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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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イーサン シィズ 裏切り者

 イーサン 中央午前九時三十五分


 「クソ!!」


 空から降って来た光はビルに直撃し、その衝撃でここにいた全員が吹き飛ばされた。


 私はその光の方を見る。


 「なんだ・・・あれは」


 遥か上空、曇天の中に私は見た。巨大な影を。


 ほどなくして地面に落ちた。こういう時こそ完全覚醒というこの体には感謝だ。50階はある建物だが、軽い段差から飛び降りたかのように着地した。


 周囲を見渡すが他の連中がいない。どうやら全員別々の方へ飛んだようだ。


 「してやられた・・・麗沢君が危ないな。急がねば」


 私は即座にアダムスビルへ向かおうとしたが、


 「なに、ビーストだと!?」


 私の目の前にビーストが現れた。ビーストと言っても『子』チルドレンの方だ。どうやらこの襲撃、ビーストの完全なコントロールの実験目的でもあるようだ。


 あちこちから悲鳴と咆哮が聞こえる。仕方ない、全ては救えないが、やるしかないな。出来る限り被害を抑えねば。


 私は9ミリ弾の拳銃、ベレッタPx4を両手に持った。


 『ダン!ダン!ダン!ダン!』


 一発一発を、ビーストの急所に当て、一撃必殺で道を突き進んだ。


 「よし・・・」


 ここにいるビーストは倒した。


 「あら、どこへ行くのかしら?」


 突然水の弾丸が飛んできた。私はほぼ反射的にそれを避け、一発撃ち込んだ。


 「リザヴェノフか・・・」


 「いきなり眉間に撃とうとするなんて、随分な挨拶ね」


 リザヴェノフは銃弾を指で摘まんで、私の弾丸を防いだ。


 「そんな怖い顔しないでよ、私はあなたを今殺す気はないわ。少しだけお話しましょ?この襲撃の本当の意味を教えてあげる」




 シィズ 同刻


 「あいてててて・・・ミスっちゃった・・・」


 私はさっきの光で吹き飛ばされ今、がれきの中から出てきた。


 「なんなのあれ?雲の中に、何かいる・・・大きいなんてものじゃないわ」


 「気になるか?あれが」


 「・・・っ  エファナ・・・」


 私の後ろには呑気に空を見上げているエファナ アンダーソンがいた。


 「あれを呼び出したと言う事は、やはりディエゴは完全に思い出したようだな・・・」


 今のエファナに敵意がない。裏切り者が目の前にいるのにエファナは感慨深そうに空を見ていた。


 「思い出す思い出さないってどういう事なの?あなた、一体ディエゴの何を知ってるの?」


 ディエゴは確かに謎の多い人物だ。だけどそれに匹敵するほどこのエファナも不思議な存在。分かっているのは彼は不老不死を完成させるのに賛成だと言う事だけ。他については干渉されるのを嫌うので、分からないの。


 「それについては、私も同じ意見だヨ、エファナ」


 「ジン・・・」


 「全く・・・この街を襲撃し、全政権を乗っ取れという命令のはずなのニ、どうして裏切った仲間を追わねばならんのダ?面倒くさい・・・」


 タイミングを見計らったかのように、ジンも現れた。まずいわね、2人相手は流石に無理よ・・・


 「あぁ、この襲撃の本当の意味、君たちには言ってなかったね。この事について知っているのはわたくしとリザヴェノフ、そして一応ビリーだけだからね。これはディエゴの本当の計画の第一段階なのだよ」


 「ディエゴの本当の計画・・・」


 「ほう、私たちは仲間だと言うのに、陰に隠れてこそこそとなにかしようとしていたのかネ」


 「まぁそんなとこだ、とはいってもそう言う君もそうだろ?我らアウロの目的である不老不死、それをファミリーに送る。君への命令はそれのはずだ。上海マフィアの幹部さんよ、正確にはガイアファミリー、上海支部、幹部 ジン ワントゥ。さしずめシェン リーの命令だろう?」


