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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第2部 営業課長、王都で信用を築く編

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第三十一話 営業課長、二歳になる


柔らかな春風が、屋敷の庭に咲く花々を揺らしていた。


王都にも、今年最初の春が訪れている。


あの日、王立魔法学院で蒼輝石の新たな性質が見つかってから、一年。


アルトは二歳になっていた。


「アルト様、おはようございます。」


「おはよー!」


エマが微笑む。


「ふふっ、今日も元気ですね。」


前世の記憶を持つ営業課長だったアルトも、今では元気いっぱいに走り回る二歳児だ。


もちろん中身は四十四歳。


だが体は正直で、晴れた日には外で遊びたくなる。


(子どもの体って不思議だな。)


頭では本を読みたいと思っても、気づけば虫を追いかけている。


これも成長なのだろう。


◇


庭ではリクが待っていた。


「アルト!」


「秘密基地、もっと大きくしたよ!」


「ほんと?」


言葉も少しずつ話せるようになり、会話も自然になってきた。


二人は林へ駆け出す。


秘密基地には窓が付き、小さな棚まで作られていた。


「父ちゃんがね!」


「本を置く棚も作ってくれたんだ!」


「すごい!」


アルトは目を輝かせる。


(ダンさん、本気すぎる……。)


秘密基地というより、小さな山小屋だった。


◇


「これ見て。」


リクは棚から布袋を取り出す。


中には蒼輝石が十個ほど入っていた。


「いっぱい見つけた!」


「全部秘密基地の近くだよ。」


アルトは一つずつ手に取る。


(やっぱり……。)


以前よりも、魔力の流れがはっきり見える。


成長したことで、自分の感覚も鋭くなっているらしい。


その中に、一つだけ赤く光る石があった。


「……これ。」


「ん?」


リクが覗き込む。


「普通の石じゃない?」


アルトは首を振る。


「ちがう。」


赤い光は、蒼輝石とはまったく異なる魔力だった。


(新しい鉱石……?)


胸が高鳴る。


◇


その日の午後。


屋敷へ、王立魔法学院からリディアが訪ねてきた。


「アルト様!」


「こんにちは。」


「リディアさん!」


アルトが自然に名前を呼ぶと、リディアは目を丸くした。


「覚えていてくださったんですか?」


「もちろん!」


レオンが笑う。


「最近は本当によく話すようになってな。」


リディアは嬉しそうに笑った。


「今日はプレゼントがあります。」


そう言って取り出したのは、子ども向けに作られた魔法図鑑だった。


絵が多く、文字も大きい。


「ありがとうございます!」


アルトは思わず頭を下げる。


その姿を見たリディアは、くすりと笑った。


「二歳の子が、お礼にお辞儀をするなんて。」


「本当に不思議な子ですね。」


アルトは少し照れくさくなった。


(営業時代の癖なんだよな……。)


◇


夕食後。


アルトは図鑑を夢中で読んでいた。


魔法属性。


魔物。


鉱石。


知らないことばかりだ。


その中の一ページで、手が止まる。


『紅輝石(こうきせき)』


赤い魔力を宿す希少鉱石。


産地不明。


詳細不明。


研究例、ほぼなし。


アルトは昼に見つけた赤い石を思い出した。


(まさか……。)


偶然とは思えない。


蒼輝石だけではなかった。


この世界には、まだ誰も知らない鉱石が眠っている。


営業課長の好奇心は、ますます刺激されていく。


◇


夜。


窓から満月を見上げながら、アルトは静かに考える。


営業では、「市場を知ること」が第一歩だった。


研究も同じだ。


まず世界を知る。


知らないことを知る。


そして、自分だけの答えを探す。


その旅が、今ようやく始まろうとしていた。


⸻


営業メモ㉚


『学び続ける人だけが、成長し続ける。』


営業でも、「もう知っている」と思った瞬間に成長は止まる。


新しい知識を学び、新しい視点を受け入れる。


その積み重ねが、自分だけの強みになる。


⸻


――次回、第三十二話「営業課長、初めて魔法を感じる」


二歳になったアルトは、初めて自分自身の魔力を意識する。


そして教授から告げられる。


「魔法は才能ではない。理解する者ほど強くなる。」


その言葉が、アルトの新たな挑戦の始まりとなる。

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