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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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クロスオーバー イン オールオーバー ザ アナザーワールド

 創暦五百二十年 六月二日 午前九時、中央地区。


 今日の天気は曇り、所により雨が降る所もあるらしい。洗濯物は今日は外に干せないなぁ。


 僕たちの世界を苦しめたミカミ レイが消えてから約一か月が経った。街は次第に落ち着いてきてる。テレビのニュースを見ると、彼に関して様々な憶測が飛び交っている。


 正直な話どうでもいい。なんか専門家を名乗ってる奴が彼がいたことによる影響とかを語ってるけど、そのセリフを彼がいた時に言えるのかという話だ。明らかに謀反な言葉を次から次へと喋りまくったかと思えば、中には彼のおかげで犯罪は減っていたと讃える者もいる。


 不思議だよな、今まで彼の目にも触れてないような連中が、あたかもすべてを知ってるかのように語ってる。悪魔が死んだ、それでいいじゃないか。死んだ理由を知ったところで何か意味があるのか?きっとない。


 全部終わった、これからは自由に生きれる。それならこれからを考える方がずっといい。彼に対抗してたあの人たちも、あれ以降姿を見せてないらしい。異世界がうんたらかんたらとかニュースでやってたけど、もう全部終わったんだ。


 さて、今日は仕事も休みだし、何しよっかな。


 僕は電車に乗って外へと出かけた。今日も駅前の『城前通り』は凄い人で賑わっている。ついこの間までもぬけの空になっていたとは思えないな。

 

 僕は人をかき分け、街の中を歩く。


 『ドン』


 「あ、ごめん」

 

 僕は誰かとぶつかった。見えなかったから多分子供だし、割と強めにぶつかっちゃったから振り返って謝った。


 「・・・・・・・」


 その子は僕をちらっと見てまた視線を戻して歩いていった。


 「変な子、こんな季節にマフラー巻いてるよ・・・ま、いいや。さて買い物でもしよ」


 ・


 ・


 ・



 「平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ・・・」


 「えっ?」


 声が聞こえた気がした。聞き覚えのある声だった。だけど、それを思い出す前に僕の意識はこの世界から飛んでいった。


 
























 馬喰 一兆 午前九時 セレス


 正直、俺は今何をしようとしているのか分かんねぇ。ただ単純に居ても立っても居られなくなった。だから動いてる。目的地も分かってない。だが、何かに導かれるように俺は足を進めている。


 グレイシア ダスト。彼女と出会った時から俺は何か違和感を感じている。だから俺は彼女の元に向かっている。トクの言ったように一目惚れでもしたのか?一目惚れした女を守りたいがために俺は彼女の元に向かっている?いや、そうじゃない。俺はそんな性格じゃない。


 見てみたいだけなのかもしれない。彼女の目指そうとしているものを、最初に見たときに感じた、突き刺すような意志を、俺はその先を見たいのかもしれない。


 その為に俺は彼女を守りたいと思っている。それが今俺が進もうとしている理由か。




 男鹿 特急 午前九時三十分 フロンティア

 

 イッチーの奴、どうしちゃったんだろ、この世界は現実なんかじゃないのに、いつものイッチーらしくない。このままじゃダメだ、俺が何とかしないと。


 イッチーは、自分の思ってる以上にこの世界の影響を受けてるんじゃないかな。そうとしか思えない。


 この世界は感覚も、味覚も『ごかん』ってやつが全部感じれる世界。と言う事は裏を返せばこの世界で永遠に暮らす事も可能って事だよな。


 この世界は、グレイシアさんの言ってた通り危険だ。生きるか死ぬかの危険じゃない。自らを牢屋に閉じ込めてしまう。そんな危険があったんだ。


 紅さんもそれは分かってるのかな、でも、紅さんってたまに悲しい顔してた・・・そう言う事か。この世界は・・・


 守らなきゃ、俺が・・・そのためには戦わなくちゃ。


 今の俺は、イッチーと紅さんを守る為なら、どんな敵とも戦ってやる。この世界だろうと、


 グレイシアさん、あなたとだろうと・・・




 オーギュスト 午前八時 セレス


 事件の推理ってのは、パズルをやるのと似ている。空白に真実を当てはめていく。それが完成した時ようやく絵が完成するんだ。だがちょっと違うのはピースを俺自身が見つけなくちゃぁならねぇ。隠したり、嫌がらせしてきたりするのがほぼ全てだ。


 だが今回のパズルは少々厄介だ。完成させる絵がデカすぎる上にピースが無いも同然から始めた。拾い集めるには死者を甦らせたり、下手すりゃ時代すら超えなきゃならん。だが、今日ようやくパズルのピースの一部が見つかった。


 死者が生き返った。これでもほんの一部分だけなんだろうが、ピースが集まった。


 もうすぐ激しい衝突が生まれるはずだ。その戦いに俺も出なきゃなんねぇだろう。戦うつっても俺はミカミのようなバケモノみてぇな戦いは出来ねぇ。やれるのはその戦いの中で真実を見つけ出す事。


 そしてそのピースが集め俺は、その戦いを終わらせる。


 


