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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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ナターシャ 死を支配する者 その2

 中央 午前十時二十分


 完全覚醒者、話だけしか聞いてはいなかったがここまでとは思いもしなかった。ウラジーミル リザヴェノフ、彼女は組織の中では弱いと言っていたが、この力はもはや無敵に近い。こやつはこの時を待っていたのか、この襲撃で既に命を落としてしまった者もいる。その全てが彼女の味方となってしまうのだ、死体を操る。これは早急に倒さねばマズイ・・・


 「さぁ一緒に行こう」


 周囲の死体はズルズルと吾輩たちに近づく。


 「いいか、全員ここを離れるでないぞ。一つに纏まり迎え撃つ!!」


 「それはそうだけど、こいつら、死んでるんだろ?どうやって倒すんだ?」


 そんな事を聞くな、吾輩にも分からん。とりあえず奴らを動かす足を狙うしかないと踏んでいるが・・・


 「むぅ、これはまるでゾンビ映画みたいでござるな・・・」


 「ゾンビ?黒魔術とかの本に出てくる奴か?」


 レイサワの呟きにエンリコが反応した。

 

 「そう、ゾンビの元はと言えば黒魔術を用いて死体を使役し、死んでもなお働き続けるという拷問のようなものであったが、昨今はウイルスによる暴走でのパンデミックの犠牲者として出てくる者たちをゾンビと呼ぶようになってきて・・・」


 「・・・それで、これと何か関係があんのか?」


 「お、そうであった。話が脱線するところであった。つまりでござる、こやつらの弱点は拙者は頭とみている。何故なら、ゾンビモノは大体頭を吹っ飛ばせば倒せるからでござる!!」


 「おい、信憑性が全くないぞ?」


 ごもっともだ、いや、待てよ?だがありかもしれぬ。生物は頭脳による電気信号で筋肉を動かしている。それならばその司令塔となる頭を破壊すれば行けるのではないか?


 「それに賭けてみよう。レイサワよ」


 吾輩はショットシェルをマガジンチューブに込め向かってくる奴らの頭に銃口を向ける。


 『ズバァン!!』


 死体、ゾンビの頭を吹っ飛ばした。


 「うおぉ、ヘッドショット・・・」


 死体を確認する。動く様子はない・・・いや、まて。


 「そ、そんな事が・・・」


 むくっと頭のない死体は起き上がって来た。 


 「言ったでしょ?私たちは一つ。あなたたちはここで死ぬの・・・私と一緒に!!」


 ゾンビどもは一斉に襲い掛かって来た。


 「足を狙え!!四肢を断つんだ!!奴らを近づけるんじゃないぞ!!」


 「うをおおおお!!」


 エルメスは薙刀を振り回し、エンリコは体ごと回転させ鎌で頭を撥ね、腕を切り落とす。そしてレイサワは流血光刃による魔法でゾンビを吹き飛ばし接近を阻止した。


 意外といけるかもしれん。奴らの動きは速くはない。数は確かに多いが慌てず一体一体確実にやれば、多少の余裕は生まれる。

 

 吾輩のランダルの弾倉が尽きた。


 「ふぅん!!」


 吾輩はバレルを掴んで銃を振り回しゾンビの一体を殴り飛ばした。衝撃で他の奴らも巻き込まれ地面に横たわる。


 「このランダルでは多人数相手では分が悪い・・・ではこいつを使うか!!」


 これはあまりやりたくはなかったがな・・・吾輩はランダルを投げ飛ばしトレンチコートの中から授かった新たな武器を出した。


 一つは水平二連と呼ばれる中折れ式のショットガン。それを左手に


 「ぬぅおおおおおおおお!!」


 「な、なぬ!?ナターシャ殿の筋肉が!!どんどん膨れて・・・」


 「はぁああ!!」


 吾輩はトレンチコートを脱ぎ捨てた。破れてしまうのでな。


 これはいわゆるパンプアップに近いものだ。気合で筋肉を爆発的に肥大化させる。これをやるとかなりの体力増加に繋げられる。そして、容易に片手でこいつも扱えるのだ。ただし、女子力が無くなるというのが玉に瑕だ。今度は女子力をしっかりと磨いてあの人に会いたいというのに。


