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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第六十六話 営業課長、密輸組織の罠


夜の山道。


アルトたちは黒い外套の男たちを追い、街外れの古びた倉庫までたどり着いていた。


「灯りがついていますね。」


ガレスが小声で言う。


倉庫の隙間から、かすかに明かりが漏れている。


人の気配もある。


ドルガは大槌を肩に担いだ。


「踏み込むか?」


しかしアルトは首を横に振る。


「まだです。」


「またか。」


バルドが苦笑する。


「はい。」


アルトは静かに倉庫を見つめた。


「営業でも、一番失敗するのは『結論を急ぐ人』です。」


「目の前に答えがあるように見えても、一度立ち止まる。」


「それだけで防げる失敗はたくさんあります。」



しばらく様子を見ていると、一人の男が倉庫から出てきた。


右頬に傷がある男だった。


周囲を警戒しながら山道を歩き始める。


その姿を見て、護衛の一人が呟く。


「一人になりました。」


「今なら捕まえられます。」


アルトは小さく微笑んだ。


「だから捕まえません。」


「え?」


「見ていてください。」


男は山道を下ると、小川の手前で立ち止まった。


そして口笛を吹く。


すると森の奥から、さらに四人の男が姿を現した。


全員が武器を持っている。


ドルガは目を見開いた。


「待ち伏せか……!」


アルトは静かに頷く。


「ええ。」


「追ってくる者がいれば、ここで始末する予定だったのでしょう。」


バルドは思わず息を吐いた。


「危なかったな。」


「もし飛び出していたら、こちらが囲まれていました。」



男たちは再び倉庫へ戻っていく。


アルトは全員へ指示を出した。


「今夜は引きます。」


「逃がすのか?」


ドルガが不満そうに言う。


「逃がしません。」


アルトは笑顔を浮かべた。


「逃げ道を知るんです。」


「逃げ道?」


「人は安心すると、必ず本拠地へ戻ります。」


「ですが追い詰められると、証拠を消して逃げます。」


営業でも同じだった。


契約を急ぎ過ぎる営業は失敗する。


相手が安心して本音を見せるまで待つ。


その方が、結果的に大きな成果へつながる。


「ではどうする?」


ガレスが尋ねる。


アルトは地図を広げた。


「この倉庫を見張ります。」


「出入りする人。」


「運び込まれる荷物。」


「時間。」


「全部記録してください。」


「証拠を積み上げます。」


護衛たちは一斉に頷いた。



三日後。


調査結果は予想以上だった。


倉庫へ運び込まれていたのは、鉱石だけではない。


王都へ送られるはずの武具。


農具。


さらには魔石まで積み込まれていた。


しかも荷馬車には、隣国の紋章が刻まれている。


バルドが険しい顔になる。


「間違いない。」


「密輸組織だ。」


「しかも相当大規模です。」


アルトは静かに記録を閉じた。


「これなら言い逃れはできません。」


その時だった。


見張りをしていた護衛が走ってくる。


「アルト様!」


「どうしました?」


「倉庫から馬車が出ます!」


「今夜です!」


アルトは立ち上がった。


「全員、配置についてください。」


「ここからが本番です。」


敵を捕まえるのではない。


事件を終わらせる。


営業課長として培った準備と分析が、ついに決着の時を迎えようとしていた。



営業メモ⑥⑤


『急いで出した答えより、十分に集めた証拠の方が人を動かす。』


焦って結論を出せば、大切な情報を見落としてしまう。


だからこそ、一歩待ち、観察し、事実を積み重ねることが重要だ。


相手を納得させる一番の武器は、感情ではなく「揺るがない根拠」である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十七話「営業課長、密輸組織を追い詰める」


ついに動き出した密輸組織。


アルトは仲間たちとともに証拠を押さえ、黒幕との直接対決へ挑む。


営業課長流の「勝ち方」が、グランディアの未来を大きく変える。


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