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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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最終話 すべては、ここに集う者たちに

 数日後


 世界はRODの手助けもあり、思いのほか早く復興が進んでいた。そんな中、世界を纏める為の新たな王を決める会議が行われていた。


 当初は先代の王、アレックス アダムスが王位を再び継承する事で話は進んでいたが、アレックスはそれを拒んだ。


 そして新たな王として、自身の娘、エルメスに王位を継ぐと提案した。最初は彼女も拒否したが、勇者たちや、国民の賛成もあったため、彼女は新たな王として、この国を治める事になった。







 「玉座に座る我が娘・・・うーん尊い!!」


 アレックスは玉座に座ったエルメスを自前のカメラで撮りまくっていた。


 「お父様・・・あのさ、まさかとは思うけど私がこの椅子に座ってる写真を撮りたいがために王位を譲ったとかじゃないよね?」


 「まさか!!今回の件で私は全くの役立たずだった、でもお前は彼らの陰謀を見抜き、皆を守ろうと必死に闘ってくれた!だからこそに決まってるじゃないか!!」


 「私自身も記憶を変えられたけどね、それを言うのならレイサワかレイラちゃんの方がよっぽど活躍してくれたじゃん」


 エルメスは目線を零羅達に向けた。


 「わたくしたちは元より、別の世界から来てますから、王様というのは・・・」


 「拙者も元より目立つのはあまり好きではござらぬ」


 「いや、あんたのその喋り方とか食べる事への欲求とか目立ちまくってるぞ?」


 「ぬお!?そうだったのでござるか!?いやしかしこれは拙者のアイデンティティ!!」


 麗沢の答えにここにいる全員が一様に頷いた。


 「だけど、これからどうするんですか?アウロはしばらくは来ないとしても、ビーストはどうやらまだいるみたいですよ?」


 白い髪の少年、永零がエルメスに質問した。


 「それなんだよな~、またあの壁を再建築ってなるとまた二十年前に逆戻りだしなぁ・・・」


 「ビーストなら私たちで何とかするよ」


 悩んでるエルメスに助け舟を出したのはシャルロットだった。


 「シャル・・・でもいいのか?せっかく戻って来たのに」


 「何の為に私たちRODがあると思ってるの?復讐の先にも平和はある。よっぽどの数千体とかのビーストが来ない限りは私たちで対処できる。任せといて」


 「まぁ、あの戦いっぷり見せられたらな。じゃあビーストの事はシャルに任せるよ」


 「あいっさー!!」


 シャルロットは敬礼ではなくウインクと目元にピースを決めて答えを返した。


 「さてっと、儂はもうちょっとこの街にいる事にするかの、恐らく桜蘭も試練が終わればここに来るじゃろ、それまでは気ままにいるとしようかの」


 サラマンダーは大きく伸びをした。その様子を見たエルメスは疑問符を頭に浮かべている。


 「あのさ、この間から気になってるんだけど、あんた誰?ふつーに私たちと接触してるけどさ、エイレイ君に関してはこの間フォックスから聞いたけど、ディエゴの能力でまだ思い出せてないのか?レイサワ知ってるか?」


