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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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ヴォイド 作戦外の任務

 中央外れ 午前十時


 「何をしてるんだ?」


 「ぼくは待ってるだけ・・・もうすぐ会える。それまでは何もしない、おまえともあそばない」


 俺はアイシー ローゼンシュティールと言う奴と共にこの中央の外れにあるビルの屋上にいた。ディエゴ曰く彼女の察知能力は匂いや、視覚などとは比べ物にならないほど鋭いらしい。ほぼ第六感だけで求める相手を探せるらしい。だが変な奴だ、こいつは裏切り者の始末などを任されているらしいが、とてもそうは思えない。何かを待ってるらしいが、ただぼーっとしてるだけにも見える。


 「まぁ、任務の邪魔をしなければお前が何しようがどうでもいいが」


 「それでいい、おまえとは遊んでもつまらなさそうだもん」


 アイシーはしばらく行方不明で組織全体で捜索していた、俺がたまたまみつけたんだが、発見されたときのこいつはボロボロの格好で、何があったのかと質問しても、ニヤニヤ笑って『何もなかった』としか言わない。それ以降はずっと何かを待ち遠しくしているかのようにソワソワとしてるだけだ。


 「俺の事はどうでもいいが、だが大丈夫か?ずっとキャロットが噛みついてるが」


 「きゃる!きゃる!!ぐううう!!」


 俺自身はこいつが何しようとかまわないが、流石にこれは気になった。普段遊んでばかりで人懐っこいキャロットだが、アイシー相手だとやけに攻撃的でずっと噛みついてる。


 「そういえば痛い・・・この子何?」

 

 ・・・この組織、変な奴しかいないのか?


 「俺に質問するな、俺もよく知らん、勝手についてくるんだ」


 「ふーん」


 アイシーは生返事するだけだ。そしてしばらくあちこち噛みつかれいたが、突然キャロットを掴んだ。


 「いい事思いついた・・・なら、ひまつぶしであそべる?」


 「きゃ!!きゃる!!?」


 アイシーは顔面をキャロットの目の前まで持ってきた。あまりの突然さにキャロットは驚き逃げようとしているが、アイシーはしっかりと両手で持って離さない。にしても顔が近い、急にされたら誰でも驚くだろ。


 「ぼくはなにもしないよ?・・ほんとうにあそぶだけ、一緒に。だめ?」


 「きゅ・・・う?」


 アイシーはキャロットで、問答無用に遊びを開始した。よく分からんが手遊びのようだ。キャロット自身は分かってなさそうだが、強引に合わされている。


 「きゅ~・・・」


 ・・・にしても、何故俺はこいつらとセットなんだ?


 市街地の方は各地で戦闘が起こっているようだ。戦闘と言うよりも一方的な侵略に見えるが、だが少なくとも反抗勢力はいるようだ。


 ここには逃走する住民たちが下を走っているが、俺にはそいつらの抹殺の命令はきていない。ただここで待てと言われているだけだ。ここには誰もいなさそうだが・・・


 「ん?」


 通信が入った。


 『よ、そっちの守備はどうだ?』


 「ジョシュか、こちらはつまらない程何もないぞ?何故ここに俺を置いた?」


 『いやぁ、これは俺独自のルートで仕入れた情報なんだけどさ、どうにもそこの付近に近づいてる謎の勢力がいるみたいでさ。ヴォイドにはそいつらの排除を願いたいんだ』


 「謎の勢力?」


 『これまだ誰にも言ってないんだけど、どうにも俺たちの事を知ってる奴らがいて、この襲撃も知ってる奴がいるらしいんだ』


 「だとしたら何故俺だけここに?そんな情報は即刻ディエゴに言うべきだろう」


 『いやそれが出来なくてさ。他の完全覚醒者は外せない任務があるし、ディエゴは連絡つかないし・・・シィズとイーサンは裏切ったし、だからあんたにお願いしてんのさ。アイシーもセットなんだろ?』


 つまり、余ってたからここに信憑性のない情報の対策として俺を置いたのか・・・別にかまわないが、舐められたものだ。それにしても意外なのはシィズとイーサンが裏切っていた事だ・・・先ほど連絡があった。


 「さっきからキャロットと一緒に遊んで少々邪魔なんだが」


 『大丈夫、少し我慢してくれ・・・奴は必ず来る。じゃな』

 

