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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編
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第五十七話 営業課長、鉱山都市へ向かう


王都からの正式な依頼を受けた翌朝。


アルトは父の執務室で、北部鉱山都市グランディアについての資料に目を通していた。


「鉄鉱石、銅鉱石、魔石……。王国でも有数の資源都市ですね」


「ああ。しかし、近年は税収も人口も伸び悩んでいる」


父は地図の一点を指差した。


「原因は分かっていない。鉱石は以前と変わらず採れている。それなのに街は豊かにならない」


「資源があるのに豊かにならない……」


アルトは腕を組んだ。


前世でも似たようなケースを何度も見てきた。


売れる商品はある。


技術もある。


それでも利益が残らない会社。


原因はたいてい、商品そのものではない。


「現場を見ないと分からないですね」


父は満足そうに頷いた。


「その答えが聞きたかった」


書類だけでは分からない。


数字だけでは人の気持ちは見えない。


営業課長だった頃、何度も現場へ足を運んだからこそ契約が取れた。


今回も同じだ。


まずは自分の目で見る。


それがアルトのやり方だった。



数日後。


アルトは数名の護衛と共に北部へ向けて馬車を走らせていた。


王都を離れるにつれ、景色は大きく変わっていく。


広い草原。


深い森。


そして遠くには灰色の山々が連なっていた。


「あれがグランディア山脈です」


護衛の一人が説明する。


「あの山全部が鉱山なんですか?」


「はい。王国の鉄の半分近くがあそこで採掘されています」


「半分も……」


想像以上だった。


それだけの資源を持ちながら発展しない。


ますます不思議だった。


夕方。


一行は街へ到着した。


巨大な石壁。


煙を上げる精錬炉。


鉱石を積んだ荷車が何十台も行き交っている。


確かに活気はある。


しかし。


「……あれ?」


アルトは違和感を覚えた。


働く人々の表情が暗い。


子どもたちも笑っていない。


商店街も人通りの割に活気がない。


「儲かっている街には見えませんね」


護衛も苦笑した。


「皆、それを不思議に思っています」


宿へ向かう途中。


一人の少年が荷車を押していた。


あまりに重そうだったので、アルトは思わず声を掛ける。


「大丈夫?」


「……うん」


少年は息を切らせながら答える。


「父ちゃんが腰を痛めたから、代わりに運んでる」


荷車には大量の鉄鉱石。


子ども一人で運ぶには重すぎる。


「いくらもらえるの?」


「今日一日で銅貨五枚」


アルトは驚いた。


この量を運んで、その金額しかもらえないのか。


「そのお金で生活できるの?」


少年は少しだけ笑った。


「できないよ。でも働かないと、ご飯が食べられないから」


その笑顔が、胸に刺さる。


前世でも見たことがある。


必死に働いているのに報われない人たち。


努力が足りないのではない。


仕組みがおかしいのだ。


アルトは少年から荷車を受け取る。


「少しだけ手伝わせて」


「えっ?」


護衛も慌てて止めようとした。


「アルト様!」


「大丈夫。営業は現場第一だから」


前世で何度も荷物を運び、倉庫を歩き回り、工場で汗を流した。


現場を知らずに改善案など出せるはずがない。


荷車を押した瞬間、アルトはすぐに気付いた。


「……なるほど」


道が悪い。


車輪も歪んでいる。


積み方にも無駄が多い。


これでは余計な力が必要になる。


「問題は一つじゃない」


アルトは静かに呟く。


「積み重なった小さな無駄が、人を苦しめているんだ」


その言葉を聞いた護衛は目を丸くした。


普通なら賃金や税を疑う。


しかしアルトは、その前段階を見抜いていた。


仕事そのものに潜む無駄。


そこを改善すれば、働く人はもっと楽になり、生産性も上がる。


営業課長の目は、すでに街全体を分析し始めていた。


そしてアルトはまだ知らない。


この街には、一人の頑固な鍛冶職人がいることを。


その男との出会いが、グランディアの未来を大きく変えることになるとは──。



営業メモ⑤⑥


『現場を知らずして、改善は語れない。』


机の上の資料だけでは、本当の問題は見えてこない。


実際に現場へ足を運び、人の声を聞き、自分の目で確かめる。


その一歩が、相手の信頼を得る第一歩になる。


営業も改革も、すべては「現場主義」から始まる。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第五十八話「営業課長、頑固職人を口説く」


グランディア随一の腕を持ちながら、誰とも組もうとしない一人の鍛冶職人。


アルトは営業課長として培った”信頼を築く技術”で、その頑なな心を開くことができるのか。


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