 「いや、拙者も聞こう聞こうと思ってずっと言い出せなかったのでござるよ」


 「シャルは?」


 「しらなーいよ」


 「エイレイ君は?」


 「すみません、僕も・・・」


 「あ、あの・・・」


 そこにこそっと手を上げたのは零羅だった。


 「レイラちゃん、知ってるの?」


 「は、はい。でも、聞けば皆様驚きますよ?」


 「うん?そう言えばサクラの事は知ってるって感じだったな。って事はサクラの知り合いなのか?」


 「ま、まぁ・・・そうなんですが、何というか、その、エルメスさんは知らない方がいいような」


 「はい?」


 零羅はサラマンダーの事を説明しようとしているが、彼女は桜蘭の妻になりそうな存在と言う事が引っかかり、うまく説明できない。


 「いや、儂はそう名乗るようなもんじゃない。ただ・・・そうじゃな、儂は、桜蘭の妻じゃな」


 「はぁ!?」

 「なぬぅ!?」


 サラマンダーは何かを察したようにニヤッと笑い、エルメスにそう告げた。そして案の定エルメスと麗沢が驚きのあまり腰を抜かした。


 「いきなりそれ言いますぅ!?」


 「ちょ、ちょちょちょい!!あ、ああああんた、ど、どどどどどういう事!?」


 エルメスはサラマンダーの爆弾発言で上手く呂律が回らない上に思考も回ってない。


 「せ、先輩・・・確かに鈍感ではござったが、こんな方に手を出していたとは・・・」


 「あ、あの・・・サラマンダーさん。いいのですか?」


 「良いではないか、こやつら面白いの~」


 零羅とサラマンダーは普通に会話したが、テンパっている二人の耳には聞こえていなかった。


 「お、おいあんた。サクラとはほんとどういう関係だ?というかどこまで行った?行くとこまで行ったのか?ぇえ!?」


 完全にエルメスはケンカ腰だ。


 「いや~、あの時は凄かったの~・・・そんな経験もあって今は子供もおるぞ?」


 サラマンダーは顔を赤くして頬に手を当てて恥ずかしがるしぐさをした。


 「な、ななななんだとーーーーー!!?あの野郎!!私たちが必死に戦ったってのにあいつーーーーー!!今度会ったらただじゃおかんぞ!!」


 それを聞いたエルメスはプッツン、玉座に座ったまま大暴れ。


 「おーこわ・・・」


 「だから言ったじゃないですか・・・というかサラマンダーさん、行くとこって桜蘭さんとどこか出かけました?」


 「いやぁ、儂にも分からんが、なんかこう言うと嫉妬心に火が着くのじゃと。どこへ行けばいいじゃろな?」


 「さぁ・・・」


 「まぁ、冗談はさておいてじゃ・・・」


 「ぁあ゛!?」


 「あ、すんませーん」


 エルメスの予想以上の反応で流石のサラマンダーも逆にたじろいだ。


 「あんたさ、どこのだれか知らないけど、サクラと私はずっと一緒に旅してきたんだ!!あいつは誰にも渡さん!!サクラは私の、私だけの者だーーーー!!」


 「お・・・エルメス殿、ツンデレ通り越してヤンデレ入り始めてるでござる」


 エルメスは我を忘れて、どんどん発言がエスカレートしていった。


 『ドッカーーーン!!!』


 「うわ!!」


 急に、玉座の間に爆音が響いた。シャルロットが小さな爆弾を爆破させていた。


 「エルメスちゃん、少し落ち着いて、冗談に決まってるでしょ。一か月で子供はあり得ないって」


 「あ、そっか・・・ありがとシャル」


 「お~、すまんなシャルロットちゃんじゃったか?悪戯が過ぎてしまったの」


 「私も、あなたの正体が気になるからね。埒が明かないって思っただけだよ~」


 「まぁそれでも十分じゃ、さて、話を戻そうかの。儂の名はサラマンダーじゃ」


 今まで若干ではあったが不信の目を向けていた全員が目を点にした。


 「は?」

 「ひ?」

 「ふ?」

 「へ?」

 「ほ?」


 「あの、この方は四精霊のサラマンダーさんって言いましてですね・・・」


 零羅はこれまでの経緯をまとめ、皆に伝えた。


 ・


 ・


 ・


 ぽかーん。

 

 「と、言う訳なのです」


 もう一度、ぽっかーん。


 全員右から左になっていた。


 「ほ、本当に・・・あの、サラマンダー・・・なのか?」

 

 アレックスがビビった声で聞いてみた。


 「その通りじゃ、儂こそ正真正銘、炎の精霊サラマンダーじゃ。人の形をしておるが尻尾とか角とかは残っておるじゃろが。気が付かんかったのか?」


 サラマンダーは尾てい骨から伸びている尻尾を軽く振った。


 「それ・・・本物なんだ。アクセサリーだって思ってた・・・」


 「こ、これは大変無礼な態度を取ってしまいました!!」


 我に返ったエルメスは今度は態度を一変し、謝罪に徹した。


 「いや、儂の方こそ悪かったの。まさかあやつの事をそこまで思ってるとは思わなんでな。許してくれ」


 「い、いいいええええ滅相もない!!あんな奴ならいくらでもくれてやるですはい!!」

 

