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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第七十三話 営業課長、港の利権を暴く


翌朝、まだ空が白み始めたばかりの頃。


アルトはガレスと護衛二人を連れ、閉鎖されたはずの桟橋へ向かっていた。


潮風が静かに吹き抜け、港はまだ眠っている。


「本当に誰か来るのでしょうか。」


ガレスが小声で尋ねる。


「来ます。」


アルトは迷いなく答えた。


「もし何もやましいことがないなら、昼間に堂々と使えばいい。」


「わざわざ人目を避ける理由がありません。」


営業でも同じだった。


隠そうとする行動には、必ず理由がある。


その理由を知れば、本当の課題が見えてくる。



しばらくすると、小さな明かりが海の向こうに現れた。


「船です。」


護衛が囁く。


一隻の小舟が音もなく桟橋へ近づいてくる。


船から降りてきた男たちは、素早く木箱を運び始めた。


「魚ではありませんね。」


アルトは目を細める。


魚なら急いで運ぶ必要がある。


しかし男たちは、一つひとつの木箱を丁寧に扱っていた。


まるで壊れ物のように。


「護衛隊長。」


「はい。」


「まだ動かないでください。」


「証拠を押さえます。」


護衛たちは息を潜めた。



荷物を運び終えた男たちは、倉庫へ入っていく。


アルトたちは物陰から様子を窺っていた。


倉庫の扉が少しだけ開いている。


中から話し声が聞こえてきた。


「今月も順調だな。」


「ああ。」


「正規の港へ入る船を待たせている間に、こちらは自由に荷を動かせる。」


「手数料も倍取れる。」


男たちは笑っていた。


アルトは静かに帳面へ書き込む。


『正規航路を意図的に遅らせ、不正な荷運びを優先』


その一文を書き終えると、小さく息を吐いた。


「やはり……。」


「港の混雑は事故ではなかった。」



その日の昼。


アルトは町長ロイドを伴い、再び海運組合を訪れた。


組合長グレインは余裕の笑みを浮かべている。


「また来たか。」


「ええ。」


アルトは穏やかに答えた。


「昨日、閉鎖中だと伺った桟橋について確認したいことがあります。」


グレインの笑みがわずかに消える。


「あそこは危険だ。」


「だから閉鎖している。」


「そうですか。」


アルトは机の上へ一枚の紙を置いた。


「では、こちらは何でしょう。」


そこには昨夜記録した荷物の搬入時間、人数、小舟の到着時刻が細かく記されていた。


さらに護衛が描いた簡単な見取り図も添えられている。


グレインの表情が固まった。


「……。」


「閉鎖された桟橋で荷物を運び込む。」


「正規の船を待たせる。」


「その間に特定の商人だけを優先する。」


「これは偶然ではありません。」


部屋の空気が張り詰める。



その時、一人の若い組合員が立ち上がった。


「もうやめましょう!」


部屋中の視線が集まる。


「俺たちは港を良くしたくて働いてきた!」


「なのに今は、一部の商人だけが得をする仕組みになっている!」


グレインが怒鳴る。


「黙れ!」


「黙りません!」


若者は震えながらも叫んだ。


「昔の組合長は違った!」


「誰でも公平に船を出せる港を目指していた!」


その言葉に、年配の組合員たちも顔を伏せる。


アルトは静かに若者へ歩み寄った。


「勇気を出してくださって、ありがとうございます。」


そして組合員全員を見渡す。


「皆さんにお聞きします。」


「この港を守りたいですか。」


しばらく沈黙が続く。


やがて一人、また一人と頷き始めた。


「守りたい。」


「昔みたいな港へ戻したい。」


その声は少しずつ広がっていく。


グレインは拳を握り締めたまま動かなかった。


アルトは確信した。


敵は海運組合ではない。


組織を私物化した一部の人間だけなのだ。


営業課長として最も大切にしてきたこと。


それは、問題と人を切り分けて考えることだった。



営業メモ⑦①


『問題を憎んでも、人まで敵にしてはいけない。』


組織が間違った方向へ進む時、その中には本当に良くしたいと願う人も必ずいる。


人を責めるのではなく、問題の仕組みを変える。


そうすれば、反対していた人もやがて仲間になってくれる。


営業とは、人を味方にしながら課題を解決する仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十四話「営業課長、公平な港を取り戻す」


海運組合の不正は明らかになった。


アルトは新たな港の運営制度を提案し、ベルナールの未来を懸けた大改革へ乗り出す。

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