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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第七十九話 営業課長、王都商会と握手する


ベルナール大交易祭が閉幕した夜。


港町は昼間の賑わいが嘘のように静かだった。


露店を片付ける人々の表情には疲れが見える。


だが、それ以上に大きな達成感があった。


「今年一番の売上だ!」


「うちの干物も全部売り切れたぞ!」


「予約まで入った!」


あちこちから喜びの声が聞こえてくる。


町長ロイドも、何度も売上帳を見返していた。


「夢ではありませんよね……。」


「夢ではありません。」


アルトは微笑む。


「皆さんが努力した結果です。」


その時、一人の護衛が足早にやって来た。


「アルト様。」


「王都商会の代表、ダリウス様がお会いしたいそうです。」


部屋の空気が変わる。


ガレスが思わず身構えた。


「ついに来ましたか……。」


ドルガは腕を組む。


「文句でも言いに来たか?」


アルトは首を横に振る。


「まずは、お話を聞きましょう。」



応接室。


ダリウスは窓から港を眺めていた。


「いい祭りだった。」


アルトが入室すると、振り返って静かに口を開く。


「ありがとうございます。」


「正直に言おう。」


ダリウスは苦笑した。


「私は君の失敗を見に来た。」


「値下げをしない祭りなど成功するはずがないと思っていた。」


アルトは黙って話を聞く。


「だが、私の負けだ。」


「客は価格ではなく、この街を選んだ。」


そう言ってダリウスは深く頭を下げた。


その場にいた全員が驚く。


王都最大級の商会の代表が、一人の少年へ頭を下げたのだ。



「ですが。」


ダリウスは顔を上げる。


「一つだけ聞きたい。」


「はい。」


「なぜ私を敵にしなかった?」


アルトは少しだけ笑った。


「敵ではありませんから。」


「……何?」


「王都商会が多くの商品を扱えるからこそ、王国の物流は支えられています。」


「それは素晴らしいことです。」


ダリウスは目を細めた。


「私は君の祭りを潰そうとした。」


「それでもか?」


「はい。」


アルトは即座に答えた。


「競争は必要です。」


「ですが、潰し合いは誰も幸せになりません。」


「一緒に市場を大きくした方が、お客様も、生産者も、商人も幸せになれます。」


部屋は静まり返った。


その考え方は、この世界の商人にはない発想だった。



しばらく沈黙が続いた後、ダリウスは笑い出した。


「ははは!」


「面白い!」


「君は本当に十二歳か?」


「年齢は秘密です。」


アルトが冗談めかして答えると、部屋に笑いが広がった。


「分かった。」


ダリウスは真剣な表情へ戻る。


「提案がある。」


「聞かせてください。」


「ベルナールの商品を、王都商会が王国中へ販売する。」


ロイドが立ち上がる。


「本当ですか!」


「ただし。」


ダリウスはアルトを見つめる。


「品質は絶対に落とさないこと。」


「約束できますか?」


アルトは迷わなかった。


「もちろんです。」


「利益よりも、信頼を優先します。」


ダリウスは満足そうに頷いた。


「ならば契約成立だ。」


二人は固く握手を交わした。



翌日。


ベルナールの広場では、商人たちが大きな歓声を上げていた。


「王都でも売れる!」


「うちの商品が王国中へ届くぞ!」


若い漁師たちも目を輝かせる。


「もっと頑張ろう!」


「いい魚を獲ろう!」


街全体が、新しい未来へ向かって動き始めていた。


町長ロイドはアルトへ歩み寄る。


「アルト様。」


「何でしょう?」


「私は商売とは、奪い合うものだと思っていました。」


「でも違いました。」


「皆で豊かになる方法もあるのですね。」


アルトは港を見渡す。


多くの船が行き交い、人々が笑顔で働いている。


「営業とは。」


静かに言葉を紡ぐ。


「勝つことではありません。」


「相手と一緒に成功することです。」


その言葉を聞いたダリウスは、小さく笑みを浮かべた。


「その考え方。」


「王都でも広めてもらおう。」


ベルナールで始まった改革は、一つの港町を越え、王国全土へ広がろうとしていた。



営業メモ⑦⑦


『競争相手は、未来の協力者になることもある。』


競争は市場を成長させる。


しかし、互いを潰そうとすれば、最後には全員が疲弊してしまう。


相手の強みを認め、自分の強みと組み合わせることで、一人では作れない価値が生まれる。


営業とは、「勝ち負け」を競う仕事ではなく、「共に成功する未来」をつくる仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第八十話「営業課長、王都商業会議へ」


ベルナールの成功は、王国中の商人たちへ衝撃を与えた。


王都で開かれる商業会議。


そこでアルトは、王国の未来を左右する大演説に挑む。


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