永零 異世界の白き刀
三上たちは折れた白い刀身の日本刀を見つけるが、三上は突如襲来したアイシーを退ける。
数日が経って、僕たちはケープ地区って言うところに来た。
「礼、ここに何があるの?」
「ここは白針の洞窟って言われてる場所。ここの地元だと針地獄なんて言われ方もしてるね。まぁ中に入れば分かるよ」
僕たちは洞窟の中に入った。
「うわ・・・」
そこには尖った真っ白な岩が地面からも壁からも天井からもあちこちから生えていた。
「針地獄って言われるの分かる気がする。それにしてもこれ・・・すごい硬いね」
「これを加工して作ったのがこの刀なんだ。さて・・・」
『ガキィィィン!!』
礼は刀を取り出したかと思ったら、いきなりそれを一本の岩に向かって放った。なんだこれ、刀が光ってる・・・淡く光る刀、なんだっけ・・・覚えてる気がする。でも、どこで知ったのかそれが何なのか全く思い出せない・・・
「やっぱ駄目か・・・天石どうしぶつかり合っても意味はない・・・フォックス、次のプラン、全力でこの石に魔法を使って」
「おうよ!!」
今度はフォックスは人間になって岩に魔法を、礼が刀に魔法を放った。ぶつかった衝撃で閃光が生じた。僕は、思わず目を瞑った。
なんだったっけ・・・このぶつかった感じ、僕はどうしてか覚えてるんだ。あの、感覚は・・・
「待って礼!!」
「どうしたの永零?」
「僕、ここを覚えてる・・・」
僕は洞窟の奥に入っていった、そして岩が重なって出来た壁の前に立った。
「礼、その刀を貸してくれる?」
「・・・分かった、信じるよ」
礼は僕にあの刀、輝國を差し出した・・・
「みんな、この刀に少し血を吸わせるんだ。そしてその後に全員で魔法をこれに捧ぐの」
みんな少しこの刀で指を切った。そしてそこに血を垂らした。こいつが赤く染まるまで・・・
「永零、この方法・・・なんで知ってるの?」
「分からない。けど、ほんの少しだけ覚えてるんだ。この奥にあるもの、そしてここを開ける方法・・・僕はこんな場所知らないはずなんだ、だけど信じて礼」
「おいらは信じるよ!永零兄ちゃんはなんだか懐かしい感じするしねぇ!」
「だね、じゃあいくよ!!」
僕たちは3人一気に魔法を注ぎ込んだ。刀はさっきまでの淡く輝く光ではなく、赤みがかった白色になり激しく閃光を放った。
そして、この岩はついに砕けた。
「遂に、砕いた・・・」
礼は感嘆の声を上げた。
「うおー!!やったねー!!」
フォックスもぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。
「そして、奥にある・・・」
僕は砕いた岩の奥へと進んでいった。そしてそこに置いてあった。
「もう一振りの・・・刀」
「これは『和一文字』そして君のそれは『異世輝國』、この二振りの刀の名前・・・なんで、僕はそんな事を・・・」
僕は刀を掴み取った。分からない・・・僕はこの刀を握った瞬間に分かった。手に凄い馴染む。僕は今まで刀なんか握った事ない。だけど、この刀は僕を知っている。
「そんなに思い悩まなくていいよ永零。君の事はゆっくり探していけばいい。君が望むのならね。だけど、今の君は知りたがってるけど、知る事を恐れている。世の中には知らない方が良かったって事もあるんだ」
「そう・・・だね、僕は僕を知るのが怖い。この存在しないはずの記憶、もしこれを知れば僕は、僕じゃなくなる気がする。僕は僕を捨てたくない」
確かに気になりはする。ニヒル アダムスの事とかにも関係してるのかもしれない。だけど・・・大切なのは今を生きる事。未来を夢見る事だよ。過去は学ぶだけで充分、囚われすぎても身を亡ぼすだけ。
「それが君の答えか。それが正しいのかは分からないけど、今の君はそれが良いのかもね。さてと、じゃあ後は」
「輝國を作り直そうよ」
後は、この折れた刀を打ち直す事・・・だけど、これも分からない。これは折れないはずなんだ。とてつもない力がこれに加わった。それでこれは折れたんだ。
「打ち直すには、さっきみたいに刀に魔法を注いでその間に折った天石を槌みたいに刀身に叩きこんでいくんだ。そうすれば出来ていくはずだよ。より固くなってね」
「へぇ~、そんな方法は思いつかなかったよ。君がいなかったら詰んでた。ありがと永零」
それが難しいのなんのって言う事は何となく記憶にある。こっからが骨の折れる作業だよね。
『トン!テン!カン!トン!テン!カン』
刀を鍛えていく・・・これは完成させるまで常に魔法を流し続けなきゃいけない。一度でも魔法を解けばそこからはもう加工は不可能になっちゃうんだ。
『ドン!デン!ガーン!ドン!デン!ガーン』
後半はもう全員死にかけていた。
「に、ニヒルおねぇちゃん・・・よくこんなの つくった ねぇ・・・ぜぇ・・・」
「確かに・・・ここまで精神力を削るなんて・・・」
「でも・・・大丈夫やっと、完成したよ・・・」
3人ともかなり限界に体力を消耗していた。
「やっぱり、ただの天石よりも更に固く作れるみたいだね・・・でも、どうやったらコレが折れたんだろう」
礼は打ちあがった刀を手に取りそれを眺めてる。
「それは僕にも分からないな。これは折れない、そう知ってるから」
