オーギュスト アーサー 到達
オーギュストたちはエルメスとなんとか合流を果たし、中央へと戻る。
「いや~~~っと着いたぜぇ・・・これでようやく本業に戻れるってなもんだ」
「ほんと、疲れたよね兄弟」
久しぶりに落ち着いた気がする、今まであっち行ってこっち行っての繰り返しだったからな。疲れた~・・・
「ありがとうな、オーギュスト、アーサー。さてと、私の方もこれから忙しくなりそうだね」
「おう、気を付けてな」
「あ、そうだエルメス様。落ち着いたら俺と食事に行かないかい?いい店を知ってるんだ」
落ち着いたと思ったらすぐこれだ。この女たらしめ・・・だいたい、これから一国の王になろうとしてる奴を口説くか?普通・・・それに、エルメスの男女関係の無欲っぷりは有名な話だぜ。普通に考えて無理だろ。
「口説いてんの?それ。だが残念だったな。お断りだ」
ほらやっぱり。
「一緒に行きたいやつがいるからな・・・」
「ごふぉ!!げほ!!」
エルメスがボソッと呟いて俺はむせ返った。
「うわ!びっくりしたな兄弟。いきなりどうしたんだよ・・・って、え?エルメス様今、なんて言いました?」
「私もいい店知ってるからな。そこに連れて行きたいやつがいるんだ」
「・・・・・・」
アーサーが固まってる。石だなこりゃ。にしても、エルメスにまさかそんな奴がいるなんてな・・・誰だ?レイサワとか言うやつじゃなさそうだし・・・
って、事は・・・あいつか!?あの金髪優男っ!?
「っと、それどころじゃないな。じゃ、私はこれで。二人とも捜査、くれぐれも慎重にな」
「あ、あぁ・・・」
こうして俺たちとエルメスは別々に分かれた。にしても・・・エルメスの好みがあれとは・・・
「さ、さて・・・兄弟。俺たちは本題に取り掛かろうか。四精霊の書庫に関してはエルメス様から許可は得れたしね」
「あぁ、そうだな・・・」
俺たちは書庫に向かった。
・
・
・
「へぇ、四精霊の中でもサラマンダーはとてつもない力を持ってたみたいだね。なになに、巨大なドラゴンの姿で炎を操り・・・」
「わ~、流石だねアーサー様~」
「私サラマンダー見てみたいな~」
「そうだね、あ、そうだ。見つけたら君たちにも真っ先に教えるよ」
「あのよアーサー・・・このパターン、何度目か覚えてねぇけど・・・なんでまたお前らがいるんだ!!」
普段閲覧禁止の書庫の中には俺とアーサーの他に、例のあの女どもがいた。
「かたい事言わないでよ兄弟。ちゃんとエルメス様に許可は取ってるよ」
「さっすが!!」
はぁ・・・まぁいいや。アーサーは親の教育が厳しい環境にあったって聞いたことがある。ずっと誰にも褒められることがなかったあいつには、必死に持ち上げてくれる女どもは心のよりどころになってるんだろうかね。ま、俺が知ったこっちゃねぇか。
ん?俺はある文書を見つけた。そこには四精霊のもたらした世界への影響などが書かれていたが、
「なんか引っかかるな・・・この文章」
『炎の精、サラマンダーは始まりの世界。すべてを統べる龍の騎士。
水の精ウンディーネは大海原の乱破。彼女を呼ぶ、それはこの世に、幸と災をもたらす
土の精ノームは寡黙なる者 世界を優しく見守るが 怒る大地により全ては枯れ、あらゆるものがおわる。
風の精シルフは嫌う雨.彼は風に乗りひた走る事を好むのと、同時に全てに寄り添う 人間と共に。』
なんだこりゃ・・・読みにくい文章だな・・・少し、休憩するか。
「おーい!!」
誰かに呼ばれた気がした、気のせいか?
「おいってば、オーギュストさん!!」
「・・・あ?なんでお前まで来るんだよセドリックよぉ」
「それが大変なんだよ!予告状が届いたんだ!!今夜メリーヌが現れるって!!」
あ!?メリーヌだぁ!?なんで奴がこんな時に動き出すんだ畜生めが!!
「おい、奴はどこに現れるんだ?」
「ここだよ!!メリーヌはここにある最も大切なものを奪いに来るって予告したんだよ!ってここで最も大切なものって何?」
このタイミングで、ここにある最も大切なもの・・・まさか、エルメスか!?
