REVENGE OF DEAD(死者の復讐)その3
午前十時三十分 ディエゴ アンダーソンはここにいた。
「・・・まさか君たちが現れるとはね、シャルロット レッドローズ君。俺もここまでは想定できなかったよ。三上 礼・・・やってくれたな」
ディエゴは私に背を向け、この戦場をビルの上から眺めていた。その手は強く握りしめられ、怒りが現れている。
「これが想定されてたら、それこそ私たちに勝ち目がないわ。ディエゴ、今の現状分かるでしょ?あなたの負けよ」
「負け?それはどうかな。確かにこの現状は俺の想定をはるかに超えている。こんなはずではなかった。そう言わざるおえないだろう。だが、君たちが現れたところでまだ、戦力の差は埋まらんよ」
「そう?ディエゴ、あなたは私たちがただ戻ってきたって思ってるわけじゃないでしょうね?」
「なに?」
やはりディエゴ・・・いや、アウロは私たちの事を知らない。死からよみがえる方法、そして、受け継ぐ方法を・・・
「『平和を願いし復讐者、我らは死に、舞い戻る。そしてその全ては平和の為に。その心、炎のごとく燃やさん』これは私たちRODの言葉、私たちは本当に一度死んでいるのよディエゴ。その証拠はこれ」
私は左胸をディエゴに見せた。左胸、心臓部分に残る傷跡を。
「三上 礼君の、流血光刃・・・心臓を貫かれた跡」
「そう、だけどただ心臓を貫かれたわけじゃない。流血光刃には秘密がある・・・あれは、武器なんかじゃない。流血光刃の構造は知ってるでしょ?」
「・・・柄の血・・・」
「少し分かって来た?でも、これは知らないわよね。あれは剣の中に小さい溝があってそれに沿って剣先まで血が流れるようになってるのよ」
流血光刃はただの武器ではない。あれは受け継ぐもの、彼の血を。私たちは彼の子・・・
「血を・・・流す・・・そして心臓に・・・そう言う事か、そんな方法が。やはり彼は異質だ。我々でも気づけなかったことをやってのけるのだからな」
ディエゴは全てを理解したみたい。
「これが死者蘇生のからくり。そしてあなたならもう分かるでしょ?この戦力の差が・・・」
「あぁ・・・完全に我々の負けだ。心臓を貫かれた者・・・つまり、三上 礼君の処刑を受けた者全てが、ここによみがえったと言うのか」
「そう、その規模は千人を超えるわ。今ここに集結したのは先遣隊。かつてリーダーと呼ばれた私たち、そしてもうすぐ全員がここに来る。リヴェンジ オブ デッド、かつてみかみんに殺された復讐者。その復讐心は今、あなたたちに向けて晴らさせてもらうわ」
私は戦う構えを取った。
「復讐か・・・もしかしたら君たちと我らは気が合うのかもしれないな。我々も行動理念は復讐心から来ている」
「確かに、私たちは似てるかもね。死者が生き返る条件はこの世界の住人が、異世界から来た者に心臓を貫かれ、その心臓に異世界の者の血を注ぐ。そしてその時にほんのわずかでも恐怖を持っていてはいけない。それが死者蘇生の条件。何かと似てない?」
「完全覚醒・・・条件は向こうの世界より現れ一月の間で覚醒し、そして召喚後二十年きっかりに一度死ぬ。ほんの一秒のずれも許されない。そして、絶対条件は死の間際に、恐怖心を抱かないことだ。死を恐れぬ者同士か・・・」
「でも、私とあなたは絶対に相いれない。私は絶対にあなたたちを許しはしないのだから」
「・・・素晴らしい威勢だ。だが、君一人でこの俺に勝てるか?アウロの指導者である、この俺に・・・」
ディエゴは振り向き、巨大なフランベルジュを構えた。
「指導者なら同じじゃない、私はリヴェンジ オブ デッドの将軍。シャルロット レッドローズ・・・ディエゴ アンダーソン、この国を脅かす侵略者として、ここで排除する」
互いに睨んだ。思ってはいたけどこいつには隙が見えない。いくらディエゴが今相当疲れていても、そう簡単にはボロは出さない。
「武器はどうした?まさか既に設置してあるという訳ではなさそうだが?」
