表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
PR
62/90

第六十二話 営業課長、新ブランド誕生


「それでは、本日より開始します。」


アルトの宣言とともに、グランディアの新たな挑戦が幕を開けた。


街の広場には、これまで見たこともない売り場が設けられている。


武器が並ぶだけではない。


一つひとつの商品に、木製の札が添えられていた。


『製作者 ドルガ』


『鋼の配合を見直し、耐久性を高めた逸品』


『品質保証付き』


さらに、その横には職人の似顔絵まで描かれている。


「これ、本当に売れるのか?」


若い職人が不安そうに呟く。


「売れます。」


アルトは自信を持って答えた。


「人は商品だけではなく、『誰が作ったのか』にも価値を感じるんです。」



午前中。


王都から来た商人や冒険者たちが売り場へ集まり始めた。


「これが噂のドルガの剣か。」


「保証書まで付いているのか。」


「この職人が作ったの?」


今までとは違う反応だった。


ただ値段を見るだけではない。


職人の説明を読み、剣を手に取り、作り手の話に耳を傾ける。


ドルガ自身も最初は戸惑っていた。


「俺が説明するのか?」


「はい。」


アルトは笑う。


「一番商品のことを知っているのは、作った本人です。」


ぎこちないながらも、ドルガは客へ語り始める。


「この刃は、三日かけて鍛えた。」


「芯に粘りを持たせてある。」


「だから折れにくい。」


冒険者は目を輝かせる。


「なるほど!」


「そういう話が聞きたかった!」


その様子を見ていた他の職人たちも、少しずつ前へ出てきた。


「俺の斧は木こり向けなんだ。」


「この包丁は料理人に人気でな。」


今まで無口だった職人たちが、自分の仕事を誇らしげに語り始める。


その姿に、アルトは小さく頷いた。


「これでいい。」


商品の価値を一番伝えられるのは、作った本人なのだから。



昼過ぎ。


集計役のガレスが慌てた様子で駆け込んできた。


「アルト様!」


「どうしました?」


「午前中だけで、売上が普段の二倍です!」


「二倍?」


周囲の職人たちがどよめく。


「しかも、高価格の商品ほど売れています!」


ドルガは目を丸くした。


「高い方が売れてるだと……?」


アルトは微笑む。


「価格ではなく、価値で選ばれている証拠です。」


「安いから買う。」


ではない。


「欲しいから買う。」


そう思ってもらえる商品になれば、価格は後から付いてくる。


これが前世で学んだブランド戦略だった。



夕方。


祭りのような賑わいを見せる広場を、バルドは静かに眺めていた。


「負けたな。」


そう呟くと、隣に立つアルトへ声を掛ける。


「認めよう。」


「お前のやり方は正しかった。」


アルトは首を横に振る。


「いいえ。」


「これは私一人ではできませんでした。」


「職人さんが勇気を出して前へ出た。」


「商人さんが新しい売り方を受け入れた。」


「だから成功したんです。」


バルドは苦笑した。


「……お前は、最後まで自分の手柄にしないんだな。」


「営業課長は、チームで成果を出す仕事ですから。」


その言葉に、バルドは豪快に笑った。


「ガハハハ!」


「本当に変わった坊主だ。」


その時だった。


広場へ一人の鉱夫が血相を変えて走ってきた。


「た、大変だ!」


息を切らしながら叫ぶ。


「第二坑道が閉鎖された!」


「何だと?」


ドルガもバルドも顔色を変える。


「坑道の奥で地盤が崩れた!」


「このままじゃ、鉱石が採れねぇ!」


広場に緊張が走る。


ブランドが成功しても、肝心の鉱石が採れなければ意味がない。


アルトは騒ぐ人々を見渡し、静かに口を開いた。


「まずは現場へ向かいましょう。」


「原因を知らずに、対策は立てられません。」


営業課長の視線は、すでに次の課題へ向いていた。



営業メモ⑥①


『成果は、一人では生まれない。』


どんなに優れたアイデアでも、実行する仲間がいなければ形にはならない。


成果が出た時ほど、自分ではなく仲間を称える。


その積み重ねが、次の挑戦にも協力してくれる強いチームを育てる。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第六十三話「営業課長、崩落の真相を追う」


ブランド戦略が成功した矢先に起きた鉱山の崩落事故。


偶然か、それとも誰かの企みか。


アルトは現場へ向かい、街を揺るがす事件の真相に迫る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