↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/251

第七十一話 営業課長、不満の正体を聞き出す


「税の取り立てだ!」


港に響いた怒鳴り声に、人々の表情が一斉に曇った。


荷を運んでいた商人たちは手を止め、役人たちを睨みつけている。


一方の役人も険しい表情のまま帳簿を開き、決められた税額を読み上げていた。


「期限は今日までだ。」


「払えない者は荷を預かる。」


「そんな!」


若い商人が声を荒らげる。


「昨日は一隻も船が来なかったんだ!」


「売上もないのに払えるわけがない!」


役人は困ったように眉をひそめた。


「私も命令で来ている。」


「規則は規則だ。」


双方の言い分は平行線だった。


◇


「止めましょう。」


アルトが二人の間へ入る。


「君は誰だ?」


役人が怪訝そうな顔をする。


町長ロイドが前へ出た。


「こちらは国王陛下より派遣された改革顧問、アルト様です。」


その一言で、港が静まり返る。


役人たちは慌てて頭を下げた。


「し、失礼いたしました。」


アルトは首を横に振る。


「頭を下げる必要はありません。」


「皆さん、それぞれ仕事をしているだけですから。」


その言葉に、役人も商人も少しだけ表情を和らげた。


◇


その日の午後。


アルトは港の集会所へ商人たちを集めた。


「今日は解決策を話す前に、皆さんのお話を聞かせてください。」


すると、一人の年配商人が苦笑した。


「話したところで変わらん。」


「どうしてそう思うのですか?」


「今まで何度も訴えた。」


「だが誰も聞いちゃくれなかった。」


アルトは静かに頷く。


「今日は違います。」


「私は反論しません。」


「最後まで聞きます。」


その言葉に、商人たちは顔を見合わせた。


やがて一人が口を開く。


「税が高い。」


続いて別の商人。


「いや、それだけじゃない。」


「船が来る時間に役所が閉まっている。」


「積荷の検査だけで半日待たされる。」


「港の使用許可が出るまで二日もかかる。」


「書類が多すぎる。」


次々と不満があふれ出す。


アルトは一言も遮らず、すべてを紙へ書き留めていく。


◇


二時間後。


机の上には何枚もの紙が並んでいた。


ガレスが驚いたように言う。


「こんなに問題が……。」


アルトは苦笑した。


「いえ。」


「実際の問題は、もっと少ないですよ。」


「え?」


アルトは紙を並べ替える。


『税が高い』


『検査が遅い』


『許可が遅い』


『役所が閉まるのが早い』


それぞれを一本の線で結んだ。


「皆さんが困っている原因は一つです。」


「手続きに時間がかかり過ぎています。」


町長ロイドが目を見開く。


「確かに……。」


「税の金額だけではありませんでした。」


「ええ。」


アルトは頷く。


「商人が欲しいのは、安い税ではありません。」


「早く商売ができることです。」


その一言に、部屋は静まり返った。


前世でも同じだった。


価格を下げてほしいと言うお客様も、本当は価格ではなく「納期」や「手間」を問題にしていることが多い。


言葉どおりに受け取ってはいけない。


本当の困りごとを見つける。


それが営業の仕事だった。


◇


その頃、集会所の外。


一人の男が窓越しに中を覗いていた。


黒い帽子を深くかぶり、商人たちの話をじっと聞いている。


「……アルト。」


男は小さく呟いた。


「面倒な奴が来たな。」


その胸元には、小さな銀色の錨の紋章が光っていた。


ベルナールで絶大な影響力を持つ海運組合。


その紋章だった。


港町の衰退は、税だけではない。


街には、まだ誰も気付いていない”もう一人の支配者”が存在していた。


⸻


営業メモ⑥⑨


『相手の言葉ではなく、その奥にある本当の困りごとを聞こう。』


「高い」「遅い」「不便だ」という言葉は、多くの場合、本当の問題ではない。


なぜそう感じるのかを丁寧に聞き続けることで、本当の課題が見えてくる。


営業とは、話す技術よりも「聞く技術」が成果を左右する仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十二話「営業課長、港を支配する影」


ベルナール衰退の裏には、海運組合による巧妙な利権構造があった。


アルトは街の未来を取り戻すため、新たな交渉の舞台へ挑む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。