馬と鹿 ニューウェポン VS.レベル99
一兆たちはエイドの旧首都、セレスを訪れる。
ふぅ、あそこの店、悪くなかったな。ここの世界はゲームだってのに、味覚も感じる事が出来るって、あいつ等どんな技術使ってるんだ?実際に食わなくても普通に数日間、問題なかったしな。
「ねぇイッチー、次どこに行く?」
「あ~、そうだな・・・ってあ? あ!?」
俺は腕時計型のデバイスを見た。地味に地図アプリも入ってるから何かと便利なのは良いんだが・・・それよりもだ、俺の目がおかしいのか?トクの奴のレベルが
「どったのよ?」
「なぁトクちゃんよ、今俺のレベルっていくつだ?」
「50のまま、動いてないね」
「お前のレベルはどうなってる?」
トクは自分にデバイスをやりにくそうに向けた。
「は・・・73? 73!?まてぇな!グレイシアさんさっき人間の限界が50って言ってたじゃん!!マジでこれ壊れてね!?」
壊れてるって思いてぇが・・・こいつがさっき俺を突き飛ばした時、とんでもねぇパワーに跳ね上がってた。こいつは粋がっているものの、大体誰かの後ろに立っておだてるだけの腰巾着。体育の成績、50メートル走は今だ13秒から抜け出せないし、握力は13キロ、ハンドボール投げ13メートル、反復横跳び13回、あれ・・・こいつ13ばっかだな。じゃねぇや。ともかくこれほどまで運動音痴なくせに、俺を吹っ飛ばしたんだ。
そう言えば、グレイシアは時間で制限解除とか言ってたな。トクは制限解除されたってのか?じゃあ俺は?
「トク、ちょい肩パンやってみ?」
「え・・・怒らないでしょうね」
「やらなかったらぶん殴る」
「へい!」
トクの腰も入ってないへなちょこなパンチ、だけど・・・
「っ!!ぐぅ・・・!!!」
「ふぇ?」
肩外れそうだった・・・少し地面滑ったし、なんなら、俺の足が地面にわずかにだがめり込んだぞ?やっぱバグってねぇ・・・
「俺、突然レベルアップしたパターン!?」
やべ、こいつこうなると絶対に調子に乗り出す。早いとこ手を打たねぇと・・・
「かもな・・・ちっ、今はお前が上か」
「だねー!!こんだけパワーあれば世界取れんじゃない!?」
「ぬかせ、その程度で勝ちとれるわけねぇだろ。あんま調子乗んな、グレイシアの話じゃ俺もそのうち制限解除されるはずだぜ?そうすりゃ、また立場は逆だ。分かってるよなぁ?」
「は、はい・・・調子に乗りかけてました・・・」
よし、これでいい。
「もし、そこのお方や」
誰だ?この爺さん、なんか変な爺さんが俺に話しかけてきた。
「だれ?」
「さっきあそこの店であの野盗どもを蹴散らしておったじゃろ、あの力、まさかお前さん、さては別の世界から来たか?」
こいつ・・・知ってんのか?
「・・・まぁな、で、それで俺に何の用なの?用がねぇのなら行くぜ?」
「まぁ待ちんしゃい、儂は武器職人なる仕事をしとるチュニアって言っての、ここには素材を買い出しに来たんじゃが、実は新たな武器開発を考えておって、魔法族の者にこれの試用をして欲しくてな?」
爺さんはポーチのような物を取り出してきた。
「これは、カードか?でけぇし、重た・・・何、投げて武器にでもすんの?」
にしても・・・カードのデザイン、なんだこれ・・・まぁ、俺は嫌いじゃねぇな。表はなんも描かれてねぇ真っ白だが、裏のデザインの装飾は煌びやかで嫌いじゃない、それこそこいつはバロック時代あたりに流行ったデザインだな。
「まぁ近いの。じゃがちょっと違う。そいつは魔法を溜める事の出来る性質を持ったカードでな?ちょいとカードに魔法を使ってみてくれんか?」
魔法?じゃあ・・・炎?
俺はカードに炎の魔法を使うと、真っ白だった表面に炎のエンブレムが浮かび上がった。
「おー成功じゃ!!そいつはの、衝撃を加えるとカードが展開してな、その中に入ってる魔法が炸裂するっちゅう武器なんじゃ」
へー、こりゃまた面白そうなもんだな。他にも色々応用できそうだ、普通に投げてもすげぇ痛そうだし。
「すげぇじゃん、俺これもらっていいのか?」
「まぁの、お主賭け事が好きそうじゃし、お前さんにぴったりの武器かもしれんのぉ、こりゃいい奴に出会ったわい!」
爺さんは大きく笑っている。なんで俺のギャンブル好きまでバレてんだ?
「じゃ、ありがたくもらってくぜ、サンキュー」
「あ、ちょいと待ち」
「まだなんかあんの?」
「一言言い忘れておったわ、使い方はあなた次第、そいつはかなりの殺傷能力を持っとる、下手な使い方をすれば、武器はお前さんに牙を向くじゃろ。それだけは言っておかねばならんのでな。ま、お主なら使いこなせるじゃろ」
「ふーん」
俺はこのカードを持ってこの場を去った。さてと、これからどうするか・・・
「やぁ、久しぶりだね」
今度は誰だ?
