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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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特急 一兆 ウォーリア オブ ジャスティス

 『守りたいのなら・・・守り抜け』


 俺の脳内にこの言葉が響いた。


 午前九時五十二分。





 「トク・・・てめぇ、何しやがんだ」


 イッチーが俺を本気の目で睨んだ。俺だってこんな事したくないよ、でも


 「いい加減目を覚ましなよイッチー、こんな事に命張るなんて、もうどうしちゃったんだよ」


 俺はやたらめったら重たい剣を持ち上げてイッチーに向けなおした。


 「どうしたもこうしたもねぇよ、俺はただやりたいようにやるだけだ。てめぇの指図も受ける気はねぇ。昔からそうだったろうが。分かったらさっさとそこをどけよ」


 「いやどかない、どくわけにはいかないよ・・・今のイッチー、変だ。確かにグレイシアさんを守りたい気持ちも分かるけど」


 「トク、お前まだ気が付いてねぇのか?この世界は・・・」


 「本物だって言うんだろ!!」


 俺は思わず怒鳴った。俺、そこまで馬鹿にされてたんだ。正直腹が立った。イッチー、俺バカだけど、そこまでアホじゃない。俺たちは騙されてるなんて何となく分かってたさ。


 イッチーは驚いた顔で俺を見ていた。


 「この世界は実在してる別の世界だ。だけどさイッチー、俺たちにとってこの世界は本物か?俺はそうは思わない、確かにこの世界は魅力的だよ、でもさ、ここは俺たちを縛り付ける、もう向こうには帰りたくない、そう思ってるでしょイッチー?」


 「・・・まぁな、あんな世界、生きててもつまらねぇだろ」


 やっぱそうか、完全にこの世界の虜になってる。そして今はグレイシアさんの虜になっちゃってる。俺の知ってるイッチーは自由奔放で、誰の指図も受けないような奴だったのに。


 「俺が助けなきゃ・・・」


 「は?」


 俺が守るんだ、この世界から・・・イッチーを、紅さんを。正直ディエゴとかが何考えてるのか、何しようとしてるのか分かんないけど、そんな事はどうでもいい。


 この世界は、確かに存在する世界だけど、現実なんかじゃない。ゲームって言うのはあながち間違ってないのかもしれない。だってそうだもの、この世界は逃げ道なんだ。見たくない現実から目を背ける為にある。ゲームと同じじゃないか。


 紅さんがたまに暗い顔してたのは、現実への後ろめたさがまだ残ってるんだ。俺には何も教えてくれてないけど、何となくわかる。あの人が、何を求めてこの世界にいるのか。


 俺は剣を強く握りなおした。


 「・・・てめぇ、本気か?」


 「生まれて初めてなったよ。俺、殺す気で行くから。グレイシアさん、俺とあなたとは別に敵対する必要なんてないかもしれないけど、あなたは俺の正義を妨げる。だからあなたも倒さなきゃいけない」


 「・・・私からは何も言わない。けど、君は 正義の為に大切な友達を殺せるの?」


 殺したくなんかないさ。でも、俺弱いから。殺してでも連れて帰るつもりじゃないと勝てない。いくらグレイシアさんが満身創痍でも、俺はそうしなきゃいけない。


 「トク、てめぇこそおかしいんじゃねぇか?お前いつから正義面するようになった?ぁあ?」


 「イッチー、俺さ、ずっと誰かの腰巾着だった。それでいいって思ってた。けどさ俺にもやりたいことはある。イッチーが何が何でもグレイシアさんを助けたいように、俺は紅さんを助けたい。そう思うようになったんだ。ねぇ、俺たちはこの世界では何してもいいんでしょ?だったら別に俺はイッチーの言う事を聞く必要もないはずだ。俺は俺のやりたいようにやる。俺のやりたいように、イッチーを元の世界へ帰す!」


 俺は剣を後ろに回してそこから飛び上がった勢いのまま振り下ろした。イッチーはバック転して避けた。相変わらずの身体能力だ。


 「ちっ!本気でやりやがった・・・おいトク。てめぇ覚悟出来てんだろうな。俺人殺しは後味悪いからやらないんだけどよ、てめぇがその気だって言うのなら、俺も殺す気で行くぜ。

 

 グレイシア、わりぃけどよ、少し待っててくれ。どのみちあいつには逃げられたしな、だが大丈夫か?」


 「問題ない、私はもうろくに歩けないけど。でも、いいの?殺すの言葉の意味、分かってないのなら私はあなたたちを全力で止めるから」


 「十分すぎる程分かってる、だからこそ手を出してほしくねぇんだ。あいつにもあいつなりのやり方を見つけたらしい。もしかしたら俺とあいつは、最初から相容れない存在だったのかもな」


