第10話 密命 ⅱ
『ああ言ったものの、本当のことを言えばあの時点では、殿から何かを引き出せる自信など無かった』と古能代は今では思う。
それどころか、五人揃って消されてしまうのではないかと言う疑いさえ有った。何しろ、この大きな秘密を知っているのは、秀郷と千常、それに古能代らだけだった。消してしまえば、何の憂いも無くなる。貞盛の矢では無かったのではないかと疑う者が居たとしても、なんとでも誤魔化せる。『それなのに吾は殿をなぜ信じてみようと思ったのか? 結果から言えば間違ってはいなかったと言うものの、判断としては大甘だったと言わざるを得ないのではないか』そう自問していた。しかし、何の目的も無い自分から脱出する為には、そうするより他に選択肢が無かったのだ。
佐野に向けての道を、祖真紀と古能代は、馬首を並べて進み、語り合っていた。
「汝と、これほど語り合ったのは始めてのことではないかな?」
祖真紀が感慨深げに言った。
「そうだったか?」
古能代は祖真紀ほど感じていない様子だ。
「何も語らぬまま死なれては、後味が悪いとでも思ったのか?」
と祖真紀が古能代の反応を探る。
「勝手に決めるな……」
古能代がぼそっと答えた。
その後も、ふたりは馬を並べて歩みを進めたが、会話は余り無かった。しかし、ふたりの間に流れる空気は、今までのような張り詰めた、ぎすぎすしたものでは無くなっていた。
佐野の手前まで差し掛かった時、ひとりの郎等風の男が一行を出迎えた。古能代と祖真紀が、列から抜け出して郎等風の男に近寄る。
「お久しゅう御座います。御差配様」
古能代が馬から飛び降りて語り掛けた。
「おう、古能代、久しいのう。息災であったか」
と男が馬上から答える。
「お陰様で。三輪様こそ、ご壮健そうで安堵致しました」
古能代が僅かに笑顔を見せる。
「何の、もはや隠居の身よ」
と三輪国時が答えている間に、祖真紀も下馬した。
「三輪様には、その折には倅始め、郷の若者共が一方ならぬお世話になりまして……」
祖真紀もそう挨拶した。
「祖真紀か、達者で何より」
と答えて、国時は朝鳥に視線を移す。
「おお、朝鳥殿、お懐かしゅう御座る」
朝鳥は特に興奮するでも無く答える。
「久しいのう、国時。大殿はお健やかであられるか?」
「それはもう、お元気そのもので御座るよ。朝鳥殿、山中の暮らしは如何で御座るか?」
国時は懐かしさを表情に表して尋ねる。
「うん? 特にな…… 。六郎様のご成長のみを楽しみにしておる」
乗馬のまま朝鳥が答えた。
国時が下馬し、千方の傍に歩み寄り、頭を下げる。
「千寿丸様には始めてお目に掛かります。手前、お父上の郎等にて、三輪国時と申します。宜しくお見知り置き下さい」
「宜しく頼む。父上もお健やかと聞き安堵した」
千方に挨拶を済ませたものの、国時には、朝鳥の元気の無いのが気になった。
朝鳥が千常の守役と成るまでは、若い頃、共に過ごした仲である。
真面目で融通の利かない国時は、年上の朝鳥の軽口にしょっちゅう閉口させられていた。
その朝鳥が、軽口も叩かず、糞真面目な顔をしているのが、何か可笑しかったが、その反面心配でもあった。
「お主が出迎えとはどうしたことか?」
朝鳥が尋ねた。
「何、童ら、いや、もう若者達と言った方が良いかも知れぬが、普段の格好でお舘に行かせる訳にも行かんでな」
「うん、確かに」
と朝鳥が頷く。
使いの者の手に寄って、千方には新しい水干が届けられており、朝鳥、祖真紀、古能代は自前の直垂を身に着けて出発したが、童達は蝦夷装束の普段着そのままであった。
