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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第六十六話 営業課長、密輸組織の罠


夜の山道。


アルトたちは黒い外套の男たちを追い、街外れの古びた倉庫までたどり着いていた。


「灯りがついていますね。」


ガレスが小声で言う。


倉庫の隙間から、かすかに明かりが漏れている。


人の気配もある。


ドルガは大槌を肩に担いだ。


「踏み込むか?」


しかしアルトは首を横に振る。


「まだです。」


「またか。」


バルドが苦笑する。


「はい。」


アルトは静かに倉庫を見つめた。


「営業でも、一番失敗するのは『結論を急ぐ人』です。」


「目の前に答えがあるように見えても、一度立ち止まる。」


「それだけで防げる失敗はたくさんあります。」


◇


しばらく様子を見ていると、一人の男が倉庫から出てきた。


右頬に傷がある男だった。


周囲を警戒しながら山道を歩き始める。


その姿を見て、護衛の一人が呟く。


「一人になりました。」


「今なら捕まえられます。」


アルトは小さく微笑んだ。


「だから捕まえません。」


「え?」


「見ていてください。」


男は山道を下ると、小川の手前で立ち止まった。


そして口笛を吹く。


すると森の奥から、さらに四人の男が姿を現した。


全員が武器を持っている。


ドルガは目を見開いた。


「待ち伏せか……!」


アルトは静かに頷く。


「ええ。」


「追ってくる者がいれば、ここで始末する予定だったのでしょう。」


バルドは思わず息を吐いた。


「危なかったな。」


「もし飛び出していたら、こちらが囲まれていました。」


◇


男たちは再び倉庫へ戻っていく。


アルトは全員へ指示を出した。


「今夜は引きます。」


「逃がすのか?」


ドルガが不満そうに言う。


「逃がしません。」


アルトは笑顔を浮かべた。


「逃げ道を知るんです。」


「逃げ道?」


「人は安心すると、必ず本拠地へ戻ります。」


「ですが追い詰められると、証拠を消して逃げます。」


営業でも同じだった。


契約を急ぎ過ぎる営業は失敗する。


相手が安心して本音を見せるまで待つ。


その方が、結果的に大きな成果へつながる。


「ではどうする?」


ガレスが尋ねる。


アルトは地図を広げた。


「この倉庫を見張ります。」


「出入りする人。」


「運び込まれる荷物。」


「時間。」


「全部記録してください。」


「証拠を積み上げます。」


護衛たちは一斉に頷いた。


◇


三日後。


調査結果は予想以上だった。


倉庫へ運び込まれていたのは、鉱石だけではない。


王都へ送られるはずの武具。


農具。


さらには魔石まで積み込まれていた。


しかも荷馬車には、隣国の紋章が刻まれている。


バルドが険しい顔になる。


「間違いない。」


「密輸組織だ。」


「しかも相当大規模です。」


アルトは静かに記録を閉じた。


「これなら言い逃れはできません。」


その時だった。


見張りをしていた護衛が走ってくる。


「アルト様!」


「どうしました?」


「倉庫から馬車が出ます!」


「今夜です!」


アルトは立ち上がった。


「全員、配置についてください。」


「ここからが本番です。」


敵を捕まえるのではない。


事件を終わらせる。


営業課長として培った準備と分析が、ついに決着の時を迎えようとしていた。


⸻


営業メモ⑥⑤


『急いで出した答えより、十分に集めた証拠の方が人を動かす。』


焦って結論を出せば、大切な情報を見落としてしまう。


だからこそ、一歩待ち、観察し、事実を積み重ねることが重要だ。


相手を納得させる一番の武器は、感情ではなく「揺るがない根拠」である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十七話「営業課長、密輸組織を追い詰める」


ついに動き出した密輸組織。


アルトは仲間たちとともに証拠を押さえ、黒幕との直接対決へ挑む。


営業課長流の「勝ち方」が、グランディアの未来を大きく変える。


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