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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第六十三話 営業課長、新ブランド誕生


「それでは、本日より開始します。」


アルトの宣言とともに、グランディアの新たな挑戦が幕を開けた。


街の広場には、これまで見たこともない売り場が設けられている。


武器が並ぶだけではない。


一つひとつの商品に、木製の札が添えられていた。


『製作者 ドルガ』


『鋼の配合を見直し、耐久性を高めた逸品』


『品質保証付き』


さらに、その横には職人の似顔絵まで描かれている。


「これ、本当に売れるのか?」


若い職人が不安そうに呟く。


「売れます。」


アルトは自信を持って答えた。


「人は商品だけではなく、『誰が作ったのか』にも価値を感じるんです。」


◇


午前中。


王都から来た商人や冒険者たちが売り場へ集まり始めた。


「これが噂のドルガの剣か。」


「保証書まで付いているのか。」


「この職人が作ったの?」


今までとは違う反応だった。


ただ値段を見るだけではない。


職人の説明を読み、剣を手に取り、作り手の話に耳を傾ける。


ドルガ自身も最初は戸惑っていた。


「俺が説明するのか?」


「はい。」


アルトは笑う。


「一番商品のことを知っているのは、作った本人です。」


ぎこちないながらも、ドルガは客へ語り始める。


「この刃は、三日かけて鍛えた。」


「芯に粘りを持たせてある。」


「だから折れにくい。」


冒険者は目を輝かせる。


「なるほど!」


「そういう話が聞きたかった!」


その様子を見ていた他の職人たちも、少しずつ前へ出てきた。


「俺の斧は木こり向けなんだ。」


「この包丁は料理人に人気でな。」


今まで無口だった職人たちが、自分の仕事を誇らしげに語り始める。


その姿に、アルトは小さく頷いた。


「これでいい。」


商品の価値を一番伝えられるのは、作った本人なのだから。


◇


昼過ぎ。


集計役のガレスが慌てた様子で駆け込んできた。


「アルト様!」


「どうしました?」


「午前中だけで、売上が普段の二倍です!」


「二倍?」


周囲の職人たちがどよめく。


「しかも、高価格の商品ほど売れています!」


ドルガは目を丸くした。


「高い方が売れてるだと……?」


アルトは微笑む。


「価格ではなく、価値で選ばれている証拠です。」


「安いから買う。」


ではない。


「欲しいから買う。」


そう思ってもらえる商品になれば、価格は後から付いてくる。


これが前世で学んだブランド戦略だった。


◇


夕方。


祭りのような賑わいを見せる広場を、バルドは静かに眺めていた。


「負けたな。」


そう呟くと、隣に立つアルトへ声を掛ける。


「認めよう。」


「お前のやり方は正しかった。」


アルトは首を横に振る。


「いいえ。」


「これは私一人ではできませんでした。」


「職人さんが勇気を出して前へ出た。」


「商人さんが新しい売り方を受け入れた。」


「だから成功したんです。」


バルドは苦笑した。


「……お前は、最後まで自分の手柄にしないんだな。」


「営業課長は、チームで成果を出す仕事ですから。」


その言葉に、バルドは豪快に笑った。


「ガハハハ!」


「本当に変わった坊主だ。」


その時だった。


広場へ一人の鉱夫が血相を変えて走ってきた。


「た、大変だ!」


息を切らしながら叫ぶ。


「第二坑道が閉鎖された!」


「何だと?」


ドルガもバルドも顔色を変える。


「坑道の奥で地盤が崩れた!」


「このままじゃ、鉱石が採れねぇ!」


広場に緊張が走る。


ブランドが成功しても、肝心の鉱石が採れなければ意味がない。


アルトは騒ぐ人々を見渡し、静かに口を開いた。


「まずは現場へ向かいましょう。」


「原因を知らずに、対策は立てられません。」


営業課長の視線は、すでに次の課題へ向いていた。


⸻


営業メモ⑥②


『成果は、一人では生まれない。』


どんなに優れたアイデアでも、実行する仲間がいなければ形にはならない。


成果が出た時ほど、自分ではなく仲間を称える。


その積み重ねが、次の挑戦にも協力してくれる強いチームを育てる。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十四話「営業課長、崩落の真相を追う」


ブランド戦略が成功した矢先に起きた鉱山の崩落事故。


偶然か、それとも誰かの企みか。


アルトは現場へ向かい、街を揺るがす事件の真相に迫る。


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