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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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AWRO クロスオーバー 狭い世界

 ヘキサウラにやって来た麗沢であったが、どう言うわけかアウロの一人、リザヴェノフとばったり遭遇してしまう。

 どういう事よ・・・なんで麗沢君がここにいるわけ?確かここでイーサンと待ち合わせだったわよね・・・あれ?違うわ!!一本道間違えた!?


 そ、それよりどうしましょ・・・名前を呼んじゃったからね、はぐらかそうにも無理かな?


 「む?お主は・・・」


 仕方ないわ、ここは打ち明けるしかなさそうね。なんなら任務も続行よ、まだ上はこの子たちを引き入れるつもりみたいだし。


 「探したわ麗沢君。私はウラジーミル リザヴェノフ。あなたの探してる敵ってのは私の事」


 ここは動揺を見せてはいけないわね。


 「む!という事はアウロか!!」


 麗沢君は私に警戒して武器を構えた。1つは『流血光刃』なのは良いけど・・・なんでフライパンもセットなのかしら・・・


 「そんなに警戒しないで、私はあなたと戦うつもりはないわ」


 「そちらにはなくとも、こっちにはあるでござる!!キリ!!」


 これは、聞く耳を持ってないわね。仕方ない、少し遊んであげようかしら。前々から手出したいと思ってたとこだし・・・


 「今は何を言っても無駄かしら。いいわよ、お姉さんが一緒に遊んであげる」


 さぁ、どこからでもかかって来なさい。こういう子を躾けるのも悪くないわ。私はどちらかと言うと受けなんだけどね。


 「よし!!いくでござ・・・の前に!!」


 「あ、あらっ!?」


 雰囲気出しておいて急に立ち止まらないでよ、もう。


 「どうしたの?言ってごらんなさい?」


 「いや・・・その・・・」


 どうしたのかしら、私の美貌に惚れちゃった?ま、自分で言うのもなんだけど結構ルックスやスタイルには自信があるのよ。今まで出会った人は男も女も年寄りでもはたまた子供ですら口々に私を芸術だって持ちあげてたくらいだもの。


 だけど、麗沢君の質問は意外なものだった。


 「承知したでござる。では単刀直入に。拙者、そなたとどこかで会ったことがなかろうか?リザヴェノフという名に聞き覚えがあったような気がしてならぬのだ」


 「あら、そんな事だったの。うーん、あなたと会った事は多分無いと思うわ」


 会ってたら絶対に手を出してるもの、あの太った体のあのもっちりした二の腕とか、ベルトに乗ってるおなかとか、私そう言う子が大好きなのよ。その私が覚えてないはずがないわ。絶対に誘って襲ってるわ。


 「・・・そうでござったか、やはり拙者の記憶違いのようでござるな。では行くぞ!!」


 いきなりかい!!麗沢君は炎を纏った流血光刃を振り回す。この子の事は聞いてる。凄いでたらめに動くけど、何故かあの子の悪運みたいな力が働いて予期しない攻撃になってこっちに襲い掛かって来る。


 「まずは・・・」


 私は周囲に水の膜を張った。


 「おぅ?なんでござるか?」


 「水の防音壁よ、これで周りに音はバレないし、あなたを逃がす事も出来ないわ。あなたも覚醒者ならこれくらいできなきゃね、手から出したり武器に纏うだけが魔法じゃないのよ。どう?今ならお姉さんが優しく手取り足取り教えてあげるわよ?」


 「ご遠慮願う!!」


 これでまず行動を制限する。障害物が襲い掛かって来るパターンは無理、さぁ次はどうするのかしら?


 「とう!!」


 麗沢君はこっちに飛んできた。情報だとこういう場合は大体転んで虚を突いてくる・・・


 「うおお!?」

 

 あ、剣が地面に刺さった・・・そのまま麗沢君だけこっちに飛んできた。


 「おっと・・・」


 「お?」


 私は普通に麗沢君を受け止めた。逆のお姫様抱っこ状態になったわ。


 「あら、いきなり飛びついてくるなんて、意外と積極的なのね」

  

 「せ、拙者は二次元にしか興味は存在せぬ!!」


 可愛いわね、麗沢君は恥ずかしそうに私から距離を置いた。にしても、意外と軽かったわ。もうちょっと重たいと思ってた。


 「そう?結構顔赤いわよ?それにアオシラでグレイシアちゃんの水着見たがってたじゃない」


 「む?あれは別でござるよ、芸術的な観点で興味があっただけでござるが?」


 あれ、真顔で返された・・・って、軽く私ディスられた?私は芸術的にも興味なし?


