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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第七十六話 営業課長、王都商会との対決


ベルナール大交易祭の準備が本格化して三日目。


港はすでに祭りの熱気を帯び始めていた。


仮設の屋台が並び、職人たちは試作品を持ち寄り、漁師たちは新しい漁法の説明に追われている。


「想像以上に活気が出てきましたね。」


ガレスが感心したように呟く。


アルトは頷きながらも、どこか遠くを見ていた。


「まだです。」


「まだ、足りません。」


「え?」


「本当の競争相手が、まだ動いていません。」


その言葉の直後だった。


港の入口がざわつく。


「王都の商会だ!」


「大商会の使者が来たぞ!」


人々が一斉に振り向く。



現れたのは、豪華な馬車だった。


金の装飾が施され、従者たちが整然と並ぶ。


その中央から、一人の男が降り立つ。


整えられた髪。


高価な衣服。


そして、余裕を隠そうともしない笑み。


「初めまして。」


男は軽く頭を下げた。


「王都商会連合の代表、カインと申します。」


その名を聞いた瞬間、周囲の空気が変わる。


町長ロイドが小声で呟く。


「王都でも最大級の商会……。」


「なぜこんな場所に……。」


カインはアルトへ視線を向けた。


「あなたが噂の少年ですか。」


「グランディアを立て直し、港まで変えたという。」


アルトは静かに頷く。


「アルトです。」


「ご用件は?」


カインは笑みを深めた。


「単刀直入に言いましょう。」


「その交易祭、我々が引き受けましょう。」



一瞬、場が凍りつく。


「……引き受ける?」


ガレスが眉をひそめる。


カインは当然のように続けた。


「王都商会が全面的に支援すれば、規模は十倍になります。」


「宣伝も、資金も、人員も。」


「あなた方だけでは限界があるでしょう?」


アルトはすぐに答えなかった。


代わりに、港を見渡す。


職人たち。


漁師たち。


商人たち。


皆、自分たちの手で祭りを作ろうとしている。


その姿を見てから、ゆっくりと口を開いた。


「お断りします。」


カインの笑みが一瞬だけ止まる。


「理由を聞いても?」


アルトは静かに言った。


「この祭りは、売るためのものではありません。」


「この街の価値を、自分たちの手で証明するためのものです。」


「外から完成品を持ち込まれては意味がありません。」


カインは小さく息を吐いた。


「なるほど。」


「では、競争ですね。」


その言葉に、空気が一気に張り詰める。



その夜。


港の一角。


カインは部下たちと報告を受けていた。


「どう思いますか、代表。」


「正直、無謀です。」


部下が答える。


「ベルナールの規模では、王都商会に勝てません。」


カインはワインを回しながら笑った。


「そうだな。」


「普通なら、な。」


窓の外を見る。


港ではまだ人々が準備を続けている。


「だが、あの少年は違う。」


「数字では動かないタイプだ。」


「では、どうしますか?」


カインは静かにグラスを置いた。


「簡単だ。」


「市場を先に押さえる。」


「商人をこちらに引き込めばいい。」


「祭りの前に、価値を奪う。」


その目は冷たかった。



翌朝。


ベルナールの商人たちのもとに、王都商会からの契約書が届き始める。


「通常の三倍の仕入れ価格だと?」


「輸送費も全額負担?」


「こんな条件、見たことがない……。」


商人たちがざわつく。


その情報はすぐに港全体へ広がった。


ロイドは青ざめる。


「まずい……。」


「このままでは、交易祭の前に商人が引き抜かれる。」


ガレスがアルトを見る。


「どうしますか?」


アルトは静かに契約書を手に取った。


そして一言。


「想定内です。」


その目は揺れていなかった。


営業課長として、何度も経験してきた。


競合が現れたとき、焦るのではなく、まず相手の戦略を見る。


そして、その上を行く。


アルトはゆっくりと立ち上がった。


「反撃を始めましょう。」


ベルナール大交易祭は、ただの祭りではなくなった。


王都最大商会との、真正面からの市場競争へと変わっていく。



営業メモ⑦④


『競合が現れたときこそ、価値の本質が問われる。』


条件で勝負する相手には、条件で戦ってはいけない。


価格や規模ではなく、「なぜそれをやるのか」という本質で差がつく。


営業とは、数字の勝負ではなく、価値の勝負である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十七話「営業課長、価値で勝負する」


王都商会の圧倒的な条件攻勢。


揺らぐ商人たち。


その中でアルトは、ベルナールだけの“本当の価値”を示すための一手を打つ。


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