オーギュスト 仮定
オーギュストはディエゴの助言をヒントに一人図書室に篭り世界の秘密と三上の秘密を探る。
俺が図書室に籠って数日が経ったある日の事、ある人物が俺の元にやって来た。
「オーギュストさん、お久しぶりです」
「ユゥロ?なんでここに?」
「俺も、どうしても真相を調べたくなったんです。協力させてください」
ユゥロの顔、今までとまるで別人になってやがる。この数日で何があった?今までの穏やかな表情はない、あるのは怒りを原動力にした探求心。俺を見ているようだ。
俺は今までこんな目をした奴は俺とあいつ以外にいないと思ってた。ミカミ レイ。こいつの目つきはあいつともよく似ている。何かを愛し、すべてを憎む、そんな目だ。
「分かった、俺は部下も同僚も雇わない主義だが今回は別だ。お前が何を目的にしているのかは知らねぇが、この事件、総て解決するぞ。アーサーの事、ミカミの事、ニヒルの事、この世界の全部だ。協力してくれ、ユゥロ」
「はい!」
やはり違うな。今までは俺と協力する時には嬉しそうな笑みを浮かべていたが、今は全くそれが無い。笑う事を忘れたみてぇに、喜ぶことなど存在しなかったかのように、ただ自身の納得のいく答えを求めてる。
「よっしゃ、じゃあとりあえず俺が突き止めたことだけを教えておくぜ」
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俺はユゥロに自身が突き止めたことを教えた。俺は基本確固たる証拠を見つけない限りそれは口外しない。だが今回は別だ。ありとあらゆる予測、想定をユゥロに伝えた。
「・・・となると、この世界の本当の始まりは創暦20年以降と言う事になりますね。それまでが不明な事が多すぎる。俺もそこがずっと気がかりだったんです。ニヒル アダムスは創歴20年で足取りが完全に消えている。俺の情報網でも全く不明です」
こいつの情報網でも分かんねぇか・・・セレスのあいつなら、いや無理か・・・あの変態はアーサーともレオナルドとも違う女好き、会うのは美女だけって決めてやがるからな。俺が行くのは不可能か・・・
「あの、質問良いですか?オーギュストさん、なんで三上の件はニヒル アダムスにも関係しているって思ったんです?」
「あぁ、これも憶測で仮定の話だが、魔法族だよ」
「魔法族?」
「魔法族の始まりはニヒルから生まれた子供たちだ、だがそうなると」
「えぇ、ニヒル アダムスの子の数はどう考えてもおかしい。俺もあなたにそれを言われて気が付きましたよ。当たり前と思っていましたからね。それに父親も不明ですし、ですが、それがどうして結びつくんです?」
ユゥロの質問に俺は少し黙った。この仮定を果たして言ってもいいのだろうか。とりあえずこの事はまだ俺とアーサーだけしか知らなかった。ユゥロを信用してないわけではない。だが、可能性も捨てきれねぇんだよ。だけど、仕方ねぇ・・・どう転んでも同じだ。
「ニヒル アダムスは、別の方法で魔法族を増やしていた。そしてミカミもそこに到達した」
俺はこれだけを伝えた。これ以上は自身の推理力で見つけろ。ユゥロ。
「別の、方法・・・魔法族はニヒルの血を分かち合った子。血を分かつ? ニヒルの血を捧げた? っ!?」
どうやら、同じ仮定に行き付いたらしいな。
「オーギュストさん、魔法族の血を一般人に与えた実験は確か・・・」
「一時的にそいつも魔法を使えるようになるが、その後は体が耐えられず死ぬ。一部例外はあったがな」
「そう言う事か・・・ニヒルは血を分かち合った。つまりあの世界の一般人にニヒルの血を与えた。そこから魔法族は生まれた。そして三上の行った処刑を同じ事だと仮定したら・・・」
「不明な事も多いが、辻褄があっちまう。ユゥロ、この国はあまり戦争が無かったとされているが、一度大きな内乱があったのは知ってるよな。あれは何年だ?」
「創暦20年だ・・・ニヒルは、その時に何らかの形で魔法族を生み出した?そして内乱、大勢死んだ」
