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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第七十四話 営業課長、公平な港を取り戻す


海運組合の不正が明らかになった翌日。


ベルナールの町役場には、多くの商人や漁師、船乗りたちが集まっていた。


誰もが不安そうな表情を浮かべている。


「組合を解散するのか?」


「港は動くのか?」


「荷物はちゃんと運べるんだろうな?」


不正は暴かれた。


しかし、組織が止まれば物流も止まる。


街の人々が本当に心配しているのは、そのことだった。


◇


「皆さん。」


アルトは壇上へ立ち、静かに口を開く。


「今日は誰かを裁くためではなく、港の未来を決めるために集まっていただきました。」


会場が静まり返る。


「まず、お伝えしたいことがあります。」


アルトは海運組合の組合員たちへ視線を向けた。


「海運組合は必要です。」


その一言に、会場がどよめく。


「えっ?」


「残すのか?」


驚く人々を見ながら、アルトは続けた。


「船を安全に管理する。」


「港を維持する。」


「船乗りを育てる。」


「これらは組合だからこそできる大切な仕事です。」


組合員たちが顔を上げる。


「問題だったのは組合ではありません。」


「一部の人だけが利益を得る仕組みでした。」


グレインは黙ったまま俯いていた。


◇


アルトは一枚の大きな紙を掲げる。


そこには新しい制度が書かれていた。


『ベルナール港・新運営規則』


一、入港順は到着順とする。


一、空いている桟橋はすべて使用する。


一、使用料は公開する。


一、積荷の順番は毎日掲示する。


一、港の会計は毎月公開する。


商人たちが顔を見合わせる。


「順番が分かるのか。」


「待ち時間も減るぞ。」


「会計まで公開するのか?」


アルトは頷いた。


「情報は、一部の人だけが持つから力になります。」


「皆が知っていれば、不正は起きにくくなります。」


バルドが感心したように腕を組む。


「なるほど……。」


「秘密ではなく、透明性か。」


「はい。」


営業でも同じだった。


価格。


納期。


契約内容。


隠すから疑われる。


最初からすべて説明すれば、お客様は安心する。


◇


そこへ、若い組合員が立ち上がった。


昨日、勇気を出して声を上げた青年だった。


「アルト様。」


「何でしょう?」


「俺たちにも、この港を変える手伝いをさせてください。」


その一言をきっかけに、次々と手が挙がる。


「俺も。」


「私もやる。」


「昔みたいに誇れる港へ戻したい。」


町長ロイドは目頭を押さえた。


「こんな日が来るとは……。」


◇


その時だった。


グレインがゆっくりと立ち上がる。


誰もが息を呑んだ。


「アルト。」


低い声が会場へ響く。


「私は負けた。」


「いや……違うな。」


グレインは首を横へ振った。


「自分自身に負けていた。」


若い頃は、この港を誰よりも愛していた。


船が増えれば嬉しかった。


商人が笑えば誇らしかった。


だが、いつしか利益だけを見るようになり、大切なものを忘れてしまった。


グレインは深く頭を下げる。


「組合長を辞任する。」


会場が静まり返る。


そして彼は若い組合員へ振り向いた。


「レオン。」


「お前なら、この港を任せられる。」


突然名前を呼ばれた青年は目を丸くした。


「お、俺ですか?」


「ああ。」


「私のようになるな。」


「港は支配するものじゃない。」


「支えるものだ。」


レオンは力強く頷いた。


「はい!」


その瞬間、会場は大きな拍手に包まれた。


アルトはその光景を静かに見つめていた。


改革とは、古いものを壊すことではない。


良いものを残し、悪い仕組みだけを変えること。


営業課長として積み重ねてきた経験が、また一つ街の未来を動かしたのだった。


◇


その日の夕暮れ。


港には久しぶりに多くの船が並び始めていた。


閉鎖されていた桟橋にも船が接岸し、商人たちの笑顔が戻る。


ベルナールの港は、ようやく本来の姿を取り戻し始めていた。


⸻


営業メモ⑦②


『改革とは、壊すことではなく、活かすことである。』


長く続いてきた組織には、必ず守るべき価値がある。


問題があるからといって、すべてを否定してしまえば、本当に大切なものまで失ってしまう。


良い部分は残し、悪い仕組みだけを改善する。


それこそが、多くの人に受け入れられる改革への近道である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十五話「営業課長、ベルナール大交易祭を企画する」


港に活気は戻った。


しかし、アルトの改革はまだ終わらない。


ベルナールの名を王国中へ広めるため、街の未来を懸けた大交易祭が幕を開ける。


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