「あ、エファナさんじゃん! ねぇ紅さんは?」
俺が振り向く前にトクが見つけて、なんなら一気に質問をぶつけた。
「済まないね、彼女は今別行動中だから、ここにはいないんだ」
「ちぇっ・・・」
「それよりも、トク君はもうレベル上限を超えたみたいだね、おめでとう」
あ、こいつそのことを言いに来たのか。早ぇな・・・
「そりゃどーも、でも褒められるなら紅さんが良かったな~」
「ま、まぁ・・・彼女人を撫でるのが好きだからね・・・
それはさておき、もしかしたら知ってるかもしれないが、そのデバイスのレベル表記は現実と差はないんだ。基本的な一般人はレベル1~10程度、トップアスリートや特殊部隊などの人は40くらいは行くだろう。そしてその限界は50と設定してある。だが、このゲームはその垣根を超える事が出来るようになってててね、トク君は今それを超えた状態にあるんだ。
覚醒と言ってね、これのシステムを構築するのは苦労したよ。おかげでリスクなしで出来たみたいだ。とはいっても、軽い興奮状態になるのは必要かもしれないね。因みにわたくしは完全覚醒者と言ってスペックは覚醒者と似ているが、魔法などの安定性はよりしっかりしている状態なんだ」
あ、そういやトクの攻撃がやたらときつくなったのは、俺と少し喧嘩した時だったな。あれが引き金だったのか・・・
「そこで、覚醒にはもう一つ別の効果があってね、特別な例もあるけど、基本的にはレベルは93を超える人は大体、セカンダビリティと言って、ランダムで何かを操れる能力が手に入るんだ。トク君は今レベルは70代だ。だが、今の一兆君ならばレベル90は行けると思ってね、どうだい?」
「どうって・・・まさかお前が戦うのか?お前科学者だろ?」
「まぁそうだが・・・わたくしを見た目で判断しない方がいいよ。こう見えても腕には自信があるんだ。何ならそのデバイスで見てみるといい」
俺はエファナにデバイスを向けた。なんだって?こいつぁ・・・
「レベル・・・99?」
「そう、覚醒者及び、完全覚醒者の限界値だ。つまり人間の捻りだせる最大の力をわたくしは持ってるという事だ」
嘘くせ、こいつは自分が人類で最強みたいな言い方に聞こえるぜ全く・・・
「へぇー、ケンカ、売るって言うんなら買うぜ?丁度新しい武器も手に入ったしな。ぶっ倒れても知らねぇぜ?」
「構わない。わたくしも久しぶりに腕が鳴るよ。ここでは流石に目立つから、街の外で戦おうか」
俺たちはセレスの街から少し離れた場所で戦う事にした。
エファナはゆっくりと拳だけ握って微動だにせず立ちはだかった。
これだけで空気を変えやがった、俺は今まで何度もケンカしてきたから、何となく空気だけで相手の強さは測れる。
こいつはやべぇな、こいつ本当に科学者か?空手の有段者でもこんな空気にはなんなかったぜ?
けど、俺もその程度でビビるほど腰抜けじゃねえ、拳で語り合いたいところだが、俺は今それよりもこの武器を試してぇんだ。
「行くぜぇー」
俺は腰のベルトにカードケースを付けて、そこから5枚ほど抜き手札にした。
さてと・・・ここにはさっきの炎のカードがある、後は真っ白。とりあえず普通にこの1枚目を使うか!!
