桜蘭 カラスを見た者は、新たな戦いへの序章
桜蘭たちはノームの試練をクリアし、新たな武器を手に入れサラマンダーに会う為出発する。
『なぁ、ランサー。まだ着かないんスか?』
遠いな、まぁある程度距離はあるとは思ってたけど丸3日移動しっぱなしだ。
『あ?当たり前だろ。こちとら二人も乗せてんだし、どんだけ山超える必要があると思ってんだ。大体今からあれ超えるんだぜ?』
ランサーは視線を送る、そこにはまさに剣のようにそびえる巨大な山があった。というか、山頂はどこだ?
『あれって、確か貫通大橋があった・・・』
『ケンソウ岳だ。この国の最高峰、標高は八千九百八十二メートルだ』
「は、8000!?」
「はい?」
俺は思わず普通に叫んだ。零羅がポカンとした顔になる。いや8000メートルといや、エベレストレベルじゃん。それを登れっての?こんなド素人に?
『心配すんな、道は一応あるぜ。あそこ今『ケンソウ貫通トンネル』っつう新しい道を作ってる最中だが、もう一つ反対側に行く今んとこ唯一の道がある。裏ケンソウまでの物流の拠点になる主道路だ。あとは一番上る必要のない鉄道線路もあるが、あそこは走りたくねぇな。ま、ともかくその道順なら登るのは四千メートル程度で済む』
そうはいっても結局富士山よりも高いとこまでは登るのね。うーん・・・鉄道で行きたいのは山々なんだけど、あそこはアウロの監視下にありそうだしなぁ。ランサーで行くしかないのか・・・
『とはいっても、流石の俺も二人乗せてのあの山越えはきつい。だから麓にあいつを呼んでんだが・・・』
『あいつ?』
『ま、着いてのお楽しみにしときな。あいつも今は俺同様に主人を持たねぇ。あいつ言ってたぜ?次の主はお前でいいかもなってな』
誰だ?うーん、見当がつかんな・・・ま、着いてからのお楽しみでいっか。
『少し飛ばすぜ!!』
ランサーは足を早めた。揺れる・・・だけど、前よりもなんか乗りこなせてる感がある。前んときだったら、絶対後ろにビューって飛んでってたからなぁ。
って・・・
『あ!!ランサー前!!』
『うお!』
俺がふと前に目をやると急に目の前に人影が現れた。
「あんぎゃーーー!!」
小さな人影は変な断末魔を上げて、ランサーに跳ね飛ばされた・・・
やっべぇぇぇぇぇ・・・・人轢いちまったよ。こんな時にかよ。ともかく俺はランサーから飛び降りて、その子の元に駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか!?」
零羅も後を追って来る。
「け、けがはないッスか!?」
その子は地面に伏せたまま親指を上げて無事をアピールした。でもとりあえず病院に行った方が・・・あー、でもあそこも敵の監視が・・・じゃぁ警察・・・同じか。俺は色んなことを試行錯誤した。
「あー、あたしは大丈夫っすよ」
その子はひょいと体を起こした。なんだこの子・・・タフなのも凄いけど、黒いワンピースのドレスに・・・仮面?マスク?
「だ、大丈夫なのですか?」
「おっけーおっけー、あたしこういうの慣れてっから。それにしてもあんたら優しいねぇ。うちの他の奴らなんてむしろ殺しにかかって来るレベルだもんね」
仮面の少女は体に付いた砂埃を払った。
「やぁやぁ初めまして、あたしの事はカラスちゃんってよんでちょ。サクラッチにレイラッチでしょ~?」
「どうして、わたくしたちの事を・・・まさか!!」
零羅は即座に構え、今にも攻撃しそうな感じになった。俺もホルスターに手をかけていた。
「あ、ちょ!!タンマ!タンマ!!あたし別に戦いに来たんじゃないって!!」
「・・? どういう事ですか?」
「あたしは確かにアウロだけどさ、あたしゃただの交渉人なのよ。戦うつもりはないの、ってか戦えないんよ」
「ふーん、で、お前もシィズと同じみたいに仲間になれ見たいなことを言いに来たってことッスか?」
俺はホルスターからボタンを外した。
「うーん、それはレイサワッチにもう聞いたんだよねぇ。だから君らの答えはもう分かってる。あたしが何を言ってもアウロとの衝突はもう避けられないよ。だけどね一つだけ聞かせてほしいな。サクラッチにレイラッチ・・・君らは、世界が憎い?」
俺が予想だにしていない質問が来た。世界が憎いかって?
