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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第七十三話 営業課長、港の利権を暴く


翌朝、まだ空が白み始めたばかりの頃。


アルトはガレスと護衛二人を連れ、閉鎖されたはずの桟橋へ向かっていた。


潮風が静かに吹き抜け、港はまだ眠っている。


「本当に誰か来るのでしょうか。」


ガレスが小声で尋ねる。


「来ます。」


アルトは迷いなく答えた。


「もし何もやましいことがないなら、昼間に堂々と使えばいい。」


「わざわざ人目を避ける理由がありません。」


営業でも同じだった。


隠そうとする行動には、必ず理由がある。


その理由を知れば、本当の課題が見えてくる。


◇


しばらくすると、小さな明かりが海の向こうに現れた。


「船です。」


護衛が囁く。


一隻の小舟が音もなく桟橋へ近づいてくる。


船から降りてきた男たちは、素早く木箱を運び始めた。


「魚ではありませんね。」


アルトは目を細める。


魚なら急いで運ぶ必要がある。


しかし男たちは、一つひとつの木箱を丁寧に扱っていた。


まるで壊れ物のように。


「護衛隊長。」


「はい。」


「まだ動かないでください。」


「証拠を押さえます。」


護衛たちは息を潜めた。


◇


荷物を運び終えた男たちは、倉庫へ入っていく。


アルトたちは物陰から様子を窺っていた。


倉庫の扉が少しだけ開いている。


中から話し声が聞こえてきた。


「今月も順調だな。」


「ああ。」


「正規の港へ入る船を待たせている間に、こちらは自由に荷を動かせる。」


「手数料も倍取れる。」


男たちは笑っていた。


アルトは静かに帳面へ書き込む。


『正規航路を意図的に遅らせ、不正な荷運びを優先』


その一文を書き終えると、小さく息を吐いた。


「やはり……。」


「港の混雑は事故ではなかった。」


◇


その日の昼。


アルトは町長ロイドを伴い、再び海運組合を訪れた。


組合長グレインは余裕の笑みを浮かべている。


「また来たか。」


「ええ。」


アルトは穏やかに答えた。


「昨日、閉鎖中だと伺った桟橋について確認したいことがあります。」


グレインの笑みがわずかに消える。


「あそこは危険だ。」


「だから閉鎖している。」


「そうですか。」


アルトは机の上へ一枚の紙を置いた。


「では、こちらは何でしょう。」


そこには昨夜記録した荷物の搬入時間、人数、小舟の到着時刻が細かく記されていた。


さらに護衛が描いた簡単な見取り図も添えられている。


グレインの表情が固まった。


「……。」


「閉鎖された桟橋で荷物を運び込む。」


「正規の船を待たせる。」


「その間に特定の商人だけを優先する。」


「これは偶然ではありません。」


部屋の空気が張り詰める。


◇


その時、一人の若い組合員が立ち上がった。


「もうやめましょう!」


部屋中の視線が集まる。


「俺たちは港を良くしたくて働いてきた!」


「なのに今は、一部の商人だけが得をする仕組みになっている!」


グレインが怒鳴る。


「黙れ!」


「黙りません!」


若者は震えながらも叫んだ。


「昔の組合長は違った!」


「誰でも公平に船を出せる港を目指していた!」


その言葉に、年配の組合員たちも顔を伏せる。


アルトは静かに若者へ歩み寄った。


「勇気を出してくださって、ありがとうございます。」


そして組合員全員を見渡す。


「皆さんにお聞きします。」


「この港を守りたいですか。」


しばらく沈黙が続く。


やがて一人、また一人と頷き始めた。


「守りたい。」


「昔みたいな港へ戻したい。」


その声は少しずつ広がっていく。


グレインは拳を握り締めたまま動かなかった。


アルトは確信した。


敵は海運組合ではない。


組織を私物化した一部の人間だけなのだ。


営業課長として最も大切にしてきたこと。


それは、問題と人を切り分けて考えることだった。


⸻


営業メモ⑦①


『問題を憎んでも、人まで敵にしてはいけない。』


組織が間違った方向へ進む時、その中には本当に良くしたいと願う人も必ずいる。


人を責めるのではなく、問題の仕組みを変える。


そうすれば、反対していた人もやがて仲間になってくれる。


営業とは、人を味方にしながら課題を解決する仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十四話「営業課長、公平な港を取り戻す」


海運組合の不正は明らかになった。


アルトは新たな港の運営制度を提案し、ベルナールの未来を懸けた大改革へ乗り出す。

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