「もう一つだけ、あなたに言ってなかった事があったわね・・・死から生き返った私たちは彼の子等。世界を始めた者の子供になった事を意味するのよ!!」
私は空中に尖ったダーツの矢のようなものを出現させた。
「・・・っ!!魔法だと!?」
「これが私の新たな戦い方、ダートボムってね!!」
私はそれを一気にディエゴに投げつけた。ディエゴは素早い身のこなしでそれを避け、弾いた。
「魔法と言えど、この程度・・・少々驚きはしたが・・・」
「点火」
私は指をパチンと鳴らすと、投げつけたダーツは全部一気に爆発した。
「っんな!!んだと!!」
流石の反射神経、ディエゴは爆風を最低限のダメージですり抜けた。
「私の魔法は土の力・・・だけど、私は他の人とはちょっと違うわよ。私の生み出す土は爆発性がある。それを組み合わせた武器がこのダートボム。私の指示一つで爆破する」
「そうだったな、爆弾は君の専売特許だ・・・まさか、魔法にまでそれが反映されるとは・・・」
「そう、魔法とは自身の最も強い精神を自然現象となって現れる。リーちゃんが氷の力に目覚めて、アンリエッタが炎に目覚めたみたいにね。そして、遺伝で伝わってきた魔法と違って、私たちの魔法はみかみんから直接受け継いだ力。あなたが相手にしてる魔法の威力は、あなたたち完全覚醒者レベルの魔法と思ってかかって来た方がいいわよ!!」
私は更にダーツを投げる。
「素晴らしい。だが、からくりが分かればどうと言う事はない!!」
「着弾式!!」
私の投げたダーツはさっきのとは違うよ。さっきのは点火式、私自身のタイミングで爆破するタイプのダーツ。そして今のこれは着弾式。避けても、弾いても当たった瞬間に爆発する。
「くっ!!」
「まだまだ!!」
ディエゴは剣の振った衝撃波で私の攻撃を退ける。だけど・・・
「空中停止型!!」
次は空中で静止するタイプのダーツ。私の扱うこの爆弾はあくまでも魔法。ある程度の範囲内ならば、このダーツは自由自在に出現させ、動かせる。
「さぁ、ここにあるのは全部着弾型だよ!!避ける場所はどんどん少なくなる!!」
爆弾とは配置場所、位置、火薬の量とか色んな計算をして初めて意味をなすもの。それを戦闘に用いるって言う事は生半可な思考判断能力では、自身を傷つけるだけ。
ディエゴ、この戦いは最初から私の勝ちだよ。何故なら、あなたは私と出会った時点でもう私の計算の全てに取り込まれてしまったのだからね!!
「っ・・・ここまでとは・・・」
「もう一歩も動けないでしょ?王手よディエゴ」
ディエゴの周囲には私の爆弾が一斉に向けられている。そうなるように私が最初からディエゴを誘導した。
「この指を鳴らせば、このダーツは一気にあなたに襲い掛かる。この数の爆弾の爆発は威力だけで言えばTNT約百キロ分。それだけあればいくらあなたでも死ぬでしょ?しかも爆発は超集中的にあなただけに起こる」
「こんなことが・・・こんな計算外があったとは・・・ある意味感服するよ、シャルロット レッドローズ君。我々の目をかいくぐり、更に反撃を行い、そして今、我々は敗北しようとしている」
「褒めても何もでないよ。私はもう甘くはない。人を殺す覚悟もしっかりと持ってる。あなたが手負いだろうが何だろうが。私はあなたを殺す事に躊躇はないわ」
私は最後に一本ダーツを取り出した。
「そうだ・・・復讐者と名乗るのであれば、そうでなくてはいけない。いい戦いが出来た。その事には感謝するよ」
「最後の言葉、それでいいのね。これで終わり。安心して、墓は用意してあげるから!!」
私は最後の一本を投げると同時に、周囲にとどまっていた爆弾も一気にディエゴに襲い掛かった。
「だが・・・この形での敗北ではない」
「・・・」
ディエゴは最後の一瞬、にやりと笑った。その直後強烈な連続した爆破が繰り出され、ディエゴは姿形が全く見えなくなった。
これで終わった。いくら完全覚醒者でも、あれの直撃を受けた。どう考えても生きてるはずはない・・・でも、なんだか嫌な予感がする・・・