 「お主、分からん奴じゃな・・・結局どっちなんじゃ?」


 「これがいわゆるツンデレのツンと言うやつですね」

 

 「おぉ、それか!!」


 違う、だがサラマンダーと零羅はエルメスのそれをツンデレの領域内という認識で話を終えた。


 「ん?」


 「どうされました?」


 サラマンダーが突然何かに反応した。


 「お~、シャルロットちゃん、早速じゃが仕事のようじゃな。ここにバケモノ、ビーストどもが近づいておるようじゃ」


 「え!?うそでしょ!?ここの近くにはさっきまで何も!!」


 「ビーストどもが全て地上で活動すると思うか?クラーケンとかおるじゃろ」


 「ま、まさか!!運河から!?」


 「そうじゃ、ビーストには水の中で生息する者もおるのじゃ。肝に銘じておけ」


 「はい!!」


 シャルロットはびしっと敬礼を決めると、壁を爆破して飛び出していった。


 「いや、壊す意味ある!?ちょ、シャル!!待ちなさい!!」


 エルメスはシャルロットの後を追った。


 「私たちも行くぞレイサワ君!!」


 「お、ぉおぅ!?」


 麗沢はアレックスに引っ張られ飛び出し、最終的には零羅とサラマンダーだけ残っていた。


 「私たちも!!」


 「そう慌てんでいい。あやつらきっとまた腰抜かすぞ?にっしっし!!」


 「どういう事ですか?」


 「・・・・・と言う事じゃ」


 サラマンダーはボソッと零羅の耳元でささやいた。


 「なるほどです!!にしてもサラマンダーさん、悪戯好きですね」


 「照れるのぉ」


 「褒めてないですよ?」


 「さてと零羅、先回りするとするかの。儂の背に乗れ」


 零羅はサラマンダーの背中にぴょんと捕まると、サラマンダーはシャルロットが爆破した壁から飛び出し巨大なドラゴンの姿となり、飛び立った。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 地上に着くとシャルロットはRODのメンバーを集め運河の前に立った。そしてそこに続き麗沢、アレックス、エルメスが並んだ。