 「・・・知っていたか。やはりこの組織の団結力は皆無だナ、誰も彼も信用できないネ」


 「そうだね、ま、今はその事はどうでもいい。それより上のアレが気になるのではないかい?」


 私たちは同時に上を見上げた、それとほぼ同時に雨が降り出す。


 「そうだな、是非聞かせてもらいたイ・・・上のアレも、ディエゴの真の目的とやらをネ」


 「いいだろう」

 



 イーサン 午前九時四十分


 「あの上のあいつは、フィアーズビースト。マザービーストの一種、海の支配者であるあのでっかいイカちゃん、クラーケンとは違って、あいつは大空を支配する。名前は『ウロボロス』、正式なコードは、マザービースト・タイプドラゴン ウロボロス。不老不死を目指す私たちに最もふさわしい名前を持ったビーストよ」


 リザヴェノフ・・・一体何者なのだ?ウロボロスというビーストは聞いた事すらない。やはり最初から私は疑われていたと言う事か。


 「ウロボロス・・・不老不死の象徴の自身の尾を噛む蛇か。あの巨体、確かに組織の最終目的を冠す者としての強さはありそうだな。しかしマザービーストまで支配下に置くとは・・・まさか、クラーケンも既に?」


 「あれはまだよ。あの子も実際には支配できてるわけじゃないのよね。だから自由に攻撃の命令は出来ないの。だからさっきも私たちごと攻撃されたのよね。あの子は今日みたいな分厚い雲の中でしか生息できないからね。今日は全国的に曇りか雨・・・だからこそあの子は暴れられる」


 「待て、お前の言い方、まるで組織の中に天候を支配する覚醒者がいるってことか?」


 天候の支配だなんて聞いたことがない。しかもセカンダビリティの支配力は同じ能力でも覚醒者と完全覚醒者とで規模が変わる。天候の支配、しかも全世界に影響を出す者は完全覚醒者しか考えられない。


 「そう言う事。ま、誰がやってるのかは分かんないけどね。それを分かってるのはディエゴだけ。本当の彼は誰がどんなセカンダビリティを有しているのか見抜く力がある。天候の支配者しかウロボロスは呼び出せないわ。そしてその天候の支配者を見つけ出す事が真の目的への第一歩なの」


 「真の目的・・・リザヴェノフ、ディエゴは記憶を取り戻したと言ったな。彼の記憶とはなんだ?一体何をしようとしている」


 「世界平和・・・とでも言えば、聞こえはいいかしら?」


 「平和だと?散々この世界と、向こうの世界の人間を巻き込んだ挙句、今のこの状況を引き起こして、これのどこに平和があると言うんだ?」


 まさかこれは平和の為に必要な犠牲とでも言うんじゃないだろうな。犠牲の先に得たものは新たなる犠牲を生むだけだ。


 「そうね、そう見えるかも。襲っておいて平和もクソもないわよね。そう言えば日本には『木を見て森を見ず』ってことわざがあったわよね」


 「あぁ、一つの物事に囚われ全体を見失う事だ。それと今のこれが関係あると言うのか?」


 「そ、この襲撃は何のためにやってるのか分かる?世界を乗っ取るだなんてそんな事じゃないわ。待ってるのよ私たちは。もうすぐここに『平和を願いし者たち』が揃うわ、それを待ってるのよ」


 平和を願いし者?まさか、この襲撃は桜蘭君や麗沢君をおびき出すための罠か?


 「待った先にあるものは・・・」


 「私たちの望む真の平和・・・これは復讐であり革命なの、全ては平和の為に」


 リザヴェノフは拳を胸に当て目を閉じた。『全ては平和の為に』この世界の者がよく使う言葉だ。リザヴェノフが何故それを成し遂げたいのかは分からないが、彼女にはすべてを巻き込み、人類すら滅ぼしてもいいという覚悟がある。もしかしたら、彼女にとっては人類を滅ぼす事が、平和への道となっているのか?