 「い、今の結構心に刺さるわね・・・こうなったら、あなたの体に直接私の魅力を植え付けてあげるわ」


 いいわよね、覚悟しなさい・・・私の手練手管であなたを骨抜きにしてやるわ。足腰立たなくなるまでね・・・


 野外で襲うのってやった事ないけど、結構興奮するかも。ゾクゾクしてきちゃった。


 「お主、さっきからビッチな発言をしてくるでござるなぁ・・・拙者、あまりそう言うのは好きではないでござるよ」


 グッッッサ・・・この子本物だ。本当に二次元にしか興味ないわ。


 なんだろ、この気持ち。私って世間一般で言うイケメンは好きじゃないのよ。むしろこんな感じで太ったのが一番なのよ。ぷにぷにの二の腕とかぽよんとしたおなかとか大好きだから、そう言った人たちばかり襲ってきたわ。そしてその子たちはみんな大喜びしてたのに・・・麗沢君ときたら、全く私に興味ないなんて。


 あぁ、そうか・・・私今腹立ってるんだ。そうだわ。だったら仕方ないわね・・・私は、ハードなのはあまり好きじゃないけど・・・


 「麗沢君、あなたもう少し女性への言葉を選んだ方がいいわ。私って完全覚醒者の中じゃ戦闘能力は一番弱いけど・・・あなたをズタズタにして、私の言いなりの人形にすることぐらいわ出来るわ!!」


 「む!!本気になったでござるな!!」


 麗沢君はまた変な風に構えた。無駄よ、今の私にあなたの幸運は通じないわ・・・


 私は手元に水を纏う。そして弾丸の様に発射した。


 「ふお!?」


 麗沢君の流血光刃を衝撃で飛ばした。あら、割と冷静に判断は出来るのね。普通なら武器を拾いに戻ろうとして背を向けがちなのに、麗沢君はそのまままっすぐフライパンを持って盾のように構え、突進を試みた。


 だけどやっぱり無駄よ・・・


 「はい、私の勝ちよ」


 私は軽くかわして、すれ違いざまに手のひらから水を勢いよく噴射し、フライパンを切断。


 だけど運が強いわね。麗沢君は衝撃でぽいーんと飛んでいった。私の足元には彼の眼鏡だけ落ちていた。


 私は眼鏡をひょいと拾い上げる。

 

 「ひえっ、このメガネ度がきついなんてものじゃないじゃない。ぐにゃぐにゃ・・・麗沢君、よくこんなのかけてられるわね。この世界の影響で、目は悪くてもある程度良くなるはずなのに」


 「っく・・・眼鏡は、どこでござろうか・・・あれが無ければ目を凝らすから非常に疲れるのだが」


 あれ?麗沢君ってこんな声だったっけ・・・今までは、ザ・デブみたいな声だったのに、突然透き通るようないい声になった。


 「眼鏡ならここよ、でも分かったでしょ?あなたたちじゃ私たちには勝てないわ。さぁ今ならまだ間に合う。私と一緒に行きましょ?あなたはきっと私たちの事誤解してるのよ」


 「いや・・・まだ負けてはおらぬ」


 「そんな事言ったって、これが無いと何も見えないんじゃないの?まだ足掻くって言うのなら持ち帰るのは死体になっちゃうわ。私はそんな事したくないの」


 「ふ、散々人の命を弄んだおぬしらが言うセリフではないな。だが、それは俺もおなじでござったな。ようやく思い出したでござるよ。リザ殿、世界は狭いものでござるな」


 俺?え?どういう事?砂煙が晴れた。私は私の目を疑ったわ・・・


 「ま、まさか・・・あなたは、レイダース?」


 「その名も覚えていてくれているとは、光栄な限りでござる。あの日以来でござるなリザ殿」


 「えぇ、そうね。」


 ・


 ・


 ・


 「いやちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!!?」


 ツッコませて、とりあえずまずはツッコミを入れなきゃだめよ。このままシリアス展開は駄目よリザヴェノフ!!