 「・・・だったらいい、私には何も言えない。自分の為に誰かを犠牲にした、同じだから」


 話は終わったみたいだ。次は・・・


 「うおおりやああぁぁぁl!!」


 くそ、めちゃ重たい・・・これじゃイッチーの身のこなしについていけない。


 「あ!!」


 俺は振り下ろした衝撃で、地面に剣がめり込んで抜けなくなった。


 「おるあぁ!!」


 俺はイッチーに胸倉をつかまれ、顔面を殴られた。今までのより痛いなんてものじゃない。殺す気の殴り、俺はそのまま倒されて何発も殴られた。


 「目ぇっ!!覚ますのは!!てめぇ!の!方だろうが!!ぁあ゛!?何が守るだ!俺は!!守られる!必要はねぇ!!誰にもな!!おらぁっ!!!」


 最後に強烈な一発をもらった。


 ・・・分かってるよ、そんな事。イッチーは強いもん、だけど・・・弱い。今のイッチーは・・・俺には勝てない!!


 「だああああらあああああ!!」


 「っぐはぁ!!」


 俺は転がってた剣を手元に召還して、思い切り横に薙いだ。俺の峰打ちはイッチーの脇の下に入り、綺麗にすっ飛んでった。


 俺は立とうとして見た。痛い、苦しい・・・相当殴られたなぁ。顔腫れてるだろうなぁ。でも、倒れるわけにはいかないんだ。絶対に・・・


 「まだまだ、行くよ!!」


 ?  


 あれ?この剣、こんなに扱いやすかったっけ。なんだかこの重さが心地いい。どんどん手に馴染んでくる・・・


 俺は豪快に振り回す。だけどさっきみたいに体が持ってかれて動けないなんてことにはならない。体を預けて、こいつのままに動く。


 「どおおりゃああ!!」


 イッチーはカードを取りだし、それを展開させて俺の一撃を防いだ。


 「・・・おいおいどういうこった。随分と動きが良くなってんじゃねぇか」


 珍しい、イッチーが俺を褒めるなんて。それはどうもありがとうね!!


 俺は更に攻撃を仕掛ける。いける・・・イッチーは武器を取りだした。って事は割ともう本気だ。そして、徐々に表情は重くなってきてる。俺の攻撃が効いてるんだ。


 「ちっ!!そう言う事か!!その剣、学習してやがるな!?トク!!やっとわかったぜ!!その剣を放せ!!」


 何をいまさら言ってんだよ。この力は俺のだ。イッチーを止める為には絶対に手放せない。


 「いやだね!!イッチーこそ武器をしまいなよ!!」


 「っの馬鹿が!!その剣はなぁ!!」





 『もうお前はこちら側だ』


 へ?イッチーの言葉を遮るように頭の中に声が響いた。


 『その力はお前のもの、大切な者を守る力だ』


 そうだ、俺はこの力でイッチーを、紅さんを守るんだ、この世界から。そして向こうの世界からも。


 『そうか、いい意志だ。ならば、守ってみろ。お前の敵は目の前にいる彼ではない。彼を守りたいのだろう?お前が友の為に刃を向けれる覚悟は見せてもらった。お前のその意志に答えよう、戦うべき真の敵を教えてやる。さすればお前は、全てを救える。お前の最も望むものを手に入れられる』


 俺が欲しいのはイッチーの、紅さんの幸せだよ。俺は腰巾着、誰かの傍にいないと駄目な奴なんだ。


 『ならば答えは出たな。お前の望む未来の為に  共に行こう  トク』




 あぁ・・・


 


 「この剣は答えだ」


 「はぁ?」


 声の正体、剣が俺に語り掛けたんだ。そしてこの剣が俺を強くした。いや、俺の意志を汲み取ってくれたって言った方が正しいかも。そして分かった。この剣は俺を導く。


 「分かったんだよ。今イッチーと戦っても意味はない。だから待っててよ。いつか必ず迎えに行くから」


 「てめぇ!!急に何言って!?」


 イッチーの説得の最中、グレイシアが俺に向かって飛び出してきた。氷の剣を持って俺に切りかかった。彼女はもう満身創痍だ。これならもう防げる。


 「・・・これ以上はだめ。あなたはあなたを失う」


 「俺は失ったりなんかしない。必ず手に入れて見せる。俺の最も望む未来を、邪魔をしないでよ!!」


 俺はグレイシアを剣を横に振って投げ飛ばした。


 「イッチー、ナイスキャッチだよ、またね」


 俺は地面に剣を突き刺した。別の場所への瞬間移動。この剣はそのやり方を教えてくれた。激しい閃光が俺を包んだ。横には悔しそうな顔のイッチーと、歯を食いしばって俺を睨むグレイシアが見えた。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 「・・・ここは」