 「そ、それは!?」


 吾輩の右手には黒くて長い、弾倉部分が丸いドラムのような弾倉の連射可能なショットガンを取り出した。


 「フルオートショットガン・・・食らうがいい」

 

 『ドムン!!ドムン!!ドムン!!ドムン!!』


 吾輩はショットガンを乱射した。ゾンビは吹き飛ばされ。色んな部分が引きちぎれる。死体を撃つのは心が痛むが、そんな事は言ってられぬ。心の中で謝罪するしかないのを許せ。


 弾倉が空になれば左手の水平二連で撃ちぬき、その間にマガジンを交換、装填する。そして乱射し、二連をバキっと折るようにバレルから弾薬を取り出しあらかじめ投げておいた新しい薬莢を筒の中に落とし元に戻す。こうすれば、ほぼリロードに時間をかけることなく連射が可能だ。


 気が付けばゾンビはほぼ動けなくなっていた。


 「うわ・・・ぐっろ」


 「仕方あるまい、こうしなければならなかったのでござるから・・・それににしても、酷いでござるな。死人を弄ぶとは・・・」

 

 同意見だ。吾輩はリザヴェノフを睨んだ。だが、まだあのどす黒い顔は崩していない。


 「これであとは貴様だけだ。ウラジーミル リザヴェノフ」


 「そうかしらね・・・私は死体を操るのよ。言い換えれば生命としての機能を持たなくなったものを操る力。それが私・・・四肢を落として動きを封じるのは考えたわね。でも、その落とされたのも生命活動の出来ない死体」


 「ぬ・・・まさか!!!」


 なんて光景だ。撃ち落とし、切り落とした腕と足が動き出している。それだけでこっちに向かってきている・・・


 「ぎゃああああああ!!」

 「いやああああああ!!」


 あまりのグロテスクな光景に、エルメスとエンリコは抱き合って叫んでいた。まぁ、仕方ないであろう。こんな若いのにこれを見るのは、トラウマものだろう。


 「ん?レイサワ、意外と冷静だな」


 「ゲームとかで慣れすぎたのであろうか。感覚がマヒしているのか、今更これを見ても特に・・・だが、厄介でござるな」


 「そうだな・・・どうすべきか・・・」


 じりじりと腕と足がこちらに来る。


 まさか腕だけでも動かせるとは考えていなかったな・・・それで予備弾倉も使い切ってしまった。残るは水平二連に通常の弾薬が二発。ドラムマガジンにファイアバレットが一発だけだ。


 吾輩はドラムマガジンの方のエジェクションポートを開いて残った一発を出した。そして右手のショットガンを下ろし、水平二連からもシェルを出した。


 この三発で出来る事・・・これを止めるにはやはりリザヴェノフを倒さねば止められないようだ・・・まだ確証はないが完全覚醒者も、覚醒者同様、頭と心臓を破壊することで殺せる。それに賭けるしかない。


 「レイサワ、十秒だけ時間を稼げ」


 「む・・・了解でござる。しかしチャンスは一度だけでござるよ」


 「分かっている。これを逃せば負けるのは確実だ。だからこそこれに賭けるしかない」


 「うむ!!十秒でござるな!!」


 吾輩はおもむろに駆けだした。筋肉を増加させている分より早く動ける。大柄になったからと遅くなりはしない!!