 麗沢 午前九時十五分 中央

 

 中央に到着、止めねばならない。拙者のまず向かうべき場所はエルメスのいる場所、アダムスビル。アウロよりも先に伝えねば、仮に衝突したとしても、対策のあるなしでは被害の大きさは変わる。

 

 イーサン殿は完全覚醒者の集まる場所へ、ここでディエゴ殿を何が何でも止める気でござる。シャンデラ殿とアリア殿は住民の避難を、世界的にも有名である彼女たちならば、耳を傾ける者も多いはず。


 さて、拙者に出来る対策はこれぐらいでござるか。後はエルメス殿と王国軍の元へ行くだけでござる。




 零羅 午前十時十分 アダムス上空


 燃えている・・・やっぱり、あの報道は嘘ではなかったようです。遠くに見えているビル群、あの場所は赤く染まり煙が立ち上っています。


 『大変な事になっておるみたいじゃなぁ、これじゃ買い物が出来んじゃないか。せっかく中央まで遠出したというのに』


 「そうですね、このままではいろんなお店が潰れてしまいます」


 『そうじゃな、さっさと終わらせようぞ。そうじゃ、終わったら一緒にショッピングでもどうじゃ?雑誌で行きたい店をチェックしておったんじゃ』


 「そうですね、わたくし誰かとお買い物なんてしたことなかったので、楽しそうです。街が壊される前に一気に終わらせましょう!!」



 

 桜蘭 午前九時四十五分 裏ケンソウ 沖合


 クジラに乗り沖まで来た。だけどこの子の速さじゃウンディーネの元へは数日かかる。それにこの子は南へ向かう最中だ。それをまた北へやるのはこの子を危険に晒す。


 この場所まで来れば、他の動物たちの声も聞こえるようになった。


 「サラ、ちょっと俺の隣に座ってくれるッスか?」


 「はーい」


 さて、ウンディーネの元へ最速で行くには、あの人たちの助けがいる。後は呼べるか、どうか・・・


 みんな、待っててくれ、絶対にすぐ行くから!!




 永零 午前九時三十五分 旧エイド セレス郊外東部


 礼、僕は必ず君との約束を守るよ。僕はこの世界は知らないはずなのに心のどこかで故郷のように感じる部分がある。


 だからなのか分からないけど、礼の守ろうとしているもの、それは僕が守りたいと思ってるのと一緒な気がするんだ。見たことのない誰かだけど、僕はその為に命を賭ける覚悟は出来てる。


 だから礼、僕は君との約束は絶対に守るから、君も僕との約束を守ってくれ。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 中央 午前九時二十五分


 ディエゴ アンダーソンはこの地のとあるビルの屋上にいた。


 「・・・来たようだね」


 ディエゴは一人そうつぶやくと、その背後にいくつかの人影が現れた。そして一人の男が話しかけた。


 「行動を起こすには早すぎるのではないか?ディエゴ、君はまだ・・・」


 「そうでもないさ、むしろ今なのだよ、エファナ アンダーソン君。もうすぐだ、彼らは力を手に入れ我々に挑むだろう。これはその挨拶程度なのさ」


 エファナはその言葉を聞き、目を瞑った。そして間を開けず別の男が別の質問を投げかけた。


 「全く、よく分からないネ、ディエゴ、電磁パルスが原因で命令系統が乱れたのはいい。だがそこからがおかしいんだよネ。何故真逆の命令が同時に出タ?」


 「その疑問は最もだよ。ジン ワントゥ君、先に言っておこう、実は2つの命令を出させたのは俺だ。ちょっと上と掛け合って出させたんだ、それが原因で組織内部を混乱させたのは済まなかった・・・」


 「・・・成程ネ、これ以上詮索はしない方がいい気がしてきたヨ」


 ジンはディエゴの表情を読み取り、今は詮索するのを止めた。


 「さて、ウラジミール リザヴェノフ君。君はどうなんだい?君はあの子を本当に我らの元へと引き入れたかったはずだ。覚悟は出来ているのか?」


 今度はディエゴが一人の女性に質問した。


 「そうね、麗沢君は本当にいい子だったから、願わくば戦いたくなかったわ。でも、そうも言ってられないのよね、もう時間が無い。だとしたら私が小さなわがままを言ってる場合じゃないのよね、だけどもしチャンスがあるのなら、私は私の力を使うだけよ。そうすれば・・・」


 リザヴェノフは、悲しそうながらも少し笑みを浮かべた。


 そしてディエゴはゆっくりと目を瞑り、語り掛けるように呟いた。


 「さて・・・・これで全員が揃ったか。ヴォイド ロドリゲス君は既に待機済み。アイシー ローゼンシュティール君たちも既にここに来ている。あとは・・・君たちはどう動く?」


