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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第七十六話 営業課長、王都商会との対決


ベルナール大交易祭の準備が本格化して三日目。


港はすでに祭りの熱気を帯び始めていた。


仮設の屋台が並び、職人たちは試作品を持ち寄り、漁師たちは新しい漁法の説明に追われている。


「想像以上に活気が出てきましたね。」


ガレスが感心したように呟く。


アルトは頷きながらも、どこか遠くを見ていた。


「まだです。」


「まだ、足りません。」


「え?」


「本当の競争相手が、まだ動いていません。」


その言葉の直後だった。


港の入口がざわつく。


「王都の商会だ!」


「大商会の使者が来たぞ!」


人々が一斉に振り向く。


◇


現れたのは、豪華な馬車だった。


金の装飾が施され、従者たちが整然と並ぶ。


その中央から、一人の男が降り立つ。


整えられた髪。


高価な衣服。


そして、余裕を隠そうともしない笑み。


「初めまして。」


男は軽く頭を下げた。


「王都商会連合の代表、カインと申します。」


その名を聞いた瞬間、周囲の空気が変わる。


町長ロイドが小声で呟く。


「王都でも最大級の商会……。」


「なぜこんな場所に……。」


カインはアルトへ視線を向けた。


「あなたが噂の少年ですか。」


「グランディアを立て直し、港まで変えたという。」


アルトは静かに頷く。


「アルトです。」


「ご用件は?」


カインは笑みを深めた。


「単刀直入に言いましょう。」


「その交易祭、我々が引き受けましょう。」


◇


一瞬、場が凍りつく。


「……引き受ける?」


ガレスが眉をひそめる。


カインは当然のように続けた。


「王都商会が全面的に支援すれば、規模は十倍になります。」


「宣伝も、資金も、人員も。」


「あなた方だけでは限界があるでしょう?」


アルトはすぐに答えなかった。


代わりに、港を見渡す。


職人たち。


漁師たち。


商人たち。


皆、自分たちの手で祭りを作ろうとしている。


その姿を見てから、ゆっくりと口を開いた。


「お断りします。」


カインの笑みが一瞬だけ止まる。


「理由を聞いても?」


アルトは静かに言った。


「この祭りは、売るためのものではありません。」


「この街の価値を、自分たちの手で証明するためのものです。」


「外から完成品を持ち込まれては意味がありません。」


カインは小さく息を吐いた。


「なるほど。」


「では、競争ですね。」


その言葉に、空気が一気に張り詰める。


◇


その夜。


港の一角。


カインは部下たちと報告を受けていた。


「どう思いますか、代表。」


「正直、無謀です。」


部下が答える。


「ベルナールの規模では、王都商会に勝てません。」


カインはワインを回しながら笑った。


「そうだな。」


「普通なら、な。」


窓の外を見る。


港ではまだ人々が準備を続けている。


「だが、あの少年は違う。」


「数字では動かないタイプだ。」


「では、どうしますか?」


カインは静かにグラスを置いた。


「簡単だ。」


「市場を先に押さえる。」


「商人をこちらに引き込めばいい。」


「祭りの前に、価値を奪う。」


その目は冷たかった。


◇


翌朝。


ベルナールの商人たちのもとに、王都商会からの契約書が届き始める。


「通常の三倍の仕入れ価格だと?」


「輸送費も全額負担?」


「こんな条件、見たことがない……。」


商人たちがざわつく。


その情報はすぐに港全体へ広がった。


ロイドは青ざめる。


「まずい……。」


「このままでは、交易祭の前に商人が引き抜かれる。」


ガレスがアルトを見る。


「どうしますか?」


アルトは静かに契約書を手に取った。


そして一言。


「想定内です。」


その目は揺れていなかった。


営業課長として、何度も経験してきた。


競合が現れたとき、焦るのではなく、まず相手の戦略を見る。


そして、その上を行く。


アルトはゆっくりと立ち上がった。


「反撃を始めましょう。」


ベルナール大交易祭は、ただの祭りではなくなった。


王都最大商会との、真正面からの市場競争へと変わっていく。


⸻


営業メモ⑦④


『競合が現れたときこそ、価値の本質が問われる。』


条件で勝負する相手には、条件で戦ってはいけない。


価格や規模ではなく、「なぜそれをやるのか」という本質で差がつく。


営業とは、数字の勝負ではなく、価値の勝負である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十七話「営業課長、価値で勝負する」


王都商会の圧倒的な条件攻勢。


揺らぐ商人たち。


その中でアルトは、ベルナールだけの“本当の価値”を示すための一手を打つ。


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