「それは、この世界の事ッスか?それとも」
「もちろん、君たちの世界の事ー」
「憎いだなんて、思ったことはないです」
俺も同意、俺を育ててくれた両親にも感謝してるし、大学の先輩もいい人だったし、憎む理由なんか・・・・理由は、本当に・・・ないのか?
俺は顔を上げた。カラスちゃんはいつの間にか仮面を外し、左右色の違う目で俺を見ると、どういう訳かやさしく微笑んだ。
「答えは言わなくてもいいよ、もう分かったからねー、さてと、君らの事は分かった。あたしはそろそろ退散させてもらいますぜ?」
「に、逃がしませんよ!!」
零羅はカラスちゃんの前に回り込んだ。俺も背後を取る・・・だけど、今の俺ではこの銃を抜ける気がしない。この子、本当に敵なのか?
多分、零羅も俺と同じ気分のはずだ。零羅には今覇気を感じない。軽い手合わせでも零羅からは殺気がにじみ出る。零羅も迷ってる感じだ。
「あー、はいはい。でも、これ以上はあたし真面目な話するつもりはないよ?下手な事言って君らにプラスになる事を言いかねないもん。それよりも・・・ねぇレイラッチ」
「・・・なんでしょう」
カラスちゃんは零羅の前に立った。背丈はほとんど同じくらいか、それ以下か・・・カラスちゃんはしきりに自分と零羅を見比べていた。
「・・・やっぱあたしより、おっぱい大きいね」
「・・・はい?」
その直後だった。カラスちゃんは零羅に抱きついた。
「ふぁっ!?」
零羅よりも俺が先に変な声を出した。零羅はびっくりして固まってるだけだ。
「いや~、こういう発展途上のもなかなかいいねぇ~。こう、ぴったし手のひらに収まるサイズ感。たまらんよ~」
おっさんか!!仕事帰りになんかそう言う店で従業員困らせてるおっさんじゃねぇか!!
「うーん、これは揉めばいつか立派なものになるよ~」
なんだったんだ?さっきまで不思議な美少女感は・・・あ、もはや服の中にまで手を入れそうな感じに・・・俺は、もう恥ずかしくなって見れなくなった。
「・・・っ!!いい加減に、してください!! 炎技の三つ目・・・奥義!!炎獄・・・灰燼葬!!!」
「おひゃぁ!!!」
後ろ向いてて何が起こったのかよく分からなかったが・・・振り向いた時に、俺の目に移りこんだのは超巨大な火柱だった。多分、俺あれ喰らったら、灰も残らないんじゃないかな・・・
「・・・って!!今奥義つった!?いくら何でもやりすぎッスよ!!零羅!!」
「い、いえ・・・あまりに驚いてしまって・・・今まであんな事されたこと無かったものですから、何というのでしょう、内側にもやもやしたのが来て、抑えられなくて・・・やってしまいました」
零羅は、虚ろな顔で自分が作りだした火柱を眺めた。どうしよ・・・これだけ燃やせば証拠残らないかな。俺はそんな犯罪者思考になっていた。
「ひぃ~、熱かった~・・・もぉ、ここまでやらなくてもいいじゃん」
「あ、生きてた」
「でもごめんね~、ちょっとやりすぎちゃったかなぁ。レイラッチ、まだこういうのって全然だもんね。うーん、これ以上は道徳的に駄目だねぇ」
道徳的も何も、最初から駄目だろ・・・というか、あの技喰らって平気とか、こいつ結構・・・
「じゃ、仕方ないや!サクラッチはどんな感じっすかね~」
って、反省もクソもねぇなこいつ!!どこに手を突っ込んでるんだ!!