 「みんな!!絶対にここを守るよ!!」


 「御意!!」

 「当り前よ!!これ以上はやらせない!!」


 一斉に威勢のいい掛け声を上げた。遠くから水しぶきを上げながら突進してくるビーストの群れに一斉に構えた。


 「さぁみんな!!覚悟はいい!?」


 「行くぞ!!」


 ・


 ・


 『ぐぎゃああああ!!』


 突然目の前に迫っていたビーストは打ち上げられ、息絶えた。


 「へ!?」


 その後も次々とビーストは一斉に倒されていった。


 「こ、これ・・・何かで撃ちぬかれたような焦げ跡。これは・・・銃」


 シャルロットは倒されたビーストを見て、何で倒されたのかを見極めた。


 「しかもただの銃じゃない。この焦げ方、まるで電撃を喰らったみたいな・・・まさか!!」


 エルメスはこの攻撃の在り方をみて、ある予測を立てた。


 「お主ら!!そこは危ない、避けたほうが賢明じゃぞ~!!」


 少し上の高台でサラマンダーは下にいる者たち呼びかけた。その直後、水しぶきを上げ一人の影が水面から飛び出した。


 「こんにゃろーーー!!もう逃がしゃしないッスよ!!喰らえ!!名付けて、『カタトゥンボの稲妻』!!」


 水の中から飛び出した青年は、両手に持った二丁の大口径の拳銃を両手に広げ、トリガーを連射した。


 その銃口からは電撃が発射され、周りにいる大量のビーストに降り注いだ。


 「そして~!!俺の必殺技ッス!!」


 青年は空中で逆さ向きになり手をクロスさせた。


 「『ライトニング レイン』ってな!!」


 青年はそのまま真下に稲妻を一点集中で連射した。


 「ふぅ、やっとこれで終わりっと!!」


 青年は水の上に着地した。


 「桜蘭さーん!!」


 「あれ!?なんで零羅?ここどこッスか~?って!?みんないる!!」


 青年、桜蘭は周りを見渡した。


 「う、うそ・・・サクラぁぁぁ!?」


 エルメスは柵に身を乗り出した。


 「あ、エルメスも久しぶりッス!!って、ちょ!!サラ、危ないから暴れないで!!」


 「ん?」


 桜蘭は何かを背負いなおした。


 「というか先輩!!一体どうやってそこに立ってるのでござるか!?」


 「あ、これ?ちょっと待ってて、今そっち行くッスから」


 そう言うと桜蘭は一旦水の中に沈み込んだ、そして数秒後、巨大な水の柱を上げ、桜蘭は飛び出した。そして


 「人魚・・・だ。人魚!?」


 「そうッス!!俺人魚たちの力借りてここまであいつ等追って来たんスよ」


 桜蘭は人魚たちの力を借り、水面に立ったり、水中をすばやく移動していた。


 「あ、やべ・・・」


 「どうしたでござるか?」


 「飛び上がりすぎたーーーーー!!」


 桜蘭は空中でバランスを崩し落ちていった。


 『ゴッチーーーーン!!』


 「ぎゃ!!」

 「にぎゃ!!」


 「あいててて・・・サラ水中だとちょっと軽いから、地上に出るとバランスがうまく取れねぇッスって・・・あ、あぁ!!やっべ!!」


 「なぁ・・・ここって大事な、感動の再開的な展開だよなぁ・・・なのにどうして、お前はいつも私に激突するんだ!!」


 桜蘭はエルメスと顔面で激突した。エルメスは額を抑えながら桜蘭を追いかけまわした。


 「ご、ごめんなさーい!!わざとじゃないんだって!!」


 「うそこけ!!」


 案の定すぐに捕まってしまった。だが・・・


 「いじめ、だ~め!!」


 エルメスのひっぱたこうとする手を、桜蘭の肩から小さい手が出てきて止めた。


 「あ、ああ、ああのさ・・・桜蘭。その子・・・」


 「あ、紹介してなかったッスね。この子サラって言うんス」


 「ぱぱ、あぇ!!あぇ!!」


 「あ~、分かった分かった、あれね、ちょっと待っててね~サラ。はい、おしゃぶり!!」


 桜蘭はポケットからおしゃぶりを取り出した。


 「はむ・・・」


 「あ、で、エルメス、なんだったっけ」


 「あのさ、今パパって言ったよね、ねぇ!!」

 

 「えぇ!?あ、うん!!なんかいつの間にか呼んじゃうようになっちゃって!!」


 「ふ、ふーん・・・」


 「あれ?どしたッスか?おーい」


 エルメスはその場で完全に石のように固まった。ノックしても返答はない。


 「あ、おかぁしゃん!!」


 「おーサラ、ちゃんといい子に出来たか?」


 「うん!!」


 サラは桜蘭から降りると、サラマンダーの元へテトテト走っていった。


 「お、おかあさん・・・だと、完全に、家族・・・ガクッ」


 「むお!!エルメス殿!!」


 「ちょ!!熱中症ッスか!?誰か救急車!!」


 エルメスはついに倒れた。


 「にっしっしっし!!面白っ!!」


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 しばらく時間が経ち、エルメスも目を覚ました。落ち着いて話、全員ようやく状況を理解できた。この際説明に追われた桜蘭は逆に疲れ切っていた。


 「はぁ、やっと・・・納得してくれた。って、最初っからサラマンダーさんが変な事言わなきゃこんなことにならなかったんじゃないッスか!!」


 「いや~つい、いたずら心がのぉ~」


 サラマンダーは相変わらずニコニコというか、ニヤニヤ笑っている。


 「はぁ・・・まぁいいわ。二人の関係に関しては、何もないって事よね」


 「何もないって言ってるじゃないッスか、俺も困惑してるんスから。てかなんでエルメスがそんな怒ってるんスか?」


 「むぅ・・・鈍感はやはり健在でござるか」


 「麗沢、なんか言った?」


 「いや、口なぞ開いてはおらぬ、断じて!!」


 「はぁ?」


 桜蘭はまだ納得がいってないようだが、一応話は進み、経緯を話し合った。


 ・


 ・

 

