永零 異世界の反撃
「君は・・・」
ピンク色の髪をした女の子は僕に聞いた。
「誰だネ君は・・・これは我々の威信をかけた戦いダ。部外者は早急に退場願おうカ」
そしてアウロの方からも同じ質問、だけどこっちの方は敵意がむき出しになってる。ジンと呼ばれたその男は僕に攻撃を仕掛けた。
「っ!!ジン、そいつ!!何か変だ!!」
攻撃に移った瞬間、三つ編みの男エファナがジンを止めようとした。でも、もう遅いよ。
「んな・・・!!」
僕はジンの持ってきたヌンチャクを粉々に砕いた。
「僕を相手にするんだったら、余裕をかまさないで常に細心の注意を払って攻撃した方がいいよ。じゃないと、今度は君の命を取りかねない」
「なんだ今のは・・・」
「あぁ、わたくしも見た・・・ジンの攻撃は確実にあの少年を捉えた。だが、ジンの攻撃はあらぬ方向に・・・それに合わせてあの少年は武器を砕いた・・・」
「今のでそこまで見抜くのは凄いや。エファナさんでしたっけ?」
エファナは僕の攻撃を、一瞬にして見抜いた。この人はやっぱり他とはちょっと違うみたいだ。他の人とは雰囲気が違う。
「君は一体何者だ・・・その力は・・・」
そして一番後ろの人物が前に出てきた。おっきな波打った剣を持った男、こいつがディエゴ・・・こいつの雰囲気は、何とも言えない。さっきのエファナは少し物悲しい感じだけど、こいつは刺々しい感じがする。
「僕は誰でもないよ・・・ただ、僕も同じここの世界の平和の為に戦いに来た。誰も知らないけど、僕はここの人たちの友達だ」
僕はピンク色の髪の少女に笑いかけた。
「・・・みかみん?」
「みんなは下がってて、後は僕一人でやる・・・」
「おいおい、いくら何でも無茶だ!!悪いことは言わねぇからやめとけって!!」
僕は無視して刀を抜いた。そして構える・・・構えは霞構え、覚えてる・・・僕は何度も戦ってきた。この構えが一番動きやすい・・・しっくりくる構え・・・
そして刀を握りしめると、刀は淡く輝き始めた。
「どういう事よ・・・あれって、流血光刃?」
「違う・・・覚えている、あれは『和一文字』!!それをどこで!!」
「僕にもよく分からないよ・・・でも、僕に分かるのは君たちは僕にとって敵だってことだけ」
僕は足を少し後ろに下げた。どこからかかってきても、即座に対応できる。
「確かにそうだな・・・君はわたくしに刃を向けている。つまり敵対していると言う事だ、だがいいのか?我々全員を相手にする気なのか?」
「そうだって言ってるよさっきから。それに聞いてるのはこっち。退くか、退かないか」
「・・・退かないさ、君が何者であろうと、我々はここで退く訳にはいかない。覚悟はいいか?」
「出来てなきゃここに立ってないよ・・・さぁ、かかっておいで」
僕は挑発した。最初に乗ったのはプラチナブロンドの女性、リザヴェノフ。リザヴェノフは指を鉄砲のようにして、水を発射した。金属も貫通しかねない強力な威力だ。でも・・・この程度は軽く見切れる。
僕は一気に踏み込むと同時に、水の弾丸を捌きながらリザヴェノフの背後に回った。
「は、はや!!」
「一人目!」
僕は肘でリザヴェノフの首の裏を突いた。いくら完全覚醒者って言ってもこれならしばらくは気絶するはず。
「かなり疲弊していたとはいえ、リザヴェノフが一瞬でやられるとはネ」
「あぁ、ディエゴ、少し下がっていてくれ。こいつと君を戦わせるのは少々ヤバそうだ。ここはわたくしとジンでやる」
ジンとエファナは拳を構えた。
「今度は手加減などはしん、子供相手に大人げないかもしれないガ、お前は少々ヤバいどころではなさそうダ。全力を持って潰ス」
まずはジンが攻撃を仕掛けてきた。足技がメインで、中国拳法みたいな身のこなしだ。多分、本人もそんな感じっぽい。
だけどさっきとは違って本当に本気で来てるみたい。行動の先が読みにくい。時折攻撃が当たる。そして厄介なのがその一瞬の隙をついて、エファナの超高威力の攻撃が飛んでくること。
ジンの身のこなしと、エファナの破壊力。なんだかんだ言ってたけど、息がぴったりだ。反撃の隙を与えない。
埒が明かない・・・ここは僕の力を使うしか・・・
「っ!!」
急に攻撃が止まった。そうか、エファナは既にこの僕の力に対する対抗手段を考えていたんだ。この力は相手が攻撃してくる瞬間に発動しなきゃ、逆に僕自身をピンチにさせかねない。
「君の能力までは分からなかったが・・・どうやら防げたようだ。さぁどうする、ゼロ距離で背後を取られた」
今のミスで僕は背後を取られた、しかもほぼ密着状態にまで迫られている・・・
僕は振り向きざまに刀を振った。エファナも少し先に拳を放った。
「っ!!まさかこれすら弾くとは!!」
ギリ間に合った。僕の放った剣とエファナの拳が合わさって攻撃をはじくことが出来た。でも、ちょっと軌道がズレた。飛ばされてる僕に向かってすかさずジンが攻撃を仕掛けた。
僕は地面に剣を突き刺し、体勢を立て直す。
「喰らいナ!!」
「くっ!!」
ジンの猛襲に、僕は手痛い一撃を喰らってしまった。くそぅ・・・こんの野郎!!