 「思い出したわ!!思い出したけど・・・なんで眼鏡取っただけでこうなるの!?」


 麗沢君が眼鏡を取った姿は、先ほどまでの太った感じの天然パーマでふざけた語尾の男の子じゃない。目鼻立ちがくっきりして、髪もおしゃれな感じでパーマがかかってる。桜蘭君に負けず劣らずの美少年よ。


 「うむ、俺は眼鏡がないと凄く目を凝らすもので、それでかなりカロリー消費をしてしまうのでござる。だから眼鏡を外すと痩せてってしまうのでござるよ。眼鏡を外すのは同人誌即売会の時と決めておるのに・・・」


 「あ、そうなの、目を凝らすと痩せるのね・・・ってなんでやねん!!それで痩せれたら世の中からダイエットなんて言葉が消えるわ!!」


 「今のノリツッコミは5点でござるな」


 やっかましいわ!!


 「それに、出会ったって、なんかすごい意味深な感じだったけど、会ったのはあなたが高校一年生の時のただの同人誌即売会よ!?」


 「そうでござるな。俺はレイダースと言う名で先輩とオリジナル作品を作っておった。あまりいい出来ではなかったが、何故か妙に売れたのでござるよな。男性向けであるはずなのに主に女性に売れたのだが・・・そんなときにそなたと出会ったのでござる」


 「えぇ、私も似たようなものだったわ。小遣い稼ぎって言われて、なんでか露出の多いコスプレさせられて・・・女性向けの作品を出してたはずなのに、妙に男の人に売れたわね」


 まぁ、多分売れた原因は私があそこにいた男の人たちを片っ端から裏に連れ込んで襲ってたのが原因かもしれないわ。少し臭ったけど、私好みのがいっぱいいて・・・って違うわ。


 「・・・はぁ、なんだか笑えてきちゃった。まさかあいつと同じような人がまだいたなんて・・・あいつも眼鏡かけたら別人みたいになるからね・・・でも、麗沢君ほどじゃないわ」


 「ん?確か、あれの作者はグルポニ先生でござったよな。まさかそなたは、先生の事を知ってるのでござるか?いや、実は前々からファンでな、俺も時折先生の作品を参考にしている事があるのでござる」


 え、あれってそんなに面白かったっけ・・・そう言えばあの時に出したのは、「801過ぎてつまんない、売り上げ出したいから来て」とか訳の分からない事言われてついていったのよね。前の作品は自信作とか言ってたわね。


 「私はよく分からないけど・・・グルポニ先生なら知ってるわよ。あなたもよく知ってるんじゃないかしら。グルグル眼鏡のボサボサポニテ、本名は静也丸 峰子よ」


 「な・・・なぬ!?まさかシィズ殿でござるか!!」


 「そう、シィズはアウロの中でも芸術家肌でね、服を作るのが凄い上手なのよ」


 そう言えば、この間なにか縫ってたわね。なんかコートみたいの作ってたけど、あれは誰のコスプレなのかしら。まぁいいか。


 「ぬぅ・・・にしても、世界とは案外狭いものでござるな。こんな形で再会するとは」


 「そうね、あなたの事は調べていたつもりだったけど、まさかあの時いたレイダースって言う謎のイケメン作者だったなんて、そしてこんな異世界でまた出会う。これって単なる偶然かしら・・・それとも何か繋がりがあったとでも言うのかしらね」


 ほんとどうなってんのよ。


 「ん?待たれよ、もしかしたら後者が正しい気がする・・・実は拙者たちは何かそなたらと繋がりがあったからここにいるのではないか?」


 「流石に考えすぎよ、確かにあなたと私に面識があったのは驚いたわ。けど桜蘭君はいいとして零羅ちゃんはあなたとは無関係。あの子をここの世界に推奨したのはエファナで、桜蘭君とあなたをここに呼ぶように推したのはディエゴよ?」


 「いや、その零羅殿の事で少し気になる事があってな。彼女の苗字は神和住と言うらしいのでござるが、実は俺の父の勤め先は神和住製薬という会社なのでござる」


 ・・・それってほんとなの?これは本当に偶然じゃないかもしれないわね。何か理由があって私たちは巡り合ってるのかも・・・


 『世界は・・・狭いね』


 私たちは口を揃えて同じ言葉を吐いた。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 一方そのころ、反対側の路地では。


 「遅い・・・リザのやつ何をしてるんだ?また、男でも食ってるんじゃないだろうな」


 イーサンはひたすら、リザヴェノフを待っていた。彼は律儀なので遅れても30分は連絡せずそのまま待機する。因みに行動も30分前に行動する。今回はカラスちゃんとのいざこざで20分ほど遅れて到着しているが、それでも10分前行動は彼の基本である。


