↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/246

第五十八話 営業課長、鉱山都市へ向かう


王都からの正式な依頼を受けた翌朝。


アルトは父の執務室で、北部鉱山都市グランディアについての資料に目を通していた。


「鉄鉱石、銅鉱石、魔石……。王国でも有数の資源都市ですね」


「ああ。しかし、近年は税収も人口も伸び悩んでいる」


父は地図の一点を指差した。


「原因は分かっていない。鉱石は以前と変わらず採れている。それなのに街は豊かにならない」


「資源があるのに豊かにならない……」


アルトは腕を組んだ。


前世でも似たようなケースを何度も見てきた。


売れる商品はある。


技術もある。


それでも利益が残らない会社。


原因はたいてい、商品そのものではない。


「現場を見ないと分からないですね」


父は満足そうに頷いた。


「その答えが聞きたかった」


書類だけでは分からない。


数字だけでは人の気持ちは見えない。


営業課長だった頃、何度も現場へ足を運んだからこそ契約が取れた。


今回も同じだ。


まずは自分の目で見る。


それがアルトのやり方だった。


◇


数日後。


アルトは数名の護衛と共に北部へ向けて馬車を走らせていた。


王都を離れるにつれ、景色は大きく変わっていく。


広い草原。


深い森。


そして遠くには灰色の山々が連なっていた。


「あれがグランディア山脈です」


護衛の一人が説明する。


「あの山全部が鉱山なんですか?」


「はい。王国の鉄の半分近くがあそこで採掘されています」


「半分も……」


想像以上だった。


それだけの資源を持ちながら発展しない。


ますます不思議だった。


夕方。


一行は街へ到着した。


巨大な石壁。


煙を上げる精錬炉。


鉱石を積んだ荷車が何十台も行き交っている。


確かに活気はある。


しかし。


「……あれ?」


アルトは違和感を覚えた。


働く人々の表情が暗い。


子どもたちも笑っていない。


商店街も人通りの割に活気がない。


「儲かっている街には見えませんね」


護衛も苦笑した。


「皆、それを不思議に思っています」


宿へ向かう途中。


一人の少年が荷車を押していた。


あまりに重そうだったので、アルトは思わず声を掛ける。


「大丈夫?」


「……うん」


少年は息を切らせながら答える。


「父ちゃんが腰を痛めたから、代わりに運んでる」


荷車には大量の鉄鉱石。


子ども一人で運ぶには重すぎる。


「いくらもらえるの?」


「今日一日で銅貨五枚」


アルトは驚いた。


この量を運んで、その金額しかもらえないのか。


「そのお金で生活できるの?」


少年は少しだけ笑った。


「できないよ。でも働かないと、ご飯が食べられないから」


その笑顔が、胸に刺さる。


前世でも見たことがある。


必死に働いているのに報われない人たち。


努力が足りないのではない。


仕組みがおかしいのだ。


アルトは少年から荷車を受け取る。


「少しだけ手伝わせて」


「えっ?」


護衛も慌てて止めようとした。


「アルト様!」


「大丈夫。営業は現場第一だから」


前世で何度も荷物を運び、倉庫を歩き回り、工場で汗を流した。


現場を知らずに改善案など出せるはずがない。


荷車を押した瞬間、アルトはすぐに気付いた。


「……なるほど」


道が悪い。


車輪も歪んでいる。


積み方にも無駄が多い。


これでは余計な力が必要になる。


「問題は一つじゃない」


アルトは静かに呟く。


「積み重なった小さな無駄が、人を苦しめているんだ」


その言葉を聞いた護衛は目を丸くした。


普通なら賃金や税を疑う。


しかしアルトは、その前段階を見抜いていた。


仕事そのものに潜む無駄。


そこを改善すれば、働く人はもっと楽になり、生産性も上がる。


営業課長の目は、すでに街全体を分析し始めていた。


そしてアルトはまだ知らない。


この街には、一人の頑固な鍛冶職人がいることを。


その男との出会いが、グランディアの未来を大きく変えることになるとは──。


⸻


営業メモ⑤⑦


『現場を知らずして、改善は語れない。』


机の上の資料だけでは、本当の問題は見えてこない。


実際に現場へ足を運び、人の声を聞き、自分の目で確かめる。


その一歩が、相手の信頼を得る第一歩になる。


営業も改革も、すべては「現場主義」から始まる。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第五十九話「営業課長、頑固職人を口説く」


グランディア随一の腕を持ちながら、誰とも組もうとしない一人の鍛冶職人。


アルトは営業課長として培った”信頼を築く技術”で、その頑なな心を開くことができるのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。