私は勘だけを頼りに距離を取った。
「っ!!」
突然だった。爆破の煙が一気に消えた。それだけじゃない。あまりの風圧で今立ってるこのビルが吹っ飛ばされたかのように崩れた。
「なに・・・今の・・・」
「俺も、ここで・・・こんな形で負けるわけにはいかないんだ・・・俺はこの街は好きだ。だからこそ残そうと思っていたが、そうも言ってられないらしいな。本気を、出させてもらう・・・」
ディエゴはまだ立っていた。体中ボロボロだけど、覇気はさっきよりも格段に上がってる。そしてディエゴの言った意味を私は理解できた。
今のはディエゴが振った剣。構える為に振った剣圧はその衝撃だけでこのビルを吹っ飛ばしたんだ。
「これがあなたの本気・・・」
「そうだ。俺が本気になった場合、ここ一帯全てを吹き飛ばしかねない。だから極力力は抑えていたんだが・・・そうも言ってられないようだ!!」
ディエゴの一振り一振りが、まさに計算外の威力・・・ただ振ってるだけなのに、一撃であらゆるものを吹き飛ばしていく。
「これ以上はさせない!!」
私はディエゴの攻撃に合わせて爆弾を当てる。でも、瞬間で出せる最大威力の爆弾でも、この攻撃は相殺できない!!
私は大きく吹き飛ばされた。
「本来の計画であれば、俺は最初から戦うつもりはなかった。しかしどうにも、何かが足りなかったらしい。記憶が戻り、計画を実行した・・・これでいいはずだったんだ。だが、坂神 桜蘭君はまだ現れない・・・完全に俺の早計だったみたいだ。そして更に計算外の君たちの出現。どうやら、当初の命令を遂行しなければいけないようだ。俺は・・・ここの世界の支配者になろう!!」
ディエゴは大きく剣を振り上げた。
「支配者?・・・冗談、あなた一人じゃ、何も手には入れられないよ!!」
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「・・・またしても・・・計算外・・・」
ディエゴ攻撃は私の前で止まった。
「も、もうあなたの好きにはさせない・・・」
「そうだ。お前は一人だと言った。確かにお前は強い。だが、お前には決定的な弱点がある」
「ディエゴさ~、誰かを信用しないよね~昔っからずっとそーだもん。絶対に一人でやっちゃう我が嫌いなタイプ~」
私への攻撃を受け止めたのは、ベアトリーチェ。そして取り囲むように私たちの友達が、ここへと駆けつけた。
「リーダーか・・・」
「今はそんな呼び方じゃねぇけんどな。俺の事はレオナルド様って呼びな、ディエゴ」
「貴様は昔からそうだった!!貴様はただ笑うだけで、誰にも何も打ち明けようとはしなかった!!貴様の弱さとはそれだ!!貴様は、信用を知らない。故に我らには勝てぬ!!」
「アンリエッタ ヴェロニカ・・・ふっ、信用か。ならば逆に聞きたい。お前たちは何故そんなに信用が出来る?三上 礼君は君たちを騙し続けた存在であっただろう。それが、実は自分たちの為だったと知っただけでどうして彼を信用した?何故戦う覚悟を持った?」
「それが分からなければ、あなたに勝ち目はないわ、ディエゴ」
「我らは、三上を信用したのではない。我とて彼の知らないことは数多くある。だが、一つだけ、最も信用に値する事が一つある。それは三上は心の底からこの世界の平和を願っていると言う事だ。それ以外は分からなくてもいい。ただ一つ、我らと同じ心を持っている。それだけでいいのだよ」
「ディエゴ、我らと言う存在は貴様にはどんな風に映る?貴様には三上 礼という人物の配下としか映っていないんだろう。だがそれは違う、我が何故彼の意志の為に命を賭けるのか分かるか?」
「我らとみかみんは友達だからだよ。友達だから、友達のやろうとしてる事を助けたい。それに全力になるのってそんは変な事じゃないでしょ~?」