 「成程、私を直接狙うのね・・・だけど、どっちが早いかしら」


 腕と足が一斉にレイサワ達に襲い掛かった。


 「ぬぅおう!!」


 レイサワは自身の全力で迎え撃つ。吾輩もこたえよう!!吾輩は水平二連をまっすぐ前に向けた。


 「・・・そう言う事」


 「分かったか?お前は選択しなければいけない。弾薬はどっちだ?炎か、鉄か。防ぎ方を間違えれば、お前の頭が飛ぶ」


 先ほどのあれで分かった。通常弾を使う場合は水の膜で防がれる。だが、サンダーバレットは当たった。つまり、魔法の弾では別の対策をしなければいけないのだ。


 「だけど残念ね、私が見てなかったと思う?その銃は先に右からしか撃てない。右に入れたのは・・・答えは12ゲージ!!」


 「くっ!!」


 リザヴェノフは水の膜を張って守った。


 「あなたの負け・・・」


 『バキン!!』


 吾輩は水平二連を折り、排莢した。


 「なに・・・」


 「かかったな。お前が先に防御に入るのを待っていた」


 「そう、ふふ、あなたは馬鹿なの?あなたは今全くの無防備・・・」


 「それはどうかな」


 「・・・ナイフ!!」


 吾輩は隠し持ったナイフを取り出した。


 「そうか、銃弾は囮・・・本命はそのナイフ。その体なら真正面の突進力はあなたに分がある・・・そう言う事ね」


 吾輩はナイフを突き下ろした。


 「だけど、そうはいかない、あなたの力でも私には勝てないわ」


 リザヴェノフは真正面から受けて立つつもりだ。


 「だろうな。これを、待っていた・・・このタイミングだ!!!」


 「っ!!まさか!!」


 吾輩の目の前に先ほど飛ばしたショットシェルが落ちてくる。流石にこれには気が付けなかったらしい。最初からこれをやるつもりだったのだ。


 どの弾丸を使っても、どちらにせよガードがあっては致命傷にはならん、だから完全にガードを解かせるためには奴自身が攻撃に向く状況を作らなければいけなかった。


 完全覚醒者のパワーはこの吾輩を遥かに凌ぐ。そこに隙があった。奴は吾輩を頭筋とでも思ったようだな。吾輩は力のぶつかり合いになるように仕向けた。そこに乗っかかって来た。


 だが、吾輩の戦い方は銃弾だ。吾輩はナイフをそのまま振り下ろす。そして、ナイフの先端を撃鉄代わりにシェルを叩いた。


 「しまった!!」


 『バガァアアアン!!』


 銃弾はリザヴェノフのこめかみに当たった。それと同時にうごめいていたゾンビに、腕や足が一斉に動きを止めた。


 吾輩が走り出してからちょうど十秒だ。だが、これでは終わらない。


 「ま、まさか・・・こんな事が・・・」


 リザヴェノフは横たわり動けずにいる。


 「心臓まで撃たねば死なないらしいが、片方がやられた時にはやはり相当なダメージはいくようだな。安心しろ、治る前にお前をあの世に送ってやる」


 吾輩はリザヴェノフの心臓に向けて銃を構えた。


 「さらばだ・・・」


 「ふ ふふふ・・・うふふふ あははははははあああ!!!」


 「っ!!しまった!!」


 吾輩も隙を突かれた。突如笑いだしたリザヴェノフに驚きその隙に水平二連を蹴り飛ばされた。


 リザヴェノフはふらふらと立ち上がった。


 「いいわ、この感じ・・・やっぱこうしなきゃ、私がこの手で殺さなきゃ!!」


 「ぬぐ!!」


 凄まじい勢いで首を掴まれた。なんだこのパワーは・・・こんなの人間の力ではない。この女、本当に人間なのか!?


 「ナターシャ殿!!」


 「く、来るな・・・」


 吾輩は走り出しそうなレイサワを止めた。だが、時は既に遅かった。


 「ぬぅあああ!!」


 吾輩は首を掴まれたまま勢いよく飛ばされ、気が付けばレイサワと立ち位置が変わっていた。


 「まずはあなたたちから殺してあげる・・・弾」


 レイサワはそのまま馬乗りにされ、首を押さえつけられている。


 「くそ!!レイサワを離せ!!」


 「邪魔しないで!!」


 リザヴェノフは睨め付けると同時に水で止めに入ろうとしたエンリコやエルメスを吹き飛ばした。


 「く・・・ぬぅ・・・」


 「ねぇ弾。人間死ぬ時が一番気持ちいいんだって。私今すっごい気持ちいいの、この感じをあなたにも分けてあげる!!」


 リザヴェノフの締め付ける強さは強まっている。だが、まともに近づけない。


 「クソ!!」


 ファイアバレットと、十二ゲージを同時に発射した。だが、それらはやはり奴の水でかき消された。そして同時に水に殴り飛ばされたかのように吾輩は宙を舞った。


 「あなたにも後で分けてあげるから・・・そこで寝てなさい」


 このままでは、だがどうすれば・・・







 その時だった。


 「なに!!」


 強烈な暴風が建物内に入ってきた。そしてその風はリザヴェノフを綺麗に吹き飛ばした。


 「この風は、一体・・・」


 「あ、ああああああんたは!!」


 エンリコが叫んだ。吾輩も、その光景に唖然としていた。


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