 「ようこそだねぇ、まさか君が来るなんて思わなかったなぁ。ここはあたしたち仮面組の場所だよ~」


 この緩い喋り方。たしか


 「カラスちゃん?」


 「おー、覚えててくれたねー。ま、そんなことよりも、よろしくね!平和を願いし者!!アウロへようこそ!!」


 「アフロ?」


 「ちゃうちゃう!ア・ウ・ロね!んじゃ、早速いこー!!」


 「へ?どこに?」


 「今君が一番行きたいところだよ。でも覚悟してね、君は世界の真実を知る事になるから。もしかしたら君の意志が砕けるかもしれないよ」


 カラスちゃんは俺を少し脅すように語った。


 「何があっても俺が守る、勝手にそう誓ったんだ」


 「いい返事だね、トクちゃん」


 ・

 

 ・


 ・


 ・


 ・


 午前十時一分


 「クソッタレが!!クソトクの野郎!!ふざけやがって!!」


 俺は岩を蹴り飛ばした、怒り任せに蹴ったから痛ぇけど、岩は派手にぶっ壊れた。要は八つ当たり、怒りの矛先をどこに向けりゃいい?


 ここには俺とグレイシア以外誰もいなくなった。いつの間にかキツネもいねぇ、トクが消えたと同時にいなくなったようだ。


 「ごめんなさい、最初から止めるべきだった・・・あの剣に初めから気が付いてれば・・・」


 俺とトクの戦いを止めなかったことに責任を感じてか、グレイシアは俺に謝った。


 「別に、お前はなにも悪くねぇだろ・・・馬鹿なのは俺の方だろうが・・・それよりも」


 「ビリーを、追わなきゃ・・・」


 俺が言う前にグレイシアは重たい足を動かし、歩こうとした。


 「お、おい!!」


 だが、流石に体が限界だ。グレイシアはその場に倒れこんだ。失った腕からは血はあまり出てねぇ。だから出血多量にはなってないみたいだ、原因はどうやら傷口は焼け焦げているかららしい。仕方ねぇ、俺の魔法でやれるのはせいぜい傷口塞ぐくらいか・・・


 にしても、よくこれで普通に立って表情も崩さずにいられたな・・・って、そんな関心してる場合じゃねぇ!!一刻も早く病院に行かなきゃ流石にやべぇだろ。


 俺はグレイシアを担いで車に向かった。だが、


 「はぁ!?なんでこんな時にバッテリー上がってんだ!?」


 どういう訳か俺の乗ってた車のエンジンルームから煙が出ていた。運ってのは大概連続する。不運が一つでも起きればたいてい二回は不運が起こる。それ以降の三度目の正直にするか、二度あることは三度あるにするかは己の腕次第だが、こりゃ後者が更に連続するかもしれねぇ・・・