犬猫狸トリオが全部言っちゃったわね。でも、結局はそう。みかみんは私たちに何も教えてくれてはいない。でも、私は知ってる。彼の覚悟を、意志を。私はみかみんの親友として、みかみんが成し遂げたかった未来を実現したいの。これは信頼とか、信用なんて言葉じゃ言い表せない。
「・・・ますます理解できないな。ならば、俺のやるべきことは、貴様らのその友に対する意思を、粉々に打ち砕くだけだ。そして教えてやろう。信用が、いかに無意味であるか!!」
こうして、ディエゴ対RODの対決が始まった。
ディエゴの力は、私たちが結集してもやはり凄まじいものだった。だけど、力を合わせた私たちの実力はディエゴとほぼ互角にやりあえた。
奴らが来るまでは・・・
「中々やるな・・・流石に強い・・・」
「いい加減倒れるなりなんなりしろよ・・・」
「どうした・・・先ほどの威勢は、友の意志を継ぐのだろう?」
ディエゴはまだ立つ。だけど、立っているのはやっとの状態。
「あなたも、大分威勢がなくなってるじゃない・・・一気に畳みかけるよ、みんな!!」
私たちは一斉に取り囲んで構えた。その時だった。
「これ以上はやらせん」
突然衝撃波が飛んできて、ワンコたちを吹き飛ばしていった。
「ディエゴは殺させないわ!!」
「おっと~!?」
ニャンタも辛うじて受け止めたけど、大分遠くまで飛んでいった。
「やれやれ、ボスのお守りなど、何故私がやらねばならないのですカ・・・面倒くさいですネ!!」
「貴様らは・・・アウロ!!」
ここに、ディエゴの仲間が駆けつけてきた。これはマズイかも・・・形勢が再逆転。
「どうにも、私たちとあなたたちは似てるのかもね」
リザヴェノフは私たちを見下ろし、言い放った。
「君たちは、三上 礼と言う人物の意志を継ぎわたくしたちと戦うと決めた。我々も同じだ。わたくしはディエゴの成し遂げる未来の為に拳を振るう。ディエゴの覚悟に引き付けられ、我々はアウロとして募った。ほとんど同じだよ」
「だが、我々と君たちとでは、決定的に違う部分がアル。君たちの持つ覚悟とは一つの目的の為に集まり、互いを慰めあう集団としての覚悟ダ。
だが我々は違ウ。我々の掲げる目的はそれぞれバラバラダ。だがそれでも一つの組織として集まっているのは、その目的が一致しているからダ。我々は一つではなイ、だがバラバラでもない。誰かが倒れようとも、目的を達すればそれでイイ。その為に私は命を捧グ。それが我々の覚悟ダ」
エファナとジンがディエゴの前に立ち、私たちの前に立ちふさがった。
「・・・分かったわ。私たちにはあなたたちの覚悟は理解できないけど、あなたたちにも理由があって戦ってるってのはよく分かった。互いに譲れないものがあるから私たちは戦わなければいけない。もしかしたら、平和って言うのは元から存在そのものがありえないものなのかもね。
いいわよ、あなたたちにも譲れないものがある。そして私たちにも譲れないものがある。それを手に入れれるのは・・・」
「戦いに勝った者のみ・・・」
ディエゴは私の言葉に続いた。互いに睨みあい、重たい空気が周囲に立ち込める。
「みんな・・・行くよ!!」
「さぁ・・・行くぞ!!」
互いに一斉に駆けだした。これが最後の戦いになる。もうこれ以上、誰も倒させたりはしない。手に入れるのは勝利。そして・・・平和を・・・ここで全部終わらせる!!
「その戦い、待った!!」
突然の出来事だった。私たちが攻撃に移る瞬間の出来事。私は投げようとしたダーツ・・・いや、もうすでに投げたはずなのに私はこれを手に持っていた。そしてその瞬間に先ほどまでいなかった人物が私たちの間に入り、攻撃を止めた。
いや、そうじゃないわ。全員攻撃が私と同じようにキャンセルされてた。どうなってるの・・・私は確かに。
「誰もこれ以上の戦いを望んでない。君たちアウロだったよね、君たちもこれ以上の犠牲は出したくはないでしょ?ここは退いてくれないかな。今はそれが一番だと思うんだ」
「君は・・・」
そこにいたのは、真っ白な髪の、手に白く輝く日本刀を持った少年だった。