俺は炎のカードを投げつけた。するとカードは俺の身長程度に大きくなった。
「面白い武器だね。身を隠すには丁度いいが、このわたくしには通用しないよ」
エファナはカードを薙ぎ払った、その瞬間だった、カードから炎が一気にエファナに襲い掛かった。
「おっと、これは・・・危ない、危ない」
まぁ、流石に今ので手傷を負わせれるとは思ってなかったが、大体使い方は分かったぜ。こいつぁ俺にとっちゃ一番相性がいいかもな。相手を騙して勝利を掴む、半ば博打のような武器になるな。
「じゃあ次行くぜぇ~」
このカードから魔法を放つ方法は何種類かある。一つ目はさっきのあれだ。一度カードに衝撃を与えるとカードは大きく展開する。その状態でもう一回衝撃を加えると強制的に魔法が放たれる、言わば地雷のようなトラップに使える。
そして次にカードを展開した状態では、俺の任意でも魔法を発動できるみてぇだ。
それを応用すれば展開していないカードからでもテクニック次第では直接魔法を放ったり、他にもなんにも魔法を入れていないカードを使って防御壁とか相手の目を欺くにも効果的だな。
俺はそんな感じでこいつの色んな使い方を確かめながらエファナと戦った。にしても、エファナの野郎、普通に避けたり受け流したりしてやがる・・・結構傷つくな、一発くらいあたれや。
「でもま、いっか。とりあえずはウォーミングアップは終了って事で。大体こいつの使い方は理解できた。エファナさんよ、こっから本気で行くけど構わねぇよな?」
「問題ないよ、わたくしも体をならせたしね」
じゃあ・・・いくか。
俺は手元に5枚カードを用意した、そしてその内の1枚をエファナに投げ、その瞬間に炎の魔法を発動させた。そうすると爆発の様に炎が噴き出しエファナに襲い掛かる。
「この手は見飽きたよ。この爆発で目くらましをし、その隙にわたくしの後ろを取る!!」
エファナは後ろに回し蹴りを放った。
「ざ~んねん、何度も同じ真似なんか誰がするか」
蹴ったのは、展開した何も描かれていないカード。そして後ろを向いた今だ。
「俺は、ケンカは直接ぶん殴んの」
俺は拳を突き出したが、その攻撃に即座にエファナも反応し俺の攻撃を受け止めた。
「今の攻撃、君らしくて良いじゃないか・・・わたくしもスイッチ入ってしまったようだね。今度はわたくしからも行くぞ!!」
エファナは踏み込んで拳を繰り出した。なんじゃこりゃ・・・この威力コンクリートもぶち破れんじゃねえか?トクの野郎はポカンと口を開けてみてるだけだし。
「面白ぇじゃん・・・俺もスイッチ入れてこうかな!!」
その時だった。俺の中で何かが変わったのが感じた。急に冷静な感情が入って来る。
そして理解できた。
「エファナさんよ、次、一番強ぇので打ってきな。やってみてぇことがある」
「・・・素晴らしい、これを待っていたよ。レベルは94か・・・成功かな?後は・・・」
俺は今突然レベルアップしたみたいだ、実感はあんましねぇが、今の俺はさっきとは違うことぐらいは分かる。
「後はてめぇの目で確かめな」
「そうだな。君の能力、わたくしの全力を持って見させてもらおう」
エファナは呼吸を整えた。
「トク君・・・そこをどいてくれないかな?ここでは君を巻き込みそうだ」
「ふぇ? はーい」
ボケっとしてトクもひょいひょいと少し逃げた。そしてエファナは右手を握り突き出す構えを取った。
「行くよ・・・」
そしてエファナは勢いよく前に飛び出た。俺はそれと同時にカードを一枚下に投げる。カードは展開し、俺を隠した。
「この拳は!その程度の防御など!一気に吹き飛ばす!!」
「だろうな!!」
俺は展開したカードを元に戻した。
エファナの攻撃の瞬間にカードを閉じる。奴には俺が消えたように映ったはずだ。それもそのはず。俺はそこから消えたんだからな。
エファナの攻撃が空気を殴る。その衝撃は今の俺でも流石に予想できなかった。空気を殴っただけなのに、前方が一気に吹っ飛んでった。成程、トクをどかした理由が分かったぜ。にしても危なかったな、あそこまで飛んで正解だった。
「外したか・・・だが、一体どこに・・・!?」
「上に飛んだんだぜ!!」
俺はエファナの上から更に一発拳を打ち込んだ。レベル94で大差ねぇはずだけど・・・あれの威力にはならねぇな。だが、入った。俺の攻撃はエファナを捉え、顔面にクリーンヒットした。
「っ!!っとと・・・これは、重たいのもらっちゃったね」
「よっと・・・俺はどちらかっつったら、これで飛んでかねえ方に驚いてるぜ?」
「ハハハ、こう見えて結構鍛えてるからね。にしても・・・凄い能力に目覚めたものだ。わたくしの上に瞬間移動するなんてね」
「はぁ・・・もうちょい俺の能力が分からなくて慌てふためくお前が見たかったんだけどな。トク見てみろよ。今だに間抜け面でキョロキョロしてんぜ?」
トクは俺がやったことを全く理解してねぇ。エファナの野郎は一瞬で理解できたみてぇだな。
「さしずめ、君の能力は『空間支配』と言った所かな?君の周囲の空間を支配する能力。君はさっきカードで目くらましの瞬間にもう一枚カードを上に投げ、カードからカードへと瞬間移動した。違うかい?」
「お前観察能力高すぎだぜ、俺そういう頭いい奴嫌」
「ハハハ、どうも職業病というのかな、観察はどんな時でもやってしまうのでね」
こいつの言う通り、俺はカードからカードへ瞬間移動した。それが俺のセカンダビリティってやつだろう。空間を支配する、まさにそれだ。すげぇ能力だな、今思えば。 あ~あ、これ元の世界でも使えたらいいのにな~・・・
「さてと、君たちの契約期限はあと二週間ほどになるね。今のとこどうだい?」
「俺は割と楽しくやってるぜ。トクもレベルの制限解除で大分浮かれてたし、まぁいいんじゃないの?」
「そうか。意見ありがとう、紅君にも伝えておくよ、ではそろそろ失礼しようかな?そろそろ仕事をしないといけないからね」
「あー、はいはい」
俺たちとエファナはここで別れた。さてと、俺もレベル上がったし、次はどこいこっかねー




