↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第2部 営業課長、王都で信用を築く編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/246

第三十六話 営業課長、国王陛下と初めて会う


王立魔法学院で生まれた「魔力調整機構付き送風具」。


その評判は学院内だけにとどまらず、王都の貴族や商人たちの間にも少しずつ広がり始めていた。


そして、ある日の朝――。


「旦那様、王宮より使者がお見えです。」


執事ガレスが応接室へ入り、深々と一礼した。


レオンは手紙を受け取り、封蝋を見る。


王家の紋章だった。


「……王宮から?」


エマも思わず息をのむ。


レオンが封を開き、ゆっくりと読み進める。


やがて驚いたように目を見開いた。


「これは……。」


「どうしたの?」


「陛下がお会いになりたいそうだ。」


部屋の空気が一瞬止まった。


「私たちに……ですか?」


「いや。」


レオンは苦笑しながらアルトを見る。


「アルトに、だ。」


「え?」


アルトも思わず目を丸くした。


(まさか、もう王様に会うことになるとは……。)


◇


数日後。


王宮。


白い石で築かれた壮麗な城は、王都の中心に堂々とそびえ立っていた。


高い塔、色鮮やかなステンドグラス、手入れの行き届いた庭園。


どこを見ても王国の豊かさを感じさせる。


「すごい……。」


アルトは思わず見上げた。


前世でも立派な本社ビルはいくつも見てきた。


しかし、この壮大さは比べものにならない。


「緊張するか?」


レオンが優しく声を掛ける。


「うん。」


「少しだけ。」


その返事にレオンは笑った。


「私もだ。」


◇


玉座の間。


赤い絨毯の先に、一人の男性が座っていた。


五十代ほどの年齢。


威厳を感じさせる顔立ちだが、その眼差しはどこか穏やかだった。


「面を上げよ。」


低く落ち着いた声が響く。


レオンたちは頭を上げる。


アルトも国王を見つめた。


(この人が……。)


王国を治める人物。


しかし、その目には傲慢さはなかった。


相手を観察する営業マンのような、静かな視線だった。


「レオン。」


「息子のことは、学院から報告を受けている。」


「はい、陛下。」


「送風具の改良。」


「蒼輝石への着眼点。」


「どれも実に興味深い。」


国王はゆっくりとアルトへ視線を向ける。


「アルト。」


「そなたは、なぜ送風具を改良しようと思った?」


突然の質問だった。


周囲の貴族たちもアルトを見つめる。


アルトは少し考え、素直に答えた。


「みんなが。」


「使いやすいほうが、うれしいから。」


玉座の間が静まり返る。


国王は数秒間アルトを見つめたあと、小さく笑った。


「なるほど。」


「実に単純だ。」


「だが、それが一番難しい。」


◇


国王は立ち上がり、窓際まで歩いた。


窓の外には王都が広がっている。


「国も同じなのだ。」


「民が暮らしやすい国を作る。」


「言葉にすれば簡単だが、それを実現するのは難しい。」


アルトはその背中を見つめていた。


(前世の優秀な社長に似ている。)


利益だけではなく、お客様や社員のことを考える人。


そんな人の会社は強かった。


国王もまた、同じなのだろう。


◇


「アルト。」


国王が振り返る。


「一つ、頼みがある。」


「はい?」


「これからも、その柔軟な考え方を失わないでほしい。」


「大人になると、人は経験を積む。」


「しかし同時に、『常識』という壁を作ってしまう。」


「そなたには、その壁を越える力がある。」


アルトは真っすぐ頷いた。


「はい!」


その返事に国王は満足そうに微笑んだ。


「よい返事だ。」


◇


帰り際。


国王は一冊の本をアルトへ手渡した。


表紙には金文字でこう書かれている。


『王国魔法史』


「これは……。」


教授が驚く。


「王家しか閲覧できない書物では?」


国王は静かに頷いた。


「写本だ。」


「本物ではない。」


「だが、十分役に立つだろう。」


アルトは両手で大切に受け取る。


「ありがとうございます!」


「しっかり勉強します!」


国王は豪快に笑った。


「ははは!」


「その年で勉強好きとは頼もしい!」


◇


王宮を後にした馬車の中。


レオンは大きく息を吐いた。


「さすがに疲れたな。」


エマも苦笑する。


「陛下がお優しい方で良かったです。」


アルトは膝の上の本を見つめていた。


営業でも、良い上司や経営者との出会いは人生を変える。


今日の出会いも、きっとそうなる。


王は命令しなかった。


期待を押し付けもしなかった。


ただ、「そのままでいてほしい」と言ってくれた。


その言葉が、アルトの胸に深く刻まれていた。


⸻


営業メモ㉟


『本当に優れたリーダーは、答えを与えるのではなく、可能性を信じる。』


営業でも部下を育てるとき、一方的に指示を出すだけでは人は育たない。


相手を信じ、考える機会を与えること。


それが、組織を強くするリーダーの条件である。


⸻


――次回、第三十七話「営業課長、王家の図書館で歴史を知る」


王から贈られた『王国魔法史』。


そこには、蒼輝石よりも古い時代に存在したという「七色の輝石」の伝説が記されていた。


その一文が、アルトたちの研究を新たな段階へ導くことになる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。