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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第2部 営業課長、王都で信用を築く編

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第四十七話 営業課長、国王陛下に呼び出される


誘拐事件から一週間。


アルトは久しぶりに家の庭でのんびりと過ごしていた。


「……へいわ。」


木陰で寝転がりながら空を見上げる。


青空には白い雲がゆっくり流れていた。


レオンは苦笑する。


「二歳で誘拐された直後とは思えないな。」


「もう少し怖がってもいいんだぞ?」


アルトは首を振った。


「おうち。」


「だから。」


安心できる場所がある。


それだけで人は落ち着ける。


前世でも、どんなに忙しい日でも家へ帰ると肩の力が抜けた。


人には帰る場所が必要なのだ。


◇


その穏やかな時間は、一台の馬車によって破られた。


王家の白銀の紋章。


近衛騎士が整列し、門の前で止まる。


「王命である。」


騎士が高らかに告げた。


「アルト殿を王城へ招く。」


ガイルが固まる。


「……また何かやったのか?」


「してない。」


「本当に?」


「たぶん。」


「『たぶん』って何だ!」


エミリアが思わず笑いをこらえた。


◇


王城。


大理石で造られた謁見の間は、今日も厳かな空気に包まれていた。


赤い絨毯の先には黄金の玉座。


そこへアルトたちが案内される。


左右には近衛騎士。


奥には大臣や貴族たちが並んでいた。


「アルト」


国王アレクシスが穏やかな声で呼ぶ。


「近う寄れ。」


アルトは小さな足で歩き、玉座の前まで進む。


そしてぺこりと頭を下げた。


「こんにちは。」


場の空気が一瞬止まる。


貴族たちが慌てる。


「こ、国王陛下に……。」


「こんにちはだと?」


しかし国王は大きく笑った。


「はっはっは!」


「よい!」


「余にここまで自然に挨拶する者は久しぶりだ。」


緊張していた空気が、一気に和らいだ。


◇


国王は玉座から降りてくる。


「アルト。」


「今回の件、よく無事で戻ってきた。」


「ありがとう。」


「うん。」


「おじさん。」


「いい人だった。」


「……ゼクトのことか?」


国王は少し驚いた。


誘拐された子どもなら、犯人を憎んでいてもおかしくない。


しかしアルトは違った。


「わるいこと。」


「した。」


「でも。」


「なおせる。」


国王は静かに目を閉じた。


「王女からも同じような話を聞いた。」


「お前は、あの男の助命を願ったそうだな。」


アルトは頷く。


「うん。」


◇


国王は周囲を見回す。


「皆、どう思う?」


一人の貴族が前へ出た。


「誘拐犯は極刑にすべきです。」


「見せしめにもなります。」


別の大臣も頷く。


「法は平等であるべきかと。」


そこへ騎士団長が口を開く。


「ですが、彼らは抵抗せず投降しました。」


「人質にも危害を加えておりません。」


教授も一歩前へ出る。


「アルト君がいなければ、多くの命が失われていた可能性があります。」


意見は真っ二つに割れた。


◇


その時だった。


アルトが小さく手を挙げる。


「はい。」


国王が笑う。


「申してみよ。」


「しっぱい。」


「ある。」


「でも。」


「なおる。」


「なおした人。」


「たすける。」


「また。」


「がんばる。」


短い言葉だった。


だが、その場にいた誰もが意味を理解した。


営業時代、アルトは何度も失敗した社員を見てきた。


一度の失敗で切り捨てれば、人は育たない。


反省し、やり直す機会を与えることで、大きく成長する者もいる。


国も同じではないだろうか。


◇


国王は静かに立ち上がる。


「決めた。」


玉座の間が静まり返る。


「ゼクト以下全員。」


「終身刑を取りやめる。」


貴族たちがざわつく。


「ただし。」


国王の声が響く。


「王国復興事業へ従事させる。」


「働き、その成果で罪を償え。」


騎士団長が深く頭を下げる。


「賢明なるご判断です。」


アルトはほっと息をついた。


◇


「さて。」


国王は笑顔でアルトを見る。


「本題に入ろう。」


「え?」


「実は、お前に頼みがある。」


大臣たちが一枚の大きな地図を広げる。


王国全土が描かれていた。


その中には赤い印がいくつも付いている。


「ここは何だか分かるか?」


アルトは首を振る。


「魔道具が届いていない村だ。」


国王は続ける。


「都市は豊かになった。」


「だが地方は取り残されている。」


「医療も教育も遅れている。」


「そこで――。」


国王はアルトを真っ直ぐ見つめた。


「お前の知恵を貸してほしい。」


「王国全体を、もっと暮らしやすい国にしたい。」


その言葉を聞いた瞬間。


アルトの胸が高鳴った。


(営業課長から、国づくりか。)


前世では、一つの会社しか変えられなかった。


しかし今なら。


一つの国を変えられるかもしれない。


アルトはにっこり笑った。


「うん。」


「やる。」


国王も満足そうに笑う。


「期待しているぞ、アルト。」


その日。


一人の二歳児は、正式に国王の相談役となった。


王国改革という、新たな物語の幕が静かに上がる。


━━━━━━━━━━━━━━


営業メモ㊻


『人材は「過去」ではなく、「未来」で評価する。』


失敗だけを見れば、誰も成長できない。


反省し、学び、再び挑戦する人に機会を与えること。


それが組織を強くし、未来を創る。


━━━━━━━━━━━━━━


――次回、第四十八話「営業課長、地方改革プロジェクト始動」


国王から託された最初の使命。


それは、王都から遠く離れた小さな村を立て直すことだった。


営業課長は初めて"国全体"を相手にしたプロジェクトへ挑む――。

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