 「ではもう一つだけ聞かせてくれないか?ディエゴの過去、記憶とはなんだ?そもそもだ、ディエゴ アンダーソンとは何なんだ?」


 「それは・・・」




 シィズ 午前九時五十分


 「ディエゴの正体、わたくしもそれほど彼を知っているわけではない。ただ目的を共にする同士というだけだ。分かっている事と言えばディエゴ アンダーソンという人物は、500年以上前からこの世界にいる。ディエゴは1945年、第二次世界大戦末期頃に生まれた。親はいない、戦争孤児だ。


 そして、1967年、ニヒル アダムスとほぼ同時期にこの世界に来ている。君たちは知らないかもしれないが、この世界を最初に発見したのはニヒル1人ではない。彼女たちだ。ディエゴもその一人と言われている。


 しかしだ、ディエゴはニヒル アダムスが失踪する時に、自身の記憶を封じた。その理由までは分からなかったが。だがその時彼は、やがて思い出すための算段を立てていた。そして、今彼は記憶の導を辿りここまで来ている。この革命を成し遂げるための記憶だ」


 エファナは澄ました顔で語ってるけど、いつになく語気が強い気がする。エファナにリザにビリー、この人たちを惹き付けるディエゴ、彼は一体何者なの?


 「導ね・・・ディエゴは、その記憶を取り戻すためにずっと動いてたって事?導ってなんのことなの?」


 私自身の記憶を探ってもディエゴが記憶喪失の為に動いてるなんて思ったことはない。いつも何かを求めまっすぐ前を見る。そんな男だ。それは一片の曇りなく目的が見えてる人の目だった。未来を見る目、そんな彼だからこそ私は記憶を失っていると全く考えなかった。


 「導の秘密は、あの少年が握っている。いや、彼こそが導と言うべきか?」


 「少年?まさか、三上 礼の事カ?」


 私は内心焦った。もしかしたらもう既にディエゴは三上君が生きている事に気が付いているのでは、そう考えた。だが、その答えは意外だった。


 「残念、それは違うよジン。確かに三上君の秘めた能力は特別だ。異常なほどにな・・・だが、彼自身はこの世界と繋がりがない。ただの一般人だ。しかしあいつは違う。


 坂神 桜蘭・・・彼こそが導だ。シィズ、覚えているか?ディエゴはやたらと彼に固執していただろ?」


 言われてみれば・・・ディエゴは、桜蘭君を相手にしていた時異様なほど楽しそうにして戦ってた。元々戦闘狂的な一面があったからそれだと思ってたけど。でもどうして桜蘭君を、確かにニヒル アダムスの血縁ではあるけど・・・


 「確かにそうね。ディエゴは前の実験の際、彼は桜蘭君を実験対象に選んだ。他の有り余る候補の中から、普段の彼にしては変だった」


 「あぁ、ディエゴがあそこまで固執したのは初めてだ。その時にわたくしも知ったのだ。坂神 桜蘭は我らの目的を果たす為の導なのだとね」


 すこしづつだけど話が読めてきた。理解できないことの方が多いけど、つまり今こいつらは桜蘭君をおびき出すために動いているんだ。その為にこの街を襲っている・・・


 「たった一人の為に・・・こんなにの多くの人を犠牲にしたの?」


 「そう言う事になるな。いや、そうでもないか・・・これは復讐であり革命、『命の王』が全てを変える。その時こそ、真の平和への道が開かれる。ジン、シィズ。君たちも君たちの思うがままに動くといい。君たちの行う全ては、やがて平和へと繋がるのだから


 さて、もうすぐあの子も来るはずだ。迎えに行かなければないな・・・」


 「ん?どこへ行こうというんダ?」


 ジンがエファナの腕を掴んで止めた。恐らくジンの事だから、相当な力で掴んでる。でも、エファナは全く表情を変えない。


 「離しなさい。君ではわたくしには勝てませんよ」

 

 口調が変わった!エファナの拳・・・裏拳が来る!!