 通信が切れた・・・全く、俺をパシリのように使いやがって。本当に来るんだろうな。ただ待ち損だったらジョシュには少々お仕置きでもしてやろうか。


 しばらく待っていると、俺の疑心は晴れた。


 「・・・誰か、狙ってる」


 ずっと遊んでいたアイシーが呟いた。


 「ぼくを・・・じゃましようとしてる。させない・・・!!」


 「おいおいおいおい!!」


 急にアイシーはビルから飛び降りようとした。俺は思わず首根っこを引っ張り後ろに倒した。その直後だった。


 『バズン!!』


 「なに?」


 壁に弾痕が出来ていた。どうやら、ジョシュの読みは当たったようだ。俺はアイシーとキャロットを抱え壁際に伏せた。


 だが、それにして変だな・・・俺の居場所までは分かるわけないだろ・・・


 まさか、組織内部に内通者がいるのか?俺の居場所は、ディエゴと指示したジョシュのみしか知らない。イーサンとシィズが俺の居場所は知らないはずだ。だから他の誰かが・・・


 「あのさ、どいて・・・あいつころせない」


 「あほか貴様は、俺はお前の実力など知らんが、これほどまでの精密射撃が出来る奴はそういない。今出れば辿り着く前に即やられるだけだ。お前はしばらくそこにいろ」


 「・・・・・・・」


 にしても、今の銃声は完全に無音だった。サプレッサーを使っているのか?にしても、この貫通力は・・・くそ、鏡持ってこれば良かったか・・・


 「アイシー。お前女の子だよな?」

 

 「どうでもいい」


 「鏡はあるか?」


 「ない」


 駄目か、女の子は鏡を絶対持ってるって言うのは嘘か・・・まぁ、こいつは女の子らしくはないが・・・


 「きゃーるるん!!」


 「・・・どっから持ってきた?」


 いつの間にかキャロットが嬉しそうに手鏡を持ってプカプカ浮いている。俺はそれを貰い、壁の上に上げた。


 『バリン!!』


 「っ!!」

 

 上に上げた瞬間に鏡が撃ちぬかれた。

  

 「むきゃ!!きゃるるるう!!むきゅーーー!!」


 キャロットは地団太を踏んだ。必死に探してきたのにすぐに壊され怒ってるみたいだ。


 「・・・今の弾丸はなんだ?弾丸自体にわずかにスパークが見えた」


 そしてこの弾頭だ。こいつは.22LR。最小のライフル弾だ。射程は大体140メートルも行かないはずだ・・・しかし敵の撃って来た場所はかるく600メートルは超えている・・・火薬量を変えてもこうはならないだろ・・・


 「キャロット、少しそこでアイシーと一緒にいろ」

  

 「きゃる?」


 「仕方ないからあそんであげる」


 「きゃー!!」


 またキャロットはアイシーに遊ばれていた。


 俺は壁の淵にライフルの先端を置き、スコープを覗いた。


 ここを狙える場所は、あのビルしかない・・・だがあそこからどうやってこの威力で弾丸を届かせている・・・


 俺がいくら目を凝らしても、敵は見えない・・・だが


 『バズン!!』

 

 「っ・・・やはり、あそこから飛んできている。だがなんだ?マズルフラッシュも見えない。フラッシュサプレッサーを付けているのか?いや・・・」


 確かにマズルフラッシュは見えなかったが、代わりに弾道だけははっきり見えた。青白いスパークが弾道に残っている。


 ・・・まさか、電磁加速砲(レールガン)か?しかし、向こう側だろうがこちら側だろうがまだあの兵器は作られていない。第三勢力でもいるのか?


 「・・・手こずってる」


 アイシーは俺を目を細めて眺めていた。腹立つな・・・


 「なんだ、策でもあるのか?」


 「ぼくはあいつに興味がない、それに約束してるからぼくは手を出さない・・・」


 「そうかい・・・」


 興味がなければ動かないか・・・少し俺に似ているか?


 それよりもだ・・・あいつの目的はなんだ?疑問は多く残るが、仕方ない・・・そろそろ反撃に移るか。


 場所は大体把握した・・・俺はボルトを引いて弾丸を装填した。奴は姿を出した瞬間に撃って来た。大した早撃ちだが、俺の早撃ちではどうだ!!


 振り向きざまにトリガーに指をかけ、ストックを肩に着けトリガーをすかさず引いた。


 『バガァン!!』

 

 「・・・おい、嘘だろ」


 今の瞬間に理解できたことは2つ、1つは弾丸を空中で当てて相殺したこと。こんな芸当が出来るやつがこっちにはいるのか・・・正直な話、俺はこの事に嬉しさを覚えた。


 そしてもう1つは、奴はライフルを使っていない。手だけで放っていた。親指と人差し指、中指で弾丸を挟み、指を鉄砲の形にして、その指との間をレール代わりにこの小さな弾丸を、凄まじい破壊力に変え放ったんだ。スコープ無しでここまでされたのは、少々悔しさを感じる。


 「成程、魔法をレールガンの動力に使うか・・・こういう場合、敵ながら天晴と言うんだったか?」


 俺自身感心するのはいいが、問題は対処法だ・・・それに、奴の目的。今のは俺を撃とうと思えば撃てたはずだ。奴はわざわざ弾丸に弾丸を当てた。まるでパフォーマンスを披露しているかのようだ。


 まさか、俺たちをここにとどめておくための時間稼ぎをしているのか?