「どうじゃ、古能代が若い頃住んでいた小屋に連れて行ってやろうと思うが、行ってみたいか?」
国時が童達に言った。
「是非行ってみたい!」
秋天丸が一番に反応した。
「吾も行きたい!」
そう、犬丸が続く。吾も、吾もと後の童達も続いた。
「古能代、大そうな人気じゃな」
国時が、笑顔で古能代に話し掛けるが、
「いえ、この者達は郷を出たことが有りませぬゆえ、どこにでも行ってみたいので御座いますよ」
と古能代は、相変わらず愛想が無い。
「そこで着替えさせるのか?」
朝鳥が国時に尋ねた。
「後から参るゆえ、先にお舘に行っていて下され」
「分かった」
と答えたが、朝鳥には何か違和感が残った。しかし、千方が襲われたことに対する祖真紀の責任問題と言う大きな憂いを抱えていた為、深く考えることは無かった。
国時、童達と別れ、千方、朝鳥、古能代の三人は佐野の舘に向かい、郷の男達は引き返して行った。
舘に着くと、朝鳥が祖真紀と古能代に庭で待つように指示し、千方と共に舘に上がった。
控えの間に通ると朝鳥は、郎等のひとりに、
「早速ながら殿に拝謁したいので取次を頼む」
と伝えた。
二時(一時間)ほども待たされた。
「殿がお出張りなさる」
との郎等の報せを受け、千方と朝鳥は、祖真紀、古能代が控える裏庭に面した部屋に移った。
正面に向かい下座の真ん中に千方、その左後ろに朝鳥が控え待っていると、相変わらずのドタドタとした荒々しい足音を立てて千常が現れた。
「待たせた。千寿丸、朝鳥、良う参った」
正面の席にどっかと胡坐を掻くなり千常が言った。
「ご無沙汰致しております。殿には変わらずご壮健とお見受け致し、何よりと存じます」
二人揃って頭を下げた後、顔を上げて朝鳥が挨拶を始めたが、
「挨拶などそれくらいで良いわ。それより要件を聞こう。手短かに申せ」
と千常が遮る。
「あ、はい。…… 実は千寿丸様が襲われました。手前の落ち度で御座います。誠に申し訳も御座いません」
そう言って朝鳥は平伏した。
「何?」
と言って立ち上がった千常が、千方に近付き見回す。
「怪我は?」
と聞く。
「掠り傷ひとつ負うてはおりませぬ」
千方が答えた。
「次第を申せ」
と千常が千方に問い掛ける。
「はい。ひとりで山道を散策中、突然、旋風丸というふたつほど年上の者が現れ、いきなり襲い掛かって参りました」
「それで?」
と千常が問う。
「咄嗟のことゆえ、ものを考える暇も無く、気付いたら斬り捨てておりました。郷の者です」
その時、庭で平伏していた祖真紀が顔を上げ、声を上げた。
「手前の罪で御座います! 旋風丸という者は、手前への恨みを抱いており、千寿丸様を襲うことで、それを晴らそうと致したので御座います。十年程前、手前が殺した佳手由井という者の子で御座います。何とも申し訳御座いません」
それだけ言うと祖真紀は再び平伏した。
千常は無言のまま縁まで歩み出た。上から祖真紀と古能代を見下ろし、
「祖真紀」
と声を掛ける。
「はっ」
と祖真紀は平伏したまま答えた。少しの間を置いて、千常は振り返って、
「朝鳥」
と、朝鳥に向かっても声を掛けた。朝鳥は急いで縁に出て、座して、
「はい」
と答えた後、千常を見上げる。
「でかした!」
と千常が大声で言った。
「はぁ?」
と朝鳥。
「何をきょとんとしておる朝鳥。そのほうらしくも無い。麿はそのほうら二人に、千寿丸を強い男に育ててくれと頼んだであろう。僅か一年足らずだが、怪我ひとつ負うことも無く、襲って来た相手を斬り殺すことが出来るまでに成ったのであろう。だから、でかした! 天晴れと申したのだ」