 「ジン!!手を離して!!」


 「っ!!」


 私は思わず叫んでいた、別にジンは私に協力する気は毛頭ないのだろうけど、無駄に犠牲を出すほど根性は腐ってない。


 ジンはその場に咄嗟の判断で伏せた。その直後に一陣の風が吹いた。裏拳は衝撃でビルの壁を軽く吹き飛ばした。


 「風の魔法を纏った裏拳、危ないじゃないカ・・・裏切り者のシィズを攻撃するならわかるガ、貴様なんのつもりダ?」


 「今のがたとえディエゴであったとしてもわたくしは攻撃をしました。先ほど言いましたよ?自分の思うがままに動くんだと。わたくしを止めたいのならそうしてみなさい。わたくしに協力したいのならそうすればいい。自身の正義を貫けばいい。


 それにジン、今のが風の裏拳だと思ったらいけません。今のはただの拳圧ですよ?また会えたら会いましょうか」


 「お、おイ!!」


 私とジンをこの場に置いて、エファナは一瞬で姿を消した。


 「行っちゃった・・・ねぇジン。あなたどうする気?向こうは仲間意識なんて更々ないようよ?」

 

 私はなんとなく、反撃にあったジンに声をかけた。向こうに裏切られたみたいなものだ。うまくいけばこっちについてくれるかもしれない。


 「勘違いしないでくれシィズ。俺はそんなので組織を裏切ったりはしないヨ。さっき言ってただロ?俺も俺のやりたいようにやル。この世界の力を、ファミリーに・・・」


 ジンもその場から立ち去った。私はジンを止めたりはしなかった。正直な話意外だと感じた。私たちに寝返らなかったことがじゃない。普段やる気がなくて、ネチネチした性格の彼が、自身の身内をすごく大切に思っていると言う事がだ。


 この状況になって初めて分かった。全員何かの正義を持っている。それを正しいと思って行動している。結局は全員が裏切り者なんだ。だったら私も全力で正義を貫かなきゃ。この戦いは貫ききれなかった者が負けだ。


 


 イーサン 九時五十五分


 「私もそろそろ行かないとね。もう時間が無い・・・」


 「リザヴェノフ、お前まさか麗沢君の元に行こうとしているのか?」


 こいつの目的、リザヴェノフの目指す正義。それは自身の歪んだ愛情か・・・


 「えぇ、私は彼を愛してる。だから手に入れるのよ」


 「それが動くことのない、返事もすることのない、朽ち果てるだけの人形でもか?」


 私はリザヴェノフの能力を知っている。死者を操る能力。そして彼女はその力で愛した人を殺し、自身の元へ置いている。物言わぬ死者を愛する者。それが ウラジーミル リザヴェノフという女なんだ。


 「えぇ、それの何が悪い?世界が終わる時、愛する誰かと一緒にいたいって思うものでしょ?それと同じよ」


 「同じな訳があるか。お前は・・・」

 「同じよ」

 

 私が反論する前に、強引に反対された。


 「私は誰からも、心からは愛されない。私にとっては生きてようがいまいが、関係ないのよ。誰も何も言わなくていい。ただ私のそばにいてくれればそれでいい。生きてる人間ではそれが出来ないじゃない。


 みんな私から奪っていく。私が声をかければ、みんな私を奪う。だから私が奪い返してるの。私が求めるのはたった一つ・・・そしてそのたった一つを持ってるのが麗沢ちゃんだもの・・・手に入れて見せる。そろそろ、そこをどいて」


 リザヴェノフ・・・お前は一体何を求めている?一体何がお前をそんな歪んだ思想に変えたんだ?


 「ならばますます行かせる訳にはいかないな」


 せめてここは何とか食い止めなければ・・・私は銃を握りなおした。


 「邪魔だって言ってるでしょ?聞こえなかったかしら・・・私、戦いは弱いけど、誰にも負ける気はしないわ」


 「ちっ!!」


 背後から急に手が伸びてきた。私は咄嗟に避けた。襲ってきたのはリザヴェノフの操る死体だ。こいつらは既に死んでいるから殺気などがない。更にどんなにバラバラにしても体のどこでも筋肉が動けばどこまでも動き続ける。かなり厄介な相手だ。


 「あなたはこの子たちの相手をしてて。あ、ビーストちゃんも一緒よ」


 「くそ!!待て!!」


 私は死体を蹴散らし追ったが、ビーストの介入もあり、リザヴェノフに逃げられてしまった。


 「・・・くそ、このままこいつらを放置しては街に被害が・・・仕方ない。僅かな可能性だが、麗沢君に賭けるしかない・・・!!」


 私は死体とビーストを倒しながら先に進んだ。

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