 「・・・この、感じ」


 アイシーが何かを察知した、そしておもむろに立ち上がった。


 「やっと・・・やっとあえる!!」


 「おい!!何をしている!!」


 俺は再び抑え込もうとしたが、異常なほどのパワーで振りほどかれた。


 『バガァァァン!!』


 「んぐあ!」


 そしてそのすぐ後だった。今度のは銃声だ、その銃声の後アイシーは頭を撃ちぬかれ、倒されていた。


 「・・・奴の狙いはアイシーか?こいつは何かをずっと待っていた。それがここに向かっている」


 そう言う事か・・・目的が見えた。


 「バイクのエンジン?」


 こっちに近づいてきている、ここから外へと行く車やバイクは分かるが、これはかなりの速度でこっちに近づいてきている。この音は確か、サイドカー付き・・・R75か? 

 

 「近づいてる・・・約束は、守った!!」


 「おい!!その状態では!!」


 案の定、ふらふらと立ち上がったアイシーにまた弾丸があたり、ごろごろと転がった。


 「あいつ・・・アイシーがあのバイクを狙っていると知って・・・」


 読みは当たっているようだな、奴の目的はあのバイクをここを通す事だ。


 「おい!暴れるな!!!」


 「だめ!!約束・・・守ったのに!!行かせろ!!」


 あのバイクの奴・・・一体こいつに何をしたんだ?この様子、相当だぞ?


 俺は強引にアイシーを押さえつけた。


 「くそ、これは任務ではないが・・・」


 だから誰かと行動するのは嫌なんだ。必要以上の仕事を押し付けやがって・・・つまり、あいつが中央に行くのを阻止すればいいと言う事だ。


 リスクは高いが・・・ここでこいつに暴れられるよりかはマシだ!!


 俺は膝で立ち銃口をバイクの方へ向けた。距離はまだ800メートル以上ある。


 『バガァン!!』


 「っ!!」


 案の定俺も標的には変わりないか・・・面倒だな、標的が同時に二つとは、だがこんな状況は幾度もあった。俺は向き直して奴のいる方へ弾丸を放った。今のでひるんだ・・・俺はすかさずボルトを引いて次弾を装填。


 狙いは外さん!!


 俺はバイクのタイヤに向けて撃った。ここまで集中してしまったのは久しぶりだ。おかげで目で弾丸が追えた。当たる。


 銃弾は完全に捉えた。だが・・・


 「馬鹿な・・・消えた?」


 バイクに銃弾が当たる瞬間だ。俺の目が間違っていなければ、バイクはその瞬間に消えた。


 「ありえない・・・どこに行った?」


 「きゃる!!」

 

 キャロットが叫んだ、指を指している。俺がいる反対側方向だ俺はそこへ駆けつける。


 「どうなってる・・・あいつは当たり前のように、別の道路を走っている・・・」


 俺は銃を構える、まだ間に合うはずだ。直ぐに・・・!?


 スコープを覗いた瞬間気が付いた・・・


 「撃ち切っているだと・・・」


 俺の銃は既にボルトを引ききった状態になっていた。そして弾倉はすでに空になっている・・・そんな初歩的なミスだと?いや、さっきまではあと3発あったはずだ。


 すぐさま予備弾薬を入れたが、もうすでに射程圏外にバイクは行ってしまっていた。


 「・・・あいつが邪魔しなければ・・・殺してやる、排除、排除・・・はいじょ・・・はいじょ!!!」


 アイシーは血をダラダラと流し、怒りのままビルから飛び降りた。だが、もうすでに撃ってこない・・・奴も逃げたか。


 「礼はぼくの・・・ものだ、おまえのじゃない!!おまえなんかいらない!!消してやる!!!」


 「こわ・・・」

 「きゃる・・・」


 アイシーのあまりの怒りを見て俺は初めてキャロットと意見が一致した。というか、レイって誰だ?さっきのバイクの奴の事なのか?


 にしても・・・今のはなんだったんだ?あのバイクの奴の仕業なのか・・・瞬間移動、でもなさそうだ。さっきのあれは、そんなもののレベルではない。もっと・・・ 


 そしてしばらくたった後、俺に一つの通信が入った。






 「作戦終了・・・了解」


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