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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第七十一話 営業課長、不満の正体を聞き出す


「税の取り立てだ!」


港に響いた怒鳴り声に、人々の表情が一斉に曇った。


荷を運んでいた商人たちは手を止め、役人たちを睨みつけている。


一方の役人も険しい表情のまま帳簿を開き、決められた税額を読み上げていた。


「期限は今日までだ。」


「払えない者は荷を預かる。」


「そんな!」


若い商人が声を荒らげる。


「昨日は一隻も船が来なかったんだ!」


「売上もないのに払えるわけがない!」


役人は困ったように眉をひそめた。


「私も命令で来ている。」


「規則は規則だ。」


双方の言い分は平行線だった。



「止めましょう。」


アルトが二人の間へ入る。


「君は誰だ?」


役人が怪訝そうな顔をする。


町長ロイドが前へ出た。


「こちらは国王陛下より派遣された改革顧問、アルト様です。」


その一言で、港が静まり返る。


役人たちは慌てて頭を下げた。


「し、失礼いたしました。」


アルトは首を横に振る。


「頭を下げる必要はありません。」


「皆さん、それぞれ仕事をしているだけですから。」


その言葉に、役人も商人も少しだけ表情を和らげた。



その日の午後。


アルトは港の集会所へ商人たちを集めた。


「今日は解決策を話す前に、皆さんのお話を聞かせてください。」


すると、一人の年配商人が苦笑した。


「話したところで変わらん。」


「どうしてそう思うのですか?」


「今まで何度も訴えた。」


「だが誰も聞いちゃくれなかった。」


アルトは静かに頷く。


「今日は違います。」


「私は反論しません。」


「最後まで聞きます。」


その言葉に、商人たちは顔を見合わせた。


やがて一人が口を開く。


「税が高い。」


続いて別の商人。


「いや、それだけじゃない。」


「船が来る時間に役所が閉まっている。」


「積荷の検査だけで半日待たされる。」


「港の使用許可が出るまで二日もかかる。」


「書類が多すぎる。」


次々と不満があふれ出す。


アルトは一言も遮らず、すべてを紙へ書き留めていく。



二時間後。


机の上には何枚もの紙が並んでいた。


ガレスが驚いたように言う。


「こんなに問題が……。」


アルトは苦笑した。


「いえ。」


「実際の問題は、もっと少ないですよ。」


「え?」


アルトは紙を並べ替える。


『税が高い』


『検査が遅い』


『許可が遅い』


『役所が閉まるのが早い』


それぞれを一本の線で結んだ。


「皆さんが困っている原因は一つです。」


「手続きに時間がかかり過ぎています。」


町長ロイドが目を見開く。


「確かに……。」


「税の金額だけではありませんでした。」


「ええ。」


アルトは頷く。


「商人が欲しいのは、安い税ではありません。」


「早く商売ができることです。」


その一言に、部屋は静まり返った。


前世でも同じだった。


価格を下げてほしいと言うお客様も、本当は価格ではなく「納期」や「手間」を問題にしていることが多い。


言葉どおりに受け取ってはいけない。


本当の困りごとを見つける。


それが営業の仕事だった。



その頃、集会所の外。


一人の男が窓越しに中を覗いていた。


黒い帽子を深くかぶり、商人たちの話をじっと聞いている。


「……アルト。」


男は小さく呟いた。


「面倒な奴が来たな。」


その胸元には、小さな銀色の錨の紋章が光っていた。


ベルナールで絶大な影響力を持つ海運組合。


その紋章だった。


港町の衰退は、税だけではない。


街には、まだ誰も気付いていない”もう一人の支配者”が存在していた。



営業メモ⑥⑨


『相手の言葉ではなく、その奥にある本当の困りごとを聞こう。』


「高い」「遅い」「不便だ」という言葉は、多くの場合、本当の問題ではない。


なぜそう感じるのかを丁寧に聞き続けることで、本当の課題が見えてくる。


営業とは、話す技術よりも「聞く技術」が成果を左右する仕事である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第七十二話「営業課長、港を支配する影」


ベルナール衰退の裏には、海運組合による巧妙な利権構造があった。


アルトは街の未来を取り戻すため、新たな交渉の舞台へ挑む。


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