「あれ・・・随分と・・・筋肉ねぇっすね」
「・・・余計なお世話ッス!!」
「へっへ。でも、うーん、駄目だなこりゃ・・・触りがいがねえっす」
カラスちゃんは手を横にやれやれと首を振った。
「てか、さっきからなんで俺と語尾合わせるんスか!!キャラ被るじゃないッスか!!」
「ええじゃないの、なんたらッス~なんてしゃべり方、今時多すぎるぐらいなんだからさ。キャラ被りもへったくりもないって!!」
こいつ腹立つ・・・さっきは躊躇してたけど、今なら余裕で引き金を引ける自信あるわ。
「まぁ、そろそろお遊びもこの辺にしてと、あんまし無駄な時間を過ごしてる余裕はないっしょ?早いとこ、サラマンダーのとこに行った方がいいよ~」
「っ!!お前!!なんでサラマンダーの事を!!」
俺が問いただす前にカラスちゃんはその場から姿を消した。だが声だけは残った。
『あたしは全て知ってる。だけどこの事は誰にも教えたりはしないのがあたしの流儀。あくまでも中立の立場があたしなの。また会おうねー』
これを最後にカラスちゃんは完全に姿を消した。
「何だったのでしょう・・・」
「さぁ・・・ともかく、見失った事には変わりないから、俺たちは進むしかないッスね」
『ランサー、行くッスよ』
『お、おう・・・あいつ、何がしたかったんだ?』
『俺も全然、見当もつかないッスね』
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しばらくしてようやく麓までやって来た。
『なぁランサー、ここに一体誰がいるって言うんスか?』
『ちょいと待ってな。すぐ来るはずだぜ』
すぐ来るね、一体誰なんだろうか。結局ここまで来るのに誰も予想できなかったわ・・・
「フヒヒヒーーン!!」
「ん?」
なんだか馬の鳴き声が聞こえたような・・・
「って・・・へ!?どひゃ!!」
後ろを向いたら、真っ白な何かが俺の目の前にあって、思いっきり踏みつけられた。
『やぁ!!久しぶりではないか!!我が戦友よ!!』
ランサーが呼んだから馬だとは思ってたけど・・・誰だよ、この暑苦しいの!!
ってか、戦友ってなんだ?俺こんな奴と一緒に戦った事なんてねぇだろ。
『あの・・・起きれないんで、ちょっとどいてもらっていいッスか?』
『むむ!?これは失敬した!!』
俺はそいつに咥えられ、立たされた。
「あれ?この方って、確か・・・」
零羅はどうやら気が付いたみたいだ。って事はやっぱ俺も知ってんのか?
俺はそいつを見た。真っ白な毛並みの美しい白馬、乗る部分の鞍には見覚えのある王国軍のエンブレムがあった。
「あれ・・・王国軍の、白馬に乗ってた奴。そしてこの暑苦しさ・・・まさか、アンリエッタの?」
『ふははは!!よくぞ覚えていてくれた!!我が名はポリス アルバトロス!!主人の名はアンリエッタ ヴェロニカ!!サカガミ サクラよ!!久しゅうな!!』
『あ・・・どうも』
そうだった・・・あの時はまだこの力に完全に目覚めてなかったから、全然覚えてなかった。そうか・・・アンリエッタの愛馬か・・・うん、主が主なら、馬も馬だなこりゃ、性格そっくりじゃん。
「あれ?という事はアンリエッタさんはどうされたのでしょうか?」
零羅は真っ先にそのことに気が付いた。言われて俺も気になった。
『主か?主は今は行方不明なのだ!!前にそなたと戦って以降行方をくらませてしまってな!!ハハハ!!』
ポリスの言っている事を考えると、思いつくのは三上の粛清か・・・今だにあいつが何のために自分の仲間を切り捨てるようなことをしたのか理解できないな。いくらアウロを倒すためとはいえ、仲間を犠牲にするなんて、俺には考えられないな。
『まぁ、気に病むことはない!!我々は共に平和を愛するものだ!!では行こうぞ我が戦友たちよ!!全ては平和のために!!進軍だーーーー!!』
『の前に、お前も山越えの準備くらいしやがれ。ただでさえあそこはいつも天気が不安定なんだからよ』
『何を!!山など熱意で吹き飛ばせばよいではなかろうが!!』
うん、こいつはマジで熱さで山を克服しそうだな。だけど俺はそうじゃないので・・・入念に準備します。