と愉快げに笑う。
「…… しかし殿。ひとつ間違えば六郎様は今頃……」
と朝鳥が千常を見上げて言う。
「死んでおったと申すか? そうなった時はそれが定めじゃ。千寿丸は都の公家の子では無いぞ。坂東の兵の家の子じゃ。死にたく無くば、己を磨き、強く成ることしか無いのだ。それは麿とて同じであるし、朝鳥、祖真紀、そのほうら自身、嫌と言うほど分かっていることであろう。千寿丸を特別扱いする必要は無い。そうも申した筈だな」
と尚も愉快そうに続けた。
「は、はあ? ……」
朝鳥は、千常の反応に戸惑っている。
「では兄上、誰の罪も問われませぬか?」
千方が縁に走り出て来て言った。
「何故、罪を問う必要が有る?」
「有難う御座います。それを聞き安堵致しました」
「手前は、旋風丸が恨みを抱いていることを見抜けませんでした。それは手前の罪で御座います」
祖真紀が尚も言った。
「うん? …… それはそうだな。千寿丸のことは別としても、祖真紀ともあろう者が抜かったものだな」
素の表情に戻った千常が祖真紀を見て言う。
「つきましては、この際、郷長の役を退き、祖真紀の名も、ここに控えおります古能代に譲りとう御座います。そのことお許し頂くようお願い申し上げます」
空かさず祖真紀がそう訴えた。
「隠居したいと申すか? ふん」
と千常は尋ねたが、少し間を置いて、
「……古能代も承知のことか?」
と続けた。そこに、珍しく古能代が口を挟む。
「いえ、まだ当分やって貰いたいと思っております。手前に『郷長』は到底務まりませぬ。祖真紀の名も重過ぎます」
ニヤリと笑った千常が、祖真紀を見る。
「そう申しておるぞ」
「倅めは手前が説得致しますゆえ、曲げてお許しを頂きとう御座います」
隠居したいと言う祖真紀の決心は硬いと見えた。
「やれやれ、面倒なことになったのう。いざとなると、親子揃って頑固者じゃからのう」
千常はふたりを見比べながら苦笑いをしている。
後にも先にも、千常の父・秀郷が郎等にしてやると言ったのを断ったのは古能代唯一人であることを、千常は思い出していた。
将門との戦いを前にして、秀郷に呼ばれた時、古能代ひとりが庭に控えていた。それが初対面だった。
将門暗殺を指示した後『手柄として朝廷に報告することは無くとも、そのことは麿が覚えておる。そして、もし麿に万一のことがあった時には、この千常が引き継ぐ。どうじゃ?』と秀郷が古能代に迫るのを千常は眺めていた。
古能代が下がった後、秀郷に尋ねた。
「父上、何故、あのような言い方をされたのですか? 物でも土地でも身分でも、もっと分かり易く約束してやった方が、効果が有るのでは……」
秀郷が千常の目を見る。そして、ゆっくりと言った。
「もし、あの者が首尾良く将門を殺したとして、手柄として朝廷に報告することは出来ぬ」
と秀郷は説明したが、納得行かなかった千常は、
「ですから、父上からの褒美として……」
と言い掛けた。その千常の言葉を遮って、
「手柄を公に出来ぬ以上同じだ。理由が分からぬのに多くの褒美を得たとしたら、他の者達がどう思う。妬みを買うだけであろう。まして蝦夷の出と知れた時、呰麻呂のようなことにならぬとは言えぬ。それは、古能代に取っても麿に取っても、有ってはならぬことじゃ」
と秀郷は説明した。そう言われて千常は始めて納得して頷いたのだ。
「そこまでお考えで御座いましたか」
と答えた。
「だが、郎等として手許に置きたいとは思っておる。あの男は使える」
立ち上がって、古能代が去った裏門の方に視線を投げて、秀郷はそう言った。
