34.宅配便
34.宅配便
翌日、取り調べのために県警に留まる黒木を残して、一同は全日食の本社に来ていた。みんなが見ている前で森山は金庫を開けた。
「そんな…」
秘書の真理恵は金庫の中を見て肩を落とした。
「これで満足かね」
「結局、真理恵さんの勘違いだったのね」
美紀が言う。
「まあ、俺たちは十分な報酬をいただいたことだし、それ以上のことに首を突っ込むのは野暮ってもんだぜ」
「あら、所長は何か知ってるんですか?」
「だから、もう首は突っ込むな」
「はーい。じゃあ、これからお寿司を食べに行きましょうよ。ご馳走してくれるって約束でしたわよね」
「あっ! 大事な用を思い出した。すまん。その件はまた後日にな」
そう言って矢沢は一人駆け出した。
「えーっ! またとお化けは出たためしがないんだから…」
美紀は地団駄踏んで矢沢の背中を見送った。
けたたましい音響とともにランプが点滅を始めた。
「よっしゃー!」
確率変動の大当たりだ。矢沢は咥えていたタバコをもみ消してハンドルを握る手に力を込めた。
「先輩、相変わらず暇そうですね」
黒木が背中越しに声を掛けた。
「暇なもんか! 今年最後の大連ちゃんだ」
「木下は何一つ言い訳もせずに、実刑を受け入れたそうです」
「何年だ?」
「10年です」
「あっという間だな」
「そうかも知れないですね。出てきたらどうするんでしょうね?」
「そんなことは俺たちの知ったこっちゃねえよ」
「そうですね…」
宅配の荷物を受け取った下働きの若い男が首をかしげた。
「マネージャー、この綾って人、誰なんですかね?」
「ん? この店当ての荷物には違いないけど、うちには綾なんて子は居ないよな…」
マネージャーも見知らぬ名前に首をかしげた。伝票に記された届け先には店の名前と“綾”としか書かれていなかった。それを覗き込んだママが二人の会話に割り込んだ。
「まあ! 懐かしいわね。綾ちゃんって、昔ここで働いていた子よ。二人とも最近入ったばかりだから知らないわね。そう言えば綾ちゃん、元気にしているかしら。これは私が預かるわ。久しぶりに綾ちゃんの顔も見たいし私が届けに行くわ」
そう言ってママは荷物を受け取ると鼻歌を歌いながら控室へ入っていった。下働きの男は伝票を所定の引き出しにしまい込んだ。それは長野のホームセンターから送られたものだった。