ここでピタッとユゥロは思考を止めた。俺と同じとこまで来たって事だ。
「いや、有り得ない。これはないな」
「ユゥロ、言ってみろ。もしかしたら何か分かるかも知んねぇんだ。とにかく今は予想でもなんでもいいから情報がいる」
「魔法族は、一度死んだ人間」
そうだ、俺もそこに行き付いた。ニヒルとミカミは魔法を与え、死人を生き返らせる方法を見つけたって事だ。
「俺は今そこで止まっている。どうやったら魔法族を生み出せるのか・・・それにリーダーたち、ミカミのしようとしている事は何となくだが分かってる。だがその先が分かんねぇんだ」
「・・・まさか、もう一つの覚醒?」
「なに?」
俺はボソっとユゥロが口走った言葉を聞き逃さなかった。そして反射的に聞き返していた。
「ふと思ったんです。桜蘭君や三上は異世界からやって来て、そして今この世界で覚醒と呼ばれる状態になっている。覚醒は魔法の力や身体能力などを一気に上昇させた。つまり2つの世界が合わさって生まれた力って考える事も出来ます。だったら逆はどうなんだろうと思ったんですよ。例えば覚醒者の血をこの世界の人間に与えるとか?そんな実験はまだやった事ないですよね」
「成程な・・・意外とその考え行けるかもしんねぇな。だがおめぇはまだ知らねぇだろうが、実はミカミの血をこの世界の者に与える実験は既に行っている」
「な!!なんだって!?」
・・・ん?この驚きよう・・・そうか。そう言う事か。
「おいどうした?まるで結果を既に知ってるような顔だぜ?」
「っ!!いや・・・別に、その」
「ふっ、今更お前にそんな事で突き詰める気はねぇよ。いるのは事実、真実だけだ。ま、実験つっても人体実験じゃねぇから安心しな。アダムスビルの戦闘跡、あそこには覚醒者のミカミの血が残ってた。中にはまだ真新しいのもあった。それを採取したんだよ。それを持ち帰り俺の血と合わせた。そんだけの実験だ」
ユゥロは少し冷や汗をかいている。何となくだがお前の正体はもう分かってんぜ。お前の情報網の多さは異常だしな。そして今ので確信できた。
だが、お前がミカミにとって敵であったとしても、今は俺の仲間だと思っているぜ。
「実験の結果は、分かってんだろ?」
「血液は何かしらの魔法を生み出し蒸発する・・・つまり、覚醒者の血を与えても結果は同じくこの世界の者は死ぬ」
「そうだ、だがこの血を与える事がヒントである事はちげぇねぇだろう。さてユゥロ、この実験結果からどう考える?非人道的に誰か攫ってミカミの血でも輸血するか?そうすりゃ確実な結果が出るぜ?」
俺はすこし笑って冗談を言った。ユゥロは俺の言葉に苦い顔をした。
「人道性を除けばその実験はありです。まだ覚醒者の血を純粋に輸血する実験はやったことが無いので。しかし仮定では結果は同じ、無駄死にを作るだけですが」
「そうか、いいヒントになったぜ。だがどうしたもんか・・・」
どうやって魔法族を作る・・・俺はさっきはああ言ったが、実験はアーサーの肉体を使った。アーサーにミカミの血のサンプルを与えた。だが結果生き返る事は無かった。むしろ腕が消し飛んだ。悪いことをしちまったな。つまり死人を生き返らせる事は出来ない。
死人を生き返らせるというのは俺の早計か?
「流石に今は俺もお手上げです。しかし一体どうやって死人を生き返らせるんでしょう」
くっそ、あの手は使いたくなかったんだが、仕方ない。アーサー、わりぃがまたあんたを使わせてもらうぜ。
「ユゥロ、お前あいつの住所知ってたよな」
「え?あ、はい。ですがあの子のとこに行ってどうするんです?」
「あいつ連れてセレスに行く。今回ばかりはあの野郎の情報網がいるみてぇだからな」
「げ・・・そうですか、でも仕方ないですね。今回はあの野郎に頼るしかないみたいですね。情報を知っているのはもうあいつしかいない」
俺たちは外に出て駅に向かった。こっからセレスまでは数日かかる。その道中でも何か出来る。出来ればあの野郎には会いたくねぇしな。
「さぁ行くぜ」




