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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第六十四話 営業課長、崩落の真相を追う


「第二坑道が崩れた!」


その知らせを受けたアルトは、ドルガ、バルド、ガレス、そして数名の護衛とともに鉱山へ向かった。


山肌にはいくつもの坑道が口を開けている。


普段は威勢のいい鉱夫たちも、この日は誰もが不安そうな表情を浮かべていた。


「けが人は?」


アルトが現場監督へ尋ねる。


「幸い、崩落の前に異変へ気付いて全員避難しました。」


「それは良かった。」


まずは人命。


前世でも営業課長として、「利益よりも安全を優先する会社は長く続く」と教えられてきた。


その考えは、この世界でも変わらない。


◇


崩れた坑道の前へ到着すると、大量の岩石が通路を塞いでいた。


アルトはしゃがみ込み、崩れた岩をじっと観察する。


「……妙ですね。」


「何がだ?」


ドルガが尋ねる。


「この崩れ方です。」


アルトは岩肌を指差した。


「自然崩落なら、もっと奥から崩れるはずです。」


「ですが、入口付近だけが集中的に崩れています。」


現場監督も目を丸くした。


「確かに……。」


アルトはさらに周囲を歩き回る。


すると、岩陰に小さな木片が落ちているのを見つけた。


「これは……。」


拾い上げると、木材の断面が不自然に割れていた。


「支柱ですか?」


ガレスが尋ねる。


「ええ。」


アルトは静かに頷く。


「しかも、新しい。」


本来なら数年は使える頑丈な支柱。


それが真ん中から折れている。


「腐っていたわけではありません。」


「誰かが細工した……?」


護衛の一人が息を呑んだ。


その場に緊張が走る。


◇


「皆さん。」


アルトは鉱夫たちを集めた。


「ここ数日で、変わったことはありませんでしたか?」


最初は誰も口を開かなかった。


しかし、一人の若い鉱夫が手を挙げる。


「あの……。」


「何でしょう?」


「三日前、見慣れない男たちが坑道を見ていました。」


「商人ですか?」


「いや……旅人みたいな格好でした。」


「顔は覚えていますか?」


「一人だけ。」


鉱夫は少し考え込む。


「右頬に古い傷がありました。」


その言葉を聞いたバルドの表情が変わった。


「まさか……。」


「知っているんですか?」


アルトが尋ねる。


「以前、隣国との密輸で名前が出た連中に、そんな男がいた。」


「密輸?」


「鉱石を安く手に入れるため、鉱山を混乱させる連中だ。」


アルトは腕を組む。


もし本当なら、これは事故ではない。


街そのものを狙った妨害工作だ。


◇


その夜。


宿へ戻ったアルトは、机いっぱいに紙を並べていた。


崩落した場所。


支柱の位置。


運搬経路。


目撃情報。


前世の営業時代も、トラブルが起きれば必ず情報を整理した。


感覚では動かない。


事実を積み重ねる。


「アルト様。」


ガレスが部屋へ入ってきた。


「休まれなくて大丈夫ですか?」


「まだ休めません。」


アルトは地図を見つめたまま答える。


「相手は坑道を崩すことが目的ではないはずです。」


「え?」


「もし街を混乱させたいなら、もっと被害を出せた。」


「では目的は……。」


アルトは一本の線を地図に引いた。


第二坑道から王都へ続く街道。


そして、鉱石の保管倉庫。


「物流です。」


「物流?」


「鉱石が王都へ届かなくなれば、武器も農具も作れなくなる。」


「王国全体が困る。」


ガレスはハッとした。


「つまり、この事件は……。」


「グランディアだけの問題ではありません。」


アルトは静かに立ち上がる。


「王国そのものを揺さぶるための第一歩かもしれません。」


窓の外では、鉱山の灯が静かに揺れていた。


その暗闇のどこかで、敵は次の一手を考えている。


ならば、自分も先を読む。


営業とは、相手の一歩先を考えて動く仕事なのだから。


⸻


営業メモ⑥③


『問題が起きたら、原因ではなく事実を集めよう。』


思い込みで判断すると、本当の原因を見失ってしまう。


「いつ」「どこで」「誰が」「何を見たのか」。


事実を一つずつ積み重ねることで、解決への道筋が見えてくる。


営業もトラブル対応も、冷静な情報整理が成功への第一歩である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十五話「営業課長、黒幕との駆け引き」


坑道崩落は、偶然ではなかった。


密輸組織の影が見え始める中、アルトは営業課長時代に培った”情報戦”で黒幕との静かな駆け引きに挑む。


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