僕は刀を光っていない状態にさせた。僕は最初からこいつらを殺す気はない。あくまでも退散させる事。その為にある程度手加減して戦ってたんだけど、どうもそれをやるほど甘くないよね・・・
「おりゃ!!」
僕は思いっきり刀を振るった。その攻撃はジンの防御を崩して頭に峰うちを喰らわせた。
「ば・・・馬鹿な」
二人目・・・でも、そんな悠長な事を言ってる前にエファナの攻撃が続いた。僕は一気に後ろに飛んで距離を取った。
「君の力は大したものだ・・・まさか完全覚醒者をここまで追い込むとはね。どうやらわたくしも本気で行かねばならないようだ・・・」
「来なよ!!」
僕とエファナは正面に立ち、一気に踏み込んだ。エファナの拳と僕の刀、それが繰り出された。
エファナの拳から放たれる衝撃波、それだけで僕の刀を受け止め捌いた。
「流石に強いね」
「こう見えても、人類としてわたくしは最強の存在ではあるからね」
更に攻撃の応酬は続いた、だけど。
『ガチィィィンン!!』
僕の振った刀は金属音を上げた。刃がぶつかったのは波打つ剣、ディエゴが突然攻撃に転じた。
「エファナ下がれ、こいつは俺がやろう・・・」
「だが!!・・・分かった、任せよう。何か考えが出来たようだね」
「あぁ・・・」
ディエゴとエファナが入れ替わった。真打の登場・・・
「さぁ行くぞ少年!!」
「来い!!」
ディエゴと僕の剣がぶつかり合った。
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「す、すごい・・・ディエゴのあの攻撃を全て捌いてる・・・」
「ほんとにあいつマジでナニモンだ?」
ディエゴと永零の戦い、RODたちはその壮絶な光景に圧倒されていた。
「礼の友達と先ほど言っていたな・・・まさか、三上は更なる奥の手を用意していたのか?」
「うん、かもしれない・・・でもそれにしては三上様の奥の手と言うより・・・」
「そうだねリーちゃん、私も思った。あの子どことなくみかみんに似てる・・・本当に何者なの?」
ポンサンとベアトリーチェ、シャルロットがそれぞれ疑問を口にしていた。
「ひぃー、ひぃー!!ちょっと永零おいらを置いてくなー!!」
そこに一人の甚平姿のちょっと丸い女の子が息を切らしながら走って来た。
「だ・・・誰?」
「え~、ベアトリーチェおねぇちゃんまでおいらの事覚えてないの?おいらだよおいら!!」
「?」
ここにいる全員が一斉に首を傾げた。
「だー!!もう知らない!!みんなしておいらを忘れちまってよぅ!!ぷんすか!!」
「えっと・・・ねぇ君、その耳って本物?尻尾も・・・」
シャルロットがその子の特徴で気になっていたところを質問した。その女の子は大きな耳が頭にあり、大きな尻尾もぽこんと出ていた。
「じゃなきゃどうすんのさ!!切れってか?切れってか!?」
「・・・もしかして、フォックスちゃん?」
シャルロットの疑問しかない答えに、女の子は目を輝かせて振り向いた。
「そーだよ!!おいらだよ!!なんでみんな分かんないんだよもぅ!!」
「ごめんごめん!!でも、どうしてそんな姿に?」
「これにはふか~いじじょうってやつがあってですね~」
「まぁ、それはどうでもいい。それは後で聞こう」
「おのほ!!」
ポンサンの呟きで、自慢を始めようとしたフォックスは折られた。
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「おりぃやあああ!!」
「っ!!!」
僕とディエゴとの戦いはどんどん激しくなっていった。だけど、互いに攻撃は全て捌きあい、どっちも決定的な攻撃を仕掛けられない・・・まるで、僕の攻撃が全部読まれているみたいな、というより僕の戦い方を・・・こいつは知ってる?