 「ん?遅いぞリザヴェノフ。一体何を・・・って、シィズ?」


 「あれ?イーサンだけ?リザはどうしたの?」


 やって来たのはリザヴェノフではなくシィズであった。彼女もリザヴェノフから相談があると言われここに来たらしい。


 「リザってば、また男でも襲ってるのかしらね。でも変よね、そうなったら連絡寄越すのに」


 「あぁ、しかも絶賛襲ってる最中にな。恥ずかしくてかなわん・・・それよりも、逆に今のこの現状なら都合がいい。シィズ、あいつはどうなってる?」


 「えぇ、三上君は無事目覚めたわ。完全覚醒は完了、でもあの子に殺されかけたわ・・・」


 シィズは首元をさすった。彼女にとって若干トラウマになっているようだ。


 「ハハッ、彼らしいと言えば彼らしいな」


 イーサンはその時の姿を想像して少し笑う。


 「でも、ギリギリだったわよね。完全覚醒に至れたのは本当に奇跡だったわ」


 「あぁ、流石に他の奴らにばれないように、ここの世界の時計を一時的に1秒ずらすのはな。それに時間を取られたせいで、桜蘭君との戦いには間に合わなかったからな」


 「ほんとそうね、完全覚醒の方法は、この世界にやって来てから20年後、ビーストになると同時に精神に一切の恐怖を持たない状態で死ぬ事が唯一の条件。死ぬタイミングは1秒たりともズレてはいけない。あの時桜蘭君がとどめを刺したタイミングはその時刻に丁度重なったおかげで、三上君は完全覚醒に至った。そしてあなたがわずかに時間をずらしていたおかげでうちの連中も死んだと思ってるわ」


 「だが、危ない賭けになったな。本来なら俺があの場に行きたかったんだが、世の中何が起こるのかわからん。計画に支障は出なかったというのはまさに奇跡だ。もし三上君を失ってしまったら、組織の壊滅はかなり難しくなる。それにしてもシィズ、よく裏切る決断をしてくれたな。お前はリザや他の奴らとも仲が良かっただろ?」


 「そうね、だけどそれとこれは別。私たちは間違ってる。いくら私たちの世界を救うためとはいえ、その為に三上君や桜蘭君、大勢の人を犠牲にして、そしてこの世界そのものをただの実験の道具のように扱って、失敗があるからこその成功だとか、犠牲無しに大義は得られないとか言ってるけど、それで得たものに本当に私たちは満足できるのかしら、そう思ったのよ」


 「確かに、そうだな・・・結局のところ、私たちはただ上の連中に利用されてるだけのただの駒。奴らは自分の身さえよければいいと思ってる連中ばかり。自分は何もせずにただ言うだけだ」




 シィズとイーサンは、アウロを裏切る算段を立てている。それが二人にとっての正義。しかし、アウロという組織は一枚岩ではない。特にこの世界にいる覚醒者達は、それぞれに秘める思いがあるが故に覚醒に至っている。それぞれが異常なほどに強い信念を持っている。


 だからこそ二人は仲間を集めようとしていた。その異常なほどに強い信念を持った者たちに対抗できる存在を。だが今のままではまだ勝てない。組織を束ねるあの男は、誰よりも強い信念を持っていた。


 ディエゴ アンダーソン。彼はアウロの中でも異常すぎる強さを誇っていた。そこで二人は考えた。ディエゴと同じく異常な信念を持った存在を探すと。そこで行き付いたのが三上だった。




 「うーん、結局リザは来なかったな。連絡を入れてみるか」


 「そうね、裏切ってるとはいえ少し心配・・・ってあれ?」


 「どうした?」


 「丁度今通信が来たの。しかもジンからよ」


 二人はこのタイミングでジンから連絡が来たことが理解できなかった。二人は少し疑りながらも通信に出た。


 『あ、シィズ君カ。それにイーサンも一緒のようだネ。ん?リザヴェノフ君はいないのカ?』


 「それが連絡も寄越さず、行方不明なのよ」


 『そうカ。もしかしたら、あの事カ?』


 「なにか知ってるのか?というか、体はもういいのか?うちのアリアやシャンデラに随分とやられたようだったが」


 『まぁ、油断した事は認めるガ、私はそんなにヤワじゃないヨ、もう治ったサ。それよりもダ、リザヴェノフ君もその事で君らを呼んだんだガ、実はアイシー君が部屋からいなくなったのだヨ』