 ・


 「ってかさ、なんでサクラはここに来たんだ?」


 「あぁこれ、ウンディーネさんの試練ッス。自身の持てる全ての力を使い、迫りくる危機を脱しろってさ。しかもサラを守りながら必殺技も一つや二つを編み出せって条件付きで・・・そんで必死こいて迫って来てバケモノ倒してたらここに着いたって訳ッス」


 「あ、なるほどです。さっきのアレ、桜蘭さん、必殺技完成したのですね!!」


 「まぁまだ完ぺきとはいいがたいッスけどね。零羅の技とかに比べたらまだまだッス」


 「お、そう言えば先輩、ここに来たって事は何か力とか得たって感じなのでござるか?ディエゴ殿は先輩がカギであるようなことを言っておったが」


 麗沢がディエゴの目的を思い出した。ディエゴの目的は桜蘭であることを。


 「いや、まだッスね。ディエゴの事に関してはワダツミやウンディーネさんからある程度聞いてるッス。あいつは多分、俺の命の王としての力が欲しいみたいなんスよ。とは言っても、これは俺自身の力だから奪うのは無理だし、あいつに付く気なんか更々ないッス。それにまだ最後の試練が残ってるんスよ。てか大体、命の王についてもまだ俺自身よく分かんないしな。ともかく、俺はまだまだだからディエゴの思い通りにはならないって事ッス!!」


 「そんな堂々と言うか・・・にしても、戻って来たのは事実だ、サクラ。まぁここはお前の故郷じゃないけど、言わせてくれ。おかえりなさい」

 

 「た・・・ただいま」


 エルメスは珍しく優しい声で桜蘭に言った。桜蘭も意外な一面を見て少し困惑していた。


 「みんな帰って来た・・・でも」


 アレックスは安堵の声を漏らした一方、少し心配そうな声も出した。


 「えぇ、グレイシアさん。今どこで何をしているのでしょうか」


 


 「グレイシアなら、無事だぜ。ただ、なんとかだがな」


 遠くからゆっくりとした足取りで、誰かが歩いてきた。


 「あ、確かオーギュストさん・・・でしたっけ」


 「おぅ、セレス以来だなガキ、名前は・・・確かイブスキ エイレイだったな」


 来たのは、この世界屈指の探偵、オーギュスト ドラセナだった。


 「オーギュスト?あんた、グレイシアの事何か知ってるの?なんとかってどういう意味?」


 「どうやらグレイシアは、ビリーと一戦交えたようなんだ」


 オーギュストの後ろ、エルメスの問いに答えたのはイーサンだった、そして共にやって来たシィズが続きを答えた。


 「アウロ内の報告を探っていたら、セレスの郊外でどうやらグレイシアはビリーと遭遇して、交戦したって記録があったの、それで・・・」


 シィズが口を濁した。


 「な、何かあったの?」


 「グレイシア ダスト、討伐と書かれていたんだ・・・」

 

 イーサンの言葉にここにいた全員が凍り付いた。


 「う、うそでしょ・・・グレイシアが負けるなんて・・・嘘だって言ってよ!!」


 問い詰めるエルメスに、イーサンは目を逸らすしかなかった。イーサンにとってもビリーという存在は異質で、その報告に偽りはないと確信したからだ。


 「あいつは、ビリー ラックスは、アウロ内でも屈指の戦闘能力を持っている。我々の想像をはるかに超える存在なんだ。いくら彼女が強くても、彼女は普通の人間だ。勝ち目は・・・ない」


 「そ、そんな・・・」


 「おいおい、エルメス。人の話は最後まで聞きやがれってんだ。そんな化け物とやりあっても無事つったろ」


 「オーギュスト!今グレイシアはどこにいる!!」


 エルメスはオーギュストに掴みかかった。


 「場所までは分かんねぇ。なぁエルメス、フロンティアの伝説って知ってるか?」


 「え?確か、ちょっと前に噂があったわね。なんでもどんな病気やケガも治せる人がフロンティアのどこかにいるって・・・」


 「どうやらグレイシアは今そこにいるらしい。あいつの言う事を信用すればの話だがな」


 「あいつ?」


 「メリーヌだ。あの野郎、いつも陰でこそこそやってると思ったら、どうやらグレイシアと通じてたらしい。なんならミカミともな。ともかくだ、俺ぁあいつは嫌いだが、嘘言ってる感じではなかった。信用してもいいだろう」