 「・・・私の 車が、少し行ったところにまだある・・・」


 グレイシアが口を開いた。一体どういう精神力だよ・・・まだ意識を保ってるなんて。


 俺はグレイシアの指示した場所に向かうと、少し古いデザインの様々なカスタムされたスポーツカーが置いてあった。


 「これ誰のだ?」


 「私の・・・趣味で改造した・・・」


 冗談じゃねぇみたいだ。乗り込むとハンドルはレース用、なんか分け分からんつまみも大量についてる。


 「よし、じゃあ行くぞ・・・」


 俺はセレスに向かおうとした。だが、少し考えた。ふと横をみるとグレイシアはもう相当ヤバい、これじゃいつ死んでもおかしくねぇぞ。


 セレスに戻るには1時間弱かかる。近くに何か町はねぇのか?グレイシアの様子、数十分以内に処置しねぇと死ぬ。もって後20分だ。


 何か方法は・・・俺はある事を思い出した。


 「そうだ!あの紙だ!!東雲組!!」


 俺はセレスで出会ったあいつの事を思い出した。『何か困った事があれば来い』


 俺はあいつから貰った紙を見た。前言撤回、こりゃ前者が来たな。運が俺に向き始めた。こっからめちゃ近ぇじゃねぇか。かっ飛ばせば10分で着く。


 「持ってくれよグレイシア、ぜってぇ死なせねぇから!!」


 「大丈夫・・・わたしは  死なない・・・絶対に」


 「捕まってろよ!!」


 俺はギアを入れクラッチを離し、一気に飛ばした。この車・・・どんな加速力だよ。しょっぱなからニトロ使ったみてぇだ。


 この加速力も吉だな。これなら更に早くつける。


 「良い車だなおい・・・」


 俺の予想をはるかに凌ぎ、5分で着いた。


 「おい!誰かいねぇか!?」


 俺は西部劇に出てきそうな、建物に辿り着き、声を上げた。すぐさま誰かが出てきた、強面な男だ。


 「なんだ貴様、ここに何の用だ」


 「済まねぇが、ここに怪我の手当出来る奴はいるか?」


 「・・・貴様、噂を聞きつけてきた輩か。残念だがここにはそんな奴はいない」


 「噂なんか知るか!ともかく死にそうなやつがいるんだ!!」


 「入れるわけにはいかん」


 クッソが、こいつ何か隠してやがる・・・俺は紙を見せた。


 「俺はここの奴に借りがある!!今返せってんだ!!」


 「て てめ!その地図どこで手に入れやがった!!」


 こいつ、俺がこの紙を誰かから奪ったと疑ってやがる・・・ぶちのめすしかねぇな。分からず屋なのが悪い。


 「おい、何さっきから騒いでんだ?」


 と、思ったが奥から聞いたことのある声が聞こえた。葉巻を加えた女だ。


 「あんたはこの間の・・・おいこいつは客人だぜ?てめぇ人を見る目ねぇんか?ぁあ゛?」


 「あ!!あつつつちち!!すいませんでした頭!!だからそれ止めて!!」


 女は男の腕に葉巻の火を押し付けた。


 「随分と急いでるな、何が・・・って、おい!そいつぁ!?」


 「あぁ、少々ヤバいんだ。ここに手当出来る奴はいねぇのか?」


 「おい!!すぐに運ぶぞ!!担架もってこい!!」


 俺と女でグレイシアを担架に乗せ、建物の中に入れた。


 「あんたそこで待ってろ、安心しな、グレイシア様はうちらが絶対に助ける」


 女はグレイシアを背負って更に奥の部屋に入った。少ししてから女は出てきた。


 「これでたぶん大丈夫だ。お前の止血も幸運した、後は本人の気持ち次第」


 「その点なら大丈夫だろ。あいつ、ずっと倒れなかったんだぜ?」


 「そいつぁすげぇな、あの怪我でなぁ・・・なぁ、イッチーだったか?何があった?」


 




 俺はあの戦いの事を教えた。面倒だから俺の正体も伝えた。


 「・・・そうか、とんでもねぇことに巻き込まれてんだな」


 思いの外、女は驚く様子もなくむしろ分かってましたかのように反応した。


 「あぁ、正直俺も訳が分かんねぇ。ところで、ここって病院でもなんでもねぇだろ。誰が手当てしてんだ?医者でもいんのか?」


 「いや、手当てしてんのは頭だ。あいつは魔法の力で治療が出来るのさ、治療が出来るつっても、ここの世界の魔法じゃ軽いけがを治すのが精一杯だ。だがあいつらは、骨折とかの重症どころか、病気すら治せる。流石に腕を生やしたりは出来ねぇけどな。その噂を聞いてたまにその能力を奪おうとする連中が来るのさ、さっきお前を止めた奴がいたろ?それはそのことが原因でな。責めないでやってくれ、ま、うちからきつく言っておくけどな」


 「そうか、サンキューな。にしても、あんた、何者なんだ?俺の事を言っても全く驚かねぇし、他の事にも妙に納得してるしな」


 「前にもいたのさ、別の世界から来た奴がな。神崎 零つってな、あいつには色々と世話になったんだ」


 神崎 零?結構前に聞いたことあるぞ、確か狭山組の先代の舎弟頭の名前だ。会った事はねぇけど、その滅茶苦茶な強さは俺の耳にも入ってた。


 「そういや、しっかりと自己紹介してなかったな。俺は馬喰 一兆だ」


 「うちはコマチだ。隼 小町(はやぶさ こまち)、見かけによらず可愛らしい名前だろ?よろしくなイッチー」


 「俺の方こそ」

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