「兄弟!このタイミングは、まずいんじゃない?」
どうやら同じ推理をしたみてぇだな。メリーヌは、アウロの手先の可能性が高い。
「くっそ、なんでこんな時に・・・あいつ等俺に恨みでもあんのか!?」
メリーヌは昔から俺が追ってきた奴だ。奴は滅多に予告状なんて送り付けてくることはない。だが、国宝級の物を盗むときは、必ず送り付けてくる。今回はその国宝級って事だ。それも盗まれると相当厄介なもの・・・
「行きてぇんだが、こっちもな・・・」
「えー、頼むよ。君がいたからメリーヌも未遂で終わった事件がいっぱいあるんだから」
「しかしなぁ・・・」
「行ってきなよ兄弟」
アーサーがなんか言ってる。
「いやお前が一番信用ならねぇからな?冗談は顔だけにしとけや」
「いや今回は真面目の真面目の大真面目って言ってるでしょ?何か分かったら絶対に伝えるよ。約束する」
・・・なんでこんな時に、そんなキラキラした目をしてやがる。
「あぁぁっ!!仕方ねぇな!もし手柄を自分だけのものにしたらぶっ殺すだけじゃ済まねぇからな!!セドリック!行くぜ!!」
「え?オーギュストさん、何を盗むのか分かってるんですか?」
「あたり前だろ、上に行く、案内しろ!」
俺はセドリックと共に上の方へ向かった。
・
・
・
・
・
さて、俺の方も作業を進めよっかな?
「あれ、意外と日が暮れてきたね。君たち先に帰ってていいよ」
「えー、まだ一緒にいたいなー」
「不健康な生活は美容の敵だよ?ちゃんとしっかりとした生活習慣をしないとね」
「そこまで言うなら帰ろっかな、また明日ね!」
「うん!家まで迎えに行くよ。そうだ、明日はあの店に連れてってあげるよ」
「やったー!!楽しみー!」
女の子たちは家に帰った。ユゥロも今日は既に休養を取らせている。ずっと運転しっぱなしだったからね。
さて、これで本当に集中してやれるかな。いざという時は一人じゃないとね。
俺は棚を見て回る。しかしこれと言って何か掴めることは書いていない。
「あ、これさっき兄弟が読んでた・・・」
俺はその本を読んだ。
「変わった文章だな、文章構成もなんか変だし・・・」
俺は本を見渡した。
「ん?」
俺は裏表紙を見る。
「・・・まさか!!」
俺は再びあのページに戻った。
「何てことだ・・・これは、アウロどころの騒ぎじゃない」
早く伝えないと!!兄弟にこの事を!!ここは、この世界は!!
「・・・!」
扉の前に、誰かがいる・・・沈む夕日の逆光であまり見えない。そしてそいつは奥からゆっくりと姿を現した。
「到達したようだな・・・」
「・・・だれだ、お前は!」
「俺は、そうだな・・・アウロからはキツネ君だの言われている」
そいつは、狐のような仮面を着け、フードを深く被った男だった。いかにも怪しい奴だ。
「アウロか・・・やはり君たちももう動いていたんだね。ジンを倒した腹いせかい?」
「いや、ジンは無事だ。それに俺は奴の部下じゃない」
「へぇ、随分と仲間意識が薄い組織だねアウロって言うのは。そんなんじゃすぐに崩れ去るよ?」
「分かっていることさ、アウロの結束力は低いさ。だが、奴の強大すぎる力が組織を一枚岩にしている」
「・・・強大すぎる力か。だけど、そうも言ってられないんじゃないかい?この真実は、アウロすら飲み込んでしまうよきっと」
この事件は、俺と兄弟が睨んだ通り、異世界とこの世界の争いなんかじゃ終わらない。到底信じられないような話が絡んできちゃってるんだ。
「あぁ、知ってるさ。そうだ、自己紹介をしっかりやっていなかったな。キツネ君はネーミングセンスの欠片もないビリーが勝手につけた名だ」
・・・今だ!!
俺は咄嗟に隠し持っていた拳銃を引き抜き引き金を引いた。
「っぬぅ!」
当たった!!俺は一気に全弾撃ち切った。
「俺たちを見くびりすぎだよ、俺だって容赦しないときはとことん容赦しない。俺は結構ズルをするからね。君たちの弱点も聞いている。確か君たちを殺す方法は心臓と脳を破壊するんだったよね」
俺はしっかりと心臓にも、頭にも、三発づつ、計六発撃ち込んである。防弾チョッキも着用していない。これで・・・
「倒せると思ったか?」
「っ!!」
死んでいない・・・そんなはずない!
