↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第1部 幼少期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/251

第二十八話 営業課長、静かな評判が広がる


夏空の下、王都は今日も活気に満ちていた。


市場では行商人たちの元気な声が響き、人々は笑顔で買い物を楽しんでいる。


その一角で、雑貨商会の店主グレッグは忙しく頭を下げていた。


「ありがとうございます!」


「こちらが人気のガラス花瓶です。」


「こちらは木製の子ども用食器になります。」


次々と商品が売れていく。


近くの商人が感心したように声を掛けた。


「最近のグレッグ商会は勢いがあるな。」


「何か秘訣でもあるのか?」


グレッグは少し笑った。


「秘訣というほどではありません。」


「ただ、お客様が本当に欲しいものを考えるようになっただけです。」


「誰かに教わったのか?」


「ええ。」


グレッグは遠くを見つめながら答えた。


「ある小さな先生に。」


⸻


その噂は、商人たちの間を少しずつ広がっていった。


「売れない商品を売れるようにする赤ちゃん。」


「貴族レオン様のご子息らしい。」


「不思議な子だ。」


もちろん尾ひれも付く。


「未来が見えるらしい。」


「精霊の加護を受けているとか。」


「生まれながらの賢者だそうだ。」


噂とは、営業の口コミと同じ。


広がるほどに少しずつ形を変えていく。


⸻


一方その頃。


王立魔法学院。


老魔法使いの執務室では、リディアが一冊の研究日誌をまとめていた。


そこへ、一人の青年が部屋へ入ってくる。


銀色の短い髪。


学院の制服をきっちりと着こなし、胸元には優秀な研究員だけが付けられる銀の徽章。


「教授、お呼びでしょうか。」


老魔法使いは静かに頷いた。


「アレン。」


「一つ、頼みたいことがある。」


「何でしょう。」


「以前話した蒼輝石を覚えているか。」


「未解明の魔鉱石ですね。」


「そうだ。」


老人は窓の外を見つめる。


「そして、その石を見つけた子どものことも。」


アレンは少しだけ眉を動かした。


「……あの赤ちゃんですか。」


「リディアが妙に気にしている。」


「はい。」


「ですが、ただの偶然でしょう。」


その口調には、自信がにじんでいた。


学院始まって以来の秀才。


誰もが認める若き研究者。


だからこそ、赤ん坊が研究に関わるなど考えもしない。


老人は微笑んだ。


「私もそう思っていた。」


「しかし、研究とは思い込みを疑うことから始まる。」


アレンは静かに頷く。


「分かりました。」


「一度、お会いしてみます。」


⸻


その日の夕方。


屋敷の庭では、アルトがリクたちと遊んでいた。


秘密基地から持ってきた木の剣を振り回し、リクが楽しそうに笑う。


「アルトもドラゴン退治する?」


「あぅ!」


アルトは笑いながら木の剣を受け取る。


その何気ない光景を、門の外から一人の青年が見つめていた。


銀色の髪。


鋭い青い瞳。


王立魔法学院の若き天才研究員、アレン。


「……普通の赤ちゃんじゃないのか。」


それとも。


「ただの噂なのか。」


彼は静かに呟く。


その視線に気付く者は、まだ誰もいなかった。


⸻


営業メモ㉗


『評判は、自分で作るものではない。お客様が作ってくれるものだ。』


どれだけ自分で宣伝しても、本当の信用にはならない。


誰かが「良かった」と語ってくれること。


それこそが、何より強い営業になる。


⸻


――次回、第二十九話「営業課長、天才と出会う」


学院一の秀才・アレン。


彼はアルトを試そうとする。


しかし試されるはずだったのは、むしろ自分自身だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。