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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第八十二話 営業課長、商人ギルドの試練を受ける


 パン祭りの大成功から三日後。


 ミルフィ村には、相変わらず朝から香ばしい匂いが漂っていた。


 以前は各家庭でしか焼かれていなかったパンが、今では村の共同窯でも焼かれるようになり、朝になると子どもたちが焼き立てを買いに走っていく。


「アルト坊ちゃーん! 今日の黒パン、昨日より柔らかいよ!」


「ほんとだ!」


 焼き立てを受け取ったアルトは、小さくちぎって口へ運ぶ。


(いい……。職人同士が競い始めた。品質競争が始まってる。)


 価格だけではなく、美味しさでも競争する。


 営業課長だった頃、何度も見てきた理想的な市場の姿だった。


 そんな様子を眺めていたレオンが腕を組む。


「村がここまで変わるとはな……。」


「まだ途中だよ、お父さん。」


「まだなのか?」


「ここからが本番。」


 アルトはにやりと笑った。


「売れる商品ができても、それを広げる仕組みが必要だからね。」


 その日の昼。


 一台の豪華な馬車が村へ入ってきた。


 降りてきたのは見覚えのある壮年の男性だった。


「おお、アルト君!」


「マルクさん!」


 王都商人ギルドの幹部、マルクだった。


 パン祭りの噂は王都にも届いていたらしい。


「君の村が面白いことをしていると聞いてね。」


「わざわざ?」


「ああ。」


 マルクは村を見回し、感心したように何度もうなずく。


「短期間でここまで発展させるとは……。」


 共同窯。


 整備された広場。


 並ぶ屋台。


 笑顔で働く村人。


「数字以上に、人の顔が変わっている。」


 商人らしい観察眼だった。


 その言葉にアルトは嬉しくなる。


(やっぱり一流は見る場所が違う。)


 村長も合流し、一行は集会所へ向かった。


 そこでマルクが切り出す。


「今日は一つ提案がある。」


「提案?」


「商人ギルドには若き才能を認定する制度がある。」


 村人たちがざわついた。


「認定?」


「商人ではなくても受けられる。商売や経営、流通の知識を持つ者だけが挑戦できる試験だ。」


 アルトの耳がぴくりと動く。


(資格制度か。)


「合格すれば?」


「王都商人ギルド公認の『商業アドバイザー』として扱われる。」


「へぇ。」


「各地の領主や商会から相談を受けられるようになる。」


 村長が思わず立ち上がる。


「そんな名誉ある資格を、この子が?」


「推薦したい。」


 部屋が静まり返る。


「アルト君なら十分に資格がある。」


 レオンが思わず咳き込む。


「ごほっ!」


「うちの息子が?」


「ええ。」


 マルクは真剣だった。


「年齢は問題ではありません。」


「しかし……。」


「実績なら王都の商人でも敵わない者が大勢います。」


 村人たちは顔を見合わせる。


「確かに……。」


「祭りも成功したしな。」


「パンも売れてる。」


「市場まで作っちまった。」


 アルトは少しだけ困った顔をした。


(目立ちすぎるなぁ……。)


 本当はもっと静かに暮らしたかった。


 だが、ここまで来れば隠し通せる段階ではない。


「試験は難しいんですか?」


「もちろん。」


 マルクは笑う。


「知識だけでは受からない。」


「ほう?」


「実際に商談をまとめる試験もある。」


「実技?」


「そう。」


 アルトの目が輝く。


(面白そうじゃないか。)


 筆記だけなら暗記勝負。


 しかし商談なら違う。


 相手を理解し、利益を作り、信頼を築く。


 営業課長として積み重ねた経験が、そのまま武器になる。


「受けます。」


 即答だった。


 部屋中が驚く。


「即決か!」


「迷わないのか?」


 アルトは笑う。


「挑戦できるなら挑戦したい。」


「失敗するかもしれないぞ?」


「失敗したら勉強になります。」


 その返事を聞いたマルクは大きく笑った。


「はっはっは!」


「ますます気に入った!」


 レオンも苦笑する。


「本当に肝が据わってるな、お前は。」


「営業は断られてからが勝負だからね。」


「また難しいことを言う。」


 村人たちは意味は分からないまま笑った。


 その笑い声が集会所いっぱいに広がる。


 こうしてアルトは、王都商人ギルドの正式試験へ挑戦することになった。


 それは、村だけではなく王国中を舞台にした、新たな一歩の始まりでもあった。


営業メモ⑧⓪


「資格そのものより、『第三者から信頼を証明してもらう』ことに価値がある。実績と信用が組み合わさると、仕事の幅は一気に広がる。」


━━━━━━━━━━━━━━


次回予告 第八十三話「営業課長、商談試験で大人を翻弄する」


王都商人ギルドで始まる実技試験。

歴戦の商人たちを相手に、アルトは営業課長時代の交渉術を披露する。

果たして最年少受験者は、大人たちの常識を覆せるのか。

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