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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第七十四話 営業課長、公平な港を取り戻す


海運組合の不正が明らかになった翌日。


ベルナールの町役場には、多くの商人や漁師、船乗りたちが集まっていた。


誰もが不安そうな表情を浮かべている。


「組合を解散するのか?」


「港は動くのか?」


「荷物はちゃんと運べるんだろうな?」


不正は暴かれた。


しかし、組織が止まれば物流も止まる。


街の人々が本当に心配しているのは、そのことだった。



「皆さん。」


アルトは壇上へ立ち、静かに口を開く。


「今日は誰かを裁くためではなく、港の未来を決めるために集まっていただきました。」


会場が静まり返る。


「まず、お伝えしたいことがあります。」


アルトは海運組合の組合員たちへ視線を向けた。


「海運組合は必要です。」


その一言に、会場がどよめく。


「えっ?」


「残すのか?」


驚く人々を見ながら、アルトは続けた。


「船を安全に管理する。」


「港を維持する。」


「船乗りを育てる。」


「これらは組合だからこそできる大切な仕事です。」


組合員たちが顔を上げる。


「問題だったのは組合ではありません。」


「一部の人だけが利益を得る仕組みでした。」


グレインは黙ったまま俯いていた。



アルトは一枚の大きな紙を掲げる。


そこには新しい制度が書かれていた。


『ベルナール港・新運営規則』


一、入港順は到着順とする。


一、空いている桟橋はすべて使用する。


一、使用料は公開する。


一、積荷の順番は毎日掲示する。


一、港の会計は毎月公開する。


商人たちが顔を見合わせる。


「順番が分かるのか。」


「待ち時間も減るぞ。」


「会計まで公開するのか?」


アルトは頷いた。


「情報は、一部の人だけが持つから力になります。」


「皆が知っていれば、不正は起きにくくなります。」


バルドが感心したように腕を組む。


「なるほど……。」


「秘密ではなく、透明性か。」


「はい。」


営業でも同じだった。


価格。


納期。


契約内容。


隠すから疑われる。


最初からすべて説明すれば、お客様は安心する。



そこへ、若い組合員が立ち上がった。


昨日、勇気を出して声を上げた青年だった。


「アルト様。」


「何でしょう?」


「俺たちにも、この港を変える手伝いをさせてください。」


その一言をきっかけに、次々と手が挙がる。


「俺も。」


「私もやる。」


「昔みたいに誇れる港へ戻したい。」


町長ロイドは目頭を押さえた。


「こんな日が来るとは……。」



その時だった。


グレインがゆっくりと立ち上がる。


誰もが息を呑んだ。


「アルト。」


低い声が会場へ響く。


「私は負けた。」


「いや……違うな。」


グレインは首を横へ振った。


「自分自身に負けていた。」


若い頃は、この港を誰よりも愛していた。


船が増えれば嬉しかった。


商人が笑えば誇らしかった。


だが、いつしか利益だけを見るようになり、大切なものを忘れてしまった。


グレインは深く頭を下げる。


「組合長を辞任する。」


会場が静まり返る。


そして彼は若い組合員へ振り向いた。


「レオン。」


「お前なら、この港を任せられる。」


突然名前を呼ばれた青年は目を丸くした。


「お、俺ですか?」


「ああ。」


「私のようになるな。」


「港は支配するものじゃない。」


「支えるものだ。」


レオンは力強く頷いた。


「はい!」


その瞬間、会場は大きな拍手に包まれた。


アルトはその光景を静かに見つめていた。


改革とは、古いものを壊すことではない。


良いものを残し、悪い仕組みだけを変えること。


営業課長として積み重ねてきた経験が、また一つ街の未来を動かしたのだった。



その日の夕暮れ。


港には久しぶりに多くの船が並び始めていた。


閉鎖されていた桟橋にも船が接岸し、商人たちの笑顔が戻る。


ベルナールの港は、ようやく本来の姿を取り戻し始めていた。



営業メモ⑦②


『改革とは、壊すことではなく、活かすことである。』


長く続いてきた組織には、必ず守るべき価値がある。


問題があるからといって、すべてを否定してしまえば、本当に大切なものまで失ってしまう。


良い部分は残し、悪い仕組みだけを改善する。


それこそが、多くの人に受け入れられる改革への近道である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十五話「営業課長、ベルナール大交易祭を企画する」


港に活気は戻った。


しかし、アルトの改革はまだ終わらない。


ベルナールの名を王国中へ広めるため、街の未来を懸けた大交易祭が幕を開ける。


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