 二人はしばらく沈黙した。


 「え・・・ちょ!!また!!?誰が手引きしたのよ!!」


 『目撃証言だと、黒い服を着た女の子が近くにいたとカ・・・』


 「んなっ!!あの馬鹿!!何を考えているんだ!!ジン!!被害報告は!!どれくらいだ!!?」


 イーサンは犯人がカラスちゃんだと真っ先に気が付き、慌てふためいた。


 『落ち着ケ。それが妙なんだヨ。さっきも言っただロ?目撃証言があるんダ』


 「・・・まさか、あいつは人間を見つければ片っ端から襲いだす。彼女とのかくれんぼは絶対に勝てない」


 『そうダ。不思議な事に今回の脱走では誰も被害者はいなイ。何なら目の前に立った奴にも目もくれなかったそうダ。そしてそいつの話では独り言をぶつくさ言っていたらしイ「あいつがぼくをまってるから」ってネ』


 「待っている? どういう事かしら・・・ねぇ、出したのってカラスちゃんよね。あの子どこに行ったの?」


 二人は状況を飲み込めない。唯一の手掛かりはカラスちゃんの行方だけ。


 『さぁネ。最後の1人に会いに行くと言っていたガ・・・』


 「ふむ・・・分かった、こっちでもアイシーの捜索を始める。カラスちゃんの後始末は私が引き受けよう」


 『頼んだヨ、私はまだ少しの間は動けないからネ・・・それよりもだ・・・』

 

 ジンは突然いつもの気怠そうなトーンから、静かな真面目な声になった。


 「どうした急に?」


 『いや・・・ここだけの話にしてくれないカ?』


 二人は見つめあい、アイコンタクトを送る。だが、両者ともにジンが何を言おうとしているかの予測は出来なかった。


 「分かったわ、話して」


 『いや、妙だと思ってネ。我々は上からあの勇者たちを仲間に入れろとも、殺せとも言われていル。それはただの情報共有出来ていないだけなのだろウ。報連相が出来ていないのは嘆かわしいガ・・・ま、そんな事はどうでもイイ。問題は何故この命令が出たのかダ』


 「私としては、上の連中の事だから君の言うように、情報が迷走しているだけだと思ったが、あの馬鹿どものことだし、いつもの事だ」


 『やはり、君もそうなんだネ・・・我々は随分と上の連中を馬鹿にしすぎてはいないカ?』


 「ま・・・まぁね、いつもろくな指示をださないからかしら」

 

 『ソウ、彼らはろくに指示を出したりしない・・・むしろ逆ダ。私もあの連中は自己中心的な馬鹿ばかりだと思っていル。慢心して、私たちがいればどうにかなると思っているんだヨ。


 イーサン、この命令・・・本当に上からの命令なのカ?』


 「っ!!まさか・・・ジン!!」


 『面倒だから単刀直入に言うヨ・・・私は仲間を疑っていル・・・考えてみたまエ、あの小僧どもが何をしようとしていたとしても、我々にはなんの支障もない。核を打ち上げようともネ・・・全ての事実は書き換えればいいだけダ。ディエゴの記憶支配なら、この世界の全ての人間の記憶を一気に書き換える事も可能ダ。上の連中だったらまずそれをやれと指示するはズ。だが・・・ディエゴはそれをやっていない。そして思い出してくレ・・・我々の任務は誰から言われタ?』


 「・・・ディエゴから直接だわ」


 『そうダ。私も全然不思議に感じていなかった・・・だが、アイシーの脱走で違和感を感じたんだヨ。どういう訳か、やたらと事態がややこしくなってるだけで、進行しないことにネ。どうにも、時間を稼いでいると感じざるを得ないんだヨ。理由は分からないシ、信じたくもないガ・・・私は、ディエゴを今疑い始めていル』


 「・・・分かった。ディエゴの事もどうやら調べなきゃいけないみたいだな。この事は、私たちだけの秘密にしておこう。では切るよ」


 イーサンは通信を切り、シィズを見た。


 「ディエゴが・・・組織を裏切っているだなんて、信じられないわね。あいつは組織の研究を完成させることを何よりも望んでたじゃない」


 「そうだな、しかし私たちはあいつが何故、不老不死を完成させることにやたらと尽力している理由は知らない。なにか理由があるのか?だが・・・」


 「えぇ、どちらにせよ私たちの望む、実験を止めさせて組織を潰す事とはまた違う気がするわ」


 

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