「確かに、覚醒者でも完全覚醒者でも、弱点は変わらない。心臓と脳が破壊されれば死ぬ。どこまで行っても死はやって来る。それが人間の限界さ」
「限界?まるで君は人間じゃないみたいな言い方だね・・・」
「言われてみればそうだな、俺って人間じゃないな。あ、自己紹介途中だったね。キツネ君はさっき言った通り、アウロ内での呼ばれ方だ。そして、俺の本当の名前はな・・・」
名を聞いた瞬間、俺は既に死んでいたんだ。力が抜け、体が崩れ落ちていた・・・痛みは、感じてる暇はなかった。
後悔の直後に色んな事が頭をよぎった、だけど不思議と落ち着いた気分だった。焦らなくちゃ、足掻かなきゃいけないのに・・・俺は最後にオーギュストの事を考えていた。
兄弟・・・兄弟なら、どうやってこの状況をかいくぐった?兄弟なら出来た。奴らを止める方法もきっと見つけれていた。
俺は、いつも卑怯な手を使って、君に勝とうとしてたけど、結局俺は君には一度も勝てなかった。今回もそうだ。君がこの本を読んでいなかったら、俺はここまで辿り着けなかった。
俺はずっとあなたに憧れていた。俺はずっとあなたの様になりたいと願っていた。俺はずっとあなたに褒められたかったんだ。
だけど、どうしてかな。俺は同時にあなたに嫉妬していた。あなたの才能、能力に・・・だから俺はいつも、あなたから奪ってきてしまっていた。
ごめんなさい・・・俺、また卑怯な事をしちゃった。勝ち逃げになっちゃうこと、絶対にオーギュスト、あなたは許さないよね。
本当に・・・ごめん。
俺は、ここから消えた。
・
・
・
・
・
夕日に照らされた一人の死体、アーサー コンシンネは真実に到達し、死んだ。そして夕日に照らされた立っているもう一人の男はじっとアーサーを見つめていた。
「あーーーー!!!」
部屋にさらに別の人物の声が響く。元気いっぱいのこの場には全く似合わない少女のような声。
「何やっちゃってんの!!今はまだ殺しちゃダメだって言われてたじゃん!!このバカギツネ!っていうか、なんでここにいるんだよぉ!!」
「カラスか、俺はこの本を回収しに来ただけだ。だが既にこの記述を解読されてしまっていた。この事は誰にも知られてはいけない。仕方がなかったんだよ」
「カラスちゃん!!ちゃんまでが名前!!ちゃんと呼べ!!にしてもさ、必要な犠牲ってやつ?全く・・・あたしは交渉人だよ?全部穏便に済ませる為にここに来たんだから、これが原因でややこしい事になったら責任とってよもー」
少女は舞踏会に用いる様なカラスの仮面を着け、真っ黒なワンピースのドレスを着た少女だった。少女はキツネ君に文句を言いながら、すぅっとアーサーの方へと向かった。
「せめて、その御霊は安らかにね・・・あんたはよく頑張ったよ。アーサー コンシンネ」
カラスちゃんは落ち着いたトーンでアーサーに語り掛けた。
「んでよぉ、これからどうすんのよ。その本は回収するとしてさ」
カラスちゃんは突然さっきまでの軽いノリを取り戻した。
「遺体はここに置いていく。そういやお前には言ってなかったな。俺の役目はアウロに接触をしようとするものを抹殺しろって言われているんだ。あんたとは全くの別なんだよ」
「はぁ!?なにそれ!!あたしゃ出来る事なら全員こっちに引き入れろって言われてんだよ!!あんたが何言われてきたのか知んないけどさ、あたしの任務を邪魔したらただじゃ置かんぞバカギツネ!!」
「俺の方こそ、邪魔をするなよバカラス」
「ば、ムッキー!!馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ馬鹿!」
「・・・特大のブーメランだな。それじゃ真っ先に俺を馬鹿とか言ったお前は馬鹿と認めたもんだぞ?」
「あ・・・って!そんな事はどーでもいいの!!兎に角!あたしは交渉しに来たって事だけ覚えとけ!ぷんすか!!ってかさ、あんたのその喋り口調何?全然似合ってないよ?中二病なの?」
「ん・・・ん〜、しゃべり口調そんな変かぁ?ビリーがあれだからそれに合わせたんだがよぅ、オラはやっぱこんな感じか?」
「あー、いつものだ。ってかさ、だれかこっちに来てんね」
「だな、とっとと退散すっか」
二人は、その場から一瞬で消えた。アーサーの遺体だけを残して・・・




