を突き付けられていた。どうあがいてもこれは無理そうだ。そう思って僕は刀を下ろした。
「僕の後ろを取るなんて・・・やるね」
「下手な事すんじゃねぇぞ。まずはゆっくりこっちを向け」
僕は指示通りにした。振り返ると顔に傷のある女性が僕を睨みながらオートマチック拳銃を突き付けていた。
「あんたは・・・」
「三上 礼です。あなたはもしかして、最近フロンティアの自警団をやっているって言う・・・」
「隼 小町だ。あんたがレイか、初めて見るな」
小町は僕を見ると銃を下ろした。
「ちょ!若頭!!こいつぁ!!」
「おい、あんたもうちょっと人を見る目ねぇのか?ここに中央とかの情報は滅多に入る事はねぇけど、王の顔くらい知っとけ、あとうちで使ってる電化製品の会社の社長もな」
「あっつ!!根性焼きは勘弁ですって!!だって俺テレビ見ないもん!!ラジオも聞かないし!!」
「ま、これくらいにしとくか、今回のはお前にも非はあるぜ、三上」
「ちょっと強引過ぎたね。そこは申し訳ない」
こんなんだから僕は結構すぐに周りに敵を作っちゃうんだよな。反省しよ・・・
「こっちだ、ついてきな」
僕は小町に連れられ奥へと入った。奥に入ると一人の少年がいた。
「よぉ、あんたがレイって言うんだって?」
「君は?」
「俺は馬喰 一兆だ。覚えにくいからイッチーでいい。グレイシアなら今この奥で眠ってる。だが・・・見る覚悟はあんのか?」
僕は無言でうなずいた。覚悟は出来てる・・・
「グレイシアが生きてるのは、お前への強い思いがあったからだ。意識を失った後もずっとお前の名を口にしてたぜ」
僕の見たグレイシアはベッドに横たわっていた、だけど、右目には眼帯。そして左腕は完全に消え去っていた。覚悟は、何となくしてた・・・でも、心が苦しい・・・今すぐにでも逃げ出したい気分だ。
「いくらうちらがどんな傷も治せるって言っても、無くなっちまったもんは治せねぇ。あんたらと違って万能じゃねぇんだ」
「いいんだ。グレイシアはまだ生きてる・・・それを確認できただけで、僕は満足だよ」
「・・・グレイシアは、俺を守る為にこうなった。本当にすまねぇ・・・」
一兆は、言葉を少しつまらせながら、事の真実をはなしてくれた。
「それもいい。謝る必要なんかない・・・全部僕が悪いんだから、僕がもっとしっかりしてれば・・・」
「それは違うと思うぜ、グレイシアは自ら望んで戦いに身を投じた。お前のせいじゃない、誰のせいでもねぇよ」
「やめてくださいよ小町さん。誰のせいでなくても、僕はこのままでいい。押しつぶされる方が、責任から逃れるよりまだましなんだ」
確かに、誰のせいでもない。アウロの連中にも戦う理由がある。グレイシアやフォックスが僕の為に戦ってくれてるのも文句は言わない。だけど、グレイシアたちがどうして僕の為に戦うのか、その原因を作ったのは僕だ。僕は奴らを憎むあまりに、グレイシアたちの感情を利用して戦うように仕向けた、最低なクソ野郎だ。
だから、僕は誰にも許されるつもりはない。
「そうか、責任を感じるのは勝手だが、それに潰されちまったら元も子もねぇぞ、グレイシアは今でもお前を待ってんだからな、今日はここに泊まっていきな。もうすぐ日が落ちるし外は危険だ」
「いえ、僕はもう行きます。ここにはいられませんから」
僕はせっかくの小町さんの恩を蹴った。
「せっかく来たってのに・・・グレイシアが目覚めるまで待っててやれよ。こいつは何よりもお前を待ってんだぜ?」
「僕もそうしたいさ、だけど・・・終わってからじゃないと会っちゃいけない気がしてさ、勝手なわがままだけど、グレイシアには伝えておいてくれませんか?僕は無事だとだけ」
僕は一兆君にそうお願いした。
「俺からは何も言わねぇよ。言いたきゃ自分で言え、それだけだ」
「そうだね、これは僕自身の事、全部終わらせて絶対に来るよ・・・グレイシア。一兆君あのさ、お願いしたいんだ。君は彼女のそばにいてあげてほしい。もう一人にはさせないでほしいんだ。頼めるかい?」
「俺でいいのならな。だけど俺からも一つ条件がある。これ以上、グレイシアを悲しませるような事したら、ただじゃ置かねぇからな」
「それはうちも同意見だ。一人で行くのは勝手だが、無茶はするんじゃねぇぞ・・・三上」
僕は二人に凄い念を押された。
「僕は絶対に戻る、フォックスとも約束したんだ。今度こそ守る。全部終わらせてね・・・」
僕はこうして家を出た。
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時は現在に戻る。
「だけど、今はまだ会えないんだ。どんな顔で会えばいいのかも分からないしね」
「いつものニコニコ笑顔でいいだろ。女としての私は愛する人がいつものようにいるってのは、それだけで充分満足だと思うぜ」
「そう言うものか・・・」
「それよりも、これからどうする気なんだ?礼」
「アナザーベース、フロンティアクレーター総合指令基地・・・」
「まさかお前・・・一人で敵の基地に乗り込む気か?」
「その通りだよ」
「復讐心はお前を馬鹿にでもしちまったか?確かにお前の実力は認めるけどよ、流石に無理ってなもんだ」
「僕は僕に出来る戦いをするだけ。この戦いで思ったんだ。僕が一体何のために戦ってるのかをね。最初はアウロへの復讐で一杯だった。その心だけで戦おうとした、その結果僕は勝てなかったんだ。そこで思ったんだよ、僕はただ独りよがりで暴れてただけなんだって。みんなそれぞれがそれぞれの思いを持って戦ってた。僕一人がどうかしたところで、何も変わらないんだ。
今度はみんなと協力するよ。アウロは半年は攻めてこれない、だけど中央だってそれは同じ。半年はまともに動けない。だからこそ僕が動くのさ、僕たちはアウロの戦力、規模を全く知らない。敵戦力を知らなかったから、今回引き分けたってのもあるからね。情報を制した者が勝つ。こっから先は情報戦だよ」
「にしても一人であそこに向かうのは危険にもほどがある。東雲の連中にも釘を刺されてただろ?」
「確かに一人では無謀だよ、でもこれからはもう一人じゃない」
「・・・マジか、ほんとあんたの用意周到性には恐れ入るわ。てか普通に怖いわ、怪盗としてあんたの存在はね」
「じゃぁ・・・行こうかな!!」
僕は新たなる戦いに向け、歩みを始めた。
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エピローグ 我々の物語
平和とは、人生という長い闘いの中に感じるほんの小さな幸福感だ。我々はそのわずかな幸福を求め、戦いを続ける。
我々は幸福を手に入れたい。それが故に戦い、傷つけ、傷つけられる。そう、この世界には真の平和とはありはしない。
もしそれがあると言うのならそれは、きっとつまらない世界になるだろう。我々は戦い続けなければいけない。平和を求め、抗い続けなければいけない。
我々は平和を求める。その為に戦う、これは平和を求め闘う我々の物語。
平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ、抗え。闘え。全ては、平和の為に