『ガキィィィィン!!』
剣と刀が大きくぶつかり、大きく距離を取った。そして一旦ディエゴは攻撃の手を止めた。
「・・・なんだ、なんなんだこれは。君は一体・・・俺は君を知っているのか?」
「分からない。僕だって君を知らないんだ。でも、もしかしたら知ってるのかもしれない。この世界は僕の知らないことばかりなのに・・・どうしてか知ってる」
「・・・俺にはまだ、思い出せていない記憶がある?」
ディエゴがそう呟くと、ディエゴから更に闘志が消えていった。
「どうだろうね。だったら尚更今戦うのはよくないんじゃない?僕はここの戦いを止めに来ただけ、君たちとこの人たちとの間にどんな事があったのかはよく分からない。だから僕は君たちへの憎しみはそんなにない。君たちも人間だ、殺したくないんだ。退いてくれないか?」
「・・・君のその甘さも、俺の記憶にないどこかで覚えている気がする。最後に聞かせてくれないか?君の名を」
「指宿 永零」
「指宿 永零君か・・・後悔をするんじゃないぞ。我々を見逃したことを、少なくとも半年は我々も手を出す事は出来ないだろう。だが必ず我々は舞い戻る。次は、必ず目的を成し遂げて見せるさ」
ディエゴはこの場から姿を消した。
「・・・ジン、リザヴェノフ」
「・・・うっ」
「くそ・・・」
エファナは倒れていたジンとリザヴェノフを起こした。
「撤退する。我々の負けだ」
「そんな、うそでしょ?」
「嘘ではない。どうにも我々は飛んだ勘違いを起こしたらしい。今日ではないんだ、わたくしたちの復讐がなされるのは」
「・・・くそ・・・分かったわ」
リザヴェノフとジンもこの場から消えた。残ったのはエファナ一人。
「この戦い、見事だった。この勝負は君たちの勝ちだ。だが、戦い自体は終わってはいない」
「なんだとこら?負け惜しみか?」
レオナルドって人がエファナにケンカ腰で言いつけた。
「今は勝てても君たちは必ず敗北する。それだけは言っておく」
そう言い残すとエファナも瞬間移動でここから消えた。それと同時に空を覆っていた雨雲が晴れた。
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「はぁぁぁぁぁぁ・・・怖かったぁぁぁ・・・」
「うわ!!」
僕は腰を抜かしてその場に倒れこんだ。
「だ・・・大丈夫?」
「なんとか・・・ね」
僕は心配そうに見るシャルロットにそう言った。
「しかし・・・君は一体何者なんだ。何故我らの事まで」
「大丈夫、そいつの名前は指宿 永零。そいつは紛れもない僕たちの味方だよ」
ポンサンの質問に答えたのは、空から軽い身のこなしで飛び降りてきた長い前髪を頭の上で一つにまとめている、身長が小さい男性だった。
「ランディ!!おま、どこ行ってたんだ!!」
「僕の所にある人物から急に命令が来たんだ。ここに向かう暗殺刃零號を敵のスナイパーから守れって。それで僕だけ別の場所にいたんだ」
「あ、あの時援護してくれたのは君だったんだ。ありがとう!!」
「べ、別に、ただ命令だったら・・・」
僕はランディに礼を言った。ランディは恥ずかしそうに顔を背けた。
「でも・・・そのバイクは三上様の。永零君、そ、それをどこで?」
「・・・言わないようにって言われてたけど、僕はやっぱり嘘は言えないや。みんな・・・よく聞いて欲しい。礼は・・・三上 礼はまだ生きてる」
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僕は僕の知ってる真実を話した。礼が生きている、これは誰にも言わないでって言われてたけど、この人たちだけなら、言ってもいいでしょ。
僕は礼に会ってから君の事はあまり分からなかったけど、この人たちと出会って、少しは分かった。礼がどんな人物なのか。君はなんやかんや言ってたけど、やっぱり君は友達思いのいい人だよ。
「・・・み、三上様が・・・生きてる・・・それって本当なの?」
ベアトリーチェは今にも泣きそうな顔で僕に掴みかかった。ちょっと怖い。
「うん。彼は生きてる、ここには来れなかったけど、僕は礼に助けられた。そしてフォックスと一緒に旅してたんだ」
「おう!!おいらだって驚いたよ、礼兄ちゃんが生きてるって聞いた時はね!!」
「良かった・・・もう死んでるって、もう会えないってずっと言い聞かせてた。でも、生きてる」
ベアトリーチェはその場に泣き崩れた。それをシャルロットが抱き寄せた。シャルロット自身も少しだけど目に涙が浮かんでる。
「さ、そろそろみんなのところに行こ。ほんの一時的だけど私たちはアウロからこの世界を守った。平和を手に入れられたんだよ。アウロが再び攻めてくるのは最低でも半年、それまでにここを再興しなきゃ。今度はこんなにも被害を出させないわ」
「だな、ここは我らたちの世界だ。奴らの好きにはさせん・・・今度こそ、守り抜いて見せる!!」
ワンコは強く拳を上げた。