「それだけで満足致しましょうか?」
秀郷の考えは納得出来たが、古能代の気持ちを読み兼ねてそう聞いてみた。
「分を超えた望を抱かぬ限り、出来る限りのことは聞いてやるつもりだ。だから、そなたを同席させた」
「『分を超えた望』とは?」
と千常が尋ねる。
「位階が欲しいの、領地が欲しいのと言い出した時は、始末する他有るまい。ま、そんな事を言い出す男では無いと見るがな」
他人の気持ちも考えに入れはするが、父が決してそれだけの甘い男では無いと言うことを、千常は改めて感じた。
「分かりました。しかし、戦で我等が将門を討ってしまえば良いこと。要らぬ煩いで御座いますな」
「そうじゃ。そのつもりでおる。だがな、こちらに思惑が有れば、敵にも思惑は有る。どちらの思惑が当たるかは読みの深さだけでは無く、時の運と言うものが有る。それが外れた時どうするか、そこまで考えねば将は務まらぬ。良く覚えておくが良い。弱気な将など話にならぬが、強気なだけで考えが浅ければ滅びる。小娘のように怯えてあれこれと案ずることも必要なのだ。だが、その顔を周りの者に決して見せてはならん」
父の言葉を教えと思い、千常は、
「はっ。お教え肝に命じて置きます」
と答えたが、この時は、その意味を本当に理解してはいなかった。
将門を討って北山の戦いに勝利した後、秀郷の処遇がどう審議されたかは、既に述べたが、当然のことながら、秀郷は貞盛や兼家を始めとして、手柄を立てた者達の恩賞を太政官に願い出ていた。
その結果、貞盛の恩賞については、なぜか思ったほどの結果を得られなかったが、望月兼家に着いては、存外の結果を得ることが出来た。やはり、将門が兜を脱ぎ棄てる切掛けを作ったことが評価されたのだ。
兼家は近江国・甲賀郡の十六カ村の郡司と成った。秀郷が従四位下に上り、下野守、武蔵守並びに鎮守府将軍を拝命したと聞くや、祝いの宴も待たずに、兼家は、驚く程の祝いの品を持参して駆け着けて来た。
「大そうな祝いの品、頂戴し、痛み入る」
並べられた品々を見渡しながら秀郷が言った。
「何の、僅かばかりの手柄により、過分な恩賞を賜ったのも、偏に秀郷殿のお口添えが有ったればこそ。改めて御礼申し上げる」
「いや『僅かばかりの手柄』などでは無い。命の一打ちが将門に兜を脱がせることとなったのだ。貞盛殿の一矢で落命したのも、将門が兜を脱ぎ捨てていたればこそのこと。大手柄ではないか。麿の方からも、郡司就任の祝いを致さねばな」
兼家は急に生真面目な顔になり、姿勢を正し、
「実は秀郷殿に、ひとつお願いの儀が御座います」
と言った。
「はて? 何かな」
訝しげに、秀郷が兼家を見る。
「人を所望しとう御座います。北山の戦の折、手前配下にお着け下された郎等衆の働き誠に見事で御座いました。腕の方もさることながら、その手綱捌きの見事さに依って将門の郎等を麿に近付けさせませんでした。お陰で将門と打ち合うことが出来たのです。ご承知の通り我が家は朝廷への貢馬を行う家柄。信濃十六牧の筆頭『望月の駒』に依って望月の姓を賜り、滋野家より別れた家柄です。あの者達の手綱捌きに、その麿が見惚れたのです。中でも大道古能代殿は抜きん出た腕前。大事なご郎等の一人とは存ずるが、そこを曲げてお譲り頂く訳には参りませぬか?」
「古能代を譲れと申されるか?」
「はい。他には何も要りませぬゆえ、それだけご承知願えまいか」
兼家の真剣さを秀郷は感じた。
「ふ~ん……」
と泥鰌髭を右手で捻り考え込む。
同席していた千常は、『譲る訳には行かないだろう』と思った。
