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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第六十四話 営業課長、崩落の真相を追う


「第二坑道が崩れた!」


その知らせを受けたアルトは、ドルガ、バルド、ガレス、そして数名の護衛とともに鉱山へ向かった。


山肌にはいくつもの坑道が口を開けている。


普段は威勢のいい鉱夫たちも、この日は誰もが不安そうな表情を浮かべていた。


「けが人は?」


アルトが現場監督へ尋ねる。


「幸い、崩落の前に異変へ気付いて全員避難しました。」


「それは良かった。」


まずは人命。


前世でも営業課長として、「利益よりも安全を優先する会社は長く続く」と教えられてきた。


その考えは、この世界でも変わらない。



崩れた坑道の前へ到着すると、大量の岩石が通路を塞いでいた。


アルトはしゃがみ込み、崩れた岩をじっと観察する。


「……妙ですね。」


「何がだ?」


ドルガが尋ねる。


「この崩れ方です。」


アルトは岩肌を指差した。


「自然崩落なら、もっと奥から崩れるはずです。」


「ですが、入口付近だけが集中的に崩れています。」


現場監督も目を丸くした。


「確かに……。」


アルトはさらに周囲を歩き回る。


すると、岩陰に小さな木片が落ちているのを見つけた。


「これは……。」


拾い上げると、木材の断面が不自然に割れていた。


「支柱ですか?」


ガレスが尋ねる。


「ええ。」


アルトは静かに頷く。


「しかも、新しい。」


本来なら数年は使える頑丈な支柱。


それが真ん中から折れている。


「腐っていたわけではありません。」


「誰かが細工した……?」


護衛の一人が息を呑んだ。


その場に緊張が走る。



「皆さん。」


アルトは鉱夫たちを集めた。


「ここ数日で、変わったことはありませんでしたか?」


最初は誰も口を開かなかった。


しかし、一人の若い鉱夫が手を挙げる。


「あの……。」


「何でしょう?」


「三日前、見慣れない男たちが坑道を見ていました。」


「商人ですか?」


「いや……旅人みたいな格好でした。」


「顔は覚えていますか?」


「一人だけ。」


鉱夫は少し考え込む。


「右頬に古い傷がありました。」


その言葉を聞いたバルドの表情が変わった。


「まさか……。」


「知っているんですか?」


アルトが尋ねる。


「以前、隣国との密輸で名前が出た連中に、そんな男がいた。」


「密輸?」


「鉱石を安く手に入れるため、鉱山を混乱させる連中だ。」


アルトは腕を組む。


もし本当なら、これは事故ではない。


街そのものを狙った妨害工作だ。



その夜。


宿へ戻ったアルトは、机いっぱいに紙を並べていた。


崩落した場所。


支柱の位置。


運搬経路。


目撃情報。


前世の営業時代も、トラブルが起きれば必ず情報を整理した。


感覚では動かない。


事実を積み重ねる。


「アルト様。」


ガレスが部屋へ入ってきた。


「休まれなくて大丈夫ですか?」


「まだ休めません。」


アルトは地図を見つめたまま答える。


「相手は坑道を崩すことが目的ではないはずです。」


「え?」


「もし街を混乱させたいなら、もっと被害を出せた。」


「では目的は……。」


アルトは一本の線を地図に引いた。


第二坑道から王都へ続く街道。


そして、鉱石の保管倉庫。


「物流です。」


「物流?」


「鉱石が王都へ届かなくなれば、武器も農具も作れなくなる。」


「王国全体が困る。」


ガレスはハッとした。


「つまり、この事件は……。」


「グランディアだけの問題ではありません。」


アルトは静かに立ち上がる。


「王国そのものを揺さぶるための第一歩かもしれません。」


窓の外では、鉱山の灯が静かに揺れていた。


その暗闇のどこかで、敵は次の一手を考えている。


ならば、自分も先を読む。


営業とは、相手の一歩先を考えて動く仕事なのだから。



営業メモ⑥③


『問題が起きたら、原因ではなく事実を集めよう。』


思い込みで判断すると、本当の原因を見失ってしまう。


「いつ」「どこで」「誰が」「何を見たのか」。


事実を一つずつ積み重ねることで、解決への道筋が見えてくる。


営業もトラブル対応も、冷静な情報整理が成功への第一歩である。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十五話「営業課長、黒幕との駆け引き」


坑道崩落は、偶然ではなかった。


密輸組織の影が見え始める中、アルトは営業課長時代に培った”情報戦”で黒幕との静かな駆け引きに挑む。


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