 「はい?君たちって誰の事?」


 リザヴェノフの問いかけには答えず、ディエゴは話し続けた。


 「裏切るなら今しかないはずだ。今さら怖気づいてしまう君たちではないだろう。来ないというのなら・・・」


 それは一瞬の出来事だった。ディエゴは剣を抜き銃を左右に向けた。


 それと反対にディエゴの右の頭部に銃口が、そしてディエゴの左胸にショーテルと呼ばれる湾曲した剣が向けられていた。


 「動くな、ディエゴ アンダーソン」

 「少しでも動いたら、即切るわよ」


 「良い動きだ。先手取れると思ったんだがね」


 「ほぅ、中々・・・」


 あまりにも一瞬の出来事でディエゴとエファナ以外は動揺していた。


 「ちょ!シィズ!?どういうつもり!?」

 「まさカ!!」


 「二人とも動くな!!」


 一時は動揺したジンとリザヴェノフだが、彼らもプロだ。即座に自分のすべき行動に出ようとした。だが、それをディエゴが止めた。


 「ここで君たちが彼らを攻撃しては、全てが狂うんだよ」


 「・・・まるで、前から裏切りを知っていたような口ぶりだな」

 

 「そうだよ、イーサン ピークシード君。君たち2人の裏切りは前から知っていた」


 イーサンの質問にディエゴはかなりの余裕をもって答える。


 「裏切り・・・カ。まさか疑うべきは君たちの方だったカ、君たちは信用できる者だと思っていたんだがネ」


 「私も意外だわ。あなたとは仲良くなれると思ってたのに。それにシィズ、あなたには成し遂げたいことがあったんじゃないの?」


 ジンとリザヴェノフはディエゴの命令通り動いてはいないがすぐさま行動できるように、常に臨戦態勢に入っている。


 「確かに、私にも成し遂げたい事はあるわ。その為にどんな努力もするつもりよ。でもねこの世界の、いえ、全世界の大勢の人たちを犠牲にしてまで成し遂げたら、きっと私は後悔し続ける。私たちは大義の為の犠牲と言って、大勢の命を弄び続けた。そして得られたものは、より大勢の命を弄ぶ結果。こんな力なら私はいらない。終わりにするべきなのよ。私たちは」


 「終わりにするか・・・静也丸 峰子君、君の持つその意志はとても素晴らしい。だからこそ言っておこうか、君では終わらせることは出来ない。一度生まれた技術だ。そう簡単には消えない。アウロというのは言わば必要悪だ。世界に憎まれる存在であるからこそ、その先に、真の平和への答えがあるはずだと俺は思っている」


 「真の平和?らしくない言葉だなディエゴ、この世界に争いのない平和な世界は存在しない。お前自身が言っていた事だ」


 イーサンの問いかけをディエゴは鼻で笑って答えた。


 「そうだ、争いのない平和なんて存在しないさイーサン ピークシード君、しかしだ、争わないことだけが平和だと言えるかい?俺はそうは思わない。真の平和とは、戦いの中に見出せるのだよ」


 「だからってこの世界の生きる人たちを犠牲にして良いなんて、勝手すぎじゃない?ディエゴ、あなた本当は何がしたいの?前から思ってたわ、あなたはアウロのリーダー、統率力もある、力もある、部下からの信頼もある。だけど、誰もあなたが何故覚醒に至っているのか知らないわ。あなたの一体何がその力を与えたの?一体何が、あなたの強さになっているの?私はずっと気になってる。あなたが何故この戦いに身を投じようとしているのか」


 「簡単な事だ、誰よりも強い意志を持っているから、それだけだ」


 シィズの質問を遮るかのようにディエゴは答えた。少し語気を強め、何かをかみしめるように語った。


 「誰よりも強い意志・・・まさか、思い出したのか?」


 ディエゴの答えに真っ先に反応したのはエファナだった。エファナは何か期待したかのような声で聞き返した。


 「あぁ、今の俺には意志がある。もう誰にも負ける事はないさ」


 「いや、そうはさせない。今のこの状況、俺たちには確かに勝機はないが、お前自身にもないはずだ。一歩でも一ミリでも動けばお前は死ぬ」


 「そうかもしれないね。だが、君はその引き金は引かない。何故なら、もうすでに君はこちら側だからさ!」


 イーサンとシィズは僅かに動いた瞬間を見逃さなかった。イーサンは込められいた9ミリ弾をディエゴの頭蓋目がけ放ち、シィズは一気に心臓目がけて刃を振り上げた。


 「こ、これは!!」


 だが、その二人のコンビネーションは完全にすり抜けた。ディエゴのいた場所には僅かに放電が残っていただけだった。


 「電撃から生まれた、幻影?こんな事できるのは!!あいつしか!!」


 「その通りだよ、今俺はここにはいない」


 気が付けばシィズの後ろにディエゴの声が聞こえた。咄嗟に剣を振るが、それもまた幻影。


 「くっ!!」


 「さぁ、全ての物語はこの世界に、この地で交わる!!そしてそこから始まるのさ!!真の平和への物語が!!その為に俺は戦う!!そして君たちも戦うのだ!!


 平和を願いし者たちよ・・・この世界で闘う者たちよ・・・」


 ディエゴはそう最後に呟くと、この地から完全に消えた。


 そして、曇天の空の上から一つの光が地面に向けて落ちた。






 創暦520年 6月2日 午前9時35分をもって

 アダムス連合王国、中央地区最大の内戦、『第一次世界独立戦争』が開戦した。 

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