 「そうか・・・よかった」


 「ま、それでも重症に変わりはねぇらしい。けど、グレイシアの事だ、たとえ死のうがゾンビになっても生き返って来るだろうぜ」


 「だよな、あいつがそんな簡単にくたばるわけないもんな!!」


 エルメスは徐々に元気を取り戻してきた。


 「さてと、問題はこれからどうするかだ。お前ら、アウロと戦う覚悟は出来てんだろ?」


 「もちろん!!」

 「あぁ!!」


 一同、オーギュストの言葉に頷いた。


 「よし・・・アウロはディエゴの言った通り最低でも半年は直接的な攻撃は来ない。世界に放たれたビーストの小さな襲撃はあるかもしれないけどね」


 「だから私たちも半年以内でアウロに対抗する戦力を手に入れたい。だがRODやこの世界の軍、かつての反逆者たちを合わせても、まだ総合的な戦力では敵わない」


 「この世界を守るには、もっと戦力がいる。一番は敵んとこに忍び込んで内側からやっちまうのがベストなんだがな・・・」


 「流石に完全覚醒者相手に、奇襲や潜入は無理。大人しく奴らが動くのを待つしかないわ」

 

 アウロからこの世界を守るには、今ある戦力を更に高めるしかない。しかも半年という短い期間の間に。


 「だったら・・・俺がなんとかするッス!!」


 桜蘭がオーギュストたちの前に出た。


 「何とかって、どうするんだ?」


 「四精霊の試練を完遂するんス。そうすればきっと、アウロにも対抗できる力が手に入る。命の王ってのはまだ分かんないッスけど、俺の力は動物たちを支配する力、動物たちを人間のいざこざに巻き込むのは心苦しいッスけど、ここの動物たちは俺たちと同様にバケモノの恐怖に怯えてる。だからサラマンダーさん、最後の試練・・・お願いします」


 桜蘭はサラマンダーに頭を下げた。


 「いいじゃろ、儂の試練は今までのとは比べ物にならんほど苦しいぞ?覚悟は良いか?」


 「ウンディーネさんの試練をクリアした時点で、その質問は野暮じゃないッスか?」


 「それもそうじゃな。じゃが、ちと待ってくれ。そこまで気を急いても意味はない。少しの間休め」


 「あ、はい」


 サラマンダーの言葉に、桜蘭は素直に返事した。


 「それでは試練は来週じゃな、その間儂はここでしょっぴんぐなり、あ~そうじゃ、映画も見てみたいんじゃったな~!!」


 「・・・って、サラマンダーさん!!自分遊びたいだけで試練を延期してないッスか!?」


 「そんな事ないぞ?ちゃ~んと考えとる。って事で、零羅、一緒に行こうぞ!!れっつしょっぴんじゃ!!」


 「え、えぇ!?あ、あ〜れ〜」


 「ちょっと~!!」


 サラマンダーは零羅を半ば引っ張るように連れ出し、桜蘭はその後を追って出て行った。


 「桜蘭は相変わらずだな・・・真っ直ぐでドジというか」


 「でも、そこが先輩らしいとこでござるがな」


 「さてと・・・私たちも半年後に向けて準備するか、みんな・・・」


 エルメスの一言で、ここにいた全員が頷いた。


 「私たちはRODをもっと強くする。もちろん私ももっと強くなって見せるよ」


 「拙者も、拙者なりの戦い方、もっと腕を磨くでござる」


 「我々も、アウロを共に裏切った仲間もいる。共に切磋琢磨して備えるとしよう」


 「礼も、一緒に戦ってくれてる。僕もフォックスもみんな平和を願ってるんだ。誰にも負けないようになるよ」


 「俺ぁ、俺なりの戦い方を貫くだけだぜ、探偵ってのは相手を探ってなんぼだ。情報を制したものが勝つってな。技術ばっかに頼ってるあいつらに一泡吹かせてやるぜ」


 互いにこれからの心構えを語った。


 


 今、世界を賭けた戦いの幕が上がる・・・


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