秀郷自身もそう思っていた。だが、あっさり断る訳にも行かない。この時の秀郷の課題は、朝廷との鬩ぎ合いの中で、一人でも多くの味方を確保して置くことだった。それも、時勢を見て擦り寄って来る者などでは無く、真の味方が必要であった。
兼家を味方にして置くと言うことは、海野、根津の二家をも味方にして置くことになる。
滋野三家と呼ばれたこの三家は、強い絆で結ばれていた。この願いの為に過分な祝いの品を持参したとすれば、兼家を落胆させたまま帰す訳には行かないのだ。
兼家が都に近い近江国・甲賀郡の郡司に成ると言うことは、何かの時に、京の情報を更に取り易くなることでもある。
「実は、古能代は、或る郷長の嫡男でのう。いずれ跡を継がねばならぬ身なのじゃ」
言いづらそうに、そう言った。
「左様で御座るか……」
兼家は、明らかに落胆の表情を見せた。
「他の者達ではいかんか?」
と言って秀郷が兼家の目を見る。
「後の四人の中の誰かということですか?」
と兼家が問う。
「四人纏めてでも良い」
と秀郷が言い切った。ここが落とし所と腹を決めた。
「あ、はい。古能代殿が駄目ということであれば、他の者達も中々の者、喜んで、四人揃って我が郎等とさせて頂きます」
秀郷が満足そうに頷く。
「あの者達には良きお話かと存じます」
秀郷の命に古能代はそう快く応じ、直ぐに四人を説得した。
「何よりもまず、兼家様が汝達の働きを認め、殿に譲り受けたいと申し出て下さったこと、それが大事だ。汝達が望んでいた通り正式な郎等としてお迎え下さる。それに近江国は都にも近い所だと言う。どうだ、悪い話ではなかろう。蝦夷と知れることも無い」
そう、強く支由威手達四人に勧める。
四人は、それぞれ、大道国影、駒木時影、広表忠影、広岡義影として下野を離れ、兼家に従って旅立って行った。
ところが、秀郷の思惑がひとつ狂った。
「その方は郎等として当分、麿の側に置く」
と伝えた秀郷の命を、喜ぶどころか古能代は断ったのだ。
余りのことに秀郷は、一瞬、「うっ」と言葉を詰まらせた。
言葉には出さぬが『恩賞の代わりとして、この我儘お聞き届け下さい』と古能代の目がそう言っていた。
「郷に戻りたいのか?」
ややあって秀郷が尋ねた。
「いえ、祖先の地を訪ねてみたいと思います。殿が鎮守府将軍と成られれば、逃げ隠れせずに陸奥に行くことが出来るようになるかと思いまして…… そのお許しを頂ければと思います」
一度目を閉じた秀郷が、カッと目を開いて古能代を見た。
「分かった。落ち着いたら手配しよう」
と答える。
三月ほど後『この者、我が郎等に付き、宿食の手配、万端お願いしたく候』との秀郷直筆の木簡と、路銀として一袋の金の粒が古能代の許に届けられ、古能代は陸奥に向けて旅立った。そして、或る事情によりそのまま陸奥に滞在し、七年の後に郷に戻ったのである。
「祖真紀。隠居の件、まずは古能代と話せ。明日、父上がお越しになり、千寿丸の元服を執り行うことになっておる。忙しいのだ」
千常は、祖真紀にそう言った。
「えっ! それは誠で御座いますか? 殿。しかし、今は年の瀬、正月に致しては……」
そう声を上げたのは、朝鳥だった。
「実は、十四のうちにと父上にお願いしておったのだ。漸くお許しが出た。そんな折、たまたま郷から使いが参ったので、日取りを明日に決めた」
と千常が答える。
事情が分かって、自分の為に祖真紀が罰を受けるのではないかと案じていた千方の懸念は解消された。
「兄上有難う御座います。お気遣い頂き厚く御礼申し上げます」
安堵の笑顔を浮かべて、千方が千常に礼を述べた。