「さぁて・・・これで一振りか。ねぇフォックス?」
「んお?」
「知ってる?侍ってさ、脇差も携えてこそ真の一人前だったんだってー」
「え、って事はまさか」
「あと一振りだよ」
「いやああああああああ!!おいらやあああああ!」
礼は逃げ出すフォックスを捕まえた。
「別に僕が持つんじゃない、君用のやつ」
「え?おいらの武器って事!?」
それを聞いた瞬間、フォックスは目の色を変えて乗り気になった。この子って単純だなぁ。
「そゆこと、やってくれる?」
「さー!いえっさー!!」
「永零も大丈夫だった?」
「僕の方も大丈夫だよ、でも流石にあともう一振りが限界だね」
「僕も」
トンテンカン トンテンカン
「も もう むり だぁ・・・」
「流石に きっついね 」
「でも これで みんなの そろった よ」
作業は夜までかかってやっと完成、だけど・・・あと鞘がいるんだよね。今はあの刀はむき出しのまま。フォックスは疲れていびきをかいて寝てる。
僕たちは地面に寝転がりながら礼と話していた。
「ねぇ礼、鞘はどうするの?」
「うーん、これでいざ戦闘になったら木でできた鞘だとすぐ壊れるよね・・・君の和一文字はどうなってるの?」
僕は和一文字の鯉口を眺め、少し抜いてみた。あれ・・・これは・・・
「あ、これ多分鯉口が天石になってる」
「鯉口が?成程ね・・・それなら抜刀術でも壊れないか。あ、そうだ。いいこと考えた」
「何かいい方法思いついたの?」
「まぁね、久しぶりレイデン社長としての腕の見せ所かな?明日になったら作ろうか。そしてそれからは・・・」
「彼らのアジトを探す でしょ?」
「そ、僕自身も彼らの組織の規模の大きさは掴んでない。敵の戦力がどんなものなのか、把握できていればそれに対応した対策が立てれるからね、今戦ってるあの子たちの為にも」
「それが一番だね、今の世の中は情報戦。ただ単純に強くなっても勝てないもんね」
まただ・・・情報戦がこれからの世界の役に立つ、僕の断片的な記憶から出てきた。
「なんだろうな、君と話していると・・・僕も昔から君を知ってる、そんな気分になるよ」
「それは僕もだよ礼。君とは初めて会ったのに、全然そんな気はしないって言うか・・・ここで出会ったのは運命だって思うよ、じゃあお休み礼」
「お休み、永零」
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翌朝になった。フォックスはまだ寝ている。だけど礼は先に起きて何かやっていた。
「礼おはよ、何してるの?」
「おはよ永零。昨日あの刀作ったでしょ?あの時天石の欠片が飛び散ったからさ、それを集めてるの。そんでこれをこうして・・・ちょっと永零、ここに昨日みたいに魔法を流してくれる?大丈夫、一瞬だけでいいんだ、フォックスも起きて!!」
「ほあ?」
「う、うん!!」
僕は礼の言われた通り、魔法を流した。一体何をしたんだろう。一瞬だけだなんて・・・
「何してんのさ礼兄ちゃんこんな朝早くからよぅ・・・ふぅあ~・・・」
「もう7時過ぎてるよ、いつも起きてる時間」
「え~、まだ7時じゃん・・・いいじゃん休日くらい~」
「駄目、生活リズムを乱したりすると、体に悪いんだ。もっと太るよ。それに今日は平日だ」
礼は至極まともな事をフォックスに言いながら作業を続けた。フォックスは不貞腐れている。
「よしっと・・・これで完成っと」
礼は僕に刀を渡した、柄もいつの間にか付いてる。そして鞘から少し刀を押し上げると意外なギミックがあった。
「これって、鯉口にちいさな滑車?天石の滑車だ・・・」
「そ、僕さ実は昔いじめ脱却目指して剣道やっててさ、その時は基本的に返し技が得意だったんだけど、家では木刀使って結構抜刀の練習しててたんだ。ま、もともと居合道やりたかったんだけど、僕の学校にその部活は無くてさ、それでまぁ見よう見まねの完全我流で練習してたの、で、僕がどんな実力かも分かってないんだけどね。それで少し思ったの、抜刀術、居合は鞘を滑らせて加速して納刀状態からでも相手の先を取れる技でしょ?それを更に早く出来たらって思ったら滑車で加速って思ってさ・・・うまくいくと思う?」
へぇ~・・・それよりも、よくこんな細かいの作ったよね。僕はむしろそこに驚いたよ。滑車自体は目立たない小さなものだけど、しっかりと刀に沿うように作ってある。そして完全に納刀した状態だと逆さに向けても落ちないようにもなってるし、芸が細かい・・・更にはよく分からないけど鞘に銃のトリガーみたいのが2つ付いてる、なんだろこれ。
「礼ならきっと使いこなせるよ」
「ありがと永零、そんじゃ行こうか。あ、そうだこれフォックスの脇差ね」
「おー!!おいらのも出来た!?」
礼はフォックスに完成した脇差を渡そうとしたけど、その手前で一旦やめた。
「これはおもちゃじゃないからね、人も動物も殺せちゃう武器だ。それは分かってるでしょ?」
「うん!おいらも、こう見えて成長してんだ!!それくらいの覚悟は出来てるさ!!」
礼はその言葉を聞くと、少し笑って脇差をフォックスに渡した。
「良い目だよ、フォックス」
「じゃあ行こうよ!!」




