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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第七十九話 営業課長、王都商会と握手する


ベルナール大交易祭が閉幕した夜。


港町は昼間の賑わいが嘘のように静かだった。


露店を片付ける人々の表情には疲れが見える。


だが、それ以上に大きな達成感があった。


「今年一番の売上だ!」


「うちの干物も全部売り切れたぞ!」


「予約まで入った!」


あちこちから喜びの声が聞こえてくる。


町長ロイドも、何度も売上帳を見返していた。


「夢ではありませんよね……。」


「夢ではありません。」


アルトは微笑む。


「皆さんが努力した結果です。」


その時、一人の護衛が足早にやって来た。


「アルト様。」


「王都商会の代表、ダリウス様がお会いしたいそうです。」


部屋の空気が変わる。


ガレスが思わず身構えた。


「ついに来ましたか……。」


ドルガは腕を組む。


「文句でも言いに来たか?」


アルトは首を横に振る。


「まずは、お話を聞きましょう。」


◇


応接室。


ダリウスは窓から港を眺めていた。


「いい祭りだった。」


アルトが入室すると、振り返って静かに口を開く。


「ありがとうございます。」


「正直に言おう。」


ダリウスは苦笑した。


「私は君の失敗を見に来た。」


「値下げをしない祭りなど成功するはずがないと思っていた。」


アルトは黙って話を聞く。


「だが、私の負けだ。」


「客は価格ではなく、この街を選んだ。」


そう言ってダリウスは深く頭を下げた。


その場にいた全員が驚く。


王都最大級の商会の代表が、一人の少年へ頭を下げたのだ。


◇


「ですが。」


ダリウスは顔を上げる。


「一つだけ聞きたい。」


「はい。」


「なぜ私を敵にしなかった?」


アルトは少しだけ笑った。


「敵ではありませんから。」


「……何?」


「王都商会が多くの商品を扱えるからこそ、王国の物流は支えられています。」


「それは素晴らしいことです。」


ダリウスは目を細めた。


「私は君の祭りを潰そうとした。」


「それでもか?」


「はい。」


アルトは即座に答えた。


「競争は必要です。」


「ですが、潰し合いは誰も幸せになりません。」


「一緒に市場を大きくした方が、お客様も、生産者も、商人も幸せになれます。」


部屋は静まり返った。


その考え方は、この世界の商人にはない発想だった。


◇


しばらく沈黙が続いた後、ダリウスは笑い出した。


「ははは!」


「面白い!」


「君は本当に十二歳か?」


「年齢は秘密です。」


アルトが冗談めかして答えると、部屋に笑いが広がった。


「分かった。」


ダリウスは真剣な表情へ戻る。


「提案がある。」


「聞かせてください。」


「ベルナールの商品を、王都商会が王国中へ販売する。」


ロイドが立ち上がる。


「本当ですか!」


「ただし。」


ダリウスはアルトを見つめる。


「品質は絶対に落とさないこと。」


「約束できますか?」


アルトは迷わなかった。


「もちろんです。」


「利益よりも、信頼を優先します。」


ダリウスは満足そうに頷いた。


「ならば契約成立だ。」


二人は固く握手を交わした。


◇


翌日。


ベルナールの広場では、商人たちが大きな歓声を上げていた。


「王都でも売れる!」


「うちの商品が王国中へ届くぞ!」


若い漁師たちも目を輝かせる。


「もっと頑張ろう!」


「いい魚を獲ろう!」


街全体が、新しい未来へ向かって動き始めていた。


町長ロイドはアルトへ歩み寄る。


「アルト様。」


「何でしょう?」


「私は商売とは、奪い合うものだと思っていました。」


「でも違いました。」


「皆で豊かになる方法もあるのですね。」


アルトは港を見渡す。


多くの船が行き交い、人々が笑顔で働いている。


「営業とは。」


静かに言葉を紡ぐ。


「勝つことではありません。」


「相手と一緒に成功することです。」


その言葉を聞いたダリウスは、小さく笑みを浮かべた。


「その考え方。」


「王都でも広めてもらおう。」


ベルナールで始まった改革は、一つの港町を越え、王国全土へ広がろうとしていた。


⸻


営業メモ⑦⑦


『競争相手は、未来の協力者になることもある。』


競争は市場を成長させる。


しかし、互いを潰そうとすれば、最後には全員が疲弊してしまう。


相手の強みを認め、自分の強みと組み合わせることで、一人では作れない価値が生まれる。


営業とは、「勝ち負け」を競う仕事ではなく、「共に成功する未来」をつくる仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第八十話「営業課長、王都商業会議へ」


ベルナールの成功は、王国中の商人たちへ衝撃を与えた。


王都で開かれる商業会議。


そこでアルトは、王国の未来を左右する大演説に挑む。


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